ファースト・ミッション(香港映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ファースト・ミッション』とは、1985年に公開されたサモ・ハン・キンポー監督、ジャッキー・チェン主演の香港映画である。刑事のフォン・シャンヤンは上司のウォン警部達と宝石の密輸を行うシンジケートの捜査を行っていた。その矢先、彼の兄シャンタクはある出来事によりシンジケートの事件に巻き込まれる事となる。監督のサモ・ハンの意向でドラマ重視の作品となったが日本公開時にはアクション場面とジャッキー・チェン歌唱の主題歌が追加された。

シャンヤンやイアン達が所属している部隊であり、厳しい訓練を受けており、本作品での冒頭でも訓練シーンが出て来る。香港には、治安維持や災害対応、暴徒鎮圧等を任務としている「警察機動部隊(Police Tactical Unit、略称:PTU)」や対テロ対策や密入国・貿易取締り、麻薬摘発、人質救出等を目的とした「特殊任務中隊(別名「飛虎隊」Special Duties Unit、略称:SDU)といった部隊がある。これらの部隊が出て来る作品に、『ファイナル・オプション/香港最終指令』(1994年)、『PTU』(2003年)、『香港国際警察/NEW POLICE STORY』(2005年)等がある。

船員

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船を見つめるシャンヤン(写真左)とシャンタク(写真右)。

シャンヤンが船員として採用され喜び、兄のシャンタクや彼女のジェニーに自分が船員になる事を報告する場面が出て来る。香港も船は切っても切れない存在であり、特に九龍と香港島を結ぶスターフェリーは長い間、多くの香港人や観光客の足として親しまれている。

チップ

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子供達とレストランに入るシャンタク(写真中央)。

シャンタクと子供達が、レストランで食事をしていた男性が従業員に10香港ドルを渡しているのを見てそれを勘定だと思った。しかしその10ドルはチップであり、それを知らずにレストランで食事をしたシャンタクと子供達は従業員から言われた勘定金額を聞き慌てふためく。香港はイギリス文化の名残があり、チップの習慣もある。レストラン(合計金額の10%で、お釣りの小銭を渡す程度)やホテル(清掃員には2~5ドル、従業員には10ドル程)にて、チップを渡す習慣がある。

『ファースト・ミッション』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

チンピラの一人「デカ? お前はチビだ!」

チンピラ達を前に思わずたじろぐイアン(写真中央)。

シャンヤンの彼女ジェニーが仕事先のレストランで数人のチンピラ達に絡まれていたところへ、シャンヤンの同僚刑事イアンが真っ先に割り込む様に彼等に文句を言う。その後、イアンはシャンヤンら同僚刑事達と共に、レストランの駐車場にてチンピラ達と激しい格闘戦を繰り広げる。
その際に、イアンはシャンヤンの胸ポケットから警察手帳を取り出し、「彼はデカだぞ!」と言い張るが、目の前のチンピラが、「デカ?お前はチビだ!」と答えイアンを殴り飛ばす。それに対しシャンヤンはそのチンピラに、拳や飛び蹴りを食らわせた。その後、他の同僚刑事達の格闘戦も終わり、チンピラ達は逃げて行く。シャンヤンはイアンに、あまり大口叩くなと𠮟責した。悪口の様に聞こえる反面、ダジャレの様にも聞こえる言葉である。喧嘩っ早く一方的な行動に出るイアンが、このチンピラの言葉によりどこか憎めないキャラクターになると言える。

シャンタク「ガッテンでさあ!グズグズ抜かしてたらぶっ殺してやりまさあ!」

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ミンの学校へ向かうシャンタク。

父親がいないミンがシャンタクに、小学校の親御面談で「父親」の代理として担任の相手をしてほしいと伝える。仕方なくシャンタクはそれを承諾し、担任教師と職員室にて面談する。そして担任が何か尋ねて来る度に、事前にミンから告げられていた「ガッテンでさあ!グズグズ抜かしてたらぶっ殺してやりまさあ!」という言葉を繰り返し言い続けていた。しかしシャンタクは、ミンからもらったロボットのおもちゃで遊び始めてしまう。担任はシャンタクがミンの父親でないのではと感じて「この前なんか、同級生を殺してしまったんですよ!」と冗談を言っても、シャンタクは「ガッテンでさあ!グズグズ抜かしてたらぶっ殺してやりまさあ!」と答えた。シャンタクがミンの父親でないと確信した担任は、彼を帰らせた後、外で待っていたミンを呼び出したのだった。非常にインパクトのある言葉なうえ、シャンタクが繰り返し言い放つ、かつ他の行動をしながら言う事により、担任とのコントの如く、ユーモアを感じさせる。

シャンヤン「もう子供じゃない!自分の事ぐらい自分でしてくれよ!」

兄シャンタクにもう子供ではないと訴える弟シャンヤン。

シャンタクが、弟シャンヤンが船乗りになり自分を捨てると思い込み、自暴自棄になり、自宅で暴れてしまう。そんなシャンタクに対し、シャンヤンもそれまでため込んでいた感情を爆発させ「もう子供じゃない!自分の事ぐらい自分でしてくれよ!」と、自分がずっと兄の面倒を見ていなければならない事への不満をシャンタク本人へぶつけたのだった。シャンヤンの正直な気持ちが表され、その思いが兄シャンタクにも伝わり、彼がもう自分は子供ではないんだと自覚した、とても痛烈な場面である。

シャンヤン「兄貴、怒らないでくれよな」

出典: stat.ameba.jp

兄シャンタクに抱き着き、涙ながらの和解をするシャンヤン。

自分の事は自分でしろと弟シャンヤンから自分の不満をぶつけられ、責任を感じたシャンタクが自立する事を決心し街で仕事を探す。そしてある一軒の食堂の店主から、「採用」という口約束のもと、シャンタクに動物の真似といった醜態をさらさせるが、そこへ現れたシャンヤンの同僚イアンに助けられ、悪びれる様子がない店主の腹部を殴り、シャンタクを連れて帰る。イアンは、シャンタクが街で職探しを行い、食堂で酷い目に遭った事についてシャンヤンを咎める。シャンヤンは逆上し、イアンと大喧嘩をしてしまう。
しかし、シャンヤンは兄シャンタクを思う気持ちに変わりはなく、シャンタクが弟シャンヤンの傍に行き、振り返った彼の目には涙が溢れており「兄貴、怒らないでくれよな」と呟く。「当たり前じゃないか」と答えたシャンタクに対し、シャンヤンは彼に抱き着いた。そして近くにいたイアンも思わず涙した。一時は兄弟喧嘩したシャンタクとシャンヤンの二人だったが、涙ながらの和解をした、本作品の名場面と言える。

『ファースト・ミッション』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

制作までの長い道のり

出典: kungfutube.info

本作品でプロデューサーとして協力を行ったジミー・ウォング(写真中央)。

本作品は松竹富士の出資金で製作され、香港公開版のタイトルである『龍的心』に決定する前の1984年6月時点で、邦題が『ファースト・ミッション』と決定した。
また、1960~1970年代にかけて香港や台湾でアクション俳優として活躍し、プロデューサーとしても名が知られているジミー・ウォングが本作品の制作にクレジットされているものの、当初から制作に関わっていたわけではない。香港のプロデューサーから話を持ちかけられ、松竹が出資する事となった本作品の制作が進行しないうえ、出資金だけ持ち逃げされそうになる危機に直面した為、ジミー・ウォングに協力を要請し制作までこぎつける事ができた。

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