ウィザードリィ外伝 五つの試練(The Five Ordeals)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ウィザードリィ外伝 五つの試練(The Five Ordeals)』とは、2006年にWindowsで発売された3Dダンジョン・ロールプレイングゲーム。日本国産の『ウィザードリィ』シリーズの1つである。
正伝シリーズへの原点回帰をうたい、初期の5種族8職業というシンプルなゲームシステムと、前作の『戦闘の監獄』のUI(ユーザーインターフェース)を採用。ストーリーが独立した公式5本のシナリオに加え、ユーザーが作成したシナリオを遊ぶ事もできるエディタが組み込まれている事が特徴。

『ウィザードリィ外伝 五つの試練(The Five Ordeals)』の概要

『ウィザードリィ外伝 五つの試練(The Five Ordeals)』とは、2006年6月8日にWindowsで発売された3Dダンジョン・ロールプレイングゲーム。日本国産の『ウィザードリィ』シリーズの1つ。
開発元は有限会社59、発売元はIRI-CT(現:イード)である。2009年9月18日~2021年4月1日までダウンロード販売も行われていた。
元来『ウィザードリィ』シリーズは3Dダンジョンに潜り、コマンド選択式で魔物と戦い、経験値と財宝を得るという、後の日本産ロールプレイングゲームのジャンルに多大な影響を与えた原点とも呼べるゲーム。その流れを汲む本作は、原点回帰をうたい、5種族8職業という初期のシンプルなゲームシステムと、本作の前作にあたる『戦闘の監獄』のUI(ユーザーインターフェース)を採用。ストーリーが独立した公式5本のシナリオに加え、ユーザーが作成したシナリオを遊ぶ事もできるエディタが組み込まれている事が特徴。

『ウィザードリィ』シリーズはシステム面では、第1作である『狂王の試練場』ですでに完成を見ているという意見もあり、後発で数多くの作品が生み出されているにも関わらず古参ファンの間では「第1作こそが至高。原点にして頂点」という意見が未だ根強い。
外伝シリーズに代表される日本国産の後継作品においても、人気が高いものはシステム面を大幅に改変する事はなく、ストーリーやマップ、アイテム、モンスター等のデータを変更するだけの小規模なものに留められる事が多かった。

そこで本作は、原点に近いシステムでの新たな『ウィザードリィ』を望む声に応え、前作『戦闘の監獄』をベースにしたシステムプログラム部分と、その上で動くデータ部分(シナリオ)を完全に分けた設計を採用。
プレイヤーは最初に用意された5つの基本シナリオを並行して遊べるだけでなく、シナリオエディタによりシナリオデータを独自に作成し、ユーザー自身の手で創り出された新たな冒険の舞台をも楽しむ事が可能になっている。

それぞれのシナリオは、迷宮やアイテム・モンスターのデータなどだけでなく、一部のゲームルールの取り扱いなども完全に独立している。このため他のシナリオでレベルを上げた冒険者をそのまま別のシナリオで使い続けたりすることはできない。
ただし後のバージョンアップで転生システムが導入され、シナリオに直接影響されないデータ(名前、種族、職業、性別、性格、敵殺傷数)を引き継いでのシナリオ間転送が可能となった(レベルは1となり、各能力値は種族、あるいは職業の最低値となる)。

本作が『ウィザードリィ』ファンの間でも特に熱狂的な評価を得ている要因は、洗練されたインターフェースによる快適な動作環境(すべての『ウィザードリィ』シリーズと比較してもトップクラスである)と、有志により制作され100本以上存在するユーザーシナリオを遊べる点にある。
シナリオエディタサービスのダウンロード数は2300名以上を超える人気ゲームであり、ユーザーシナリオの中には正伝シリーズに勝るとも劣らない高評価を得ている作品も多数存在する。結果として本作は「一生遊べるウィザードリィ」との呼び声も高い。

本作は『五つの試練』というタイトルが示す通り、5本のシナリオそれぞれに独立したストーリーが存在している(個々のシナリオストーリーの具体的な内容は後述の「『ウィザードリィ外伝 五つの試練(The Five Ordeals)』のあらすじ・ストーリー」を参照)。
だが基本的なゲーム内容はすべて共通しており、城塞都市を拠点として6人パーティを組み迷宮に挑み、城と迷宮を往復しながら迷宮内にあるクリアアイテムを城に持ち帰る事で、エンディングを迎えゲームクリアとなる(クリア後も迷宮に挑み続ける事は可能)。
この仕様はエディタを用いて作成されたユーザーシナリオに関しても同様である。

『ウィザードリィ外伝 五つの試練(The Five Ordeals)』のあらすじ・ストーリー

本作は公式およびユーザーシナリオの数が膨大であり、用意されているストーリーもシナリオ毎に大きく異なる。
ゆえに本項においては、公式にて用意された基本シナリオ5本のストーリー紹介と解説に留める。

旅人の財産(Traveler's Property)

クリアレベル25~30
国境近郊の町ウェントスにて、鉱山労働者たちの間で、ひとつの事件が話題になっていた。
それはこの地に古代の王テストゥードの財宝が眠る宮殿と思われる遺跡が、鉱山のひとつの地底深くで発見されたというもので、その伝承によれば宝の鍵になると言われ、今もこの国に保管されているある「霊石」を持って宮殿の深奥に辿り着く事ができれば、無限の富を得る事ができるという。
この話が広まると同時に、ある集団によって現存する霊石が全て盗まれ、遺跡内に運び込まれた事や、その集団は遺跡内のモンスターの襲撃に遭い全滅した事などが、まことしやかに噂されている。
これらの噂が全て本当なら、遺跡に入りさえすれば誰でも霊石を利用し、無限の富を得る事が可能であろう。
(説明書より抜粋)

