やたもも(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『やたもも』は、『ハッピークソライフ』や『カラーレシピ』などでも有名な漫画家・はらだによるコメディBL漫画である。2014年から2017年ににかけて『Qpano』で連載され、単行本化もした。単行本は全3巻。
生活能力のないビッチ・モモとその彼氏・八田(やた)ちゃんが、モモの過去に起因するトラブルを解決しながら仲を深めていく様子を描いている。ドラマCD化もされており、BLファンから根強い人気を誇る名作である。

『やたもも』の概要

『やたもも』は、『ハッピークソライフ』や『カラーレシピ』などでも有名な漫画家・はらだによるコメディBL漫画である。レーベルは竹書房のバンブーコミックス Qpaコレクション。毎月24日に発売される電子BL誌『Qpano』に掲載され、2014年から2017年にかけて連載。単行本全3巻が刊行された。
主人公は生活能力ゼロなうえに、誰にでも股を開くようなビッチでろくでなしの24歳、モモ。彼とその恋人である八田ちゃんを中心としてストーリーが展開していく、コメディタッチでありながら人間関係を鋭く描写するBL漫画である。

『やたもも』で特徴的なのは、過激すぎる性行為シーンである。BL漫画ではメジャーになりつつはあるが、激しく官能的な性行為シーンは特筆すべき見どころとなる。また、肉感あふれる性行為とは正反対に、克明に描かれた人間模様や心理描写にも定評がある。真正のろくでなしであるかのように描かれるモモだが、その生い立ちや過去は想像以上の重苦しさと切なさに溢れている。第2巻、第3巻ではモモをそんな過去から救い出すべく奮闘する八田と、ひたむきにモモと向き合おうとする姿によって心を徐々に動かされるようになったモモの姿がまっすぐに描かれた。初見時はエロコメディに近い印象を受けるが、読後はハートフルかつディープなヒューマンドラマを見たかのような充足感を得ることができる。作者のはらだは、この作品について「基本ギャグエロに、ちょこっとだけシリアスを添えマヨネーズ程度にのっけました」と語っている。絶妙なバランスで明暗が描かれていることも、読者をこの作品に引き込んでしまう魅力の一つである。

また、豪華キャストによるドラマCD化もされている。2015年に1作目、2019年に2,3作目が発売。オカン気質でモモを放っておけない八田ちゃんを小野友樹、社会不適合者まっしぐらのビッチ・モモを下野紘が演じた。他、彼らの隣人である栗田を阪口大助、モモの元パトロンである須田を安元洋貴が演じるなど、実力派声優による聴きごたえのある作品となっている。ファンからの評価も高く、こちらも『やたもも』を語るうえで外せない要素の一つである。

『やたもも』のあらすじ・ストーリー

モモと八田の出会い

公衆トイレで性行為後の処理をしていたモモ(右)とランニング中の八田(左)。これが運命の出会いだった。

物語は、深夜の公衆トイレでモモと八田が出会うところから始まる。それまでモモを養っていたパトロンが結婚してしまい、路頭に迷ってしまったモモ。麻雀に勝てばお金をもらい、負ければ性処理をするというゆがんだ生活を送っていた。その日もモモは麻雀に負け、公衆トイレで行為の後処理中。そんなときにトイレに入ってきたのが、ランニング中だった八田であった。持ち前のお節介ぶりを発揮し、ただれた生活を送るモモにこんこんと説教をする八田。見ず知らずのモモに寒そうだからと上着を貸し、そのうえ「一泊くらいなら泊めてやるから」と住所を教えてしまう。あまりにもお人よしすぎるその振る舞いから、モモに「捨てられた動物ひろってきて偽善者呼ばわりされるタイプ」と言わしめる八田。しかし、その出会いこそがモモを大きく変える、運命の出会いだったのだ。その翌日もこりずに雀荘に向かうモモだが、そこで彼はイカサマで性処理をするように仕向けられていた事実を知ってしまう。行き場をなくしたモモが頼れるのは、昨日お節介を焼いてきた八田しかいなかったのであった。

