30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(チェリまほ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(チェリまほ)』とは、豊田悠のボーイズラブのラブコメディ漫画。スクエアエニックスpixivより単行本となった。2020年ドラマ化。地味で内気なサラリーマン安達は童貞のまま30歳になった日から、触った人の心の声が聞こえるようになる。偶然エレベーターの中でイケメン同期黒沢の心の声を聞くと、自分への恋心だった。安達はどう受けとめるのか。ピュアで一途な恋が感動を呼んだ。全ての人に優しい世界。ボーイズラブの枠を超えたと絶賛されたラブコメディである。

ドラマ版

魔法使いとイケメン同期

地味な会社員として、地味で退屈な人生を過ごしていた安達は、30歳を迎えると同時に「30歳まで童貞だと魔法使いになれる」という都市伝説通り、魔法使いになってしまう。触った人の心の声が聞こえるようになった安達。ある日、たまたま触れてしまったイケメン同期の黒沢が自分に好意を寄せている事を知ってしまう。驚く安達だが、黒沢の恋心を信じられず、ただの同期として接する事に努める。その夜、安達は先輩から押し付けられた仕事で残業をする羽目になる。黒沢が手伝ってくれた事で仕事は無事に終わる。だが翌日、黒沢が手伝った事を知った先輩は黒沢の力だけを評価する。それを聞いた黒沢は「安達の仕事を信頼しているのだ」とハッキリと先輩に言い返す。その言葉に安達は、彼が自分を認めてくれている事に嬉しさを覚える。だが、大学時代に女子から言われた「恋愛経験のない安達は重い」という言葉が思い出され、黒沢への思いを恋として認める事ができなかった。
一方黒沢の方は、7年間安達に片思いしていた。安達が自分に興味を持ち始めた事を察した彼は、少しずつ安達との距離を縮めていく。そんな彼の様子に安達は戸惑いながらも、助けてもらったお礼にとご飯に誘う。だがそこへ後輩の六角が現れて、2人を宴会に誘った為、その誘いは実現しなかった。しかしこれを機に、迷いはあるものの安達は「黒沢の好意に誠実に応えたい」と考える。

心の距離

宴会に参加した安達と黒沢は、王様ゲームを強要され、キスをする羽目になる。キスに怯える安達の姿に、彼に嫌われたと思い、心の中で謝る黒沢。一人宴会を抜け出し落ち込むが、そんな彼を心配してやってきた安達に「いやじゃなかった」と言われ、その意味を問いただす。そうしてそのままキスを交わしそうになったところで、安達の携帯に親友の柘植から連絡が入る。電話後は2人を探していた六角がやってきた為、キスは未遂で終わる。恋愛に慣れていない安達は、ゆっくり自分の思いについて考える時間を得る為、以降黒沢を避けるようになる。
そんなある日、安達は同僚の藤崎が今度上京してくる母親に、恋愛や結婚についてあれこれ言われる事を悩んでいると知る。すると他の同僚達が安達と藤崎が付き合っているフリをすればいいと提案する。それに驚く安達達。さらにちょうどそのタイミングで先輩から買い出しを頼まれた2人は、一緒に外出する事になる。その帰り道、藤崎が2人組の男性にぶつかった事で彼らに難癖をつけられてしまう。安達は藤崎を守ろうとするが、逆に男達に殴られそうになる。しかしそこへ黒沢がやってきて、安達を助ける。安達が怪我をしている事に気付き、慌てる黒沢。そんな彼の姿に安達は好感を持つようになる。その後安達は藤崎に、「友人としてなら母親に会う」と話す。それを聞いた藤崎は「まだ大丈夫だから」と、彼の提案を断る。
後日、黒沢が相手をしていた取引先の社長が突然不機嫌になる事態が起こる。そこで安達は魔法を使って社長の心を読み、その機嫌を持ち直させる。黒沢に感謝された安達は、それに嬉しさを覚える。だが後日、安達は黒沢が美女と歩くのを目撃してしまい、ショックから体調を崩してしまう。会社には出社するも、黒沢に体調の悪さを見抜かれる。黒沢は安達をアパートまで送り届けようとする。その時、2人の前に例の美女が現れる。美女は黒沢の姉で、安達が風邪を引いていると気付いた彼女は黒沢に泊まり込みで看病する事を提案する。その提案に乗り、本当に泊まり込みで安達を看病する黒沢。翌日元気になった安達は黒沢に「好きなだけ泊まっていい」と言うが、魔法で彼が自分との2人暮らしに妄想を馳せていると気づく。気まずくなった安達は、六角のたこ焼きパーティーの誘いに乗っかり、六角を部屋に呼ぶ。
たこ焼きパーティーの開催中、安達は六角が本当はダンサーになりたかった事を知る。ダンスに未練がある事も知り、優しい言葉をかける。それにより六角との距離が縮まる安達。そんな2人に、黒沢は複雑な気持ちになる。その晩、黒沢は安達の頬に触れながら、安達への思いを心の中で吐露する。寝たフリをしているだけだった安達は、それを聞いてしまう。翌朝、安達への思いが決壊しそうになった黒沢は、勢いで彼に告白をする。突然の告白に驚き言葉を失う安達に、黒沢は「なかったことにしよう」と提案する。そうして混乱する安達を置いてその場を去ってしまう。

