ガタカ(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ガタカ』とは1997年にアメリカで製作されたSF映画。
遺伝的優劣によって人生が左右される近未来社会の中で、遺伝的問題を抱えた1人の青年が不屈のチャレンジ精神で人生を切り開き、夢を叶えようとする姿を描いている。遺伝子がすべてと言われる世界の中で、当り前である概念を打ち砕き、不可能を可能としようとする姿に周囲が心動かされていくヒューマンストーリーでもある。現実感のある設定と名言の詰まったセリフの数々は、見る者の心に訴えかけ、今もって語り継がれる作品となっている。

新下級階層者を操作する警察

遺伝的欠陥がある人々であり、社会的に不適合者と呼ばれる。
今作では、肌の色ではなく、遺伝的要素という科学的根拠によって差別される社会という設定になっている。

遺伝子泥棒

闇の業者を通じて、優れた遺伝子を持つ人間から血液や尿などを提供してもらい、その人物になりすます人々のこと。
彼らは元々遺伝的欠陥があるため社会的不適正者との烙印を押されていたが、優秀な遺伝子を購入し、他人になりすますことで社会的にのし上がろうとする。

タイタン

土星の近くに位置する14番目の月。
一年中厚い雲に覆われ、中に何があるのか誰も知らない。
今作では、タイタンへの打ち上げは70年に一度のチャンスと言われており、どうしても打ち上げを決行したかったジョセフ所長は、反対する職員を殺してしまう。

『ガタカ』の名‌言・‌名‌セ‌リ‌フ‌/‌名‌シー‌ン・‌名‌場‌面

ビンセント「運命までは遺伝子で決まらないのだ」

信念を胸に秘めつつガタカの屋根を掃除するビンセント

ビンセントは清掃員として仕事をしながら、宇宙飛行士になりたいという夢を叶えるべく、優秀な遺伝子を持つ人間の血液を売る業者を訪ねる。
ビンセントは「運命までは遺伝子で決まらないのだ」という信念を胸に秘めつつ、他人になりすましてガタカの職員となった。
科学的には絶対に越えられない壁に挑戦しようとするビンセントの決意が、いかに力強いものかを感じさせるセリフである。

ビンセント「僕より君が行った方がいい」

タイタン出発前に酒を酌み交わすビンセント(左)とジェローム(右)

タイタンへの出発を前に、ビンセントとジェロームは祝杯を挙げるために行きつけの店に出かける。
そこで酒を酌み交わしながら、ビンセントはジェロームに向かって「僕より君行った方がいい」と言う。
ビンセントは「宇宙は歩く必要がないから」と冗談を飛ばしつつも、彼のジェロームに対しての親愛と尊敬の念が感じられる場面だ。

ビンセント「この世は不可能なことばかりだと思う?」

自分の弱い心臓に手を当ててアイリーン(右)を説得するビンセント(左)

ジェロームになりすましているとアイリーンにばれてしまったビンセントは自分の素性を正直に告白する。
そして「この世は不可能なことばかりだと思う?」と問いかけた。
本来なら既に亡くなっているはずの年齢を過ぎ、社会的不適合者にも関わらずビンセントは宇宙に飛ぼうとしている。
ビンセントは人間は持って生まれた遺伝子に関わらず可能性は無限大、ということをアイリーンに伝えた。

レイマー医師「右利きは用を足すとき左手じゃ持たない」

ビンセント(中央)を温かく送り出すレイマー医師(右)

レイマー医師の子どもはジェローム扮するビンセントに憧れている。しかし彼の子どもは遺伝的に問題を抱えていた。
そんな話を告白しながら、宇宙に行く直前抜き打ちで行われた尿検査でビンセントの正体がレイマー医師にばれてしまう。
しかしレイマー医師は「右利きは用を足すとき左手を使わない」とアドバイスを送り、ビンセントのなりすましに目を瞑り、温かく宇宙に送り出した。
遺伝的欠陥がある我が子にもチャンスがあると信じたいレイマー医師が、ビンセントの背中を最後に一押ししたのだ。

『ガタカ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

映画の冒頭に表示される二つの名言

映画が始まってすぐ、次の2つの文章が表示される。
「Consider God's handiwork, who can straighten what He hath made crooked?!」ECCLESIASTES 7:13
(「神の御業を見よ。神が曲げたものを誰が直しえようか」旧約聖書『伝道の書』7章13節)
「I not only think that we will tamper with Mother Nature, I think Mother wants us to.」 WILLARD GAYLIN
(「我々は母なる自然に手を加えようとするが、母もそれを望んでいると私は思う」 ウィラード・ゲイリン)

この2つの文章が、まさにこの映画の中の2つの相反する勢力を表している。
1つの勢力はジェロームやアントンのような優秀な遺伝子を持つ社会的適正者。
もう1つの勢力はビンセントのような遺伝的欠陥を持つ社会的不適正者。
この映画では圧倒的優位な適正者社会に打ち勝つビンセントの姿を描いている。

「現実的なSF映画」第1位獲得

今作は、2012年NASAにより「現実的なSF映画」部門第1位に選ばれている。
『遊星よりの物体X』(1952)『ジュラシック・パーク』(1993)などの有名な作品もノミネートされている中の受賞であった。
因みにありえない映画ワースト1は『2012』(2009)が受賞している。

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