ガタカ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ガタカ』とは1997年にアメリカで製作されたSF映画。
遺伝的優劣によって人生が左右される近未来社会の中で、遺伝的問題を抱えた1人の青年が不屈のチャレンジ精神で人生を切り開き、夢を叶えようとする姿を描いている。遺伝子がすべてと言われる世界の中で、当り前である概念を打ち砕き、不可能を可能としようとする姿に周囲が心動かされていくヒューマンストーリーでもある。現実感のある設定と名言の詰まったセリフの数々は、見る者の心に訴えかけ、今もって語り継がれる作品となっている。

『ガタカ』の概要

『ガタカ』とは1997年に公開されたアメリカのSF映画。
約3,600万ドルの製作費をかけ制作したが、アメリカでの収益が約1,200万ドルと、興行的には赤字を記録した。
興行的には振るわなかったが、ジュラルメール・ファンタスティック映画祭の審査員特別賞を受賞するなど映画自体の評価は高く、SF映画では異質の傑作と言われている。

不屈の青年ビンセント(ヴィンセント)を演じたイーサン・ホークは、脚本家・映画監督としても活躍している才気溢れる俳優だ。脚本を手掛けた映画『ビフォア・ミッドナイト』(2013)ではロサンゼルス映画批評家協会賞脚本賞や全米映画批評家協会賞脚本賞など多数の脚本賞を受賞している。ジェローム役のジュード・ロウは映画『リプリー』で英国アカデミー賞助演男優賞を受賞し、その美しい容姿と確かな演技力で一躍人気俳優となった。アイリーン役のユア・サーマンは映画『キル・ビル』シリーズなどで日本でも知られることとなり、個性派女優としての地位を確立している。主演のイーサン・ホークとは今作撮影後に結婚し、話題を集めた。監督を務めたアンドリュー・ニコルは元々はTVコマーシャルの監督をしていたが、今作が高い評価を受け、その後数々の映画の監督・脚本を手掛けている。

遺伝子の優劣によって人生が決まってしまう近未来。遺伝的欠陥を持った青年ビンセントは、宇宙飛行士になるという夢を叶えるために他人になりすます。まさに血のに滲むような努力の末、ついにガタカ(航空宇宙局)に入局し、念願の宇宙飛行士に選ばれる。そんな時、ガタカである事件が起こってしまう。ビンセントは執拗な捜査網を知恵と勇気で逃れながら、同僚のアイリーンと心を通わせていく。科学的には絶対に不可能と言われる夢を追い続けるビンセントの成長とチャレンジの物語だ。

『ガタカ』のあらすじ・ストーリー

宇宙飛行士ジェローム

冷蔵庫に保存された血や尿

男は丁寧に髭を剃り、入念に体の垢を落としていた。男は体の手入れを終えて冷蔵庫を開けると、そこにはパック入りの血液と尿が保存されている。尿のパックを自らの股に装着させ、血液を肌そっくりの絆創膏の中に吸入する。それを指に貼り付け、丁寧に色を塗り、指と同化させた。

これはそう遠くない未来の話。男は勤務先であるガタカに向かった。入り口にある小さな台に指を置くと血液が採取され、自動で本人確認がされる。男の名はジェロームと言い、ガタカは未来の航空宇宙局だ。優秀であり局長ジョセフの信頼も得ているジェロームは、土星の近くに位置する14番目の月タイタン探索の宇宙飛行士に選ばれる。薬物検査を受けることになったジェロームは医務室で尿を採取し、検査機にかけると「適正」との判断が下る。難関試験を見事突破し、宇宙飛行士の資質を備えていると周囲に思われていたジェロームだが、1つ大きな秘密を抱えていた。それは実は彼はジェローム本人ではない、ということだった。

ビンセントの誕生

ビンセント誕生の瞬間

このジェロームと呼ばれる男の母マリーは遺伝子学者に頼らず、自然な妊娠、出産をした。この遠くない未来では出生数秒後に推定寿命と死因が明らかになってしまう。この男が産まれた際、心臓疾患の発生率99%、推定寿命30.2歳との診断が下った。短命であることを悲しみつつ、父アントニオはこの赤ちゃんにビンセントと名付ける。母には「大物になるわ、きっとね」と笑顔で迎えられ、両親に大事にされて育った。

