グッドライアー 偽りのゲーム(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『グッドライアー偽りのゲーム』とは、ニコラス・サールの小説『老いたる詐欺師』を映画化したクライムミステリーである。監督は数々のヒット作を持つビル・コンドン。イギリス映画界の重鎮であるヘレン・ミレン、イアン・マッケラン、ジム・カーターを起用し、緊張感に満ちた、良質な大人のサスペンスを生み出した。世間を知らない初老の資産家ベティの全財産の乗っ取りを企む老獪な詐欺師ロイと、相棒のヴィンセントが仕掛ける危険な罠。60年もの間ベティの心の奥底にくすぶっていたロイへの怒りが今、解き放たれようとしていた。

『グッドライアー 偽りのゲーム』の概要

『グッドライアー 偽りのゲーム』とは、監督のビル・コンドンが手掛けた「大人の騙し合い」をモチーフにした作品である。彼は2006年「ドリームガールズ」でジェニファー・ハドソンにアカデミー助演女優賞をもたらす。2011年に「トワイライト・サーガ」シリーズの4作目「トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 1」、同じく5作目2012年「トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 2」で、この世界的人気シリーズの最終章を完成させた。続いて、2017年「美女と野獣」の大ヒット後、2017年「グレイテスト・ショーマン」では脚本を担当し、「This Is Me」で第75回ゴールデングローブ最優秀主題歌賞を獲得。今作でインターネットの出会い系サイトを通して詐欺師ロイと知り合う、裕福な未亡人ベティを演じるのは、「クイーン」でアカデミー主演女優賞を獲得した英国女優ヘレン・ミレン。ロイを演じているイアン・マッケランもまた英国が誇る、舞台・映画で活躍してきた名優である。今作が意外にも初共演となる2人だが、そのことが逆に物語に真実味を与える要素となった。真面目で誠実な老婦人という仮面が、緻密な計画を秘めた「もう1人の詐欺師」としてのベティの側面を覆い隠している。長い間囚われ続けた忌まわしい自分の過去との決別を図るベティ。対するベテラン詐欺師ロイは、表向きは辣腕実業家という触れ込みで投資詐欺を仕掛け、大勢の人たちを陥れてきた、殺人をも辞さない冷酷な男であった。お互いに魅力を振りまきながら駆け引きを有利に進めようと目論む2人の騙し合いは、やがてベティにとって未解決の「ある事件」へと紡がれていくのだ。幾重にも絡み合った策略と罠の数々。シーンを追うごとに、それらがひとつの結末へと集約されていく様を目の当たりにした観客は、恐るべき謎解きの醍醐味をじっくり味わうことができるだろう。

『グッドライアー 偽りのゲーム』のあらすじ・ストーリー

ふたりの出会いはインターネットの出会い系サイト

自宅でインターネットの出会い系サイトのプロフィール欄に自己紹介を入力するベティ。

ロンドン2009年。
老婦人がインターネットの出会い系サイトに自分のプロフィールを記入している。彼女の名前は「エステル」。「希望する交際の形態」欄には「親交」。夫とは死別。飲酒なしとしたが、実際にはお酒を飲みながら入力をしている。息子が1人いたが交通事故で死亡と記入する。

ロイはインターネットの出会い系サイトの登録者。次のカモとして選んだのは、裕福な資産家の老婦人ベティだった。

同じ頃、このエステルのプロフィールを閲覧している出会い系サイトの登録者がいた。彼は自分の「ある目的」に合う人物を物色している最中だ。この老紳士風の男性の名前は「ブライアン」。「希望する交際の形態」欄には「恋愛」と書き込む。妻と死別。タバコは吸わないにチェックを入れた彼は、タバコを吸いながらパソコンに向かっている。息子が1人いるが、口も利かないと追記。お互いにチャットを楽しんだブライアンとエステルはディナーの約束をする。

