ヤマシタトモコが描く、生々しいオンナたち

「アフタヌーン」などの青年誌からBL誌まで多くのジャンルを股にかけ、数々の作品を精力的に発表する漫画家・ヤマシタトモコ。彼女が描くキャラクターたちは、皆弱いところや汚い感情を持った人間らしさが最大の魅力です。今回は短編作品に登場する女性キャラクターをご紹介。

「ばらといばらとばらばらのばらん」(『イルミナシオン』所収)

主人公は「クラスメイトの地味ないじめられっ子(十亀)と、好きな男子がかぶってしまう」という特異な環境に置かれた女子高生です。

「十亀ってやっぱ、(いじめ)られてるよね……」と小声で話す友人たちに同意することもなく、かと言って味方につくわけでもなく、真っすぐに生きています。

ある朝、十亀の席に花瓶に生けられた花が置かれている、という古典的ないじめの現場を見ても「うち(園芸部)が育ててる花勝手に使わないでよ」と、思わず「そこ!?」と言いたくなってしまうような方向に関心が向かいます。

そして十亀が自分の好きな男子に告白し、拒絶され突き飛ばされているところを目撃し――さっぱりとした彼女ならではの行動は必見。

「縞々々」(『裸で外には出られない』所収)

主人公はスラッとした美人、太りづらい体質で、長くつれそっているであろう彼氏もいるOL。
彼女の職場には、彼氏がほしいと嘆き、ぽっちゃりとしていながら間食をやめられないほんわかとした印象の女性がいます。

この対比、前者が視点主となり後者を冷静に見守る構図になっているからこそ「なんだか嫌味ったらしい?」という印象を読み手は受けてしまうかもしれません。

しかし、次第に主人公は彼女のやわらかそうな身体に興味を押さえきれなくなってしまい……。

エッセイ集『裸で外には出られない』には、エッセイのほかにこの作品を含む3つの短編が収録されています。どれもヤマシタトモコさんならではの極端な性格の女性たちが登場します。

◆まだまだいる、生々しいオンナたち

今回は短編からピックアップしましたが、長編「Love,Hate,Love」の主人公においても、人生で初めての失恋の翌日「失恋で仕事が手につかなくなる人ってほんとにいるのかなあ」と淡々と思いを巡らせるドライな面があります。

ヤマシタさんの描く女性は、媚びることのない凛とした性格ゆえに極端さもを持ち、それこそが最大の魅力となっているのです。

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