海獣の子供(漫画・劇場アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『海獣の子供』とは、海を巡る神話を題材にしたファンタジー物語であり、五十嵐大介による初の長編漫画作品、また漫画原作の同名アニメーション映画である。漫画は、小学館が発行する漫画雑誌『月刊IKKI』にて2006年2月号から2011年11月号まで連載された。映画は渡辺歩が監督し、主人公・安海琉花の声優を芦田愛菜が務め、2019年に公開された。主人公の中学生・琉花が、ジュゴンに育てられた子供・海と空と関わるうちに、自然界の海を巡る現実とは思えないような体験に巻き込まれていくひと夏の物語となっている。

加奈子がデデに心を開き、自分は世界の見方が他人とは違うという違和感を本音で話したセリフである。加奈子の世界の見方は、琉花やアングラード、デデとも共通しており、世界を「死」で区切らない、命が生まれ変わっていく世界を感じ取るために必要な視点である。
琉花と海が失踪して1週間が経った頃、デデと加奈子は、アングラードが乗っていた船と双生船にあたる船で、同じ手順を踏んで海に出た。
デデは加奈子に「なぜ一緒に来たんだい?」と尋ねる。加奈子は「あなたとは初対面だったのに、なぜだかあなたは私のことを知っているって思ったから」と答える。
デデは加奈子に「あんたは海の世界が私たちの世界とは違う事を知っているね。すぐ隣にありながら、互いに呼吸すらできないものが棲む別の世界。海は『彼岸』なんだよ。そして、女の身体は彼岸と繋がっている。あんたは知ってるはずだ。女の身体は、彼岸からこっち岸へ生命を引っ張りだす通路なんだから。本当は海のことは女が専門家なのさ。だから必ず琉花のところに辿り着ける」と言う。この言葉を聞いて、加奈子は初めて笑い「自分のことをデデなら理解してくれるのではないか」と考えて、自分の本音を吐き出したときのセリフである。
加奈子は「私の目に見えるほとんどは、人間じゃない。世界の大部分は『人間じゃないもの』で出来ているでしょう?だから私は人間じゃないもののほうを多く見る。でもどうやらそれはダメらしい…世界を割合の通りに見てるだけなのに、どうやら他の人は違うらしい…琉花は私と似てるんだって。琉花は私と同じなのかな」とこれまで感じていた違和感を話した。対してデデは「私もさ。アングラードもね。私たちは似た者同士ってわけさ」と答えた。

琉花「死ぬことは別の世界で生まれること?」

加奈子のお腹の子の出産の時に、琉花が赤ちゃんのへその緒を切った後に加奈子に尋ねたセリフ。誕生祭を目撃した琉花だからこそ、出産を単に生まれたと捉えるのではなく、別の命から生まれ変わったと捉えたことが分かる言葉である。
加奈子に付き添って病院に来た琉花は、加奈子にへその緒を切るように言われる。切るとき、琉花は「命を断つ感触」がした。誕生祭を目撃した琉花は、命は生まれ変わるものだということを知っており、消えてしまったであろうもう一つの命に思いを馳せたためだった。
加奈子は、「お腹の中では羊水の中で息をしていて、生まれてきた途端、肺呼吸になるんだから、海の生き物が陸の生き物に生まれ変わるみたいなものよ」と赤ちゃんが生まれてくるときの仕組みについて琉花に説明する。琉花は加奈子に「死ぬことは別の世界で生まれること?」と聞く。加奈子は「同じものの表と、裏みたいなもの?」と答えた。

『海獣の子供』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

漫画『海獣の子供』の誕生秘話

作者である五十嵐大介が沖縄・西表島へ一人旅をした時に、沖縄の綺麗な海とそこに生きる生き物たちに興味を覚え、「魚を描きたい」という思いから海を舞台とする作品となった。また、西表島で触れた自然と一体化した暮らしや、若い子でも他人の家にお邪魔したら仏壇に手を合わせるなど目に見えないものを大切にする風習、伝統芸能やお祭りにもインスピレーションを受けた。
ストーリーについては、「ジュゴンに育てられた少年と、少年と出会う少女の話」という大まかな流れは決まっており「最後は海と宇宙が繋がるようなものにしたい」という五十嵐の思いがあった。五十嵐の好きな詩人・草野心平の山の沼で蛙たちが鳴いている様子を描写した『誕生祭』という詩の世界観を参考にしており、少年と少女が誕生祭へ向かっていくというストーリーが出来上がった。

圧倒的な映像美を制作した「STUDIO4℃」

アニメ映画『海獣の子供』のアニメーション制作は、これまでも斬新な映像表現でのアニメファンを魅了してきたプロダクションであるSTUDIO4℃が手掛けている。
STUDIO4℃は、宮崎駿監督の『となりのトトロ』『魔女の宅急便』のラインプロデューサーを務めた田中栄子が主宰する精鋭クリエイティブ集団である。2004年にメディア芸術祭大賞に選ばれた湯浅政明監督の『マインド・ゲーム』や、日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞に選ばれた2006年公開のマイケル・アリアス監督作品『鉄コン筋クリート』もアニメーション制作を担当している。
『海獣の子供』の映画化の企画は、映画公開の6年前から始まっており、長い時間をかけて手書きの作画アニメーションとCGアニメーションを融合して制作された。

『海獣の子供』の主題歌・挿入歌

主題歌:米津玄師「海の幽霊」

アニメーション映画『海獣の子供』の主題歌である。

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