ロイ(左側)とベティ(右側)の初めてのデートは、素敵なレストランでのディナー。

ロンドンの一角にあるお洒落なレストランで初デートの日。エステルは先に来てブライアンを待っていた。遅れて席に着いた彼は、この初デートに緊張していて来るのが遅れたと言い訳をする。出会い系サイトのプロフィール欄には「飲酒なし」と書いたエステルだったが、ウォッカマティーニのグラスを慣れた手つきで口に運ぶ。その様子を見ていたブライアンに、車で来たかどうかを問われたエステルは、孫のスティーヴンが食事後に迎えに来てくれることになっていると告げる。たった1人の孫を大切にしていると話すエステルが、ブライアンの家族について質問すると、ブライアンの妻ハリエットは3年前に亡くなり、息子のロバートは現在オーストラリアに住んでいるという。エステルは夫アラスデアが1年前に死亡したことを話す。そしてブライアンに、コンピューターサービスでの出会いの経験が何度もあるのかと質問を投げかける。ブライアンは「お互いの情報を正確に教え合えば時間の節約になるのに」とおどけてマッチングアプリの問題点をぐちる。実際に会ってみると、ほとんどの場合、プロフィールとはかけ離れているということらしい。ブライアンは初めての相手に会いに行くたびに、「希望を持て。今度は違うぞ」と自分に言い聞かせるそうだ。
エステルが自分は楽観主義者だと言うと、ブライアンは気が楽になったようで、出会い系サイトのプロフィールの件で告白したいことがあると言い出す。「嘘をついていた。私は不誠実なことが何よりも嫌いだ。本当の名前はブライアンではない。ロイ・コートネイだ」と。それを聞いたエステルは「あら、そう。今度は私が告白する番ね。私の名前はエステルじゃないの。本名はベティ・マクリーシュよ」と返す。お互いに正直に告白したことで緊張がほぐれ、2人は改めて握手をする。

ディナーの後、ベティ(左側)を迎えに来てくれた孫のスティーヴン(右側)。

レストランを出ると、ベティの孫のスティーヴンが車のクラクションを鳴らした。ベティが送りましょうかと親切に聞くとロイは「いや、パディントン駅だから近いので大丈夫だよ」と辞退した。ベティとスティーヴンに別れを告げたロイは、すぐにタクシーを捕まえてある場所へ急ぐ。繁華街でタクシーを降りたロイは小走りでストリップクラブに入って行った。

ディナーを終え、ベティと別れるとすぐさまロンドンに引き返し、ストリップクラブに直行するロイ。投資家のブリン(左側)、もう1人の投資家(その右隣)、ロイ(右側)と詐欺の相棒のヴィンセント(真ん中)。

店の奥の個室では、ロイのビジネスパートナーのヴィンセント・ハロランと2人の投資家が待っていた。実は、ロイの裏の顔はベテランの詐欺師だった。うま味のある投資話をカモに持ちかけて、相手の資産を奪ってきた常習犯だったのだ。ロイを待っている間にヴィンセントから投資家たちへのルールの説明は終わっている。ヴィンセントが「用心のため投資家の方々は名乗らないことにする。ロイと私は過去にかなり儲けたので、新しい投資グループにお2人をお誘いした」と今夜の会合の目的を言う。続けてロイが「最近ある人々と知り合う機会を得たが、80万ポンド投資する用意があるという。私は『裏道』に通じた銀行家なので、彼らに金を倍にする約束をした。つまり『有限責任組合』への投資です」と。
ヴィンセントが引き取って「『有限責任組合』とは我々のことですよ」と、2人の投資家を指しながら『仲間』という親近感を感じさせるように念を押す。ロイが続ける。「でも、彼らの条件として、我々が先に金を入れろと言っている。金額は20万ポンド。1人5万ポンドずつだ」。つまり、ここにいる4人が5万ポンドずつ出し合えばいいことになる。ヴィンセントが「我々には大した額じゃないがね」と余裕を見せ、2人の投資家を安心させようとする。ロイは「それは何よりだな。では」と会合を終わらせようとすると、投資家の1人から質問が出る。「1つ聞く。正直な答えは期待しないが。この話の危険性はどれくらいだ?」。ヴィンセントがロイの顔色を窺う。ロイが「その質問に答えるのは難しいな」と言うと、その投資家は「まあ、よしとしよう。もう1つの質問だ。たぶん答えないだろうがね。取引相手は何者なんだ?」と突っ込んできた。ロイは「我々と同じく彼らも匿名を望んでいる。しかし、あなたの」と言いよどむと、投資家は「ブリンだ」とうっかり自分の名前を名乗ってしまう。ロイが「最初のルール違反者か。だが、お答えしよう、ブリン。彼らは外国人であり、英国の投資家層の一員になりたがっている」と少しだけ情報を開示した。そこで、もう1人の投資家が「ロシア人か?」と聞くと、ロイが「当たり」と答える。それを聞いたブリンは「コサック人どもは大嫌いだ」とバカにしたようにふるまう。それを聞いたロイは「参加できないなら、ブリン。ここから先は退席して頂きたい」と突き放すように言う。ブリンは「そんなことは言ってないだろ?」と慌てて言い訳をする。ロイは「よろしい」と満足そうに答え、「あなた方が投資する金は4倍になって戻ってくる」と投資家2人にエサを投げ与える。その時ロイの携帯電話の着信が鳴る。ベティからだった。

