金色のコルダ3 AnotherSky(ゲーム)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『金色のコルダ3 AnotherSky』とは、株式会社コーエーテクモゲームスから発売された女性向け恋愛シミュレーションゲーム『金色のコルダ3』のIFストーリーを描いたタイトル。
季節は夏。ヴァイオリニストの主人公は自分の音楽を見つけるため各学校に転校し、それぞれのメンバーと全国学生音楽コンクール アンサンブル部門での優勝を目指す。
『金色のコルダ3』でライバルとして登場したキャラクターたちと仲間になり、彼らと共に過ごしながら、音楽と恋愛が盛りだくさんの青春恋愛ストーリーを楽しむことができる。

季節は冬。
雪が降る中、主人公は共にヴァイオリンを学んでいた幼馴染の如月 律(きさらぎ りつ)から「俺は春になったら故郷から去る」と告げられる。
彼はこのままこの街にいても自分の音には進歩がないと考え、主人公と離れてしまうのは辛いが悩んだ末の決断だという。
律は音楽科のある横浜星奏学院(よこはませいそうがくいん)へ行き、自分の音楽を見つめ直すというのだ。
そして彼は主人公に「俺は全国学生音楽コンクールに出る。お互いファイナルのステージの上で会おう。待っているぞ」と宣言したのだった。

律が故郷を去ったあの日から2年半の時が流れ、主人公は高校2年生になった。
主人公はスランプに陥り、いつからか演奏するのが苦しいと思う日が増えていた。
ある日、主人公はヴァイオリンの先生から進路を問われる。
先生から「主人公の演奏技術レベルでは音楽で生きていくのは正直難しい」と言われてしまうが、主人公は律と約束したファイナルのステージで会うという約束が忘れられないでいた。
ヴァイオリニストになることを諦められない主人公に、先生は自分の母校である神戸の神南高等学校を紹介してくれる。
神南高校は音楽で活躍している生徒も多く、星奏学院と競うようなレベルの高い管弦楽部があるという。
そこでなら律との約束を果たせるかもしれない。
主人公は神南高校に転入して管弦楽部に入ることを決めたのだった。

神南高校転校初日、学校の敷地がとても広く主人公は迷ってしまう。
そこへ1人の男子生徒が現れ、自分は管弦楽部所属の芹沢 睦(せりざわ むつみ)で、入部希望の転入生が来ると聞いて迎えにきてくれたという。
主人公は芹沢に管弦楽部の部室に案内してもらう。
部室に着いたが、責任者である部長も副部長もあいにくの不在。
もうすぐ始まる夏の全国学生音楽コンクール出場の練習で出かけているのだろうということだ。
芹沢に「入部手続きは日を改めて来て欲しい」と言われるが、すぐにでも入部したい主人公は部長・副部長を探しに出る。

正門前を歩いていると、目立つ男子生徒が2人、女子生徒に囲まれライブしている。
派手なパフォーマンスでヴァイオイリンを演奏している彼らこそ、管弦楽部部長の東金 千秋(とうがね ちあき)と、副部長の土岐 蓬生(とき ほうせい)だった。
先程のライブの反省会をしている彼らに、主人公は声をかけ、自分が転入生だと説明して入部届を渡す。
東金は「この時期にヴァイオリンのためだけに転入してくるなんて根性があるな」と入部届を受け取ってくれるが、主人公は彼から見たままの地味な演奏では困るとからかわれてしまう。
そして東金は主人公の実力をはかるため、練習曲の楽譜を渡す。
「いい演奏を聞かせたら、全国音楽コンクールに出場するアンサンブルに途中参加させてやるよ」という東金の言葉に、願ってもないチャンスだと主人公は張り切って練習を始める。

デュオアンサンブル演奏

翌日、朝から芹沢から電話で新神戸駅へ呼び出された主人公。
東金、土岐、芹沢、主人公の4人で新幹線で横浜へ向かった。
今から敵情視察として横浜の星奏学院へ行くというのだ。
「星奏学院には律がいるな」とボーッと考えているうちに東金たちとはぐれてしまい、主人公は横浜の地で迷子になってしまう。
そこへ声をかけてくれたは星奏学院3年生の榊 大地(さかき だいち)と、幼馴染の如月 律(きさらぎ りつ)だった。
律と会うのはあの冬以来で2年ぶり、驚きつつも主人公は再会を喜んだのだった。

外は暑いのでいったん星奏学院の部室へ行って連絡を取ることにした主人公たち。
他校の生徒である自分が学院内に入っていいのか躊躇すると、星奏学院は全国学生音楽コンクール運営に協力しており、大会期間中は他の出演校の生徒を受け入れているという。
「遠慮なく学内に入って大丈夫だよ」と微笑む大地に安心し、無事部室に着くと、そこにははぐれたはずの東金と土岐がくつろいでいた。
彼らは「勝手にお邪魔させてもらったぜ。新入部員つれてきてくれてありがとうな」と尊大な態度だ。
「勝手に上がり込むな」と怒る大地に対し、東金は「自分たちは星奏学院の理事長に招待された。西日本大会を通過し全国大会に進んだら、星奏学院の学生寮である菩提樹寮を借りることになっている」と言う。
今日はその打ち合わせのためにここへ来たというのだ。
しかし東金には今日わざわざ足を運んだ理由がもう1つあった。
それは同じヴァイオリニストとして競い合い、そしてオーケストラ部部長として星奏学院アンサンブルを率いている律に挑戦状を叩きつけるためだ。
律は一昨年コンクールのソロ部門全国一位で、同じくソロ部門にも出場している東金とはライバル関係だ。
東金が律に「ファイナルで競おうぜ」と宣戦布告し、彼は言いたいことは伝えたというふうに主人公を連れてさっさと部室から去ったのだった。
星奏学院を出た神南一行、東金は主人公と律の関係が気になるようだ。
主人公は、「自分と律は幼馴染で、律とファイナルのステージで会う約束した」と話す。
すると東金は、「主人公が如月や榊に匹敵する能力を示せるならファイナルのアンサンブルに加えてやってもいいぜ」と約束してくれる。
そして彼は芹沢に主人公と2人でアンサンブルを組んで演奏しろと命じ、2人で星奏学院の音楽講堂で披露し実力を示せと命じたのだった。

