30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(チェリまほ)のネタバレ解説・考察まとめ

『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(チェリまほ)』とは、豊田悠のボーイズラブのラブコメディ漫画。スクエアエニックスpixivより単行本となった。2020年ドラマ化。地味で内気なサラリーマン安達は童貞のまま30歳になった日から、触った人の心の声が聞こえるようになる。偶然エレベーターの中でイケメン同期黒沢の心の声を聞くと、自分への恋心だった。安達はどう受けとめるのか。ピュアで一途な恋が感動を呼んだ。全ての人に優しい世界。ボーイズラブの枠を超えたと絶賛されたラブコメディである。

初めてのデートの日、いきなり柘植がやってきた。予定を変更することになる。安達は柘植の恋を応援する。黒沢はそれを温かく見守る。

二人は、交際を始めた。初めてのデートの日、黒沢が安達を迎えに来る。そのとき、柘植が安達のアパートにやってきた。驚く安達。実は柘植も魔法使いになっていた。お互いが魔法の力を持っているので、触っただけで心の中で会話してしまう。柘植の心の中には綿谷湊の姿があった。湊を好きになってしまった柘植は、相談したいことがあったのだ。デートの予定変更となり、安達は黒沢に対し申し訳なく思う。しかし、黒沢はそんな柘植と安達を優しく見守る。
ひとりでは行動できない柘植のため、三人で湊のダンス練習を見学に行くことになった。バスの中では、黒沢が心の中でポエムをつくり詠んでいた。安達のことを「恥ずかしがりやの僕のエンジェル」とポエムの中で例える。ダンスを見学する安達と黒沢は、会社の後輩六角と偶然出会う。六角は大学時代のダンスサークルで湊と一緒だった。
「俺、黒沢とつきあってる、です」と、安達は自分の恋愛を柘植に打ちあける。柘植に、湊と直接話をするようにと。不器用ながら友人の背中を押す優しさに、黒沢はますます好きになっていくのだった。柘植がこの直後、湊が元カレにキスされたところを目撃し、すっかりキャパオーバーになってしまったことを安達はまだ知らなかった。パソコンに向かう柘植は、(キスキスキスキス)と、縦書きで入力し続ける。
黒沢が、安達のアパートに泊まり、一緒に会社に行く朝、ゲームしながら寝てしまった安達の頬にはコントローラーの痕がついていた。そんな小さな事件をスマホで撮影する黒沢は幸せいっぱいだ。会社ではおにぎりを食べながら、安達にウインクする。昼食の後黒沢は、オフィスに戻る途中にデートの相談をしながら、安達がつけているご飯粒をとってあげようとした。そのとき安達は黒沢の心の妄想が見えた。幸せな黒沢の妄想は、大変なことになっていた。(妄想の中で一番刺激的な、バスローブ妄想が展開される)
自分を認めてくれる人がいることで、安達は少しずつ前向きな性格になっていく。安達は、会社の廊下で、社内コンペのポスターを見つめる。迷っている安達を黒沢は静かに見ていた。
その日、六角は湊から相談を受け、柘植を呼び出してほしいと安達に頼む。実は、湊が啓太という仲間のひとりとキスするところを、柘植は目撃してしまった。てっきり湊が啓太を付きあっていると勘違いした柘植はショックを受けた。どうしていいかわからない柘植は、それ以来湊を避けるようになったのだ。しかし、湊にとって圭太は元カレだった。そのことを柘植は知らない。湊は男性とキスしていた自分を柘植は嫌いになった、と思いこんでいる。柘植の行動で傷ついていた。六角は、柘植に怒りをぶつける。安達は、柘植はそんなひどいやつではない、とかばう。
柘植は自分の気持ちを直接伝えることを決心した。湊に会いに行った柘植は、「俺が(心が)小さい男だから」「自分が傷つきたくなかった」ことを打ち明け、恋心を告白した。
その日の会社の帰り、黒沢は安達にコンペの書類を渡す。「全力で応援するよ」という黒沢の言葉が、安達の背中を押す。「今なら俺がんばれる、黒沢のおかげだから」という安達の言葉に、黒沢は、思わず安達を抱きしめた。
安達は休日も自宅でコンペの企画案を考えていた。柘植は電話をかけてきて、湊との交際が始まったことを報告する。実は、自分が魔法使いを卒業したことを報告したかったのだ。先輩風をいきなり吹かせる柘植に安達は焦りをおぼえる。コンペの企画案もまとまらない。藤崎や浦部に期待されていることが辛くなる安達だった。「周りの期待にこたえられないとき、押しつぶされそうなとき」という隠れたテーマがここで表現される。逃げるのか、隠れるのか、やめるのか。黒沢に会う前の、自分のネガティブ思考がちらっと脳裏によぎっても、以前の安達とは違っていた。