同時期、柘植は宅配サービスの配達員である青年・湊と知り合っていた。安達同様、童貞のまま30歳を迎え魔法を手にしてしまった彼は、湊の心の声を聞いてしまう。その結果、彼が見た目の華やかさと異なり、とても心優しい青年である事を知る。湊の心の声が忘れられなくなる柘植。それが受け止められず柘植は困惑する事となる。

告白と7年間の片思い

安達に告白をした黒沢は、安達に惚れた日の事を思い出していた。
7年前、会社に入社したてだった黒沢は、上司と先輩から女性社長との会食に連れていかれた。イケメン要員として連れて行かれた彼はそこで、女性社長からのセクハラを受ける。だが上司と先輩はそれを助けようとしない。そんな時、会食に一緒に連れて行かれていた安達が黒沢を助ける。安達の優しさに触れた黒沢は、安達の誠実さに心打たれ、以降少しずつ彼に惹かれていくようになる。だが同性愛の難しさも理解しており、自分の恋を「いつかは終わらせなきゃいけないもの」として考えるようになってしまう。
一方その頃、安達の方は黒沢の事が頭から離れずにいた。自分が黒沢に惹かれている事に気付いた安達は、黒沢に自分の思いを告げる。喜んだ黒沢は安達を抱きしめる。安達も黒沢を抱きしめ返し、2人は結ばれる。

コンペとデートの練習

初めてのデートの日。安達のアパートに柘植がやってくる。柘植は安達に魔法使いになった事を告げ、湊への思いを相談する。そこで安達と黒沢はデートの予定を、柘植の相談に乗る予定に変更する。柘植に付き添い、湊のダンス練習を見学しに行く事になった安達達。その最中に安達は柘植に自分が黒沢と付き合っている事を明かし、柘植も湊と直接話をするように背中を押す。だが柘植が湊と話をしようとした時、湊が元カレの啓太(けいた)にキスされたところを目撃。柘植は混乱してしまう。
一方安達と黒沢の方は、デートこそしなかったものの、黒沢が安達のアパートに泊まる事になる。翌日も安達と幸せそうにデートの相談をしたり、妄想を繰り広げている黒沢の姿に、安達は自分を認めてくれる人がいるという事実を感じる。そんな時、社内コンペのポスターが目に入り、安達はそれに出るかどうかで悩む。
後日、安達は六角と湊から相談を受け、柘植を呼び出してほしいと頼まれる。六角と湊はかつて同じ大学のダンスサークルに所属していた間柄だった。その頃柘植は、啓太と湊が付き合っていると誤解し、湊を避けるようになっていた。男とキスをしていた自分を嫌ったのだろうと考える湊に、安達は「柘植はそんな奴ではない」と庇う。そんな安達に呼び出された柘植は、湊に自分の思いを告げる。それを聞いた湊は柘植の思いを受け入れ、2人は恋人になる。
その日の帰り道、安達は黒沢からコンペに参加するなら応援すると告げられる。それに背中を押された安達は、コンペに出す企画を考え始める。しかしそのタイミングで、柘植から魔法使いを卒業した事を告げられる。自分達より進んだ関係になっている柘植達に焦りを覚える安達。企画も上手く思いつかず、日に日に焦りが募っていく。そんな安達の気分転換になるようにと、黒沢は「デートの練習」と彼を遊園地に誘う。しかし安達が乗り物酔いを起こしてしまい、黒沢は落ち込む。黒沢にも笑顔になってほしいと感じた安達は、数日後、企画を出してから黒沢を誘って出かける。安達はそこで黒沢に「黒沢にも幸せでいてほしい」という己の気持ちを告げる。そこで黒沢も「内面を見てほしいから周りの期待に完璧に応えようとしてしまう」という自分の本当の姿を語る。互いの本音を知り、2人は前よりもお互いへの思いを深める。

魔法ナシでいく決意

帰り道、クリスマスデートの話になる2人。その時黒沢が心の中でサプライズをしようと考えているのを聞き、思わずそれに反応して言葉を返してしまう。驚く黒沢に「黒沢が喋っていた」と誤魔化す安達。そこで安達は、自分が黒沢に触れる度に彼の心の声を聞いてしまう事実に初めて不安を覚える。さらにその数日後、コンペの一次審査に安達が合格した事を喜んだ黒沢に抱きつかれた安達は、黒沢が心の中で安達の努力を誇らしく思っていると知る。それを聞いた安達は魔法には頼らない事を決める。
しかしコンペの二次審査であるプレゼン当日、安達は審査員である部長に触れてしまう。そうして彼が今回のコンペに対して抱えている不満を聞いてしまう。自分の発表を聞いて欲しかった安達は、プレゼン中に部長が心の中で求めていた発言をしてしまう。結果、審査そのものは不合格だったが、発言は良かったと部長に褒められる。黒沢も安達の事を褒めるが、安達は自分の行いに罪悪感を覚える。そうして自分が魔法使いである事を黒沢に明かす時がやってきたと悟る。
その晩、安達を自宅でのディナーに招待した黒沢は、安達が悲しみに沈んでいる事に気づく。安達は黒沢に自分が魔法使いであると告げる。混乱する黒沢。だが自分に触る事が辛そうな安達に気づき、別れの提案をしてしまう。