明日はいよいよ芹沢とのアンサンブル演奏のお披露目だ。
全国音楽コンクールの西日本大会は東金、土岐、芹沢の3人で出場し、セミファイナル進出を決めていた。
ここで認められれば、主人公もアンサンブルの一員としてセミファイナルから出場することができる。
主人公は自分の実力を披露するため、明日のステージへ向けて気を引き締めたのだった。

翌日、芹沢と主人公が演奏する会場には、星奏学院アンサンブルメンバーである、律、大地の他に、如月 響也(きさらぎ きょうや)と、水島 悠人(みずしま はると)がいた。
全国学生音楽コンクール東日本大会は星奏学院がこのメンバーで勝ち進んだようだ。
いよいよ主人公と芹沢のアンサンブル演奏が始まった。
ステージに上がる前、緊張している主人公に芹沢が「いつも通りの俺たちで、演奏を、そして俺を信じて欲しい」と伝える。
芹沢のおかげで緊張がほぐれた主人公。
2人の演奏が終了し、東金も土岐がよくやったと褒めてくれた。
そして主人公の神南高校アンサンブルへの加入を認めてくれたのだった。

その後、夏の大会が終わるまでの1ヶ月滞在する星奏学院の学生寮である菩提樹寮(りんでんほーる)へ向かう。
寮には空き室が多く、理事長から滞在の許可が出たという。
明日からの全国大会に向けて、各自部屋で休むことにした。

全国大会セミファイナル

沖縄のビーチを楽しむ神南メンバー

今日はセミファイナルの説明の日だ。
会場には神南高校のファンや記者が大勢押しかけ主人公は驚くが、東金は当然といった態度。
東金は昨年のバイオリンソロ部門優勝者であり、神南高校はアンサンブル部門優勝候補の筆頭なのだ。
注目されて当然といわんばかりに堂々と振る舞う東金と土岐。
しかし主人公はプレッシャーにガチガチに固まり、順位がはっきりと出るコンクールは苦手で顔色が悪くなってしまう。
そんな主人公に芹沢が休憩できる場所まで案内し、こまめに世話を焼いてくれた。
そして彼は「実は俺も最初はそうだった。だが自信満々な部長や副部長を見ているとプレッシャーなんか馬鹿馬鹿しくなりませんか」と笑ってくれたため、主人公もなんだか気が楽になったのだった。
休憩を終え戻った2人は、説明会に参加した東金・土岐から課題を聞き、セミファイナルの準備を始めたのだった。

菩提樹寮に戻った神南メンバーはセミファイナルで弾く曲を選定することにする。
ライバルの至誠館高校はチームワークが特徴、固い絆から生まれるハーモニーが優れた彼ららしい演奏をするであろうと予想する。
そしてこちらも神南らしい演奏で会場の注目をかっさらおうと考え、皆で意見を出し合う。
相談の中で、主人公は東金から「セミファイナルでは星奏学院で演奏したレベルでは勝ち抜けない。セミファイナル必ず勝つために自分の演奏に何が足りないかちゃんと考えろ」と言われてしまう。
主人公は自分の音楽と向き合う必要性を強く考え始めたのだった。

神南メンバーは合宿と称して沖縄に来ていた。
ホテルに着いてビーチに直行、水着になり日暮れまで海で遊ぶ。
翌日は沖縄観光をし、十分に沖縄を楽しんで帰宅した。
主人公はこの2日間全く練習していない。
しかしヴァイオリンを弾いてみると、硬さが取れなめらかな演奏をすることができたのだった。
「1日休んだら指が動かなくなる」と思いこみ必死に練習してきた主人公だが、今の自分には一息入れることも必要だったようだ。
東金や土岐はそれを分かっていて今の時期に合宿として主人公を連れ出してくれたのだった。
主人公はついこの間まではセミファイナルへのプレッシャーから追い込まれ悲壮感が漂っていた。
しかし自分でも気づかないうちに晴れやかな顔になっていたのだった。
まるで憑き物が落ちたように今の自分には自分を見つめ直す余裕が持てており、主人公は沖縄合宿を感謝したのだった。

セミファイナル1日目、今日は星奏学院の出場日だ。
神南メンバーは勝敗の行方を見ようと会場に来ていた。
星奏学院と対戦するのは横浜天音学園だ。
彼らは高校生とは思えないほどの技巧の高い難曲を演奏し、1stヴァイオリンである冥加はヴァイオリンソロ部門にも出場している優勝候補、要注意のライバルだ。
午前の部を勝ち進んだ星奏学院メンバーの前に、応援に駆けつけたオーケストラ部顧問が顔を見せる。
先生の登場に感動する星奏学院メンバー。
先生のためにも勝利するぞと固く誓いあったのだった。

一方主人公たちは休憩を挟み、まもなく始まる午後の部のため客席へ戻ろうとしていた。
その途中、関係者の懇願を振り切り歩いてくる壮年の男性と遭遇する。
係員は彼を東金と呼び、東金と呼ばれたその男性は用意された席が気に食わず勝手に席を移動しているようだ。
東金と言う珍しい苗字に主人公が「東金と親戚か?」と聞くと、なんとあの男性は東金の父だという。
東金の父はこの全国学生音楽コンクールの審査員として参加しているというのだ。
しかし東金の父は神南の演奏日には審査員として入っていない。
彼は一昨年、神南高校のミスがない演奏に自分勝手な理由で0点をつけ、過激すぎて神南の演奏の審査には入っていないのだという。
自分勝手に振る舞う父の姿を見て、東金は「ほっておけ」と冷たい態度をとる。
主人公は午後の部で何か一波乱ありそうな気がして胸騒ぎを覚えた。

