舟を編む(小説・映画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『舟を編む』は三浦しをんによる出版社の辞書編集部を舞台にしたヒューマン小説。女性ファッション雑誌『CLASSY.』に連載され、2011年に光文社から単行本が発行された。2012年には本屋大賞を受賞している。2013年には松田龍平主演で映画化、2016年にテレビアニメ化された。「玄武書房」に勤める馬締光也は、新しく刊行される辞書『大渡海』の編集メンバーとして辞書編集部に異動となる。辞書制作のために集まった個性の強い編纂者たちが奥深い辞書の世界にのめり込み、言葉に向き合う物語。

いよいよ大詰めに差し掛かり、辞書の内容を確認していた岸辺が「血潮」の項目がないことに気がつく。慌てる辞書編集部の面々を前に、馬締は「24万語をもう一度確認します」と告げた。印刷や販売のスケジュールもあらかた決まっているため、急ぎで行わなければならずアルバイトを雇うことにした辞書編集部。地道な作業が始まってすぐ、松本先生が入院する知らせが届いた。高齢な上に『大渡海』のために長年走り続けた松本先生は、編纂終盤にかなり無理をして作業をしていたのも体調が崩れた原因でもあった。お見舞いに行ってすぐ、辞書編集部の面々はバイトたちと徹夜の確認作業に入った。馬締も休む間もなく作業に没頭した。季節がひとつずれた頃、ようやく全ての文字を確認することができた。歓喜するバイトたちと辞書編集部。バイトの中には「最初は地味だと思ってたけど、また誘ってください」と言ってくる者もいた。

『大渡海』発売目前

来春に辞書の刊行が決まった冬。松本先生の家に荒木と馬締は辞書の試し刷りを持って訪ねた。妻に支えられながら現れた松本先生は一層弱々しく感じられたが、辞書作りに完成はないと先のことについて話をしていた。そして、先生にとって途方もない辞書作りの原点とも言える大槻文彦が1人で作り上げた『言海』という辞書も含めて、海外と比べて日本は国費で辞書を作らないことについて語った。言葉は言葉を紡ぐ人にとって自由であるべきだとも松本先生は続ける。また、話の最後に松本先生は自身が食道癌であることを2人に伝えた。動揺する2人だったが、帰りに荒木が「俺たちはいったいどこに向かうんだろう」と問いかけると馬締は、「僕たちにできるのは夜の海を渡ろうとする人達の道を照らし、立ち止まらず、次の誰かにバトンを渡すこと」とまっすぐ答えた。終わりのない役目を果たすために、そして『大渡海』の節目のために2人はまた歩き始めた。しばらく経って印刷所から最後の刷り出しが終わったと連絡があったちょうどその時、同じように鳴った電話は松本先生が亡くなった知らせだった。『大渡海』完成のお祝いの飲み会前に、辞書編集部で雑談をする西岡と馬締は松本先生がかつて言った「2人は互いに支え合い、補う者同士だ」という言葉を思い出し、噛み締めていた。

『舟を編む』の登場人物・キャラクター

辞書編集部

馬締光也(まじめ みつや)

出典: www.funewoamu.com

アニメ:櫻井孝宏
映画:松田龍平
本作の主人公で玄武書房辞書編集部員。大学院で言語学を専攻し、玄武書房に入社してから3年目の27歳。入社してからの3年間は第一営業部に配属されていたが、辞書編集部の荒木にスカウトされてから異動になった。口下手で思ったことを上手く人に伝える事ができない。そのことを本人も自覚しているため、度々落ち込んで暗い雰囲気になりがちである。長髪にいつも少し猫背気味で、大人しく控えめな性格。しかし本や言葉への情熱は人一倍強く、下宿先の部屋は本が所狭しと並んでおり、頭の中では1つの言葉から関連する言葉が次々と溢れ出ているため初対面の西岡には変人扱いされていた。恋愛にも不器用で、香具矢に対する恋文は15枚にも及び、その言葉選びも難解なものが多く彼女を驚かせた。仕事ではその一途で誠実な物事への向き合い方が辞書作りで生かされ、13年後には辞書編集部の主任となって活躍している。

西岡正志(にしおか まさし)

出典: www.funewoamu.com

アニメ:神谷浩史
映画:オダギリジョー
玄武書房辞書編集部員で入社5年目の27歳。言葉や辞書への思い入れや情熱も薄く辞書編集部であることに退屈していたが、馬締との出会いから少しずつ仕事への楽しさを見出していく。『大渡海』制作の打ち切りを阻止すべく会社に歯向かって、大胆に行動したため宣伝部に異動となってしまう。とにかく軽薄でチャラいが、仕事ではその調子の良さを生かして辞書編集部の対人面をほとんど1人でカバーしている有能な社員。かなり気の利く性格で、異動になる前には後任の編集部員のために辞書編集部に関係する人物のプロフィールや性格、周辺情報をまとめたファイルを作ったりしている。また、辞書編集部を離れてからも時々顔を出し、差し入れや様子を見に来たりしている。『大渡海』が完成してからのプロモーションに宣伝部として関わり、活躍した。大学時代からの付き合いである宣伝部の三好麗美とは13年後結婚しており、2人の子供がいる。

荒木公平(あらき こうへい)

出典: www.funewoamu.com

アニメ:金尾哲夫
映画:小林薫
ベテランの玄武書房辞書編集部員。定年間近で後任の編集部員を探していたところ馬締と出会う。入社以来辞書編集部に所属しており、その仕事ぶりは松本先生も高く評価している。定年後は嘱託社員として『大渡海』の編纂に関わる。

佐々木薫(ささき かおる)

出典: www.funewoamu.com

アニメ:榊原良子
映画:伊佐山ひろ子
契約社員の玄武書房辞書編集部員。辞書編集部の事務作業を任されており、その仕事ぶりは迅速かつ丁寧である。喜怒哀楽があまり顔に出ず、冷静に淡々と業務をこなす。そんな彼女も長年携わってきた『大渡海』の完成には感動し、「泣いちゃうかも」と心境を漏らした。

岸辺みどり(きしべ みどり)

出典: www.funewoamu.com

アニメ:日笠陽子
映画:黒木華
作中13年後に登場する玄武書房辞書編集部員。元々は『ノーザン・ブラック』という女性ファッション誌の編集部に所属していたが、異動してきた。当初はファッション誌にいた頃に編集長と記事について揉めたことで異動させられたと思い落ち込んでいたが、『大渡海』に対する関係者の並々ならぬ思いを目の当たりにして気持ちを切り替える。

松本朋佑(まつもと ともすけ)

出典: www.funewoamu.com

アニメ:麦人
映画:加藤剛
『大渡海』の監修を任されている年配の国語学者。『大渡海』以外にも玄武書房の出す辞書には必ず関わってきた。穏やかで優しく微笑んでいる事が多く、馬締や岸辺に辞書や言葉の奥深さを物語の要所要所で伝えている。いつも用例採集カードを持ち歩いており、新しい語句を集めているためか時代の変化や若者の考えも取り入れようとする柔軟さを持ち合わせている。『大渡海』完成目前に食道癌で亡くなり、その完成に立ち会うことはできなかった。

その他の登場人物

syary
syary
@syary

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