ルックバック(藤本タツキ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ルックバック』とは、『ファイアパンチ』、『チェンソーマン』で知られる藤本タツキによる、少年ジャンププラスにて2021年7月19日に公開された読切漫画である。
小学生の藤野歩は、自作の4コマ漫画を学級新聞に載せてもらうのが趣味だった。しかしある時、引きこもりの京本という同級生の圧倒的画力に激しい衝撃と劣等感を抱く。努力してなお画力で勝てないと挫折する藤野だったが、その京本が自身の漫画の大ファンだと知って有頂天になる。二人はコンビで漫画家を目指すも、その道は次第にすれ違い、断絶していく。

『ルックバック』の概要

『ルックバック』とは、『ファイアパンチ』、『チェンソーマン』などの人気作品で知られる藤本タツキによる、少年ジャンププラスにて2021年7月19日に公開された読切漫画である。
143ページという非常にボリュームのある内容ながら、その洗練された内容で公開されるや大きな反響を呼んだ。ツイッターでは本作を絶賛する声が相次ぎ、藤本タツキのクリエイターとしての才能に同業の漫画家たちも次々に驚嘆。公開されたその当日中にはビュー数が200万を超え、国内外の注目を集めている。2021年9月3日には、単行本の発売が決定している。

小学生の藤野歩(ふじの)は、自作の4コマ漫画を学級新聞に載せてもらうのが趣味だった。クラスメイトからの評判も良く、「自分には漫画家としての才能がある」と得意げになっていたが、ある時隣のクラスの引きこもり・京本(きょうもと)が描いた精密な漫画に激しい衝撃と劣等感を抱く。努力してなお「画力で京本に勝てない」と挫折する藤野だったが、その京本が自身の漫画の大ファンだと知って有頂天になる。やがて二人はコンビで漫画家を描くようになり、何本もの奨励賞に恵まれるも、その道は次第にすれ違い、ついには“通り魔による京本の死”という形で断絶する。自分との出会いが京本の死を招いたと後悔する藤野だったが、「京本を救いたい」という彼女の想いが、不思議で優しいささやかな奇跡を起こす。

『ルックバック』のあらすじ・ストーリー

学級新聞の人気作家

学級新聞に4コマ漫画を載せて得意になっていた藤野(左上)は、小学生離れした京本の画力に度肝を抜かれる。

小学四年生の藤野歩は、スポーツ万能で友達も多いクラスの人気者。そんな彼女が去年から熱中しているのが、学級新聞に自作の4コマ漫画を載せてもらうことだった。
毎回毎回、起承転結をきちんと考えたギャグ漫画。クラスメイトたちの評判も良く、藤野は「自分には漫画を描く才能がある」と得意になっていた。

そんなある日、藤野は担任から意外なことを提案される。隣のクラスの引きこもりの生徒・京本が、自分の4コマ漫画も学級新聞に載せてほしいと言い出したというのだ。学校に顔も出さないようなヤツにおもしろいものが描けるのかと嘲笑する藤野だったが、実際に学級新聞に載った彼女の漫画を見て驚愕する。京本の漫画は、プロの漫画家と見紛うような精密な風景画で、画力という点で明らかに藤野の漫画の遥か先を行っていた。クラスメイトたちも口々に「藤野より上手い」と絶賛し、藤野は“同い年で自分より絵の上手な人物”の存在を初めて知ることとなる。

屈辱と劣等感に苛まれた藤野は、京本を超える画力を欲し、猛然と絵の練習に励む。“クラスの人気者”の看板を投げ捨て、毎日毎日スケッチに没頭。その豹変ぶりに友人たちは困惑し、全てを絵の練習に捧げた結果成績が下がって両親からも心配されるようになる。
そんな日々を続けて六年生になるも、未だ藤野の画力は四年生の頃の京本のレベルにも達していなかった。クラスの友人からは「中学に行っても絵の練習を続けると、オタクっぽいと思われてしまう」と案じられ、姉からは「両親も心配してるし、自分と一緒に空手をやろう」と誘われ、藤野はついに“自分の才能では画力で京本に勝てない”と判断。絵の練習に使っていたあらゆる道具を捨てて、筆を折る(=創作活動をやめる)ことを決意する。

京本と“藤野先生”