ビンセントは幼少期から病気ばかりしていた。悩んだ両親は次の子どもは普通の方法で作ろうと決意する。未来における普通の方法とは、精子と卵子を選択して問題のない受精卵を体外受精する方法だ。遺伝子的に問題がないことは勿論、性別や髪、目の色なども選択可能であり、有害な要素(肥満や依存症など)も予め排除されていた。自然に任せていたら1000人に1人しか生まれない優秀な子ども。そうして弟のアントンが誕生する。両親に愛され優秀に育ったアントンに、ビンセントはコンプレックスを抱く。

ビンセントは今いる地球への憎しみからか、星の世界に没頭し、宇宙飛行士を目指す青年になる。しかし遺伝的欠陥のあるビンセントがガタカの採用試験を受けても、受かるはずもなかった。遺伝子による差別は法律で禁止されているが、現実的な拘束力はない。いくら隠したとしても触ったドアノブや封筒についた唾液などからすぐに遺伝子的欠陥があることがわかってしまう。そして薬物検査という名目で尿検査をし、会社への適正を判断されてしまうのだ。ある日、ビンセントとアントンは幼い頃にしていた「度胸比べ」という遊びをする。それは海で引き返さずに遠くまで泳げた者が勝ちというものだ。幼い頃は弟に負けてばかりいたが、この日はビンセントが勝利した。遺伝的欠陥のある者でも社会的適正者に勝つことができると感じたビンセントは、宇宙飛行士の夢を叶えるべく家を出る。

ビンセントがジェロームと名乗るまで

ジェローム(右)と同じ身長にするため足の手術をしたビンセント(中央手前)

仕事を転々としたビンセントは、ある日ガタカの清掃員として働くこととなる。
叶わぬものだと悟りつつ、ビンセントは宇宙に行くことをずっと夢見ていた。清掃員の仕事をこなしながら、体を鍛え、宇宙の勉強に励んだ。そしてビンセントはついにある決断をする。優れた人間の遺伝子を売ってくれる業者ジャーマンを訪ねたのだ。ビンセントはエリートでありながら事故に遭い、足が不自由になってしまったジェロームという男を紹介される。そしてジェロームと同じ目の色にするためにコンタクトを作り、歯を綺麗に矯正し、髪型を似せ、同じ身長にするために手術をし、足を延ばした。

いよいよガタカの面接の日。ビンセントは尿検査だけで一発合格となる。それ以来ビンセントは証拠隠滅のため毎日念入りに体を洗い、垢や爪、抜け毛などを処分した。そしてジェロームは自分の尿や毛などをビンセントに提供する。その代償としてビンセントはジェロームと一緒に暮らし、彼の生活を支えた。

ガタカ殺人事件とアイリーンとの逢瀬

アイリーン(左)とのデートを楽しむビンセント(右)

ジェロームになりすましたビンセントはガタカで順調に出世していった。一度だけ上司に正体を見破られそうになったが、その上司が何者かに殺されてしまう。この事件はフリーマン捜査官とヒューゴ捜査官が捜査にあたった。毛髪などの証拠品を集めた警察は、ビンセントがたまたま落としたまつ毛から、彼を容疑者と断定した。正体がばれると恐れたビンセントは「どこかに逃げよう」とジェロームに提案する。しかしジェロームは叱咤激励し、ビンセントは決意を新たにする。

そんな折、ビンセントはガタカの同僚であるアイリーンとデートをする。素晴らしいピアニストの演奏を聞き、美しい朝日の風景を眺め、2人の距離は近づいていく。
一方、ヒューゴ捜査官は不適正者居住区を強制捜査した。そこでビンセントが見つからなかったため、ビンセントが社員になりすまして、ガタカの職員として働いているのではないかと疑い始める。そこでガタカ全職員に対して、直接静脈から採取する血液検査が行われた。ジェローム扮するビンセントは検査の途中で注射を痛がるふりをして混乱させ、持ってきたジェロームの血液と自分の血液を入れ替えて、事なきを得る。安心したビンセントはアイリーンを再びデートに誘った。2人がラグジュアリーなレストランでお酒とダンスを楽しんでいると、突然警察が現れ、捜査を始める。ビンセントの慌てた様子を見たアイリーンは疑いを持つが、なんとかその場を逃れ、2人は熱いキスを交わし、一夜を共にした。ずっと地球から逃げたいと思っていたビンセントは、この時初めて地球にとどまりたいと思った。