家の前に座り込んでいたモモを家に上げる八田。料理をふるまったり風呂を貸したりとけなげにお世話をする。一泊だけという約束だったが、ストレートに感情を表現する素直なモモに可愛さを感じてしまうように。「一泊で帰すのかわいそうかな」というセリフがすべてを物語っている。そしてその独り言を聞いていたモモは、「なんでもするから」と八田の家に住まわせてくれと頼む。「変態なことでもいいから」と性処理を担うことをにおわし、そのまま八田と関係を持ってしまう。しかし、八田は翌朝まで休憩なしで性行為ができるほどの絶倫だった。モモは馴染みのホームレスのおっちゃんに「八田ちゃんが絶倫すぎて身体がもたない」と相談。「最初に自慰行為をしてもらって、性欲が落ち着いてからモモと性行為をするようにお願いすればいい」というアドバイスをもらった。その作戦を決行するまではよかったが、「見られると興奮する?」などモモがちょっかいをかけたことで失敗、結局朝まで付き合わされるのだった。このように身体の関係から始まった2人だったが、同居するうちになし崩し的に恋人関係に。八田はモモに何度も「可愛い」と伝えるぞっこんぶりで、モモも飄々とした態度は崩さないながらも八田に信頼をおくようになった。

モモの元パトロン・須田との再会

互いに敵視しあう須田(左)と八田(右)。

同居生活がはじまり、まっすぐでお人よしな八田に影響を受けたモモはアルバイトを始める決意をする。しかし、アルバイト先のオーナーは偶然にも、モモのパトロンだった須田という男。母親に見捨てられたモモを自宅に置き、おもちゃとして扱っていた。しかし、あることがきっかけでモモは須田の家を去り、2人のいびつな関係は終了したのだった。それでもモモを忘れられない須田は、八田に突っかかったりモモを眠らせ自宅に連れ帰り、レイプしたりと力技でモモを取り返そうとする。「今の奴にもただの同情で飼ってもらってるだけだろ」、「一人じゃ生きていけないくせに」と心ない言葉を浴びせ、時には張り手など暴力をふるいながらモモを無理やり犯す須田。すべてはモモを再び手に入れるためだったが、八田に出会って変わったモモを繋ぎとめることはできなかった。戻ってくるよう伝えるが、「俺には八田ちゃんがいる」、「須田にはもう頼らない」とモモにきっぱり断られ、須田はモモが帰ってこないことを悟り、解放することに。無理やり行われた性行為でボロボロになったモモは、心配して須田のマンションを探し出した八田に保護される。ひどい目にあったモモの代わりに泣く八田を目の当たりにして、モモは須田との過去について話すことを決意した。

親に見捨てられたモモは、どんな変態じみたプレイでも受け入れる代わりに須田の家に住むようになった。しかしある日、性行為の後処理とモモの世話をするために雇われた家政婦がやってくる。表情一つ変えずに業務をこなす家政婦だったが、須田との間に子どもができてしまう。それでもなおモモを手元に置こうとしていた須田だったが、モモは須田の妻となる家政婦に「須田をください」と涙ながらに頼まれ、モモは須田のもとを去るしかなかった。しかし結局須田は妻にも愛想を尽かされ別居状態に。人知れず孤独を抱えていた須田は、モモを忘れられずに上記のような蛮行に及んだのだった。

モモの母親、過去、そして和解

自身の母親にもかかわらず、反抗的な態度のモモ。その理由はモモの壮絶な生い立ちにあった。

自立を目指して八田の家を出て、一人暮らしをはじめたモモ。「モモの喘ぎ声がうるさすぎる」というきっかけから小説家志望の隣人・栗田とも仲良くなり、充実した日々を送っていた。そんなある日、八田の自宅に一人の女性が訪れる。モモの母親と名乗る女性は、結婚を予定している男性の都合で海外移住するという。そして、その移住を前にモモが持ち去った指輪を返して欲しいと残してその場を後にするのだった。気丈に振舞うが、2人っきりで会うことに不安そうなモモ。そんなモモを気遣い、約束の席に八田と栗田も同席することに。当日もいつも通りだったモモだが、母親があらわれた瞬間空気は一変。激しくぶつかってしまう。また、八田と栗田がいる前にもかかわらず、モモすらも知らなかった自らの出生に関する衝撃の事実を聞いてしまうことになる。実はモモはの母親は過去に男にレイプされており、その男との間にできた子どもがモモなのだ。母親はその事実にずっと苦しんでいた。さらに母親の彼氏はモモに性的行為を迫るような男ばかりで、モモは幼少期からゆがんだ倫理観と状況にさらされていたのであった。

