リアル(井上雄彦)のネタバレ解説・考察まとめ

『リアル』とは1999年より井上雄彦が『週刊ヤングジャンプ』で連載しているスポーツ漫画。主人公は3人の青年。高校生の野宮は小学生からバスケにのめり込んでいたが、バイク事故を起こし、中退。その時、車いすの青年、戸川と出会う。彼は短距離走の実力ある選手であったが、骨肉腫により右脚を切断する。そして、車イスバスケを通して、目の前の困難と戦っていた。もう1人、高橋久信は野宮と同じ高校のバスケ部に所属していたが、交通事故により下半身不随となる。彼は車イスバスケに熱中し、自尊心の高い自分を変えようとする。

『リアル』の概要

『リアル』とは1999年より井上雄彦が『週刊ヤングジャンプ』で連載している漫画である。2001年に「第5回 文化庁メディア芸術祭マンガ部門」優秀賞を受賞。2019年11月時点で累計発行部数は1500万部を超えている。
高校生の野宮朋美はバスケットボールに打ち込む青年で、ある日、偶然夜の街でナンパした山下夏美を乗せたバイクで交通事故を起こしてしまう。彼女は下半身不随となる。それをきっかけに高校を退学し、夏美の人生をおかしくしてしまったことに罪悪感にかられている。だが、戸川清春と出会ったことにより、自分を見つめなおし、行動するようになる。
戸川は車イスバスケチーム「東京タイガース」に所属している。過去に陸上部では優秀な短距離選手であったが、骨肉腫のため、右膝関節から下を切断し、義足もしくは車イスで暮らしている。15歳までの約2年間の間、ショックからひきこもっていた。だが、勝田や山内との出会いにより、車イスバスケの存在を知る。また、安積久美との再会もあり、それがきっかけで再び前を向く。
高橋久信は自尊心が高く、常に周りを見下した性格をしていた。ある日、盗んだ自転車でトラックと衝突する事故を起こし、脊髄を損傷して下半身不随となる。自暴自棄になっていた時に、車イスバスケの存在を知り、「調布ドリームス」に入る。そこで自分の弱さと向き合い、変えていこうとする。
バスケや車イスバスケなどのスポーツ漫画としても楽しむことができるが、障害者というテーマと向き合ったヒューマンドラマでもある。読者の心に響く、珠玉の名言が数多く登場する。野宮、戸川、高橋はバスケ、車イスバスケを通して、自分と向き合い、笑ったり、時には傷つきながら成長していく。残酷なまでに厳しい「リアル」と向き合う物語である。

『リアル』のあらすじ・ストーリー

第1巻~第3巻

主人公の1人である西高のバスケ部に所属している野宮朋美はある日、偶然夜の街でナンパした山下夏美を乗せたバイクで交通事故を起こしてしまう。彼女はその事故が原因で下半身不随となる。野宮はそれをきっかけに高校を退学し、夏美の人生を狂わせてしまったことに罪悪感にかられながら過ごしていた。今日も彼は夏美の病室へと見舞いに来ていた。
普段はおちゃらけた性格の野宮だが、真剣に、夏美と向き合おうとしていた。
バイク事故を起こした時ことを思い出す野宮。
そんな時、病院近くの体育館でダムダムとバスケットボールを付く音が聞こえ、そこに向かうと車イスでバスケをする戸川清春と出会う。

彼とバスケで勝負をする野宮。車イスにも乗り、バスケをするが、想像以上の難しさを実感する。
偶然ボールに触れた夏美は笑顔を見せていた。
その後、車の教習所で安積と出会い、彼女がマネージャーを務める『東京タイガース』の試合に誘われる。覇気のないチームの試合を見て、いい加減な態度をとる高橋らの姿を思い出す野宮。
この試合には実は、戸川も来ており、チームをやめた経緯が明らかになる。
勝ちにこだわる戸川と楽しくプレイできればそれでよいという仲間との間に亀裂が生じ、相手を殴ってしまったのだった。試合後、戸川はかつての『東京タイガース』の中心者であった山内に会いに行く。彼は筋ジストロフィーを患っており、徐々に体が動かなくなっていた。

互いを励まし合う二人。そこには確かな友情があった。
野宮の呼び出しに、かつて野宮が通っていた高校の体育館へとやってきた戸川。
そこでは体育館の鍵をかけた試合が始まるのだった。
野宮はバスケを心から楽しんでいた。高橋の仲間は戸川の車イスのがぶつかってきたらと思うと恐怖を感じていた。

