それでも世界は美しい(それセカ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『それでも世界は美しい』は、椎名橙が花とゆめコミックスで連載していた少女漫画およびそれを原作としたアニメ作品。ファンタジーで晴れや氷、雨や砂など自然からとられた国名が出てくる。雨の公国の末娘ニケと晴れの大国を統治するリヴィウスとの歳の差ラブストーリー。リヴィウスの好奇心から物語が始まるがニケの優しい性格が荒んでいたリヴィウスや他の人々の心も溶かしていくことになる。リヴィウスはニケに心を惹かれていくが自分の過去を受け入れてくれるのか不安に思う。またニケ自身の能力の秘密についても明らかにされる。

『それでも世界は美しい』の概要

『それでも世界は美しい』とは、2011年より椎名 橙が花とゆめコミックスで連載していた少女漫画およびそれを原作としたアニメ作品である。3回の読み切りを発表後、2012年2号から2020年11、12号併合まで連載された。2020年9月までの累計発行部数は300万部を突破した。さらに、アニメは2014年4月から6月まで放送された人気作品だ。
『それでも世界は美しい』のジャンルはファンタジーもの。作者は椎名橙。魅力は、ファンタジーならではの世界観や文字などが出てくることだ。
物語の冒頭は、雨の公国の末娘「ニケ・ルメルシエ」が世界を征服した晴れの大国の太陽王「リヴィウス」の元へ嫁ぐところから始まる。太陽王の評判は悪く、ニケは嫌々ながらも大国へ向かうが太陽王を初めて見たニケは太陽王が子供だということを知り驚愕する。初めはお互い印象が良くなかったものの、ニケがリヴィウスを暗殺者の手から救ったことをきっかけに、リヴィウスはニケに心を惹かれていった。
リヴィウスを見てきた他のキャラクターの想いやニケのアメフラシの秘密についても謎が明かされていく。
恋愛ストーリーだけに焦点を当てるのではなく、リヴィウスが心を荒ませてしまった原因や悪役にも辛い過去があったことなどが描かれ、1人1人のキャラクターの心情を丁寧に描いたストーリーになっている。

『それでも世界は美しい』のあらすじ・ストーリー

雨の公国の末娘ニケ・ルメルシエと晴れの大国リヴィウス王

「雨の公国」の王族は天候を支配する能力に優れており、中でもアメフラシに特化している。そんな話を聞いた太陽王リヴィウスは、雨の公国の4人姉妹の1人を自国へ嫁がせる代わりに、雨の公国の自治を認めるという交換条件を提示した。太陽王は評判が悪く、4姉妹は誰も自ら結婚を申し出ようとはしなかった。ジャンケンに負けてしまった末娘のニケは、嫌々ながらも「晴れの大国」へ向かうことになる。どんな王様でも愛してみせる、と腹を括っていたニケだったが、太陽王がまだ子どもだという事実に驚愕する。

世界征服を果たした太陽王リヴィウスは、地上の政治や国務に飽き、つまらない日々を過ごしていた。全てを手に入れたかのように見えた太陽王にとって、まだ見たことのないものが「雨」であった。リヴィウスはニケ姫にアメフラシで雨を降らせるよう求めるが、それをするためには条件があり、「この国の美しさを術者(ニケ)に提示させること」が必要だった。それはつまり、ニケ自身が晴れの大国の美しさを知らなければアメフラシは行えない、ということである。このことを聞いたリヴィウスは、翌日ニケに食事や服をプレゼントする。しかし、ニケは「物では駄目」だと言う。ふとニケが庭先に目をやると「ムクゲノルリマツリ」という花が咲いており、これを見たニケは目を輝かせる。雨の公国にあるものより花弁が大きく、ニケも見たことのない色だったのだ。ニケはリヴィウスに「こういうことを教えてくれればいいんだ」と生き生きした顔で言うのだが、リヴィウスはなぜニケがそんなことで嬉しそうにしているのか理解できない。そう言われたニケは、リヴィウスが世界を手にしていながらも、世の中のことを何も知らないという事実に悲しくなった。