星奏学院、天音学園、両者ともに1曲めの演奏が終わり、どちらも高いレベルでの競争となる。
次の星奏学院の2曲目の演奏中、律が急に演奏の手を止めてしまう。
驚く周囲、そんな周りには目もくれず律はステージを降り客席に駆け寄っていく。
そこには胸を抑えて苦しむオーケストラ部顧問の姿があった。
演奏中客席の明かりは落とされて暗くなり、苦しむ顧問に唯一気づいたのが明るいステージにいた律だったのだ。
すぐに顧問は客席から運び出され救急車で病院に運ばれた。
律は係員に言われもう一度演奏しようとステージに戻ろうとすると、東金の父がその必要は無いと止める。
彼はどんな事情があろうとステージを投げ出したことには変わりは無いと、ステージ降り演奏を放棄した律にステージに上がる資格はないと言うのだ。
星奏学院メンバーと周りで見守っていた東金が抗議するが、東金の父は「黙っていろ」と一喝する。
東金の父は律へ「学生のコンクールだからと言って真剣に挑んできた大会でそんなことは甘えだ。たとえ親兄弟が死のうと舞台を降りないのがプロのエンターテイナー。君がもし自分の行いを些細なことだと捉えているのならば、君はステージに立つ演奏者として失格だ」と厳しく告げる。
律は黙っていたが「こんな形で大会出場資格を失うなんて受け入れられない。もう一度聞かせてください」と東金の父に頼む。
そんな律に東金の父は蔑みの目線を送り「所詮は学生だな」と言って立ち去ってしまう。
その後星奏学院はもう一度演奏したが、今までのような精密な美しさを失われ、星奏学院はセミファイナルで敗退してしまった。

セミファイナル2日目、今日は神南高校の対戦日だ。
東金はいつものやる気満々の様子とは違い気だるげな雰囲気だ。
昨日の騒動のことが胸につっかえ気にかけているようだった。
神南高校は午前の部を勝ち残れたが、東金はまだ調子を取り戻さない。
重い空気の神南、そこへ午後の対戦相手である至誠館メンバーがやってくる。
至誠館の八木沢は本調子ではないような東金に、「星奏学院の事は気の毒だと思うが、部員の前で醜態を晒す君には同情できない。どんな心境であろうと自分たちは自分の音楽を貫く。このステージに立つ影にはたくさんの人の願いや夢がある、それを忘れるな」と戦線布告する。
八木沢の挑戦的な言葉を聞き「言いたい放題言いやがって」と言う東金からは先ほどの空気は感じなかった。
「必ず勝つ。星奏学院の分もステージに立ち続けてやる。優勝するのは俺たちだ」といつもの東金に戻ったのだった。

まず1曲めは至誠館高校、練習を積み重ねた精度の高い音の合わせ方で客席は大いに湧く。
「会場にいる全ての観客の心を掴んでいこうぜ」とステージに立った神南高校の演奏、午前の部とはちがい、完全に立ち直した演奏に大きな声援が送られる。
ステージの心をつかんだ神南に、至誠館高校は感心しながらも自分たちも最後の1曲を演奏する。
至誠館高校の演奏からは、負けることができないと言う気迫、この大会に賭ける覚悟が伝わってきた。
しかし神南には勝利を確信している東金がいる。
「俺がお前をファイナルに連れて行ってやる」と自信満々の東金、その後演奏し、神南は宣言通り勝利したのだった。

見事ファイナルへの切符を手に入れた神南だが、東金と土岐はどこか浮かない様子だ。
主人公が事情を聞くと、彼らは至誠館高校の敗退を憂いているようだ。
至誠館高校吹奏楽部は廃部になるかどうかの瀬戸際におり、今回の大会で実績を残さなければ廃部になるかもしれなかった。
2人はそれを知っていて至誠館高校と戦ったのだ。
セミファイナルに向かう気持ちが鈍るかもしれないと主人公には黙っていた。
勝ち進めば他の参加者の夢が消える、これがコンクールで、だからこそ何があっても前に進む覚悟が必要だと主人公は知ったのだった。

神南メンバーが外に出ると、帰り支度をしている至誠館高校の面々と出会う。
彼らは皆泣きはらした目をしていた。
しかし彼らはお互いの演奏をたたえ合い、ファイナルを応援しに行くと約束してくれたのだった。

全国大会ファイナル

今日からファイナルの準備に取り掛かる神南メンバー。
ファイナルが行われるのは26日、東金は20日にあるソロ部門のファイナルにも出場する。
ファイナル出場を喜びながらも、東金はどこか不機嫌だ。
彼は「アンサンブルでは星奏学院と勝負したかった」と悔しく思っていたのだ。
星奏学院は堂々と勝負できたわけじゃない。
演奏を一度中断しただけじゃなく、妙な横槍が入った心理的な影響は大きかったはずだ。
一昨年のリベンジを楽しみにしていたという東金は何か企んでおり、「これで終りにするつもりはない。後でのお楽しみだ」と不敵な笑みを浮かべていた。

練習後の帰り道、主人公は天音学園のアンサンブルメンバーに出会う。
冥加は主人公を鋭くにらみつけ、「ファイナルで競うだけの価値がある演奏ではない。俺の敵には不十分だ」と言い放ち去っていく。
寮に帰ると、帰りが遅かったことを心配していた芹沢に、主人公は天音学園の生徒たちに会ったと伝える。
芹沢は天音学園の演奏データを聞き、彼らは並々からぬ強敵だと知ったという。
彼らは将来音楽家として生きていくと言う将来像をはっきりと描いているプロのような高校生だ。
しかし言われたい放題言われてはこちらも負けられない。
その慢心を砕いてやろうと主人公は闘志を燃やしたのだった。