画力で勝てないと思い知らされた京本(1コマ目)が、自分の漫画の熱狂的なファンであることを知り、藤野は自尊心を刺激されていく。

そして迎えた小学校の卒業式。藤野は教師から「京本に卒業証書を届けてほしい」と頼まれ、嫌々ながらも彼女の家に向かう。インターホンを押しても返事が無く、鍵の開いていた家に入った藤野は、人の気配を察してとある部屋の前へと向かう。京本が引きこもるその部屋の前には、藤野が二年間の間に描き溜めた量の十倍以上にもなるだろう大量のスケッチブックが積まれていた。自分より遥かに才能のある京本が、自分の何倍もの絵の練習を重ねていたことを知り、藤野は激しく劣等感を刺激される。思わずその場にあった紙に“(自分の才能を超える同級生なんて見たくないから)出てこないで”、“(文句の一つも言いたいから)出てこい”と相反する想いを即興で漫画に描く。

藤野がうっかり落としてしまったその漫画は、ドアの隙間から京本の部屋へと入り込む。「見られたくない相手に見られた」と、卒業証書だけその場に置いて藤野が慌てて家を出ると、それを追って京本も飛び出してくる。京本は藤野のことを“藤野先生”と呼び、学級新聞に彼女が載せる4コマ漫画の大ファンであると打ち明ける。
藤野は驚くも、自分より遥かに上の画力を持つ京本から本気の敬意と憧憬を向けられて、その顔には次第に隠し切れない喜色が広がっていく。「藤野先生は漫画の天才」だと京本に全力で褒めちぎられ、サインを欲しがる彼女の半纏の背中に、藤野は乞われるまま自分の名前を書き込む。ややあって「どうして4コマ漫画を描かなくなったのか」と京本に問われた藤野は、咄嗟に「漫画の賞に応募する作品に集中するためだ」と言葉を返す。

“藤野が本気で漫画家を目指している”という話をすっかり信じ込んだ京本は、ぜひ原稿を見せてほしいと言い出す。藤野はそれに気安く応じると、雨が降ってきたことを口実に彼女の家の前から去っていく。
帰路を歩く中、藤野の歩調は徐々に弾んでいき、ついには雨の中で踊り出す。自分に挫折を味わわせた、勝てないと思った相手が、あれほどまでに自分の才能を認めて絶賛してくれていたのだ。自宅に辿り着くなり、藤野はしまっていた画材道具を引っ張り出し、漫画のネームを描き出すのだった。

藤野キョウ

応募した漫画で獲得した賞金を使い、藤野は相変わらず引きこもっている京本を街に連れ出す。

中学生に上がった藤野は、京本と一緒に応募用の漫画を作るようになっていた。読切用の45ページの漫画はなかなか仕上がらなかったものの、二人は辛抱強く作業を進め、自分たちのアイデアを形にしていく。一年がかりで完成したそれを出版社に持っていくと、二人の漫画は「中学生が描いたとは思えない」と大絶賛を受け、準入選という快挙を果たす。
賞金を受け取った藤野は、それを京本と分け合った上で、「一緒に遊びに出掛けよう」と彼女を街に誘う。相変わらず引きこもり生活を続けていた京本だったが、藤野の誘いを断れず、二人はごく普通の友人のように都会ではしゃぎ回る。映画を見て、クレープを食べて、ショッピングに興じる。人と会うのが怖くて学校にも行けなくなった京本は、「藤野のお陰で部屋から出ることができた」と、彼女に改めて感謝を伝える。

その後藤野と京本は、“藤野キョウ”という合同ペンネームを使って、読切漫画を描いては投稿する日々を送る。京本がその才能に惚れこんだ藤野がキャラクターやストーリーを構成し、藤野が「敵わない」と認めた京本がその高い画力で背景を担当する。二人がそれぞれに得意分野で力を発揮した漫画は、いずれもが高い評価を受け、藤野が高校を卒業する頃には「連載を持たないか」という話まで持ち掛けられるのだった。
しかし、ここで京本が「美術の大学に行きたい」と言い出し、これ以上藤野の執筆活動を手伝うことはできないと報告。藤野は驚き、なんとか京本を翻意させようとするも、「もっと絵がうまくなりたい」という彼女の決意は固く失敗に終わる。ずっと続くかと思われた藤野と京本の関係は、藤野の漫画家デビューと前後して不意に終わってしまうのだった。

美術大学の惨劇

京本が通う美術大学で通り魔による殺人事件が起きたと聞き、信じられない思いでテレビを見詰める藤野。

その後藤野は漫画家として正式にデビューし、今まで京本に任せていた背景もアシスタントに描かせることで対応、順調に人気作家への道を歩いていく。一方の京本は念願の美術大学に通い始め、その画力にさらに磨きをかけていく。
藤野の漫画が人気を博し、アニメ化の話が持ち上がった頃、作業中にテレビをつけていた藤野の目に驚愕のニュースが飛び込む。京本の通う大学に通り魔が侵入し、何人もの生徒が刺し殺されたというのだ。慌てふためいて京本に連絡するも応答はなく、必死に情報を集める中で、藤野はかつて京本と交わした何気ない会話を思い出す。