激しい試合の様子。

見事に、高橋たちに勝利し、体育館で鍵を手に入れた2人は、朝バスケの練習をするようになっていた。
野宮は夏美が退院して長野県に行ってしまったことを知る。
一方、高橋は、彼女のふみかと共にコンビニに停めてあった自転車を盗み、自転車で彼女の家に向かうとしたとき、トラックにはねられてしまう。7日間も意識不明の末、目を覚ます高橋。彼は脊髄を損傷して下半身不随となる。

野宮は長野に行った夏美に会うために、お金を稼ぐために、会員制のコートで賭けバスケを始める。それに戸川も加わるようになる。順調に稼いでいた二人だが、ある日、車イスに乗った、プロレスラーのようにガタイの良い男と出会う。彼の名は長野といい、スピードも戸川よりも断然上だった。勝負の結果、戸川は負けてしまう。初めて負けた悔しさをかみしめる戸川。
長野の勝つために『東京タイガース』に戻る戸川。ひと悶着あり、何とか戻ることができたが、試合でファウルを取ってしまったりと、団体競技の中でうまく立ち回ることができない。長野に勝つ道が遠ざかると焦る一方だった。
入院している高橋はまだ、自分が歩けない体になったことを知らなかった。彼はかつての仲間たちが一向に見舞いにこないことに腹を立てる。来てくれたふみかにも厳しく当たってしまう。そんな中で、ついに彼に告知がされた。ショックを受けて、上手く状況が飲み込めない高橋。

野宮は西高の地区予選大会に来ていた。自分は出場できないが、最後の試合を見届けるためだ。試合は西高の惨敗に終わる。悔し涙を流す野宮。
『東京タイガース』は『調布ドリームス』との試合、前半、戸川の活躍で戦いはリードしていた。この勢いで勝つ。チームは弱小だったチームは勝利へのこだわりを持ち始めていた。しかし、後半、『調布ドリームス』に日本代表の候補の2人が導入されることとなり、逆転されてしまう。チームは負けてしまったが、これからだという確かな手ごたえがあった。
戸川の様子を見ていた安積は昔の彼のことを思い出していた。戸川は幼いころから父親に無理やりピアノを押しつけられていたが、ある日陸上部に誘われ、走ることに喜びを見出していた。

短距離走の選手として11秒を切ることを目標とする戸川。しかし、彼の右足には病魔が潜んでいた。徐々に、膝に激痛を感じるようになり、それは日に日に悪化していった。全国大会決勝戦で、良い走りを見せていたが、病魔の骨肉腫のため、ゴールできずに終わる。
野宮は戸川に触発され、長野のいる夏美に会いにいく。そこで見たものは、夏美の笑顔と過酷なリハビリの現場だった。その様子を見てあの夜、夏美をナンパしたことを後悔する野宮。医者と話し、夏美に会って楽になりたいだけなのかもしれないと思い悩む野宮。

野宮はまた来ることを誓い、長野を後にする。
高橋はリハビリの過酷な現実に直面していた。しかしまだ歩けるようになることをあきらめきれずにいた。そんな時、やっと今までつるんでいた仲間たちが見舞いに来るが、大声で喚き散らすなど、その態度はおふざけ半分だった。高橋はその様子にいらだち、暴言を吐き、追い出してしまう。入れ替わりにふみかがやってきて、ゴミで汚れた室内を綺麗に片してくれた。何も言葉をかけられない高橋。風呂に入ることになり、全身をナースたちに洗われる高橋、お湯の温かさも感じない体に、本当に歩けなくなったことを実感し、絶望する。高橋はぼそりと母親に父親に会いたいことを告げる。

変わり果てた父親が会いに来た。彼は山奥でほそぼそと陶芸家をやっていた。高橋が幼いころに見た父親とのギャップに唖然とする。
この言葉と、自分は落ちぶれた親の子であるというショックから、彼はナースの隙を見て、窓ガラスをぶち割り、その破片で自分の動かなくなった足を何度も突き刺した。
母親は深く悲しみ、父親に二度と会わないでくれと電話をかける。
野宮は胸を張って夏美に会えるように自分を更生することにした。その一環として、高橋に謝りにくるのだが、そこで地区予選大会の話になる。