「やめておこうか?」

黒沢の提案を受け入れてしまう安達。以来、彼と距離を置くようになる。周囲もそんな2人の様子に気づき、困惑する。藤崎は勇気を出して安達に、自分の心を見つめるようにアドバイスをする。安達はそれを受け止めるが、しかしどうすればいいかわからず戸惑う。
そうしてやってきたクリスマス。本来なら黒沢とデートをする予定だったので、安達は休暇を申請していた。すると、1人で悩む安達の前に柘植が現れる。六角伝いで安達と黒沢の事を聞き、心配した湊は柘植に安達の様子を見てくるように頼んでいたのだ。安達は柘植に、黒沢との間にあった事を話す。柘植は「自分の心の声」を聞くように安達に述べる。それにより黒沢に会いに行く事を決めた安達は、黒沢とデートをする筈だった場所・アントンビルの屋上へ向かう。
一方その頃藤崎は、黒沢と安達の心配をしていた。彼女は黒沢から花火デートの相談を受けており、2人が今日でかける筈だった事を知っていたのだ。その時、偶然六角から、花火が中止になった事を藤崎は知らされる。しかも安達から「黒沢を探している」という電話を受ける。そこで藤崎は2人の為にある計画を立てる。

二人のための花火

花火が中止になった事を既に知っていた安達。だが黒沢ならアントンビルにいるかもしれないと、その場所へ向かう。安達が目的地にたどり着いた頃には、あたりは夜になっていた。黒沢は奇跡を信じて安達が来るのを待っていた。安達は黒沢の事がまだ好きな自分の本音を告げる。それを聞いた黒沢も安達に、魔法は関係なく安達自身の事が好きなのだと話す。そして恥ずかしがってつけえくれなさそうな指輪の代わりにと、万年筆をプレゼントし、安達にプロポーズする。安達もそれに頷く。その時、近くのビルの屋上から花火があがる。それは藤崎が六角と計画した、2人を応援する為の花火だった。黒沢は安達に「魔法の力がなくなってもいいのか」と尋ねる。その問に安達は「黒沢がいれば魔法はいらない」と返す。
そうしてその日、安達は魔法使いを卒業する。魔法の力は失うものの、安達は黒沢の恋人として確かな愛を得る事ができたのだった。

『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』の登場人物・キャラクター

安達清(あだちきよし)

ドラマ版の安達清

漫画版の安達清(黒髪の男性)

CV:阿部敦(ドラマCD版)/小林千晃(アニメ版)
演:赤楚衛二

地味で冴えないサラリーマン。恋愛経験はない。30歳の誕生日に、魔法使いになってしまった。「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」という都市伝説は本当だった。触っただけで、その人の心の声が聞こえるのだ。混乱気味の安達は、なるべく人に触らないよう注意していた。ところがある日、たまたまエレベーターの中で、同期の黒沢の心の声を聞いてしまう。まさか、自分を好きなのか。「幻聴ではないか」と、安達は疑う。黒沢が残業を手伝ってくれるときも、普通の同期らしく振舞うのだった。
親友の柘植からは、「真面目すぎ、不器用すぎ、鈍感すぎ」とよく言われている。大学時代に気になる女の子が周りの友人たちと、恋愛経験のない自分を、「重い」と噂していたのを聞いてしまった。それ以来、恋愛に消極的になっている。しかし、黒沢が本気だと知って少しずつ変わっていく。

黒沢優一(くろさわゆういち)

ドラマ版の黒沢優一

漫画版の黒沢優一(ネクタイをしている男性)

CV:佐藤拓也(ドラマCD版)/鈴木崚汰(アニメ版)
演:町田啓太

イケメンエリートで、社交的。いつも職場の人気者だが、その陰では苦労していた。営業成績はトップだが、外見でしか評価されない。自分を内面から好きになってくれる人はいなかった。接待の席で、女社長からセクハラを受けた際に、上司や先輩から、「イケメン要員のくせに役立たずだ」と陰口を言われた。そのとき、数合わせの若い社員として、同席していたのが安達だった。苦しむ黒沢を心配して、帰らずについてきて、優しく介抱した。黒沢は、完璧でない自分を安達が認めていることに気づいて、恋に落ちた。
職場で、安達を観察しているが、あくまで同期として行動している。30歳になった安達が、なぜ自分を意識してくれるのか不思議に思うが、嬉しい。しかし親しくなるうちに、同期としての関係に限界を感じる。想いがあふれて告白してしまう。安達と交際するにつれて、人間らしく、悩んだり、浮かれたりと変化していく。

1smayumi-1000
1smayumi-1000
@1smayumi-1000

目次 - Contents