8月21日、今日はヴァイオリンソロ部門のファイナル、東金と冥加と勝負の日だ。
冥加は海外で数々の受賞歴を誇る実力者で、核の違う演奏を見せつけてくる。
立ちはだかる強敵に、東金は楽しそうに笑いながら「必ず勝利を手にして戻ってくる」と主人公に約束しステージへ上がる。
言葉通り東金は自信満々堂々とした演奏を披露する。
冥加も東金も素晴らしい演奏だった。
どちらが優勝するのか、審査の協議に時間がかかる。
結果発表で1位の名前を呼ばれたのは冥加だった。
両者とも非常に優れた演奏で審査員の間でも両者に優劣をつける事は困難だったが、難曲を弾きこなした技巧を評価し冥加が一歩勝ると判断されたようだ。
東金は残念ながら優勝できなかったが、彼は「アンサンブルでの勝負が楽しみだ」と次に向かってやる気を出していた。

いよいよ今日は全国大会ファイナルの日。
律と約束したファイナルのステージに立つ日だ。
会場は観客や取材記者で超満員、今まで競ってきたライバルたちも会場に来てくれていた。
主人公は、自分たちが今日この舞台に立てるのはたくさんの演奏者たちと競い合い勝ち抜いてきたからだ、と実感する。
「俺たちの後の敗れた多くの参加者の存在忘れることはできない」と東金が言い、神南メンバーは決意をあらたにする。
そこへ天音学園のメンバーが現れ神南メンバーを鼻で笑う。
ファイナル優勝の座をめぐる勝負の火蓋が切って落とされた。

まずは天音学園の演奏だ。
演奏家として常にステージに立ち続ける彼らの演奏は堂々としており、客席は完全に天音学園の空気に飲まれていた。
しかし東金は楽しそうだ。
プレッシャーさえも彼は楽しんでいるのだ。
次に神南高校が演奏する。
技術的には天音学園に劣っている部分もあるが、人の心を強く打つ演奏で客席はわく。
そんな神南をあざ笑うかのように、天音学園は2曲目も圧倒されるほどの迫力演奏をする。
どちらも高いレベルでの競い合いとなる。
東金も土岐も楽しそうだ、芹沢もいつしか挑戦的になっている。
さらなる熱狂を巻き起こすため神南メンバーはステージへ向かった。
神南の2曲目が終わると会場は一気に神南の空気に。
勝負は神南の勝ち、神南は見事優勝と優勝の証である銀のトロフィーを受け取った。

念願の優勝も果たし喜びムードの神南メンバー。
これで夏が終わりかと主人公が寂しく思っていると、東金が「これで終わりだと思うか?」と何か企んでいる様子だ。
彼に「明日その話をする」と言われ、今日はファイナルの祝賀会で楽しむことにした。

神南 vs 星奏 真のファイナル

ファイナルの翌日、東金から「重大発表だ!聞いて驚け!」と堂々の発表がある。
なんと真のファイナルの幕開けだという。
東金は星奏学院とちゃんと競っていないことをあげ、「このままサヨナラと言うわけにはいかない。自分たち自身の手で勝負のステージを作り上げる」と宣言した。
つまり神南高校と星奏学院の、真のファイナルと称した一騎打ち勝負をするという。
東金と神南メンバーは勝負を申し込むため、星奏学院オーケストラ部の元へいき、律は正々堂々勝負を受けて立ったのだった。

ついに神南対星奏での真のファイナルの日だ。
場所は星奏学園の講堂、たくさんの観客が押し寄せていた。
みんな星奏学院と全国の覇者神南高校の勝敗の行方が気になって仕方ないのだ。
演奏会は注目度が高い勝負となっており、主人公は観客の多さに身が引き締まる。
だが「自分たちの演奏をたくさんの人に聞いてもらえるのは嬉しいことだ。集まった人たちに最高の演奏を届けよ」と精一杯心を込めて弾くことを決意する。

まず星奏学院、次に神南高校が演奏する。
ステージに上がる前、主人公はこの夏を思い返す。
スランプから抜け出すために神南に転入し、コンクールに挑んだこの夏はいろんなことがあった。
そんな主人公を認めるように、東金が「リスクを恐れ現状に甘んじて日々を過ごすのは楽だがその生き方に成長はない。神戸に来ることを決意した瞬間スランプからは抜け出していた。成長するためにいっぽ踏み出す勇気を、お前はあの日手に入れていたんだ」と告げる。
彼の言葉を受け取り、主人公は自分の成長の証を見せるため、ステージへ上がり最高の演奏を披露したのだった。

この演奏会には主人公を神南転入を勧めてくれた、ヴァイオリンの先生が見に来てくれていた。
先生は見違えたように楽しそうに演奏する主人公の姿を見て安堵した。
神戸に向かう前の主人公からは想像できないほど輝いていたからだ。
希望に満ちた主人公を見て、先生は「素敵な人たちと出会ったのね」と喜んでくれたのだった。

feat.天音学園ストーリー

はじまり

主人公には1つ年上の如月 律(きさらぎ りつ)と、彼の弟である同い歳の如月 響也(きさらぎ きょうや)という幼馴染がいた。
3人は故郷で一緒にヴァイオリンを弾いて過ごしていたが、律が高校進学を機に故郷を離れるという。
彼はヴァイオリンを学ぶため横浜にある星奏学院に進学し、2人の前から去ってしまった。

律が故郷を離れ1人で横浜に進学して2年がたった。
主人公と響也は同じ地元の高校に進学し、変わらず故郷でヴァイオリンを弾いていた。
主人公は故郷から出たことがない自分、外の世界の音楽を感じていない自分を歯がゆく思っていた。
舞台経験なんてたまにコンクールに出るくらいのもの。
最近では演奏の技術も伸び悩み、陰では才能がないと言われているのを知っており、主人公はヴァイオリンを辞めるか迷っていた。
自分も幼なじみの律のようにこの街を出れば変わるのだろうか、そう思っても一歩踏み出せない日々を送っていた。