第4巻~第6巻

『調布ドリームス』との試合後、『東京タイガース』は朝練に参加するメンバーが増えるなどして、確実に変わっていった。そんな中開催されたひまわり杯。決勝戦で『調布ドリームス』と戦い、悔しいことに破れてしまうが、そこには「まあいいや」と思うものはいなかった。しかし、キャプテンと複数のメンバーは戸川に反目していた。
彼らの手により、『東京タイガース』は解散させられてしまう。絶望する戸川だったが、日本代表候補選手に選ばれたとの知らせがやってくる。その喜びをかみしめる中、彼は勝田と山内との出会いを思い出していた。彼は山内に自分の思いをありのままに語っていた。陸上にかけてきた思いは意味のなかったことなのかと。
山内に誘われて、『東京タイガース』の見学に来た、戸川。そこで見たのは自分と同じローテーション手術をした勝田が激しく動き回る姿だった。後日、車イスバスケ用の車イスに乗せてもらう戸川。彼は誰よりも速くという自分の目標を思い出すのだった。
戸川は勝田の店へと招かれる。彼はタトゥーを彫る仕事をしていた。そこで笑って涙して、感情吐露する戸川。土産として自身が使っていた車イスバスケ用の車イスを譲り受ける。

勝田の使い込まれたタイガー1号。

お前は一人じゃない、仲間がいるぞと励まされ、涙を流す戸川。今までずっと孤独に病と闘ってきた彼にとってその言葉は救いだった。
事故のトラウマと戦いながら、運転免許を取得した野宮。彼は慣れない運転の中、夏美に会うために長野へ向かった。勇気を出して、彼女に会い、自分の素直な気持ちを打ち明ける。彼女をドライブに連れ出す。そこで今まで溜まっていた互いの気持ちをぶつけ合う。それにより前に一歩進んだ二人。

次の日、夏美に対して友達になろうと言い出す野宮。戸川の記事の切り抜きを渡し、笑顔を見せる夏美。
一方、『東京タイガース』では長野が入団を希望してきた。またチームの流れが変わろうとしていた。
高橋は、リハビリ専門の病院へと転院した。ここはリハビリの最終段階だった。しかし、そこでは過酷な現実が高橋を待っていた。リハビリの厳しさに加え、持ち前の自尊心の強さから、周りへ当たり散らしてしまう。母親にも高校への復帰を促す彼女への反発から、『死ね』などの酷い言葉を投げつけてしまう。溝ができてしまった高橋家。
野宮はやっとの思いで採用された引っ越し屋でバイトをしていた。笑顔もなく暴言が飛び交う職場。しかし、ここに自分の道があると決め、しがみつこうとする野宮。彼はまっすぐと自分の道夫突き進む戸川と長野の生き方を見ていて、大きな影響を受けていた。
高橋の母親は荒れた生活を送り、過労で倒れてしまった。リハビリの前に、家族間のわだかまりを取り除くことが最優先ではないかということで、医者から父親の元で数日暮らすことを提案される。埼玉県秩父郡に父親の家はあった。高橋は敬語で父親と接し、ぎこちない関係が続いていく。
しかし、翌日、君の思いをそのまま表せという父親の言葉に、次第に心を開いていく高橋。ぽつりぽつりと本音がこぼれていく。どうして、いなくなってしまったんだと。

第7巻~第9巻

新キャプテンの金子の通う病院で紹介され、水島が『東京タイガース』にやってくる。だが彼は入る気はなく、友人たちからのメールを待っていた。チームは大きな大会の予選一回戦での『調布ドリームス』との戦いに備えて練習を重ねていた。そんな時、『調布ドリームス』の監督が戸川の元にやってくる。将来有望な彼をスカウトしに来たのだ。戸川は断った。必ず『東京タイガース』が勝つから、あきらめてくれと。その言葉を監督に利用され、逆に『調布ドリームス』が勝ったら、こちらにくるようにと。
水島はチームの練習を見ながら、喧嘩をしない温和な障害者というイメージが変わっていく。
野宮は戸川のスピードはあるが、ワンパターン、外のシュートが弱いという欠点を教える。彼に外のシュートを身に着けさせるために、西高の体育館で練習を重ねることとなった。少しずつシュートが入るようになってきた戸川。三日間立ち、野宮に唐突に忘れろと言われる。