それからニケは、政務を行ってばかりいたリヴィウスを外に連れ出し、リヴィウスも渋々これに付き合うようになる。だんだんとニケとリヴィウスの距離が近づいていったかのように思えたが、ある日茂みからリヴィウスを狙う暗殺者が矢を放ち、ニケは咄嗟にリヴィウスを庇う。ニケの命は助かったものの、リヴィウスは自分とニケが見ている世界が違うことを痛感した。憎しみや裏切りが渦巻く世界で生きてきた自分に対し、純粋に花が綺麗だというだけで嬉しそうな表情を見せるニケ。体調が回復したニケに、自国に帰るようリヴィウスが命令する。わけがわからないまま帰国の途に着いたニケに、リヴィウスの首席秘書官ニールがリヴィウスの秘密を語り始めた。リヴィウスの母シーラは3年前に暗殺されてしまい、その悲しみを国務で憂さ晴らししてきたということ。そしてリヴィウスがニケに帰国を命じたのは、ニケをこれ以上危険に晒さないためのリヴィウスなりの優しさなのだということ。話の途中、城から煙が上がっているのが見えた2人は、急いで城へと引き返す。ニケはアメフラシの歌を歌うことで火を消し、リヴィウスを助けることに成功した。生まれて初めて目にした「雨」とニケの優しさがリヴィウスの中の何かを動かし、リヴィウスはニケを正式に婚約者として認める。

政務に追われるリヴィウスとニケは会う時間が減ってしまい、ニケは少し政務を減らすようリヴィウスに提案する。しかし、リヴィウスはこれを突き放し、ニケは悲しく思っていた。その時、ニケは祖国である「雨の公国」でアメフラシを教わった師匠婆様(本名シシル)の教えを思い出していた。その教えとは、アメフラシで潤すのは大地だけでなく、歌を相手の心の奥まで届ける、というもの。ニケは少しでもリヴィウスの心を癒したいと考え、自身の披露パーティーでアメフラシを行うことを決意する。これを見たリヴィウスは、ニケが自分に伝えたい想いを理解し、ニケとの距離を縮めていった。

婚約式

しばらくして、リヴィウスとニケは正式に婚約式を挙げることになった。王族の結婚には国の最高機関である神官庁の許可が必要なのだが、ニケが異民族であるという理由で承認されなかった。どうしても承認されたいのであれば「闇帰りの儀」を行い、神官庁の人間から認めてもらうしかない。「闇帰りの儀」とは婚約式で使う特別な指輪を太陽宮神殿の地下まで取りに行くというもので、これを成立させれば太陽神に認められ王家に入るのを許される、とされていた。しかし、これまで何人もの姫がそこで落命しているという。ニケはその話を聞いた上で「闇帰りの儀」を受けて立とうとするが、「これを受ければリヴィウスを恨む人間がニケを認めないと言う度に戦わなければならない」とニールが心配する。

「闇帰りの儀」当日、覚悟を決め太陽宮神殿の地下に向かったニケ。神官アリステスから様々な妨害を受ける中で必死に逃げるニケの腕を、誰かが捉えた。ニケが見てみると、そこにはリヴィウスの姿が。2人で協力しながら儀式を進めようとする。

結果的に2人は指輪を手に入れることができず、婚約式当日を迎えた。ニケは婚約式を諦めきれず、天候を操る力を応用して太陽そのものにリングをかけて婚約式を成立させようとする。そこでまたも邪魔が入り、リヴィウスがニケを手助けしていたことがアリステスによって暴露されてしまう。リヴィウスは全てを公の場で明らかにしたが、アリステスを処刑することはなかった。今までのリヴィウスなら間違いなく処刑にしていたはずだが、ニケがリヴィウスをここまで変えたのだった。アリステスは安心したかのように微笑む。しかし、ニケからすればアリステスは自分を殺そうとしてきた相手だったため、ニケがアリステスを一発殴って婚約式は無事に終了した。

雨の公国

ニケが晴れの大国で暮らし始めて3ヶ月がたった頃、謁見が続き流石のリヴィウスも疲れた様子だった。そんな中、雨の公国からニケ宛に急ぎの文が届き、ニケは師匠の婆が倒れた事を知る。故郷へと立ったニケの後を追い、リヴィウスも出立した。