一方で黒沢は、安達をリフレッシュさせてあげようと思い、遊園地に誘う。本当のデートはコンペが終わってからにしようと黒沢は提案する。そして、遊園地に行くことを黒沢は、「デートの練習」と呼ぶのだった。遊園地で浮かれている黒沢は、安達が乗り物に酔ってしまったことに気づかなかった。黒沢は落ち込む。安達は、黒沢にも笑顔になってほしい、と感じた。数日後、企画案を提出した安達は、書店と居酒屋に黒沢を誘い出した。自然体で、いつもの場所で安達は黒沢と楽しいときを過ごした。安達は、自分だけでなく、黒沢にも幸せでいてほしい。その気持ちをきちんと伝えた。それに応えて黒沢は、内面をみてほしいから周りの期待に完璧に応えようとするのだと話す。安達は、少しは自分に甘えてほしいと、言うのだった。黒沢が仮面を脱いだ瞬間だった。二人の心が近くなっていく。

魔法ナシでいく

居酒屋デートの帰り、ふたりが手をつないで歩いているとき、クリスマスデートの話になった。黒沢の心の声が安達には聞こえていた。黒沢は、サプライズで花火デートにしよう、とつぶやいていた。安達は本当の会話だと勘違いして「冬なのに、花火かなんてあるんだ」と返事をしてしまった。黒沢は驚く。焦った安達は、黒沢が本当にしゃべっていた、と嘘をつく。それを黒沢は信じるのだった。自分のミスなのに、黒沢のせいにした安達は、思わずつないだ手をはなしてしまった。これからも、黒沢に触れるたび心の声を聞いてしまう。それは卑怯ではないか。安達は魔法の力を持て余してしまう。
数日後、コンペの一次審査に合格した安達を、黒沢は会社の廊下で抱きしめる。安達は、黒沢の指導のもと、二次審査のプレゼンの練習を始めた。安達の前向きな努力を黒沢は誇らしく思う。安達は、これからは魔法に頼らず生活しようと決意していた。すでに魔法使いを卒業した柘植からのアドバイスもあった。

プレゼンの日の朝、安達は黒沢からお手製の弁当を受け取る。「自分を信じて」と海苔でご飯に書いてあった。張り切っている安達は、エレベーターで審査員の寺島部長に触れてしまい、心の声を聞いた。「どの企画もぱっとしない。コンペをしなければよかった。最近の文具は見栄えばかり。本来の機能性を重視して、使う側の気持ちを考えなければ」という心の声だった。実は六角から、寺島部長は厳しい人で発表を途中でやめさせることもあると聞いていた安達は、緊張する。
プレゼン本番のときがきた。自分の発表を打ち切られた安達は、このまま引き下がれないと思った。そして、寺島部長の心の声を、自分の発言のように利用してしまう。「見栄えだけでなく文具本来の機能性を重視して、使う側の気持ちを考えなければならないと思い、この案を企画しました」と言ってしまう。そのことで、発表は打ち切られずにすんだ。結果は不合格だったが、寺島部長に発言内容を褒められる。魔法について知らない黒沢は、褒められるなんて安達はすごいな、と声をかける。罪悪感がつのり、安達はいよいよ魔法使いだと打ち明けるときがきたことを悟るのだった。