2回目のデートで映画「イングロリアス・バスターズ」を観たロイ(左側)とベティ(右側)。

2回目のデート。2人は映画館で「イングロリアス・バスターズ」を観た。映画館を出た2人は映画の感想を語り合う。ロイが「あいにくヒトラーはフランスの映画館で銃殺されてはいないよ」と冗談を飛ばすと、ベティは「でも、殺されるべきだったわ」といまいましそうに答える。ロイが「若者がこれを観たら、事実だと思ってしまうな」不満げに言う。それを受けてベティは「40年間教師だったけど、若い世代は我々のように何でも簡単には信じたりしないものよ」とロイの考えをやんわりと否定した。

映画館を出て歩いていると、ロイ(左側)が突然立ち止まり、そばのベンチに寄りかかる。膝の痛みがぶり返したらしい。心配そうなベティ(右側)。

ロイとベティは楽し気に夜の街を歩いていく。すると、ロイが突然そばにあったベンチにもたれかかった。持病の膝痛が襲ってきたのだ。ロイは「大丈夫だ。すぐに治るから」と言う。ロイが心配なベティは腕をからめ支えながら歩きだす。

ロイ(右端)が、借りたビルの一室で、部屋の飾りつけのために雇った作業員たちと投資家を迎える準備をしている。

ある日のこと。ヴィンセントが「調査審議会」ビルの中に入っていく。そこではロイが部屋の飾りつけの指揮を執っていた。どうやらここは今回の投資家たちとの会合のためにロイとヴィンセントがレンタルした部屋のようだ。壁に大きな絵画を掛け、長いテーブルと椅子も設置されていた。

集まった投資家たち。ロシア人ヴラドの仲間(左端)、ヴラド(左から2番目)、ヴィンセント(左から3番目)、ロイ(真ん中)、2人目の投資家(右から2番目)と投資家ブリン(右端)

しばらくして会合が始まった。先日のストリップクラブでの会合にいた投資家2人に加え、新たにもう2人が着席している。カリブ海の物件の写真が掲載されたパンフレットが全員に配られると、ロイから今回の共同投資の説明が始まった。この物件の購入後には、事前の交渉のとおりに2倍の価格で転売されることになることが明らかにされる。ロシア人ヴラドから「利益はいつ入る?」と質問が飛ぶと、ロイは「1週間後です」と答える。それを合図に、ヴィンセントが机の上のアタッシュケースからキーパッドを取り出した。ロイと自分の横に座るヴラドにキーパッドを渡す。そしてロイが「すべての取引は電子的に、このキーパッドで行われます。では、この共同口座へ我々4人の合計額の20万ポンドを送金します。」と言いながら自分のキーパッドに20万ポンドと金額を打ち込む。そしてヴラドに「それでは、あなた方の資金を送金して下さい。金額は80万ポンド。送金後は成功が待ってますよ」と快活に言う。ヴラドが「あなた方は20万ポンドで、我々は80万ポンドか?」と疑問を口にする。ロイはすかさずなだめにかかる。「投資額が大きければ利益も大きい」と。この言葉に一同から納得の笑い声が上がる。次いで、ロイが「他に質問はないですね?」と最終確認すると、ブリンが「1つあるぞ」と言う。落胆のため息を漏らすロイ。ブリンが「プーチン(ロシア人のヴラドのこと)の取り分はどうなる?」と笑いながら皮肉を言う。すると、怒ったヴラドはキーパッドに「中止」と入力し、仲間と一緒に席を立って部屋から出ていく。ヴラドをからかい過ぎて場の空気を悪くしたブリンにロイは「ヴラドの信頼を取り戻すしかないな、ブリン」と諭す。

ロイがベティの自宅に招き入れられる

ベティ(右側)の自宅に招かれたロイ(左側)

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