婆はただのぎっくり腰で命に別状はなく、ニケは安堵する。しかし、リヴィウスは婆が何かを画策していることに気付いていた。その画策とは、ニケを晴れの大国には帰さず、リヴィウスに対してはニケへの想いを忘れさせるよう暗示をかけることだった。婆によると、「ニケは世界に干渉する力があるためここにいた方が安全だ」ということだった。しかし、そんなことでニケを諦めるリヴィウスではない。リヴィウスの想いを知った婆はニケを捕えている牢屋の鍵を泥沼に落とし、それを見事に探し当てられたらニケを返そうとリヴィウスに告げる。

必死で鍵を探すリヴィウスだったが、泥沼の波に呑まれて意識を失ってしまう。一方、牢屋の中で婆の真意を従兄弟のキトラから聞かされていたニケだったが、当然ニケもそんなことでリヴィウスを諦めずはずがない。なんとかしてリヴィウスのもとへ行こうと牢を破ろうとするニケの姿に心打たれたキトラは、ニケを逃がす。ニケがリヴィウスのもとへ辿り着いた頃、リヴィウスが意識を取り戻した。彼はその手にしっかりと牢屋の鍵を握っていた。無事にニケを取り戻したリヴィウスは改めてニケを幸せにすることを誓い、ニケとともに晴れの大国へと出発する。

リヴィウスの過去

公務が落ち着き、慰安旅行に向かったリヴィウスとニケ。道中には、護衛のバイロイト将軍の息子であるガルタ少年も連れていくことになった。宿に着いたニケは、温泉に入ったり、リヴィウスとの時間を過ごしていた。ところが、「空の大公国」の支配者ネフェロ・スティクス・レテにニケが連れ去られてしまう。ニケは薬を飲まされ、一時的に声を奪われ風を使うこともできなくなってしまった。ネフェロはもともとニケのアメフラシの能力を利用して世界征服を企んでいたのだが、いつしかニケに惹かれていくようになる。ネフェロはニケと婚姻関係を結んだと貴族も民も集めた会場で宣言したが、状況を飲み込めないニケはショックを受ける。ニケは幽閉されるが、そこでリヴィウスにそっくりな人間アルターリアに出会う。

一方、ニケがいなくなったことに気付いたリヴィウスたちは、空の大公国に向かっていた。その途中リヴィウスたちはネフェロの兄カタラと出会う。リヴィウスはカタラとともに空の大公国に向かうことにした。一方、ニケはアルターリアと外に出る。しかしアルターリアの目的は、代々より雨の公国で一番の歌い手に引き継がれている ”秘術” で世界を滅ぼすことだった。アルターリアは碑の前にニケを連れて行くと、碑の中から現れた謎の黒霧がニケを引きずり込んだ。その後、地震に続き雨や雷が大公国を襲う。

黒霧に体を乗っ取られたニケだったが、龍神様が光を発したことで窮地を脱した。龍神様が言うには、リヴィウスがニケを呼んだため、逃げ道ができたという。やっとの思いで再会を果たしたリヴィウスとニケ。その後リヴィウスは、アルターリアが北に向かったことを知る。過去の決着をつけるため、リヴィウスはアルターリアを追う。その際、ニケを大国に置いていこうとしたが、ニケは大国にいても危ない目に遭わないとは限らないと伝え、リヴィウスとニケはともに北に向かうことになった。

アルターリアに追いついたリヴィウスたち。アルターリアは世界を破滅に導くために悪霊に会おうとしていた。復活した悪霊は守護者を引きずり出し、世界を滅ぼし始めていく。リヴィウスたちは急いでアルターリアを背負い、守護者の声がする方へ走った。悪霊を封印すべく、アルターリアが古代語を読み、その言葉にのせてニケが歌い出す。悪霊は封印されたが、そのとき地面が崩れてしまい、同行していた赤眼の持ち主であるツバイが落下しそうになる。アルターリアは、ツバイを守るため彼女を抱き抱えながら谷に落ちていった。アルターリアは傷がひどく、もはや助かる見込みはなかった。ニケはアルターリアがなぜここまで追い詰められてしまったのかを知りたいと思い、彼の記憶の中を覗かせてもらうよう守護者に頼んだ。

ニケを救う

アルターリアの記憶の中から戻ってきたニケは、なぜアルターリアのような悲しい目に遭う人間がいるのかと悲しく思った。ニケは、アルターリアを助けるためには自分が次の守護者になればよいことを悟る。「リヴィウスに、もう二度と会えなくなる」という葛藤もあったが、覚悟を決めたニケはリヴィウスに別れを告げ、新たな守護者になった。