そんなある日、主人公の自宅の郵便受けに封筒が届く。
開けるとそこには横浜天音学園(よこはまあまねがくえん)入学案内の文字が。
なんと横浜にある天音学園という高校から、主人公の入学を歓迎する案内が届いたのだ。
横浜天音学園は新設されて日は浅いが、専門的な音楽教育で将来を担う人材の育成に力を入れて、音楽を志す若者に優れた環境を提供している。
音楽を学びたいという者にとっては夢のような学校だ。
主人公と同じく入学案内が届いた響也は「高校2年生の今さら編入してもどうしようもない」とバカにするが、主人公はその地が律の暮らす横浜であること、そして専門的な音楽教育が受けられること、この2つが叶う好条件に胸を高鳴らせていた。

その夜、主人公は昔の記憶を夢で見た。
主人公が小さいころ、コンクールの途中でヴァイオリンの弦が切れて泣いているところに、少年が声をかけてくれたのだ。
その少年が誰だったかは思い出せない。
しかし少年に言われた「ヴァイオリニストなら前に進まなきゃ」という言葉が今の主人公の脳裏に響いたのだった。
目が覚めた主人公は、くよくよ悩んでいた自分から生まれ変わったような気持ちだった。
目の前に舞い降りてきたチャンスを掴んで一歩前へ進むために動き出すことに決めたのだ。
主人公は「立ち止まったらそこで終わり、前に進まなきゃ」と横浜天音学園に転入することを決めた。

転校初日

そこから2ヶ月の時が流れ、主人公は響也と共に横浜の地へ足を踏み入れていた。
あの時不満を言っていた響也は、主人公を心配する主人公の祖父に頼み込まれて一緒に転校してくれたのだ。
2人はさっそく横浜天音学園のビルのようにそびえ立つ校舎を目指す。
ガラス張りの建物に入ると学校とは思えない静かな空間が広がっている。
転入手続きを行うため、2人はまず理事長室を目指し長い廊下を歩き始めた。
廊下を歩いていると、いきなり部屋から泣きじゃくる少年が飛び出してきて主人公にぶつかる。
彼は「オレなんかが天音に憧れて入学したのが間違い、この学校に入っちゃいけなかったんだ」と泣き続け、走り去っていった。
その光景にあっけに取られながらも、2人は理事長室に着いた。

理事長室の重厚な扉を開けると、綺麗な大人の女性が出迎えてくれる。
彼女の名前は御影 諒子(みかげ りょうこ)、この学園の理事の1人だそうだ。
彼女は主人公と響也を歓迎するも、「申し訳ないが、転入手続きに必要な理事長印を使える人が席をはずしている」と謝る。
御影と歓談しながら待っていると、大きな音を立てて扉が開き、1人の背の高い青年が入ってきた。
彼の威圧感に圧倒される主人公と響也。
そんな2人に目を向けて、主人公に気づいた青年は目を見開き「7年ぶりの再会だな」と嘲笑する。
どうやら彼は主人公のことを知っているようだが、主人公には覚えがない。
困惑する主人公たちに、御影から、「彼は冥加 玲士(みょうが れいじ)。この天音学園において理事長権限を持つ者である」と紹介され、理事長印は彼に押してもらう必要があることを知る。
転入するには彼の許可が必要なのだ。
しかし冥加は主人公に「天音に入れるだけの価値があるか試す。ヴァイオリンを弾いてみろ」と言う。
あまりにも不遜な冥加の態度に響也が腹を立て、「入学案内を送ったのはそっちでお前が認める認めないもない!」と入学案内の書類を叩きつける。
しかし冥加はその書類を破り捨て、再度ヴァイオリンを構えるように要求してくる。
言っても聞かないような挑戦的な冥加の言葉に、とりあえず彼を納得させるためと主人公と響也は演奏する。
すると冥加は顔しかめ「その雑音を止めろ!」と怒る。
主人公と響也の演奏は冥加の納得する出来では到底なかったようだ。
「期待した俺が愚かだった。堕ちたその姿を目に入れるのも不愉快だ。二度とその顔を見せるな」と冥加は吐き捨て、主人公たちは転入を拒否されてしまう。
そんな彼に響也は「でかい口たたくほどてめぇはうまいのか?!」と噛みつく。
冥加は響也を鼻で笑い、自らもヴァイオリンを構えて演奏する。
冥加の演奏は圧倒的な実力だった。
主人公と響也とはレベルが違いすぎたのだ。
茫然とする2人、「荷物をまとめて出て行け」と吐き捨てる冥加に理事長から追い出されそうになる。
そこへ御影が仲裁に入る。
7月20日にこの横浜天音学園と、本校である函館天音学園との合同演奏会がある。
彼女は「そこでもう一度主人公と響也にステージで演奏してもらい転入を判断してはどうか」と提案してくれたのだ。
冥加渋るが、主人公は演奏会で演奏させて欲しいと頼み込む。
冥加は主人公のその度胸を買ってくれた。
結果、合同演奏会で十分な演奏ができなければ退学処分にするという話にきまった。
転入日初日、わずか9日後にせまる演奏会に向けて主人公と響也は練習を始めるのであった。

アンサンブルメンバー集め

楽譜を紙飛行機に折って飛ばす天宮

「転校初日にこんなことになるとは…」とため息を吐く主人公と響也。
しかしやるだけやってみようと気合を入れ、響也と別れた主人公はとりあえず学内を散策することにした。
そして屋上にある薔薇庭園へと迷い込む。
主人公が素晴らしい薔薇に囲まれた小道を歩いていると、どこからか紙飛行機が飛んでくる。
主人公が紙飛行機を手に取り開いてみると、それは楽譜だった。
主人公が上を仰ぎ見るとバルコニーにいる青年が楽譜で作った紙飛行機を飛ばしていた。
そこへ響也が現れ、主人公が少し目線をはずしたすきに青年の姿はなくなってしまった。