二人で応募用の漫画を描いていた頃、藤野は京本に「もし連載が取れたら」と前置きして子供らしい夢に満ちた話をしていた。自分の筆の遅さでは連載漫画に対応できるか不安だという京本に、藤野は「画力が上がれば描くスピードも上がる」と気軽に助言する。京本はそれを信じ、もっと絵がうまくなることを望むようになったのである。
通り魔による犠牲者は十二人にも及び、その中には京本の名前もあった。無二の親友を、誰より頼りにしていた相棒を、自分の漫画の最大の理解者だった京本を永遠に失ったことに、藤野はただ打ちのめされる。

「私のせいだ」

「私が漫画を描いたせいで、京本は死んでしまった」。最大の理解者を失った藤野は、絶望と後悔に打ちのめされる。

人気絶頂の連載漫画を休載し、藤野は京本の葬儀に向かう。なんとなしに彼女の家へ、その部屋の前へと入り込んだ藤野は、自分と京本が顔を合わせるきっかけとなった“出てこないで”、“出てこい”と描かれた4コマ漫画をそこに見つけ、愕然とした想いで「自分のせいだ」とつぶやく。
自分が「画力が上がれば描くスピードも上がる」なんて言わなければ、京本は美術大学には行かなかった。自分が部屋から連れ出さなければ、通り魔に殺されるようなことはなかった。いや、そもそも自分が漫画を描かなければ、彼女はきっと今も生きていたはずだ。

どうして自分は漫画なんて描いてしまったのか。どうして漫画なんて描こうと思ってしまったのか。絶望と後悔に打ちのめされ、藤野は4コマ漫画をバラバラに千切り、その場に投げ捨てて崩れ落ちる。
その4コマ漫画の、“出てこないで”と描かれた最初のコマは、かつて二人が出会った時のように、ドアの下から京本の部屋へと入り込んだ。

ヒーロー見参

夢か幻か、平行世界の物語か。藤野の破いた漫画の1コマは、“小学生の頃の京本”の部屋に入り込む。

時間を逆流したのか、平行世界に送られたのか、それとも藤野の願望なのか。その“出てこないで”というコマを受け取ったのは、引きこもりのまま小学校を卒業したばかりの頃の京本だった。突然自分の部屋に入り込んだそのコマを不思議に思う京本だったが、そこにちょうど卒業証書を届けに来た藤野がやってくる。
この不思議なコマはなんなのか、いきなりやってきた知らない女の子に応答した方がいいのか。少し悩んで、コマに描かれている言葉に従って京本がだんまりを決め込むと、藤野は卒業証書を玄関に置いて引き上げていった。

その後も京本は趣味の絵を描き続けながら引きこもり生活を続け、「もっと絵がうまくなりたい」との想いから美術大学への入学を目指す。思う存分絵の練習を重ねる京本だったが、ある時大学に侵入してきた通り魔に襲われる。逃げ場を失い、もはや万事休すと思われたその時、一人の女性が通り魔を蹴り飛ばす。それは小学校時代にニアミスを起こすも、運命が交わらないまま別れた藤野だった。姉の勧めで空手の修行を続けていた藤野は、武器を持った通り魔が大学に入っていくのを見て、咄嗟にこれを取り押さえようとしたのだった。

勢いよく蹴り過ぎて足を折る重傷を負うも、藤野は無事に通り魔を制圧。一人の死者も出すことなく、事件は無事に解決する。病院へと搬送されていく藤野に、京本は助けてくれたことへの感謝と共に「何かお礼をさせてほしい」と訴え、彼女と連絡先を交換する。
ここでようやく、目の前の女性が小学生だった頃にその漫画の才能に惚れ込んだ藤野であることに気付き、京本は驚愕。それを聞いて不思議な縁だと感心する藤野に、どうして漫画をやめてしまったのかと尋ねる。すると藤野は「最近また描き始めた」と自慢げに応え、連載を勝ち取れたらアシスタントになってほしいと冗談めかして口にする。

自分が心底憧れた藤野に会えたこと。その藤野に助けてもらったこと。またあの才能が蘇ること。それを近くで手伝ってほしいと、光栄にも程があることを頼まれたこと。京本はスキップするようにしながら自宅に戻り、かつて学級新聞に載せられていた藤野の4コマ漫画を読み直しながら、自身も4コマ漫画を描き始める。
完成したそれは風に煽られ、慌てる京本の前で、彼女の部屋の扉の下から廊下へと入り込んでいった。

“背中を見て”

京本の、読者の喜ぶ顔が見たいから。それが自分が漫画を描き続けた理由であることを、藤野は思い出す。

YAMAKUZIRA
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@YAMAKUZIRA

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