リヴィウスは、守護者となったニケを自由にしたいと試行錯誤していた。ニケの姉であるカラたちが滝の裏で見つけた碑で覚醒したこの悪霊は、最後の闇の帝国闇帝シドン・テテオラルクの自意識と、前守護者に会いたいという想いを留めた個体だった。ニケの前の守護者の名前はティルスといい、当時の最高術者だった。

始まりは古代文明だった。古代文明では遺跡のような技術と、声や歌で操作する一見魔法にしか見えないものとの両柱で成立していた。しかしあるとき、古代文明がこの星に大きな欠損を与えて滅び、それと同時期に最初の守護者が誕生した。そして時が立ち、2つの技は2つの民に引き継がれた。技術と言語は北に残り闇の帝国に、魔法は海を渡り雨の公国に渡った。当時、雨の公国の王族の1人だったティルスは、闇の帝国に乗り込んで「世界征服に気象を扱うのは見過ごせない」と言った。「兵器の放棄を約束してくれるなら殺しても構わない」と言うと、シドンは「お前があの遺跡を差配してみろ」とティルスに言った。ティルスは遺跡の力を、世界平和のために振るった。そしてシドンはティルスが実際に強大な力を持っても性格が変わらなかったことに衝撃を受けた。シドンにとって唯一、一緒にいてもいいと思える存在となったティルスだったが、やがて守護者になるためシドンと離れる事になった。

アルターリアとメンフィスは王宮の地下まで行き、古代書物の中から1つの文献を見つける。そこには、守護者が帰ってきた事例が載っていた。曰く、守護者と同等の力があれば守護者は交換可能だという。つまり、悪霊はかつて世界を滅ぼしかねなかった災厄だが、彼女はすでにシドンという自分を取り戻しつつあり、各地に散った悪霊を統合できれば高位の精神体になる可能性があるという。ニケに会えるかもしれないという希望が見えてきたリヴィウスは膝を突き、涙した。しかし、地道に全ての遺跡を回って分散された力を取り戻していくにしても、リヴィウスの寿命のうちには終わらなかった。だが、湖の王国や砂の皇国など今までニケと関わり合った首脳達が、晴れの大国に集まり協力してくれることになる。リヴィウスは、民衆にも助けを求めどんどん悪霊は元の力を戻していった。

遺跡を探し始めて6年。ようやくシドンは亜空間でティルスと出会うことができた。そしてシドンが消えて1ヶ月後、帰還を果たしたニケは、大人になったリヴィウスと再会を果たすことができたのだった。

『それでも世界は美しい』の登場人物・キャラクター

主要人物

ニケ

CV:前田玲奈
雨の公国の末娘。天候を操る能力を持つ。言葉遣いが男っぽいが王族の娘で、ひょんなことから晴れの大国に嫁ぐ事になる。
高位術者だが幼い頃は、その能力を持たずして生まれた異端児であった。しかし、ニケは努力でアメフラシを手に入れた。

のんびりした国で育ったため、晴れの大国のようなしきたりに縛られることが嫌いで、しょっちゅう首席秘書官のニールに叱られる。
しかし王族、市民関係なく優しく接し、多くの人に慕われている。

リヴィウス

CV:島崎信長
晴れの大国統治者リヴィウス一世。12歳にして世界を制している。
しかし幼い頃は母親のシーラが側室の子供ということで多くの暗殺者に狙われており、自分の身と母親を守るため暗い幼少期を送っていた。
また、裏切りや死を多く見てきたこともあり、ニケに会うまで心を閉ざしていたがニケのおかげで性格が丸くなる。

最初は、雨が見たいという自分の欲求のためニケを呼んだが、今まで自分の思い通りになってきた人間と違い、ニケの自分の意思を貫くところや優しさなどに惹かれていく事になる。

ニール

CV:杉田智和
リヴィウスの首席秘書官ニール。真面目な性格でとても頭がいいのだが、こどもっぽい側面もある。
リヴィウスを昔から知っていて、ずっと陰ながら支えてきた。

村を焼かれ、売られた先で新たな家族と出会う事になる。その村を出た後、王都で文官となりリヴィウスの首席秘書官になった。

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