海獣の子供(漫画・劇場アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『海獣の子供』とは、海を巡る神話を題材にしたファンタジー物語であり、五十嵐大介による初の長編漫画作品、また漫画原作の同名アニメーション映画である。漫画は、小学館が発行する漫画雑誌『月刊IKKI』にて2006年2月号から2011年11月号まで連載された。映画は渡辺歩が監督し、主人公・安海琉花の声優を芦田愛菜が務め、2019年に公開された。主人公の中学生・琉花が、ジュゴンに育てられた子供・海と空と関わるうちに、自然界の海を巡る現実とは思えないような体験に巻き込まれていくひと夏の物語となっている。

CV:芦田愛菜
ハンドボール部に所属する中学生。東京から2、3時間かかる海沿いの町に住んでいる。
他の部員とのトラブルで、夏休みの間、楽しみにしていた部活を先生に禁止されてしまう。口よりも先に手が出てしまうタイプで、先生からはトラブルメーカーだと思われている。
母親である加奈子と2人で暮らしている。父親である正明は別居中で、正明が働く水族館に琉花はよく遊びに行っている。いつもお酒を飲んでばかりで口うるさい加奈子と、家族と向き合うことから逃げて別居している正明に対して、心を開くことが出来ずにいる。そのため、学校にも家庭に居場所のなさを感じている。
幼い頃、水族館で白斑のある魚の模様が光って消えてしまった光景を目撃し、「水族館の幽霊」と名付けて忘れられずにいた。
部活禁止を言い渡された日、思い付きで訪れた東京の海で、海という少年に出会う。言葉にしていない琉花の気持ちも、海が分かっているような気がして不思議に思う。翌日、正明の働く水族館を訪れると、水槽で海が泳いでいることに驚き、海がジュゴンに育てられた少年であることを知る。海と一緒に保護された空という少年と海の2人を、部活の代わりに面倒を見るように琉花は正明に頼まれる。海と空と関わっていく中で、自然界の海にまつわる創世神話や逸話を耳にすると同時に、琉花自身も不思議な体験を重ねていくことで、海と空についてもっと知りたいという好奇心を高めていく。

CV:石橋陽彩
2、3歳頃まで空という少年と共にジュゴンに育てられる。ジュゴンと一緒にいるところを東南アジアのある島で捕獲され、得体のしれない海獣の子供として捕らえられてしまう。海獣の子供が見つかったと聞きつけた伝統航海術師であり占い師であるデデによって、海の子供を研究しているジム・キューザックに保護されるように手配された。
科学的に調査をすると人間であることに間違いはないが、その出生については謎のままである。海の中で育ったため、陸にずっと上がっていると皮膚が乾燥してしまい、やけどのような状態になってしまう。そのため、海の中にいるときが一番体調が良い。
人間の言葉を話すことも出来るが、生き物の声を聴くことが出来、クジラの歌を歌うこともある。
保護されたばかりの頃、アングラードと2人で海中に入り、海の体が大きくなって自然の海と一体となり、アングラードを飲み込んだことがあった。その時、アングラードは巨大な海の体の子宮あたりにいた。
創世神話として、原初の水から原人が生まれ、それが世界の元となるという神話が各地に残されていた。原人から宇宙の様々な生命が生まれるという物語だ。実はその原人というのが海だった。インドネシアの影絵劇の話にある「宇宙支配神が大海に精液をこぼすと巨大な羅殺になった」という民間伝承があり、精液というのが小笠原諸島に落ちた隕石のことで、巨大な羅殺は原人のことを指していた。

CV:浦上晟周
2、3歳頃まで海という少年と共にジュゴンに育てられる。ジュゴンと一緒にいるところを東南アジアのある島で捕獲され、得体のしれない海獣の子供として捕らえられてしまう。海獣の子供が見つかったと聞きつけた伝統航海術師であり占い師であるデデによって、海の子供を研究しているジム・キューザックに保護されるように手配された。
科学的に調査をすると人間であることに間違いはないが、その出生については謎のままである。海の中で育ったため、陸にずっと上がっていると皮膚が乾燥してしまい、やけどのような状態になってしまう。海よりも皮膚が弱く、入退院を繰り返している。海の中にいるときが一番体調が良い。
海中で白斑が光に変わった魚が他の海の生き物に食べられる様子を目撃したことで、早くから自らの体が光ることに気付く。空と海もいずれは同じようになることを確信し、ジムに光になって食べられることを回避する方法を模索するように頼む。自分のことよりも海のことを人一倍心配し、守ろうと考えている。
何故かは分からないが、ジムが東南アジアのある島で不注意で死なせてしまった海の子供の記憶を持っており、そのことからジムは空の死を避けようと色々な手段を使って考えている。
小笠原諸島の海域に隕石が落下した時、病院を抜け出して隕石を取りに行く。隕石を欲しがる他の海の子供たちも多くいたが、空が隕石を手にして戻ってくることが出来た。他の海の子供たちは、まるで受精が適わなかった卵巣の白体のような形になって、浜辺に死体として打ち上げられていた。インドネシアの影絵劇の話にある「宇宙支配神が大海に精液をこぼすと巨大な羅殺になった」という民間伝承があり、精液というのが小笠原諸島に落ちた隕石のことだった。