その夜、安達を自宅でのディナーに招待した黒沢は、やっと安達の異変に気づいた。自分はクリスマスデートや花火などに浮かれていたが、よく観察すると、安達は悲しみに沈んでいる。涙をこらえることができない安達は黒沢に、魔法使いであることを告白した。自分は、魔法使いを卒業するために黒沢を利用している、と。そう言われても黒沢はすぐには理解できない。黒沢に触れることさえ、つらそうな安達に「ここで、やめておこうか?」と言ってしまった。別れの提案だった。

やめておこうか?

涙をとめることもできない安達だった。

安達は「やめておこうか?」という黒沢の言葉にうなずく。突然、二人の交際は終わりを告げた。安達は帰り、黒沢は呆然とする。安達は黒沢を傷つけた自分を許すことができない。職場で距離をおく二人を見て藤崎や六角だけでなく、浦部まで当惑している。悲しみを隠していても、空気で伝わってくる。藤崎は「結局は自分が幸せでないと」と、遠回しに安達に、自分の心を見つめるようアドバイスする。いつもは、黒沢との邪魔にならないよう、控えめに話してくる藤崎が真剣に心配している様子が伝わってくる。安達はそれを受けとめるが、すぐにどうしていいかはわからなかった。
クリスマスデートの日がやってきた。休暇を申請していたので、安達はアパートで一人悩んでいる。そこに柘植が訪れる。六角と湊は、安達と黒沢の関係を心配して、柘植に頼みこんだのだ。安達は何があったのかを語る。やりなおす勇気があれば、本当は黒沢に会いたい。「自分の心の声を聞け」と柘植に言われて、安達は黒沢に会うことを決意した。

そして、柘植の自転車で走り出した。アントンビルの屋上で安達と花火をみて素敵なデートにすると、黒沢は心の中で計画をしていた。安達は黒沢に、直接言葉で伝えなければならないことがある。柘植も湊に出会って、閉じこもることは解決にはならないことを体験したと語っていた。親友というだけでなく、その柘植の言葉なので説得力があった。

その日、藤崎は、黒沢から花火デートの相談を受けていたので、心配していた。偶然六角から、花火が中止になったことを知らされる。しかも、休暇中の安達から電話があり、黒沢を探していることを知る。藤崎はある計画を立てた。

二人のための花火

黒沢は、アントンビルの屋上で、安達を待っていた。

最終話。最後に、エレベーターに乗る二人。

花火は中止になったと知っていたが、黒沢はアントンビルの屋上にいるかもしれない、と安達は感じていた。
自転車を走らせる安達に不思議な現象が起こる。第一話の無気力な安達がスーツ姿で、交差点に立っている。信号が青になる直前、目の前を最終話の安達が自転車で、必死に駆け抜けていく。二人の安達がいた。「すぐ逃げそうになる俺に、こんなふうに、背中を押してくれる人がいるなんて」と心でつぶやくのは、最終話の安達だ。このドラマが恋愛だけでなく、人間成長の物語であることを印象づける場面である。

安達はアントンビルの屋上にやっとたどり着く。夜になっていた。そして、黒沢は奇跡を信じて安達を待っていた。安達は自分の気持ちを伝えた。「俺、やっぱり黒沢が好きだ」と安達が言うと、そんな安達を黒沢は抱きしめた。「安達を好きな気持ちに魔法は関係ない」と黒沢が安達に告げた。黒沢はひざまずくと、ペアの指輪の代わりに万年筆をプレゼントした。恥ずかしがりの安達は、指輪をプレゼントしてもつけてくれないと思ったのだ。「ずっといっしょにいてください」と黒沢に言われて「はい」と安達はうなづいた。ふたりは見つめあう。