野宮が遅刻しながら、バイト先へ行くと、何やら様子がおかしい。うなだれた主任がただ1人。会社は倒産してしまったのだった。せっかく自分の道がつながったと思ったのに、また振り出しかと。やるせなさに叫ぶ野宮だった。
『東京タイガース』対『調布ドリームス』の試合が始まったが、戸川は窮地に立たされていた。オフェンスもディフェンスも徹底的にマークされ、ゲームから締め出されてしまったのだ。休憩時間、試合を見に来ていた野宮が戸川にアドバイスする。そいつを認めろと。戸川は引いてみることにより、抜くコースは無限にあることを知る。差を詰めてきた時に、チームの米澤が敵チームと衝突し、倒れてしまう。1点プレイヤーの米澤がいなくなると、ルール上、替えがきかなくなる。『東京タイガース』は4人での試合を余儀なくされてしまう。奮闘するが、戸川たちは負けてしまった。戸川は約束を守るべく、『調布ドリームス』の監督に話しかけたが、彼の4人に勝っても自慢にはならないとの粋な計らいで、チーム移籍を免れた。その後の食事会の席で、水島は今までのチームの熱い戦いを見てきてぜひ、仲間にしてくれと頼む。すでに勘定に入ってるぞと、歓迎される水島。
父親の元での生活が良い影響を与えたのか高橋は再び、リハビリのやる気を取り戻していた。しかし、現実は厳しかった。床とマット間の移動は想像以上にハードだ。まるで足が木の棒のようになったしまったように感じた。疲れてしまった高橋の元に1通のメールが届く。それは父親からのものだった。不器用ながらも愛情を感じる高橋。
野宮は、夏美に会いに、長野まで来ていた。彼女に会社が倒産して、また振り出しに戻ってしまった話をする。不覚にも涙を流してしまう野宮。彼の心は本人が思っていた以上に傷ついていた。そんな彼に泣くなら、好きなことをやれば良いと語る夏美。

テーブルの上に置かれた封筒を見つけてしまう野宮。それは漫画雑誌の編集社宛てのものだった。そこから夏美が漫画を描いて応募しようとしていることがわかった。車イスになって選択肢が減ったと語る彼女。それで覚悟が決まったと。

野宮はバスケ雑誌でプロリーグのトライアウトの広告をみかける。自分の好きなことをしようとプロを目指すことを決めた野宮。笑いたい奴は笑えと。
高橋はリハビリに難航していた。食事の時間、席が一緒になった花咲と話をする。空は飛べなくとも、9秒台で走る人間はいると。少しずつ彼とも話すようになってきた時に、隣のベッドに新しい患者がやってきた。彼はスコーピオン白鳥という現役の悪役プロレスラーだった。彼は交通事故で原付でダンプカーと衝突していた。彼と話す中で自然と強さの話になっていった。自分たちは『社会的弱者』だと語る。

白鳥はリハビリの担当から、元のようにまではいかなくとも、歩けるようになる可能性はあると言われた。彼は3か月後には歩くと目標を定めた。自分の目標について考える高橋だった。
野宮は高校の先輩である大学生の山路に頼み込み、バスケの練習に参加させてもらっていた。しかし、思った以上にブランクは大きく、落胆する野宮。しかし、たまたま、トライアウト先のチームの監督の愚痴を聞く機会があり、彼の求めるPGについて理解する。他のメンバーの良さを引き出してもらいたいと願っていた。それを聞き、決意を固める。それからは別人のようなプレイを見せるようになった野宮だった。
花咲は白鳥と出会うと、固まってしまった。何故なら、彼は、スコーピオン白鳥の大ファンだったからである。そして、たまたま3人ともとある神社のお守りを持っていた。お守り三銃士だと喜ぶ白鳥。

体育の時間が始まり、担当者である原により、手すりを離した状態でプールに入れられてしまう。死を思わせるような絶望感と、自分が障害者だと再認識させられたため、精神的に参ってしまう。あの白鳥でさえ、ベッドに入ったまま動かない。
そんな中、野宮が高橋に会いに来た。プロになる宣言をする野宮に対して、笑おうとするが、笑えない高橋。
西高が弱かったのは自分のせいだと、高橋以外の4人で戦おうとしていたと。プロのPGになることを高橋に告げて去っていく野宮。

