いま、会いにゆきます(いまあい)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『いま、会いにゆきます』とは、市川拓司による恋愛ファンタジー小説を2004年に映画化したものである。秋穂巧(あいお たくみ)は、息子の祐司と二人で暮らしていた。妻の澪はすでに他界しており、「一年後の雨の季節になったら戻ってくる」と言い遺していた。実際に澪は一年後の梅雨の到来とともにあらわれたが、記憶をなくしていた。次第に家族としての生活を取り戻していく三人。しかし雨の季節はいつまでも続かない。この物語は、ファンタジー要素をとり入れつつも家族の愛、そして女性の強さを感じられる作品となっている。

澪がかいた絵本に登場する星のこと。絵本の中では、死んだ人はみんなその星にいくとされ、祐司もそれを信じている。

廃工場

映画全編を通して、随所に登場する。林の中を抜け、さらにトンネルを抜けるとたどりつく。#5とかかれたゆがんだドアがある。吹き抜けのようだが雨は当たらず、祐司はそこで錆びた部品など、いろんなものを集めていた。澪が亡くなった後、再びあらわれた場所でもあり、梅雨の終わりとともに消えた場所でもある。澪と祐司のタイムカプセルも、廃工場に置いていた。

逆さてるてる坊主

祐司が、梅雨入り前から作り続けていた。通常のてるてる坊主と違って上下逆さまにぶら下げ、少しでも雨の季節が続くようにという祐司の願いが込められている。

『いま、会いにゆきます』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

雨の季節に戻ってきた澪との再会

澪を一年前に失った巧と祐司が、廃工場で再び澪と再会するシーンである。梅雨ということもあって、雨がしとしとと降っている。普通雨は人を憂鬱にさせるものだが、このシーンでは、雨と廃工場の中の緑、そして澪の姿が非常に美しく描かれている。このことにより、巧と祐司のなかで澪がいかに大切で神聖な存在であるのかが感じ取れる。

初めてのデートでつながれる手

初めてのデートの帰り、手をつなぐ巧と澪

巧の青いペンを返してもらうという口実で会うことになった巧と澪だが、実際に会ってもなかなか会話が続かなかった。しかし帰り際にはなんとか想いが通じ、初めてのデートで手をつなぐことになる。澪の「寒いね」という、これも手をつなぐための口実かのような言葉に巧も応えるのだった。さらにこの「手をつなぐ」ことは、後に二人が別れる時にも大切な行為となるのである。

秋穂 澪「大丈夫、大丈夫よ、私たちは」

全てを受け入れ、巧を抱きしめる澪

大学時代に巧と澪が別れてから、再び大きな向日葵畑で二人は再会する。自分の身体にハンデを感じて澪から離れた巧だが、そんな巧をすべてを受け入れた表情で澪は抱きしめ、「大丈夫、大丈夫よ、私たちは」と伝えるのだった。その言葉に巧は結婚を決意するのだが、なぜかこの時の言葉は、澪が自分自身に言い聞かせているようにも感じていた。それは、この時の澪が未来にジャンプしたあとで全てを把握している状態だったからである。自分が早くに死ぬことをわかっていながら、巧と生きていくことを決めた澪は、このセリフを自分にも言い聞かせているのだった。

秋穂 澪「ありがとう、あなたの隣はいごこちが良かったです」

巧に感謝の気持ちを告げる澪

雨の季節が終わり、巧と澪、祐司が再び別れるシーンでのセリフである。澪が巧と最後に手をつなぎ、消える直前に「ありがとう、あなたの隣は居心地が良かったです」と告げる。このセリフは、高校時代に巧が澪の卒業アルバムに書いた「ありがとう、君の隣はいごこちが良かったです」の返答とも取れる。長い年月をかけ育まれてきた愛情が、最後の最後でこのセリフで表現されたのだった。

秋穂 澪「巧、祐司、待っていてください。いま、会いにゆきます」

澪が列車の中で書いた一文

全てを知った20歳の澪が、巧に会いに向日葵畑に向かう列車の中で書いた日記の一文である。巧と再び会って結ばれれば、自分は早くに死ぬこととなる。それでも巧と結ばれ、祐司をこの世に迎え入れると決意した澪は、「巧、祐司、待っていてください。いま、会いにゆきます」と日記に記した。この時まだ祐司は誕生していないが、澪は未来にジャンプしてすべてを知っている。そのため、巧とのちに生まれる祐司にあてた言葉となっているのだった。「いま、会いにゆきます」という言葉が、澪の決意を思わせる。

『いま、会いにゆきます』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

高校時代の二人の恋と授業のリンク

巧と澪の過去を回想していた最初のシーンで、教室で二人が授業をうけているシーンがある。英語の授業なのだが、巧のナレーションとともに英語教師の授業も続いている。授業内容は「ready to ~(~する準備ができている)」の説明で、「You're ready to fall in love.(愛する準備ができている)」が例文として出てきている。ここで高校時代の巧と澪が顔を見合わせる場面もあり、今後の二人を暗示しているかのようである。

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