主人公と響也はアンサンブルメンバーの相談をしながら帰路についていた。
演奏会はアンサンブルとして出るが、主人公と響也は2人ともヴァイオリン、中低音の楽器がほしいという話になる。
響也は天音の生徒に参加してくれないか声をかけてくれたそうだが収穫はゼロ。
興味がない、やる気ない、関わりたくないという人ばかりだったそうだ。
これではアンサンブルのメンバーを見つけるのが大変そうだと2人で肩を落とす。
とにかく演奏曲を決めようということになり、ふと主人公は今日紙飛行機として飛ばされてきた楽譜を思い出す。
取り出してよくよく見てみると、その楽譜はアンサンブル用に編成されている楽譜だった。
2人は運良く手に入ったこの楽曲を今度の演奏会でやる曲に決めたのだった。
この楽曲でヴァイオリンの他に必要なのはチェロとピアノだ。
主人公と響也は残りのメンバーであるチェロ奏者とピアノ奏者を探しつつ、個人練習を始めることにした。

最寄駅を目指して歩いていると、今朝泣きながらぶつかってきた少年と出会う。
彼はこちらに気付くと今朝ぶつかった非礼を謝り、自分は七海 宗介(ななみ そうすけ)、天音学園の一年生でチェロ奏者だと自己紹介してくれた。
タイミング良く出会ったチェロ奏者に主人公と響也は喜ぶ。
そして「自分たちは今日転校してきて今度の演奏会に出る。アンサンブルのメンバーを探している」と打ち明け、七海をアンサンブルに誘う。
しかし七海から「とんでもない、恐れ多い」と断られてしまう。
彼はいわく、理事長からの勧誘で転校してきた2人と奨学生として入学してきた自分は身分違いすぎるというのだ。
すみませんと謝る彼は親切にも2人をマンションまで案内してくれた。
2人がこれから住むのは学園が用意したマンションだ。
ホテルのような豪華な主人公の自室に、興奮した響也は自分の部屋へ向かい、主人公は七海と2人取り残される。
主人公は帰ろうとする七海をもう一度アンサンブルに誘ってみる。
しかし先ほどと同じように彼から「俺のチェロなんてアンサンブルに役に立ちません」と断られてしまう。
彼は自分の演奏が冥加に聞く価値のない雑音だと言われたという。
「俺は天音にいるだけの価値のない人間なんだ」と泣き出してしまう彼に主人公はそっとハンカチを差し出たのだった。

翌日から天音学園での授業が始まった。
教室に入ると、数少ない生徒がすでに席についていた。
天音学園は全校生徒合わせても90人ほどしかいないのだ。
奥の席に響也が座ると、後から来た不良な見た目の青年に「俺の席だ。どけ」と足を踏みつけられてしまう。
2人は一発触発の雰囲気、高圧的な態度の青年に響也も譲らない。
そこへあわてて割って入ってきた七海が、響也を別の席へ促す。
そして七海から、青年は氷渡 貴史(ひど たかふみ)で、氷渡は冥加部長率いる室内楽部の中でアサンブルの正チェリスト、この天音学園で一番のチェリストだと教えられる。
この天音学園では演奏能力こそがすべてでそれこそが唯一絶対の価値をもつ、だからこそ氷渡のあの態度は許されるのというのだ。
七海は「理事長の勧誘で転校してきた主人公たちも頂点に近い選ばれた存在ですよ」とほめそやすが、「自分たちは冥加にも認めてもらえておらず、天音に不要と追い出されそうになっている。演奏会で実力を示せないと即退学だ」という事情を話す。
そんな状況でも頑張るぞと意気込む2人に、七海は「俺もそんな風になれたらな…」とつぶやいたのだった。

主人公は先日立ち寄った屋上庭園で1人で練習していた。
すると主人公の弾くメロディに合わせて突然ピアノ伴奏が聞こえ、知らずに合奏になる。
主人公が音の方へ振り返ると、そこには淡い髪色の優し気な青年がおり、彼にうながされてもう一度最初から合奏をする。
主人公のヴァイオリンと彼のピアノの音が重なり響きあい、美しい風景が見えた気がした。
「今の現象はなんだ?」と驚く主人公に、青年は「あれはマエストロフィールドだ」と教えてくれる。
マエストロフィールドとは音楽が呼び起こした強いイメージ、また光景のこと。
マエストロフィールドで呼び起こされた光景は音楽でしか表せない一つの世界で、音楽の妖精の魔法という人もいるという。
青年は主人公が持っている楽譜に気づく。
楽譜は先日彼が不要になり、紙飛行機にして飛ばしたものだった。
もう一度一緒に演奏してみようと誘ってくる彼はピアノ奏者だ。
主人公が彼をアンサンブルに誘うと、彼はあっさり了承し、自分は天宮 静(あまみや せい)と自己紹介してくれたのだった。

次の日、主人公は必死の形相の七海からアンサンブルに入れてほしいと頼まれる。
彼は「冥加部長に否定されても頑張ってるなんてすごい!俺も先輩たちみたいに強くなりたい」と思い、自分も主人公たちと一緒に演奏したいと思ったというのだ。
ピアノ奏者の天宮、チェロ奏者の七海がアンサンブルに加り、これで演奏会に必要なアンサンブルメンバーが揃ったのだった。

合同演奏会

主人公は御影から話しかけれ、北海道にある本校の函館天音学園の生徒を紹介される。
彼らは研修生として兄妹校である横浜天音学園に滞在し、今度の演奏会にも参加するようだ。
穏やかそうな華奢な見た目のフルート奏者の支倉 宇宙(はせくら そら)、無愛想な表情のチェロ奏者のトーノ(とーの)の2人から自己紹介される。
にこやかに微笑むソラは「演奏会楽しみにしてるね」友好的で、主人公は快く挨拶したのだった。

