ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』とは2011年のアメリカのドラマ映画。監督はスティーブン・ダルドリー。原作はジョナサン・サフラン・フォアの同名小説。9.11のアメリカ同時多発テロで父親を失ったアスペルガー症候群の傾向を持つ10歳の少年オスカーの葛藤と成長を描いたストーリー。オスカーと母が家族の理不尽な死と向き合い、愛情によって親子関係を修復し、絆を強めていく。映画評論家の反応は賛否両論であり、アメリカの有名な賞にノミネートこそしたが、ほとんど受賞を逃した。

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

トーマス「簡単だと、見つけ出す価値がない」

調査探検は「10歳のオスカーには難しすぎる」というリンダに、トーマスは「簡単だと見つけだす価値がない」と言う

父・トーマスが息子のオスカーに「調査探検」の課題を与えるが、母・リンダから「まだ10歳のオスカーには難しい」と言われたときに「簡単だと、見つけ出す価値がない」と父・トーマスは返す。
オスカーに自分の力で困難を乗り越えていく力を身につけて欲しいと願って放ったこの言葉には愛情が溢れている。
オスカーは父の言葉を思い出し、ブラックの鍵探しの調査をやり遂げた。
鍵探しの調査も難航したが、父だけでなく母の愛情を知り、祖父の存在に気づき、人の暖かさにも触れ、オスカーにとってとても価値のある経験になった。

オスカー(ナレーション)「もしも太陽が爆発しても、僕たちが爆発に気づくのは8分後だ。光が地球に届くには時間がかかるからだ。8分間の間、世界は明るく、暖かさを感じている。パパが死んでから1年がたった。パパとの8分間が消えていくのを感じる」

トーマスの死から1年後、オスカーは父の存在が遠くなっていくことに危機感を覚え、父を近くに感じ続けるために再び調査探検を開始する

「もしも太陽が爆発しても、僕たちが爆発に気づくのは8分後だ。光が地球に届くには時間がかかるからだ。8分間の間、世界は明るく、暖かさを感じている。パパが死んでから1年がたった。パパとの8分間が消えていくのを感じる」とオスカーは父を亡くしたことを太陽の爆発に例えた。

オスカーにとって父・トーマスは太陽そのものだった。
暖かくとても大きな存在。オスカーが地球ならばトーマスはなくてはならない太陽である。
オスカーは押し入れに置かれたチョウチョの標本の裏に父の写真や遺品を隠しており、時折それらを眺めて父を思い出していた。
オスカーは父の存在が遠くなっていくのをさみしく感じ、危機感を持っていた。
オスカーが再び調査探検を始めようとする原動力がこの言葉に込められている。

オスカー「よく言われると思うけど、もし辞書で“信じられないくらい美しい”という項目を引いたら、あなたの写真が載ってるでしょうね」

ブラックさん訪問で最初に訪問したのはアビー・ブラックという女性だった。オスカーは彼女に美しいと言い、部屋に入れてもらう

400人を超えるブラックという人を訪問することにしたオスカーが最初に訪問したのはアビー・ブラックという女性だった。
アビーは夫との離婚を控えており、非常にナーバスで不安定であった。

「よく言われると思うけど、もし辞書で“信じられないくらい美しい”という項目を引いたら、あなたの写真が載ってるでしょうね」

落ち込むアビーを励ますかのようにオスカーはそれがお世辞であっても美しいと言ってあげる。
他者の感情汲み取ることを苦手とするオスカーが一歩成長し、彼なりの優しさでアビーを思いやった言葉。
オスカーの気持ちが伝わり、アビーもオスカーを家に招き入れた。

リンダ「どんなに努力してもわからないのよ。なぜなら、それは…理屈じゃ分からないことだからよ!」

オスカーはトーマスの葬式を空の棺桶でしたことを理解できず、不満をリンダにぶつける

オスカー「あんなのただの箱じゃないか!空っぽの箱だ!」

リンダ「私だって空の箱だってわかってるわ!でも、私やあなたには必要なことだったのよ。パパにさよならを告げるために。パパは死んだのよ、オスカー。もう戻ってこないわ、二度と。どうして飛行機がビルに突っ込んだのか、どうして夫が死んだのか、私には分からない。どんなに努力してもわからないのよ。なぜなら、それは…理屈じゃ分からないことだからよ!」