第10巻~第12巻

戸川は1年に1度の検査に病院に来ていた。骨肉腫は骨のガンで、転移や再発がないかを確認するためだ。彼の父親は亡き妻に息子を守ってくれるように祈っていた。検査の結果、異常はなかった。そのことを父親と安積に報告する戸川。1年生き延びられたと安堵する。
野宮は先輩の大学の練習試合に替え玉として出場する。そこで試合の流れを変えるほどの活躍を見せ、トライアウトへの手ごたえをつかむ。
高橋たちは病院内の坂道を上る『坂道ダッシュ』の存在を原から知らされる。それは車イスの人間からしたら悪魔のような坂だった。
白鳥は一刻も早い復帰のため、挑戦しようとするが、怖くてできなかった。体育の時間、体育館へ行くとそこには『調布ドリームス』の姿があった。ここ最近、車イスバスケのことが頭から離れなかった高橋は食い入るように練習を見つめていた。その様子をさりげなく観察している原。高橋はバスケへの未練があることを自覚する。
ついに野宮が受ける『東京ライトニングス』のトライアウト当日となった。野宮はアクシデントに見舞われるも、何とか受付を済ませ、参加することができた。基礎的な個人技術を見るためのものに始まり、実戦的なものに変わっていき、最終的には試合形式で判断する。野宮はずっと人知れず練習してきたドリブルのテストに集中する。

実戦形式のテストが始まると、野宮はレベルの高さに最初は動揺するが、徐々についていく。周りに積極的に声をかけ、チームを引っ張っていく。彼は見事に最終選考へと選ばれる。それは『東京ライトニングス』の現役選手との試合だった。圧倒的な力量差に押しつぶされそうになるも、持ち前の心の強さで前へ、前へと進む野宮。それから1か月後。トライアウトの合格者のみ連絡がいくことになっていたが、残念ながら野宮には連絡は来なかった。
高橋は原が用意した車イスバスケ用の車イスに力を振り絞って乗ることができた。だが、それはまるで言うことを聞かない。氷の上のような感覚だった。負けず嫌いの高橋は、この車イスを乗りこなすという新たな目標ができたのだった。母親も無事退院できて、父親と母親、そして高橋の三人で親子水入らずのご飯を食べる。母親は彼のリハビリを見て、自分はきちんと彼を見ていたのだろうかと自問自答する。
オオルリ杯に向けて、練習を重ねる『東京タイガース』だが、戸川は個人的なバスケの経験値不足に悩んでいた。そこで彼は『A-CAMP』という車イスバスケの合宿に参加することにした。そこで足りない何かを見つけに行くと決めていた。『東京タイガース』には高橋の彼女のふみかが新しいマネージャーとして参加することになる。『A-CAMP』ではかつてアメリカをパラリンピック優勝に導いたコーチの挨拶が始まった。
戸川はチームプレイに行き詰っていた。自分ができる分、他の仲間の気持ちに寄り添うことができず、一緒にプレイしたくないと言われる始末。そんな時、挨拶をしていたコーチに呼ばれる。

それに対して、好きじゃないと答える戸川。仲間だ何だという前に、個の力を高める努力があるだろうと。それをしない仲間の言葉など信じないと。戸川は焦っていた、自分の病に、山内の病に間に合わなくなることを恐れていた。そんな時、勝田からの伝言を聞く。Sky is the limit。限界はない。その言葉を聞いた戸川は肩の荷が下りたかのように、チームの仲間に語りかける。変わりたいと。過去に『東京タイガース』の仲間が離れていったような思いはしたくない。それからは積極的に話しかけていく戸川。チームワークも良くなってきた。この3日間でやってきたことをやろうと皆に語りかけるまでに変わっていた。『A-CAMP』は大成功で幕を閉じる。