そのとき、近くのビルの屋上から花火が上がった。藤崎が二人を応援しようと、六角と計画した個人的な花火だった。「これを見て、誰かがちょっとでも幸せになれるのなら」と六角が言う。藤崎と六角が魔法使いのように見える瞬間だった。黒沢は安達に「いいの、魔法の力がなくなっちゃっても」とたずねた。「黒沢がいれば、魔法はいらない」と安達が答えた。やっと恋心が重なる夜になった。翌朝、安達は黒沢のベッドで目覚める。魔法使いを卒業した安達は、黒沢と最後のシーンでは、エレベーターに乗る。黒沢と安達の唇が近づいていく。そこでエレベーターが閉まった。

『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』の登場人物・キャラクター

安達清(あだちきよし)

ドラマ版の安達清

漫画版の安達清(黒髪の男性)

CV:阿部敦
演:赤楚衛二

地味で冴えないサラリーマン。恋愛経験はない。30歳の誕生日に、魔法使いになってしまった。「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」という都市伝説は本当だった。触っただけで、その人の心の声が聞こえるのだ。混乱気味の安達は、なるべく人に触らないよう注意していた。ところがある日、たまたまエレベーターの中で、同期の黒沢の心の声を聞いてしまう。まさか、自分を好きなのか。「幻聴ではないか」と、安達は疑う。黒沢が残業を手伝ってくれるときも、普通の同期らしく振舞うのだった。
親友の柘植からは、「真面目すぎ、不器用すぎ、鈍感すぎ」とよく言われている。大学時代に気になる女の子が周りの友人たちと、恋愛経験のない自分を、「重い」と噂していたのを聞いてしまった。それ以来、恋愛に消極的になっている。しかし、黒沢が本気だと知って少しずつ変わっていく。

黒沢優一(くろさわゆういち)

ドラマ版の黒沢優一

漫画版の黒沢優一(ネクタイをしている男性)

CV:佐藤拓也
演:町田啓太

イケメンエリートで、社交的。いつも職場の人気者だが、その陰では苦労していた。営業成績はトップだが、外見でしか評価されない。自分を内面から好きになってくれる人はいなかった。接待の席で、女社長からセクハラを受けた際に、上司や先輩から、「イケメン要員のくせに役立たずだ」と陰口を言われた。そのとき、数合わせの若い社員として、同席していたのが安達だった。苦しむ黒沢を心配して、帰らずについてきて、優しく介抱した。黒沢は、完璧でない自分を安達が認めていることに気づいて、恋に落ちた。
職場で、安達を観察しているが、あくまで同期として行動している。30歳になった安達が、なぜ自分を意識してくれるのか不思議に思うが、嬉しい。しかし親しくなるうちに、同期としての関係に限界を感じる。想いがあふれて告白してしまう。安達と交際するにつれて、人間らしく、悩んだり、浮かれたりと変化していく。

柘植将人(つげまさと)

ドラマ版の柘植将人

漫画版の柘植将人(眼鏡をかけている男性)

CV:興津和幸
演:浅香航大

安達の大学時代からの親友で、恋愛小説家。安達と同じく、30歳の誕生日に魔法使いになった。自宅で小説を書く生活をしているので、魔法の力に気づかず、宅配サービスの綿谷湊の心の声をいきなり聞いて驚く。拾って育てている猫が縁で湊と会話するうちに、見た目と全く違う内面を知り、好意を抱いた。安達に大人びたアドバイスをするが、自分の恋愛感情に当初気づかなかった。新刊のヒロインが湊に似ていると安達に指摘されてやっと気づいた。夢を追いかけながらも、くじけそうになる湊をまっすぐに受けとめて、励ます。包容力と自分では思っていても、湊から「親父みたい」と心で言われてしまった。普段はしっかり者なのに、恋愛のときは、別人のようになる。実は安達に代わって恋愛について深く語る役割も果たしている。

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