八田に優しく抱きしめられ、やっと本心をさらけ出すことができたモモ。

帰宅後も普段通りにふるまい、いつものように性行為に持ち込もうとするモモ。しかし、八田の「我慢して笑うのやめろよ」という一言を受け、やっと涙を見せる。本音を絞り出すように訴えかけるモモ。いつもへらへら笑っていたのは、自分がこれ以上傷つかないようにという防衛本能からくるものだったのだ。苦しい胸の内を明かしたモモだったが、八田の献身的な支えによって辛い夜を乗り越える。そして、栗田と八田によって、モモとモモの母親の関係が大きく変わるきっかけが作られたのだった。

栗田の勤務先である書店に偶然立ち寄ったモモの母親。「贖罪」や「許し」などがテーマの本を買い込む姿に居ても立ってもいられなくなった栗田は、八田とともに母親から話を聞くことに。そこで母親が抱える、レイプやモモを産み育てた過去に対する苦しみと後悔、探している指輪についてが語られる。

レイプされたにもかかわらず周囲から心ない言葉を浴びせられ、一人ぼっちでモモを生んだ彼女。苦悩しながらも育てようとするが、当時の彼氏がモモに性的暴行をしたことが原因となり関係が一変。激怒した母親は、わざとモモに男の相手をさせてお金を得るという行為を繰り返した。修復不可能なほどに冷え切った関係だったが、モモは一度だけ稼いだお金を使って母親に指輪をプレゼントしたことがあった。結局指輪は一度も使われることなく、そのまま疎遠になってしまった2人。母親は海外移住を前に、罪悪感から逃れるため、そしてつらい過去に踏ん切りをつけるためにモモから贈られた指輪を探しているのだった。

思わぬ告白を受けた2人は、それをモモに報告することに。栗田が機転をきかせて、ボイスレコーダーにやり取りを録音していたのだ。栗田からボイスレコーダーを渡され母親の過去や苦悩を知ったモモは、八田と共に指輪探しに乗り出す。指輪の行方を忘れていたモモは、指輪を売ろうと持ち出したが、大した金額にならないと須田の家に置きっぱなしにしていたことを思い出す。もう会うこともないと思っていた須田の家に乗り込み、やっとの思いで指輪を探しだしたモモと八田。海外へと旅立つ直前の母親に渡しに行く。これまでの冷戦状態が嘘のように穏やかに会話を交わすことができた二人。「小さくて指に入らなかった」と愛おしそうに指輪を見つめる母親の告白に、モモの肩の力も抜けていく。「アンタ、幸せなのね」と投げかける母親とぶっきらぼうだが肯定の言葉を返したモモは、遺恨を晴らしすっきりした表情で別れを告げることができたのであった。

感動的なラスト

自身の過去や内面までさらけ出し、心の奥深くまで繋がることができたモモと八田。平穏な毎日を送るなかで、栗田の小説の書籍化が決まる。異世界モノのファンタジー小説を書いていた栗田だが、最初に決まった作品は、モモと八田をモデルにしたボーイズラブ小説『ちぎられたロマンス』。ファンタジー小説も書籍化の話が進んでいるという。また、モモと仲の良いホームレスのおっちゃんや須田は妻とよりを戻し、嬉しい知らせが続く。モモと八田をはじめ、それぞれのキャラクターが自らの幸せを手にしたところで物語は幕を閉じる。

『やたもも』の登場人物・キャラクター

モモ

『やたもも』の主人公。24歳。見た目と軽薄な振る舞いから、初見時は八田や栗田はじめいろんな人から年下に見られる。定職にも就かず、幼い頃から母親の彼氏に性的行為を強要され、お金を得てきた。そのせいで母親とも疎遠になり、身体を売ることで食いつないでいた。偶然出会った八田に助けられ、以降付き合うことに。生活能力がゼロなろくでなしだったが、金と身体だけだったこれまでのパトロンとは違ってモモをきちんと見てくれる八田のために、自立しようとアルバイトや一人暮らしを始める。いつもへらへら笑っているが、八田や隣人の栗田らに助けられ、徐々に内面の深い部分も見せるようになっていった。

八田

野中穂波
野中穂波
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