とんでもスキルで異世界放浪メシ(とんスキ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『とんでもスキルで異世界放浪メシ』とは江口連により小説投稿サイト「小説家になろう」で2016年より連載を開始した、異世界グルメ作品である。同年、オーバーラップノベルズより書籍化もされている。ある日、異世界に召喚された社会人ムコーダと、地球の料理に惹かれてやってきた伝説の魔獣フェンリル達と共に、異世界を気ままに旅していくストーリーだ。

レイセヘル王国を脱出しフェーネン王国へ向かうムコーダは、冒険者パーティ鉄の意志(アイアン・ウィル)を護衛に雇い王都を出る。旅路の中で食事の準備を買って出たムコーダの料理を絶賛するアイアン・ウィルの面々。ある日、道すがたで倒した猪型の魔物レッドボアを使った生姜焼きを皆で食べていると、その匂いに惹かれて現れる巨大な影。それは美しい銀色の毛並みをした神々しい狼であり、伝説とまで言われる魔獣フェンリルであった。死を覚悟した一同ながらもフェンリルは人間達の命に興味はなく、あるのはレッドボアの生姜焼きだった。牛よりも巨大な狼に大量の生姜焼きを作るムコーダ。それをペロリと平らげて満足するフェンリルはムコーダとの従魔契約を申し出る。最初は断ろうとするムコーダを有無も言わせず威圧するフェンリルに対して、折れたムコーダはなくなく従魔の契約を交わすというシーンである。ムコーダの旅の始まりのシーンであり、戦闘力の無いムコーダがチート級の力を得た瞬間でもあり、苦楽を共にするかけがえのない仲間との出会いでもある。

女神、異世界の甘味に触れる

風の女神ニンリルは、眷属であるフェルを介してムコーダが異世界の食べ物を自在に取り出す瞬間を目撃していた。以前より異世界の食物に憧れていたニンリルは、フェルを従魔とするムコーダならばフェルを眷属とする自分を信仰するのは当たり前。であれば、自分に食べ物を貢いでも問題ないだろう!という暴論を導き出す。結果、フェルを通じてニンリルより神託がくだるムコーダは、風の女神の加護(小)と引き換えに異世界の甘味をお供えすることになるシーンだ。ここから駄女神との繋がりが生まれ、様々な神様の無理難題を聞いていくムコーダの苦労が始まっていく。威厳の欠片もない女神ニンリルを見たことで、ムコーダの中で「異世界の神様=残念」というイメージが定着することになる。

ムコーダ、ドラゴンの肉に感無量

フェルが討伐してきた地竜(アースドラゴン)を解体してもらう為、ダンジョンの街ドランを訪れたムコーダ一行は、ドラゴン狂いの変態エルフエルランドにこれを依頼する。アースドラゴンを切り裂くミスリルナイフを用意してやっとの思いで解体に成功したムコーダ達は、遂に念願のドラゴン肉のステーキを堪能することになる。塩コショウでシンプルに味付けしたステーキをひと摘まみしたムコーダは、ドラゴンの肉に生まれて初めて味わう。口の中で噛みしめる度に極上の肉汁が溢れ出るその肉に「こんなにも美味い肉があるのか」と感動する。従魔達と功労者のエルランドもまたドラゴンの味に感動至福の時を過ごすシーンである。

創造神の裁きが神様達に降る

いつものように神様達にお供え物をするムコーダ。しかし、この日は特別ボーナスと称して普段よりもお供え物の量が多く、準備する時間も掛かっていた。そんな時ムコーダの頭の中に「お主たち、集まって何をやっとるのかのぅ?」と聞きなれぬ老人の声。神様達が揃って驚くその人物は神様達よりも偉い創造神デミウルゴスであった。デミウルゴスより事の次第に対して説明を求められる神様達。代表して女神ニンリルが加護を与える見返りに異世界の食べ物、酒、化粧品を要求してきたという、これまでの経緯を語る。見守るべき地上の民から供物と称して集り続けてきた神様に、当然ながら激怒する創造神。それもそのはず、加護とは対価を要求する為に与えるものではない。そう言って詰め寄るデミウルゴスにぐうの音も出せない神様達。結果、罰として一か月の謹慎と、ムコーダとの接触禁止を言い渡されるというシーンになる。それまで加護との等価交換とはいえ、傍若無人な振舞いを見せる神様に天罰が降った瞬間にスッキリした読者も多い。この様な痛快なシーンは作中でも珍しい。

