最強のふたり(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『最強のふたり』とは、2011年にフランスで公開された、実話をもとにコミカルに描くヒューマンヒストリー映画である。パラグライダーの事故で首から下が不自由になってしまった大富豪の男と、その介護人として雇われた、貧困層の黒人青年との交流を描いた物語。共通点のない2人が、それぞれの趣味を共有していく様子をユーモラスに描き、友情を育んでいく。第24回東京国際映画祭で最優秀作品賞と最優秀男優賞をダブル受賞した。監督・脚本は、フランスの2人組監督のエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュが担当している。

最速に改造した電動車椅子で滑走するシーン

改造した電動車椅子で滑走するフィリップ(画像右)とドリス(画像左)

公園を走っていたドリスは、後ろにいるフィリップに「なにノロノロ走ってんだよ。ほらもっとスピード出しなよ」と言い、「これが全速力だ」とフィリップが答える。そして2人は車椅子の改造を業者に頼むのだった。時速12キロに改造した電動車椅子で公園を走る時の、ドリスとフィリップの心から楽しんで笑っている笑顔が印象的なシーンである。

ドリスに連れられ耳のマッサージを受けるフィリップ

マッサージを受けるフィリップ(画像右)とドリス(画像左)

2人はショッピングをしたり改造した車椅子で走り回ったりした後、マッサージを受けにやって来た。フィリップを担当する女性が耳以外の場所に手を伸ばそうとすると「彼は耳だけでいいんだ」と止めるドリス。フィリップは耳を入念にマッサージされうっとりと幸せそうな表情を浮かべていた。価値観や趣味のまるで違ったフィリップとドリスが心を通わせ合い、2人で共に日々を楽しいでいる事が感じられる微笑ましいシーン。

フィリップとエレノアの初対面を見届けたドリス

店内にいるフィリップを外から見つめるドリス

フィリップを海辺のレストランに連れ出したドリスは、「もうすぐデートの相手が来るから」と言って席を外し、レストランの外でフィリップを見守る。何の事か分からないフィリップは戸惑うが、フィリップの席にやって来たエレノアに「フィリップね?」と笑顔で声をかけられ、ドリスが計らってくれたのだとすべてを悟るフィリップ。ふと窓に目をやると、やさしい笑顔でフィリップを見つめるドリスの顔があった。フィリップとドリスが言葉を交わさず見つめ合う感動的な場面である。

『最強のふたり』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

『最強のふたり』は実話に基づく作品

フィリップ・ホゾ・ディ・ボルゴ(本人画像右)とアブデル・ヤスミン・セルー(本人画像左)

フィリップは、名前も境遇も映画内の役柄とほぼ同じだが、ドリスのモデルのアブデル・ヤスミン・セルーはアルジェリア出身のアラブ系移民。ドリス役をオマール・シーに演じてもらいたいという監督の意向で、セネガルからの移民という設定になった。
実際のアブデルのフィリップに出会うまでの状況や環境は、映画で描かれているものよりも何十倍もひどく、ホームレス同然だったとのこと。採用されるはずがないと挑んだ面接で出会ったフィリップとアブデルは、1時間ですっかり意気投合したのだった。

フランス語の原題は『Intouchables』(アントゥシャーブル)

直訳すると「触れ合えない人々」。普通に生活をしていたら交わることはなかったであろう2人の人生を意味しているが、それに加え2人の置かれている状況や環境にも関係しているように感じられる。フィリップは大富豪でありながら障害を抱え、腫れ物に触るかのような気遣いを受けていただろう。一方ドリスは移民の黒人であることから差別を受けられがちでマイナスなイメージが付きまとう。全く正反対の2人でありながら、距離を置かれるという点においては似た者同士だったのかもしれない。そんな2人が出会い、補い合うことで観る者に勇気を与えてくれる。

映画の一部収益を寄付

エンドクレジットには、この映画の収益の5%は麻痺者を支援する団体に寄付されるということが書かれている。

『最強のふたり』の主題歌・挿入歌

主題歌:Ludovico Einaudi『Una Mattina』

Ludovico Einaudi『Una Mattina』

挿入歌:Earth, Wind & Fire『September』

Earth, Wind & Fire『September』

挿入歌:Earth, Wind & Fire『Boogie Wonderland』

Earth, Wind & Fire『Boogie Wonderland』

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@chisa410j9

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