ジム・キューザック

CV:田中泯
正明が働く水族館に勤務している。以前は、世界各地の島を転々としており、各地の伝統的なタトゥーを行く先々で彫っていたため、体中が刺青だらけである。
海の子供について、ある団体に資金援助をしてもらいながら研究している。デデによってジュゴンに育てられた海と空と引き合わされ、それ以降、海と空の保護者として一緒に生活している。
東南アジアのある島で、自分の家に住みついた海の子供を、不注意で死なせてしまった経験から、「海の子供はいったい何者なのか」と疑問に思い研究を続けている。また、海の子供を死なせてしまったことがトラウマとなっており、死なせた子供の記憶を持っている空の死を回避しようとしている。
両親と反りの合わない幼いアングラードを心配し、天才的な頭脳と好奇心を持つ彼を、研究の場に一緒に連れて来ていた。しかし段々と、自分には分からない方法で海の子供を感覚的に理解していくアングラードを妬ましく思い始める。そのため、現在はアングラードとは距離を置いている。

アングラード

CV:森崎ウィン
天才的な頭脳を持つ科学者。ジムと同じく海の子供について、ジムとは別のスポンサーから資金援助を受けて研究をしている。
幼い頃、両親と反りが合わなかったため、親戚であったジムが研究の場によく連れ出していた。その関係で、空や海とも早いうちから接していた。海と空がジムに保護されたばかりの頃、ジムの目を盗んで海を浜辺に連れて行き、一緒に海中へ入る。すると、海の身体が巨大化し、自然の海と一体化して、アングラードを飲み込んでしまった。その際、海の巨大な体の子宮のあたりにいることに気付く。以降、少年・海は創世神話で語られている「原人」にあたるのではないかと思い、空と海を観察し続けている。
動物的な感覚も持ち合わせており、海や空と通ずるところが多いため、海の子供についての謎を感覚的に理解していくのが早い。

デデ

CV:富司純子
ジムの伝統航海術の先生である。伝統航海術師であり、呪術師・占い師でもある。自称・海の何でも屋である。
東南アジアのある島で「ジュゴンと共に捕らえられた海獣の子供がいる」との噂を聞きつけ、海の子供について研究しているジムに引き合わせ、保護をさせる。その保護された子供が海と空だった。
アングラードと同じように、動物的な感覚を残している人で、様々なことに直感が働く。海と空を見て、詳細は分からないが「この子たちは渦の中心」と予言していた。
日本で深海魚が続々と発見されたり、水族館の白斑がある魚が光って消えてしまう現象が起きたりしていることを聞き「何かがある」と直感する。そのため、江ノ倉水族館で働きながら海と空を保護するジムの元を訪れた。空がいなくなり、アングラードと海、琉花が海へ出たと聞き、加奈子を連れて後を追いかける。

安海正明

CV:稲垣吾郎
琉花の父親であり、加奈子の夫。琉花と加奈子とは別居している。
江ノ倉水族館で働いており、ジムの同僚にあたる。
琉花が部員とのトラブルで部活禁止になったことから、時間のある夏休みは「水族館に来て、海と空の面倒を見てほしい」と琉花に頼む。琉花が海とアングラードと共に1週間ほど行方が分からなくなった際には、最初は「ただの家出だろう」と思っていた。しかし、その日のうちに帰って来なかったことから、加奈子と共に琉花の身を案じていた。その後、ジムから、海獣の子供と創世神話を結びつけるジムの仮説を聞いたが、神話の類は信じられないタイプでジムからの説明が腑に落ちなかった。

安海加奈子

右が加奈子

CV:蒼井優
琉花の母親で、正明の妻。正明とは別居中である。
いつもビールばかり飲んでいて、琉花のすることに口うるさく注意してしまう。
元々は正明と同じ江ノ倉水族館で働いていたが、今は辞めている。
高校生までは地元・九浦に住んでおり、加奈子の家は代々大海女の家系だった。そのため、加奈子も高校生までは海女として海に潜っていた。海に潜ると、いつも誰かが「加奈子、加奈子」と自分を呼ぶ声が聞こえていた。しかし、九浦を出て駆け落ちをして東京に行くことを決めた後、海に入ると「加奈子」と呼ぶ声は聞こえなくなった。その代わりに「るか」と一言だけ呼ぶ声が聞こえて、それ以来海に入っても何も聞こえなくなった。
ジムの海獣の子供と創世神話を結びつける仮説を聞いて、高校生の頃の経験を思い出し、詳細は分からないが「琉花が自分の身代わりになったのではないか」という不安が生まれた。そのため、デデが「一緒に来るやつはいるか」と聞いた時に、すぐさまデデに付いて行くことを決めた。デデの船の中にいるときに、妊娠が発覚し、その後お腹の子を出産した。出産の際、正明は出張で立ち会えなかったが、琉花に立ち合いを頼み、子どものへその緒を切ってもらった。

ジャン・ルイ

ジムの研究の相棒。ジムと同じように世界中を移動しながら、海の子供について研究をしている。
空が小笠原諸島に隕石を取りに行っていなくなってしまった際、心配した海が台風の近づく荒れ狂う海中で叫び続けていたところを、心配して陸に上がるように声をかけた。

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Hamsincex0
@Hamsincex0

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