伝説級の古竜を従魔にするムコーダ

ダンジョンの街ブリクストのダンジョン最深部47階層にて。事前に創造神デミウルゴスより最下層には何かが居ると聞いていたムコーダは、ボスの部屋に入るとドラゴンの中でも上位の実力者黒竜(ブラックドラゴン)が待ち構えていた。しかし、そのブラックドラゴンを子供の様に扱い、軽くいなして瞬殺する超巨大な影。それは同族のドラちゃんですら驚く存在、古竜(エンシェントドラゴン)だった。思わず尻餅をつき、ここに来たことを後悔するムコーダ。どうやらフェルと顔見知りらしきそのエンシェントドラゴンと一触即発になる寸前で、伝説の魔獣フェンリルを従魔にしたムコーダに興味を抱き始めたエンシェントドラゴン。ここからフェルとエンシェントドラゴンの二頭の魔物が、ムコーダのご飯が美味いという事実からどちらが美食家かという言い争いに変わる。しょうもない姿を晒す伝説級の魔獣に、それまでの緊張もほぐれて呆れるムコーダ。が、試しにエンシェントドラゴンにガーリックステーキを一切れ食べさせてみた。すると「うまぁぁぁぁぁぁぁい!」と響き渡る重低音。結果、エンシェントドラゴンはムコーダの料理欲しさに期間限定の従魔契約を結び名をゴン爺と改める。珍しくもシリアスな展開になるかと思いきや、食べ物を契機にやはりコミカルに展開されていった新キャラ登場。しかも竜が仲間になる。見ていて飽きない瞬間でもある。

ルバノフ教の最後

カレーリナの街の拠点に人族至上主義ルバノフ教の教徒が金をせびりにやってきた。門番をしていたドワーフのバルテルや従魔フェルやゴン爺をバカにして手をかけようとした彼らとルバノフ教に対して、珍しく激怒するムコーダは創造神デミウルゴスの手を借りてルバノフ教を懲らしめることにする。従魔と共にムコーダは、創造神デミウルゴスの使者としてルバノフ神聖王国を訪れる。創造神の力により周辺諸国や各国王族や宗教関係者に向けてデミウルゴスの声が響き渡る。そこでデミウルゴスは、ルバノフ教の正体と成り立ちを話し明るみにする。ルバノフという神はそもそも居らず、金集めの為の宗教組織。その裏では亜人種や見た目麗しい人間などを奴隷にして売り払ってきたことなど、公にされていない真実を白日のもとに晒される。そして、最後はフェルとゴン爺の魔法がルバノフ教本部を瓦礫にするというシーン。これは日本の時代劇にオマージュされた創造神デミウルゴスの、悪事を白日のものにして悪者を成敗するという意思があった。加えて基本的には温厚であるムコーダが、唯一激怒した瞬間でもありムコーダの誠実さや正義感が窺えるシーンだ。

『とんでもスキルで異世界放浪メシ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

スイの大冒険

従魔のスイを主人公に据えたスピンオフ作品『とんでもスキルで異世界放浪メシ スイの大冒険』が原作同様にオーバーラップより刊行されている。2021年5月時点で第5巻まで発売されている。ムコーダ大好きなスイが主の為に頑張れば、落とし物をしていじけるスイの姿も見れるハートフルな作品となっている。またスピンオフということもあり、フェル視点も多くあり、子供の様な精神のスイに振り回されるフェルの親心などもうかがえる作品だ。

IFストーリーが存在する

とんでもスキルで異世界放浪メシ原作小説第4巻のゲーマーズ限定版には、特典とショートストーリーが描かれた小冊子が同封されている。この中に『異世界でも快適生活 ~IF ムコーダが勇者3人と共にいたら~』というストーリーがある。ifストーリーではレイセヘル王国に疑念を抱いたムコーダが、召喚された勇者カイト、カノン、リオの3人を説得して供にエルマン王国に亡命する流れになっている。ムコーダのスキルネットスーパーを小馬鹿にしていた勇者達も、その便利さを知ったことでムコーダに頼り切っているという本編とは異なる設定もある。また、このifルートにおいてムコーダはフェル達従魔とは出会っていない。

ボイスドラマが存在する

とんでもスキルで異世界放浪メシでは、原作小説やコミックスの発売を記念して特設サイト内にて限定ボイスドラマが聞ける仕様になっている。ムコーダ役を細谷佳正、フェル役を杉田智和、スイ役を久野美咲、ドラちゃん役を下野紘、そして女神ニンリル役を佐倉綾音が演じている。また、これは原作小説第5巻発売時にドラマCD化もしており、ドラマCD付き特装版として発売している。

ゲーム化もされている

実は、RPGアツマールというフリーゲームの投稿サービスにおいて、とんでもスキルで異世界放浪メシのゲーム化もされている。フェルに無理矢理ダンジョンに連れてこられたムコーダとスイ。ダンジョン内でモンスターを倒して料理を作って美味しいご飯を食べるという内容だ。原作と変わらぬ展開を忠実にゲーム化した作品で、ゲーム制作はQpicが担当している。

Hiro44Smh6
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@Hiro44Smh6

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