響也が人に会いに行くというので主人公が着いていくと、そこには2年前に別れた律がいた。
彼はかわらず星奏学院に通っており、主人公は2年ぶりの再会に喜ぶ。
今日は律が響也を呼び出したらしい。
律は主人公の祖父に頼まれ、横浜天音学園に転校した2人の様子を見たかったというのだ。
元気にしていたか様子を伺う律に、響也は「あんたの助けなんてオレ達は必要としてない」と冷たい。
昔から相変わらず仲が悪い兄弟だ。
そんな響也を気にせず、律は「星奏学院も横浜にあって近い。困ったことがあったら手助けするので言ってくれ」と申し出てくれたのだった。

放課後主人公が屋上庭園に立ち寄ると、見慣れない壮年の外国男性がいた。
彼はこの屋上庭園の薔薇園を管理している人物のようだ。
彼は自分のことをアレクセイと紹介し、この美に満ちあふれた庭が好きだ主人公ににこやかに接してくれた。
しかし主人公は「美だけがこの世で唯一不変の価値を持つのだよ」と語ったアレクセイが少し怖く感じてしまったのだった。
そこへ主人公を探しに響也が現れ、2人でその場を立ち去る。
アレクセイは帰っていく2人の後ろ姿を見ながら、「彼は彼女の良き理解者だが、寄り添い支え合い互いの存在をよりどころにしているゆりかごにいる幼年期のようだ。ひとつの鉢に寄せ植えられた薔薇は大輪の花を咲かせることはできない、バラの鉢植えを壊すのは私の仕事でしょうね」と不気味につぶやいたのだった。

アレクセイと会ったその日の夜、主人公は子供の頃の夢を見た。
子供の頃、主人公は自分に声をかけてくれた少年とコンクールで競っていた。
その少年は今日主人公が会ったあのアレクセイにしがみついていたのだ。
アレクセイは少年を「勝てない君に失望した。優勝したらキミの望みをなんでも叶えてあげるといったが、勝ち目はない。君も無理だと気づいているんでしょう?」と突き放す。
そして主人公に向かって「コンクールとはそういうもので、1番になれるものは1人だけ。おめでとう」と祝福し去って行ったのだった。
主人公はアレクセイと子供のころ面識があったことを思い出したのだった。

真夜中の屋上庭園。
庭園には函館天音学園のソラとトーノがいた。
ソラは不愛想な顔で「だるい」とだらけているし、逆にトーノは気のいい青年の表情だ。
彼らが主人公たちに見せたのはただの猫被りで、本性はこちらだったのだ。
実は彼らが横浜に来た目的は、研修や演奏会だけではなかった。
若い音楽家として日々成長している生徒たちが胸に星を宿している、マエストロフィールドの種を集めるためなのだ。
ソラは小瓶に入ってきらきら光る種、またそのかけらを満足そうにかかげ、「これだけ集まるなんていい狩場だな」と不適に笑った。

主人公と響也が登校すると、響也にのみ御影が声をかける。
彼女いわく「理事長があなたに会いたいと言っている」というのだ。
響也は戸惑いながらも会う約束を取り付けてしまう。
放課後、響也は御影と約束した屋上庭園へ向かう。
屋上庭園には先日の外国人、アレクセイが薔薇の手入れをしていた。
彼はこの横浜天音の理事長で世界的指揮者のアレクセイ・ジューコフだったのだ。
アレクセイは薔薇の蕾を切りながら響也に語りだす。
彼がしているのは摘心といって、薔薇に栄養をいきわたらせ美しく咲かせるために間引いていく方法だ。
「人の手が入ってこそ生まれる美の結晶がある。君にも主人公にも最上の美に至る芽が眠っているが、このまま花開いても美しくはならない。キミの中に眠る才能を開花させるか、キミを繋ぎとめる枷とともに平凡な未来を進むのか、キミは決断しなくてはならない」
そう言ったアレクセイは、響也に対し「キミが音楽の高みを目指すなら兄のヴァイオリンの音に縛られたままでは飛翔できない。彼女とともに同じ鉢で咲くために、寄せ植えの薔薇のように短小な花をつけるのを望むのか?」厳しい言葉を投げかける。
アレクセイの言葉に響也は動揺する。
響也はずっと兄である律に対してコンプレックスを感じ生きてきたからだ。
そして響也は主人公と一緒にいるため、彼も自分の殻を破り一歩を踏み出せない1人だったのだ。
「私はキミのうちに秘めた願いを叶えられるよ」と言って近づいたアレクセイは、響也のマエストロフィールドの種を奪ってしまう。
響也の音楽家としての力が粉々に壊されてしまった瞬間だった。

今日は天音学園の合同演奏会だ。
今日の演奏で主人公と響也の退学が決まる。
各自準備を始めるが、主人公はどこか調子が悪そうな響也を心配していた。
彼は調弦をすませ弾いてみても自分の演奏にしっくりこないことに焦っていた。
昨日アレクセイにマエストロフィールドの種を奪われ、自分の演奏家としての演奏ができなくなってしまったのだ。
種を失った演奏者は自分の演奏の核を失い、自分のもつ固有のマエストロフィールドを失う。
それは自分のアイデンティティを失うのと一緒だ。
主人公の心配と響也の焦りをおいて、演奏会が始まってしまう。

まずは冥加、天宮、氷渡のアンサンブルの演奏。
圧倒的な実力に観客は拍手喝采だ。
次は函館天音学園、ソラ、トーノ率いるアンサンブルの演奏だ。
一曲目ということもあり彼らが手を抜いた演奏だったが十分レベルが高い演奏だった。