宝探しが目的であり、秘宝を発見する鍵となる霊石を巡って戦うシナリオ。
従来の雰囲気を踏襲したオーソドックスな作りだが、終盤の戦闘難易度は高めで、ランダムドロップのアイテムが攻略に必要になるなど運要素も強い。

満月王の子供達(Children of the King Selene)

クリアレベル14~16
セレーネー伯爵は有力な地方領主として知られている。民衆に対する健全な統治者という顔の一方、彼にはもうひとつの顔があった。それは獣人族を統べる、人ならざる者の王である。
ある日、伯爵の側近であり魔術師であるガラクシアスが突如として魔族に寝返った。彼はまずセレーネーから、月の運航を支配するという「宝珠キュベルネシス」を盗んだ。次にセレーネーの五人の子供を連れ去り、城内のどこかに幽閉したのであった。
セレーネーは激怒し、すぐに反撃に出たが、宝珠を持ったガラクシアスの軍勢の前になす術なく敗れ、その身を樹木に変えられ、城内の中庭に植え付けられているという。
数年後、首都エイレーネーではあるひとつの噂が話題になっていた。それは「今は廃墟になっているセレーネーの城に、新たにネペレーという魔法使いが住み着き、毎晩のように魔族や人間を客人として招き入れ、パーティーに打ち興じている」というもので、その宴は贅の限りを尽くし、得も言われぬほど絢爛豪華なものだという。
(説明書より抜粋)

山中の城を探索し、失踪した領主の謎を追う。
謎解きに重点が置かれたシナリオで、謎のヒントやストーリー展開も難解なものが多い。また終盤の戦闘難易度も高めに設定されている。

欠けた大地(The Dvoid of Apotheosis)

クリアレベル45~50
魔術師スコトスの率いる暗黒の軍勢が、聖地アエレテイアに侵攻を開始したのは、東方の国家アンギスがケントロン王国に侵攻したのと同時期であった。聖地は間もなく陥落し、この地に伝わる古文書「契約のコデックス」はスコトスの手に渡った。騎士団長キュリオスが率いる「守護の同盟」は、スコトスの侵攻の後、その生存を確認した者はいない。
奪われた古文書の魔力が解放されると、程なくして状況は悪化の一途を辿った。大地が割れ、多くの災厄が人々を襲った。その中枢にある地下宮殿からはさらに多くの、この世の者とは思えぬ禍々しい生物が出現し、王国へ様々な害悪を及ぼした。大地は日に日に腐り、暗黒の軍勢のさらなる侵攻と共に多くの人々がその命を落とし、今やその防衛線は首都エイレーネーにまで後退しつつあった。
この状況から王国を救う唯一の希望があるとすれば、地下宮殿に今もいるとされるスコトスの手から古文書を取り戻す事で、奇跡の力。古文書に宿るもうひとつの力の側面を得るしか方法はないだろう。
(説明書より抜粋)

基本シナリオの中で最も高いクリアレベルを要求されるシナリオで、戦闘難易度も非常に高い。
また表ボスのスコトスを倒して得られるクリアアイテムが、城に持ち帰ると不名誉称号がついてゲームを進めづらくなるなど、罠も仕掛けられている。

ガルヴァンの酢漬け男(The Pickled Man of Galvan)

クリアレベル15~20
その闘争は二百年にわたって続いていた。ガルヴァンの迷宮奥底に巣食う怪物と、不死身の賢者「酢漬け男」による長き戦いは、互いの能力を最後の一片まで注ぎ込むものだった。
そして今、戦いの趨勢は怪物の勝利に傾きつつある。酢漬け男の力もついに尽きたか、異形の怪物は眷属を増し、地上の都市をも爪牙にかけようとしていた。
人々は怪物を討伐する勇者の到来を待ち望んでいる。君には、この難局に立ち向かう勇気があるだろうか?
(説明書より抜粋)

「酒」がモチーフとなっており、化学要素が謎解きに関わってくる一風変わったシナリオ。
ボスの攻撃が後遺症が残るもので、第二パーティを作らなければ探索が困難になるという要素もある。

灼熱の車輪(The Wheel of Flame)

クリアレベル15~18
鋼の王は強く、厳しく、そして刺々しかったが、国民からは多くの支持を得ていた。その素晴らしく力強い采配によって、鋼の王の治める国は大いに栄えていたが、ある日突然、その均衡は崩れてしまう。
潜伏しているという異教者たちを討ちに出た鋼の王が、その近衛部隊と共に消息を絶ってしまうのである。
困り果てた大臣は全国から強者を募る。
「鋼の王の所在を知る者、探し出したものには多大な褒美を与える」
王を見つけ出すのだ!
(説明書より抜粋)

メタル音楽を題材とし、専用のBGMまで用意された、公式の中では最も異色を放つシナリオ。
だが突飛な世界観とは裏腹にゲームバランスはシンプルに洗練されており、基本シナリオ5本の中では最も遊びやすく設計されている。

『ウィザードリィ外伝 五つの試練(The Five Ordeals)』のゲームシステム

プレイヤーキャラの拠点となる都市

本作は固定名称の拠点都市は存在しない。酒場などの施設名もシナリオによってそれぞれ違う名称がつけられている。

酒場

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