オスカー「クソッタレ!何にもわかっちゃいないんだ!」

トーマスの遺体は見つからず、葬式は空っぽの棺桶で行われた。
オスカーはそのことが理解できず、不満に感じ反発していた。
この場面でもオスカーのアスペルガー症候群の可能性が浮き彫りになる。遺体がなくてはお葬式ではないというこだわりと、パパとお別れをするために形式上お葬式をするということの意味がわからずリンダを困らせる。
リンダも突然夫を喪い、やりきれない気持ちだった。息子にそれが理解されない辛さでいっぱいいっぱいになり、自分の気持ちを大声で叫んでいる場面は身近で大切な人を亡くした家族の心の痛みを感じる。

オスカー(手紙)「お知らせします。あの鍵は僕にとって重要なものではなく、ウィリアム・ブラックさんにとって重要なものでした。とても失望しました。でも、本来の持ち主に返せて本当によかったです。そして、何も得られないよりも、失望を得られた方がよかったと思っています」

鍵の調査を終えたオスカーは訪問したブラックさん全員に報告と感謝の手紙を書く

オスカーは父の残した鍵の持ち主がわかった後、それまで訪ねた多くのブラックさん全員に「お知らせします。あの鍵は僕にとって重要なものではなく、ウィリアム・ブラックさんにとって重要なものでした。とても失望しました。でも、本来の持ち主に返せて本当によかったです。そして、何も得られないよりも、失望を得られた方がよかったと思っています」と手紙を書く。

鍵は自分にとって重要なものではなかったけれど、持ち主を調査することで、母とのわだかまりが消え、多くの人々と会うことができたのだ。
困難を自分の力で乗り越えたオスカーからはトーマスの望んだ成長が感じられる。
「失敗からも学ぶことはある」ということを教えてくれる名台詞である。

『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

つまらないという評価の原因は母親のネタ晴らし

評価がわかれた本作であるが、つまらないと感じた多くの人がラストで母・リンダが先回りしてブラックさん宅にオスカーが訪問することを伝えておいたことをオスカーに伝える点がよくなかったとしている。
映画では原作にはない母親のネタ晴らしを作品の山場を作るために盛り込んだが、リンダが最後に全部見守っていたことをオスカーに告げるシーンは、オスカーのプライドを傷つけるとして非常に評判が悪かった。

このネタ晴らしを不快だと感じる人がいる一方でこんな意見もある。
オスカーは10歳という難しい年齢である。思春期の前、親にまだまだ甘えたい、頼りたいと思う半面、だんだん親が疎ましくなる両方の気持ちを併せ持ち、人生経験の少なさからその気持ちをどう処理していいか自分でもわからないというような矛盾を抱えている年齢である。
その年代の子供というのは“冒険→確認→安心→反抗→冒険→確認”を繰り返しながら成長していく。
なので母親がいつも見守ってくれていたということでオスカーは安心感を感じ、また次の冒険へ向かっていけるようになるのだ。

この映画の焦点が「オスカーが大好きな父の死を乗り越える過程と、彼を取り巻く周りの人の愛情(とりわけ家族の愛情)」に焦点が絞られているため、オスカーが母親が常に見守っていてくれたこと知り、愛情を感じては母と和解するところを盛り込むために母親のネタ晴らしは必要不可欠である。

議論を呼んだ映画の長いタイトルとその意味

「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」という長いタイトルが話題になった本作であるが、これはオスカーが鍵の調査の記録用のノートのタイトルである。
このタイトルの意味が何を示しているかも議論を呼んだ。

オスカーから見たトーマスとリンダのこと

父・トーマスは亡くなってからもオスカーの記憶の中で雄弁に語り続ける。記憶から薄れていくことはない。母・リンダにしてもオスカーが出かけるたびにいつももの言いたげな目で見つめてくることを鬱陶しく思う。
トーマスは亡くなってからもブランコにメモを残してくれたし、リンダはブラックさん探しの際にいつも見守っていてくれた。
二人ともありえないほど近くに寄り添っている。
そんな両親を多少げんなりした思いも含めて、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」とした。

鍵探しをしたオスカーの感想

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