ジェロームがビンセントではないか、と疑いを持ち始めたフリーマン捜査官は、アイリーンを伴ってジェロームの家を訪ねる。それに気付いたビンセントは自宅にいるジェロームに電話し、宇宙飛行士ジェロームを演じるように伝えた。ジェロームは足が不自由なことを上手く隠し、機転を利かせたアイリーンもまるで恋人同士であるかのように自然にふるまい、警察の目をごまかした。フリーマン捜査官はジェロームの手から直接血液を採取・確認したが、勿論ジェローム本人と確認された。フリーマン捜査官が去った後、真実を知り騙されたとショックを受けているアイリーンにビンセントは自分の素性を告白した。心臓に欠陥があり、もう亡くなっているはずの自分が宇宙に飛ぼうとしている。不可能は可能にできることをアイリーンに訴えたが、彼女は何も言わず去っていった。

その後、殺された上司の遺体を入念に調べた警察は、新しい証拠を掴み、ガタカの所長ジョセフを逮捕する。どうしてもタイタンへの打ち上げを決行したかったジョセフは、それに反対する被害者を殺してしまったのだ。殺人事件は解決したが、フリーマン捜査官はまだジェロームを疑っていた。なぜならばフリーマン捜査官はビンセントの弟アントンだったからだ。兄を身分詐称という犯罪から救ってやろうとするアントンに対して、ビンセントは「誰からの救いも求めていない」と言い放つ。ビンセントは家を出る前に「度胸比べ」でアントンに勝ったことを引き合いに出し、不適正者であっても適正者に勝てることを示した。そこで2人は海で再び「度胸比べ」をし、どちらが正しいか勝負することになった。そしてここでもビンセントは勝利する。その後、ビンセントはアイリーンに会いに行く。ビンセントの不可能は可能にできるという思いに共感したアイリーンはビンセントを許し、受け入れた。

宇宙に飛び立つ日

宇宙船の窓からの景色

いよいよ宇宙に飛び立つ日、ビンセントはジェロームから一生分の血液や尿などのサンプルをプレゼントされた。そしてジェロームはビンセントに「感謝している。体を貸す代わりに、夢を貰った」とお礼を伝える。ビンセントが出かけた後、ジェロームは焼却炉に身を投じ、自らの肉体を隠滅させた。

一方、数々の苦難を乗り越えたビンセントはついに宇宙に旅立つこととなった。しかし出発直前に血液検査が抜き打ちで行われ、担当のレイマー医師にジェロームになりすましていることがばれてしまう。万事休すかと思われたが、遺伝的欠陥がある子どもを持つレイマー医師は、同じ境遇でありながらも夢を掴もうとしているビンセントを信じ、なりすましには目を瞑った。そして温かく宇宙へと送り出した。打ち上げられた宇宙船の中からビンセントは万感の思いで星を眺める。この時ビンセントは地球を去ることを辛いと感じつつも、生命の源である宇宙にまるで帰るような心持ちになっていた。

『ガタカ』の登場人物・キャラクター

主要人物

ビンセント・アントン・フリーマン(演:イーサン・ホーク)

ガタカで仕事をするビンセント

吹き替え:宮本充(青年期)

ジェローム・モローになりすまし、第1級宇宙飛行士としてガタカで働いている。
遺伝的欠陥があるにも関わらず、難関試験も突破し、土星の14番目の月、タイタンへの宇宙飛行士に選ばれた。
ビンセントは遺伝子操作ではなく自然妊娠で生まれたが、出産後、神経疾患の発生率60%、躁うつ病42%、注意力欠如89%、心臓疾患99%、推定寿命30.2歳と診断されている。
その逆境を乗り越え、警察の捜査網をかいくぐり、仲間の応援を得て、ついに宇宙へと飛び立ち、夢を叶える。

ジェローム・ユージーン・モロー(演:ジュード・ロウ)

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