ついに、主人公、響也、七海、天宮のアンサンブルの番がきた。
周りのレベルの高さに不安になる主人公や七海に引き換え、天宮は動揺などひとかけらもみせていない。
彼はステージでの演奏など日常と同じで緊張感など微塵もしないというのだ。
そんな天宮と話していると主人公の緊張もいつのまにかほぐれ、落ち着きながらステージへ上がり演奏を披露できた。
しかし響也はいつもの自分の音が出せずに焦った。
指先に鉛が詰まったように動かないのだ。
彼は「なんでいつもどおりに弾けない。こんなのオレの音じゃない」と混乱する。
響也の音がおかしいことは主人公もアンサンブルメンバーの皆も気づいていた。

函館天音学園、横浜天音学園の二曲目の演奏が終わり、合同演奏会が終了となった。
主人公たちのアンサンブル演奏で二曲目も響也はうまく演奏できなかった。
気まずい雰囲気の主人公たちの元に御影と冥加が来て、「全国学生音楽コンクールに出場するアンサンブルメンバーが決まった」と告げる。
この演奏会はコンクールへのアンサンブル部門への参加メンバー選定も兼ねていたのだ。
冥加が告げた参加メンバーは、冥加、天宮、氷渡、七海、主人公、5名のみ。
つまり響也のみ退学を勧告されたのだ。
主人公は冥加に、響也にもう一度チャンスを欲しいと頼みこむ。
しかし響也は自分の演奏のズタボロさを認め、自分は天音に残れる理由がないといって自ら退学を申し出る。
追いかけようとする主人公を響也は突き放し、主人公は気持ちを整理できないまま演奏会の幕は閉じたのだった。

響也との別れ

昨夜から響也に連絡がつかない。
どこでどうしているのか、心配を募らせる主人公。
そんな主人公のもとに、全国学生音楽コンクール東日本大会の説明会のため会場に来るようにと連絡が来る。
会場に向かう前、同じ階の響也の部屋を尋ねるがいくら待っても返答はない。
部屋にいるかどうかも分からなかった。
主人公は肩を落としながら会場へ向かう。

会場にいた七海も響也のことを心配していた。
説明会が終わりコンクール用の楽譜を受け取り解散となったが、主人公の気分は浮かばない。
主人公がぼーっと響也のことを考えていると、律から響也のことで呼び出されて向かう。

律は主人公に会うとすぐ響也のことを問いただした。
律は昨日の夜、普段と様子が違う響也を見つけ、星奏学院の学生寮であり律が今住んでいる菩提樹寮(りんでんほーる)に連れ帰ったという。
響也は「天音学園を退学になり、自分は家に帰るつもりだ」と言ってそれから口を閉ざしたままだという。
「一体なにがあった?」と聞く律に、主人公は先日の合同演奏会での響也の様子を話し「急に自分の演奏ができなくなってしまったようだ」と相談する。
律は一度の演奏会の結果で生徒を退学にするなんてと怒り、それであいつは憔悴していたんだなと納得する。
主人公は「響也に会って彼を励ましたい」と頼むが、律から今はそっとしておいてやってくれと頼まれる。
響也が受けたショックは相当大きいようだ。
律でさえ響也があそこまで疲弊した姿は初めて見たと言う。
主人公は律から「冥加と話がしたい。横浜天音学園へ連れて行ってくれ」と頼まれ、共に冥加のいる天音学園の理事長室へ向かう。

理事長室には冥加がおり、冥加は国内の同年代最高ランクの演奏者である律のことを知っていた。
「要件は?」と尋ねる冥加に、律は「昨日退学になった如月響也の処遇について確認したい、退学ということに間違いないな?」と確認する。
冥加は「響也の退学を取り消すつもりはない」とはっきり断言する。
冥加は続けて響也を馬鹿にするが、律は「響也はいずれオレを超えるヴァイオリニストになる。響也は星奏学院にいる。全国大会のファイナル、そのステージ上でお前は自分の見下したヴァイオリニスト如月響也と競うことになるぞ」と宣言する。
弟のため宣戦布告した律、それを告げるともう用はないとばかりに立ち去ってしまった。

翌日から主人公は響也のいない生活が始まった。
登校時も授業中も響也がいない学校生活に、主人公はとても心細く寂しくなってしまう。
帰宅しマンションに着くと荷物を取りに来た響也と鉢合わせする。
先日から顔も見れていなかったため再会を喜ぶ主人公だが、響也は主人公を拒絶する。
彼は荷物をまとめて横浜を出るというのだ。
律は星奏学院に編入させると言っていたが、響也は天音学園を退学になったことにプライドが深く傷ついていた。
響也は律から星奏学院のオーケストラ部へ入るよう誘われているが、まだ気持ちを切り替えられないのだ。
主人公は何も言わずただ彼の話を聞きうなずく。
響也は苦し気に話し続ける。
「ヴァイオリンを続けるべきかも悩んでる。この間の演奏会で自分の音が出せず、あの時のことを思い出すと叫び出したくなる。このままヴァイオリンをつづけていても意味がないかも」
しかし主人公は響也がヴァイオリンを簡単に辞めないと信じていた。
情けない顔の響也に、主人公は先日の律の理事長室での啖呵の言葉を伝える。
響也は律の言葉に驚き、信じてくれている律のためもう一度頑張ることを決めたようだ。
「俺は星奏学院オーケストラ部でコンクールに出る。冥加に首を洗って待ってろと伝えてくれ」と少しだけ笑ってくれた。
星奏学院に入学したら響也は主人公のライバルだが、それでも大切な存在だ。
主人公は寂しくなるが天音学園で頑張ることを告げると、響也は「もう1人でも大丈夫だな」と笑ってくれた。
そして響也から「アレクセイジューコフに気をつけろ、あいつは悪魔だ」と忠告されたのだった。

函館天音学園へ

函館で観光を楽しむ天音学園メンバー

Konpeitou_1m4
Konpeitou_1m4
@Konpeitou_1m4

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