第13巻~第15巻

感情が爆発した高橋。彼は心から白鳥を応援した。

白鳥は思うようにいかないリハビリに焦っていた。試合が控えているのに間に合うのだろうか。医者は荒療治で外泊許可を与える。そこで白鳥は自分の所属するジムへと向かった。今や、スター選手である、かつての同期の松坂との思い出を振り返る。松坂は正義の味方、自分は嫌われ者の悪役へとなってしまったこと。そして、ついに試合当日。高橋はみじめな姿はみたくないと緊張していた。ロープにしがみつき、会場を盛り上げる姿はまさにプロだった。白鳥は松坂へ渾身の一撃を与える。
しかし、この時、ロープを離してしまう。窮地に立たされる白鳥だったが、花咲のブルームは僕でした!いう叫びに奮起する。ブルームというのは、白鳥に嘘がバレバレの見栄をはったファンレターの送り主だった。それに何度も励まされてきた白鳥。彼は毒霧で松坂に攻撃する。ハンデをものともせず、必死に戦う白鳥の姿、それをなりふり構わず応援する花咲。高橋はこの二人の姿と、今まで関わってきた人たちの影響から、今まで封じ込めてきた本当の自分を解放する。白鳥は、最後、ロープを使いながら、見事に立ち上がり、松坂と抱き合った。
高橋は自分に素直になり、『調布ドリームス』へ入団する。
試合が終わり、病院に戻ってきた3人。白鳥は花咲へ感謝の気持ちを伝える。

宇都宮で行われていたオオルリ杯に参加していた『東京タイガース』は順調に勝ち上がっていた。戸川はミスをした仲間に怒ることなく、優しく声をかけた。水島は積極的に声出しをしていた。2人は『A-CAMP』かで確かに変わったのだった。チームは戦いの末、優勝を果たす。
野宮は優勝を喜びつつも、それに引き換え自分はなんだと落ち込む。久々に『東京ライトニングス』の試合を見に行くと、活躍するスター選手の安西はさらにレベルアップしていた。今までの自分なら悔しかっただろうが、そういう感情が湧きあがらない。
高橋は『調布ドリームス』でひたすら、バスケ用の車イスになれる練習をしていた。今は耐えて、ボールにさわれるようになった時、仲間の誰にも負けないと誓うのであった。

野宮は久々に夏美に会いに長野へと来ていた。彼はすっかり太っていた。夏美もややふっくらしており、互いに近況報告をする2人。夏美は応募した漫画が王道だと言われ、これ以上王道はいらない、もっと隙間を狙ってほしいと言われてしまう。しかし、彼女は王道をあきらめない。描きたくないものを描いたら負けたことになると。夏美を応援したい気持ちをさらに強める野宮だった。
高橋は『調布ドリームス』の試合をじっくり観察していた。どうやらキーワードはローポインターの永井のようだ。まだ、その意味を理解できない高橋。久々にふみかがやってきて、彼の髪を散髪する。そして、自分が『東京タイガース』のマネージャーになったことを話す。高橋は『調布ドリームス』に入ったことを伝えた。彼はチームでの残体練習に参加できるようになったが、スピードがまったく周りに追い付かない。そこで原に相談し、悪魔の坂を上る決心をする。
『東京タイガース』はオオルリ杯優勝の気のゆるみか、皆気持ちがバラバラになっていた。安積が留学で抜けたことも大きく影響しているようで、チームは険悪な雰囲気になっていた。しかし、ジャパンオープントーナメントへの出場の知らせが届き、再び、一致団結する。そんな時、山内から連絡があり、八王子まで会いに行く戸川。そこには呼吸器をつけ横たわる山内の姿があった。しかし、意外にも話ができ、元気そうだ。その理由は名医との出会いであった。彼のおかげで20歳まで生きられたのだった。『東京タイガース』の様子も見に来てくれた山内。そこで打倒『調布ドリームス』を語る。

野宮はかつての引っ越し屋で一緒だった太田と会っていた。そこでバスケのフォームが間違っていることを指摘される。言われた通りにやると、良い結果がでた。
『調布ドリームス』は強豪チーム相手に勝利した。それを見て、打倒ドリームスの目標が遠ざかるのを感じる『東京タイガース』。試合で来ていた野宮と高橋は偶然出会うことになる。太った野宮を見てまた口先だけかとののしる高橋。その言葉に悔しさがあふれ出た野宮は衝動的に、先日悪口を言われた人たちを殴りつけてしまう。警察から逃げる途中で、安西のポスターが目に入る。まったく相手にされなかったことを思い出し、悔しがる野宮。

『東京タイガース』は先日の『調布ドリームス』の戦いを見て、覇気がなくなっていた。長野は武者修行のためにドイツへ行くこととなる。戸川は自分が日本代表から外されたことを知り、ショックを受ける。母親の命日の日、墓参りにはなんと安積が来ていた。彼女にパラリンピックで金メダルを取ることを宣言する。それまで待っていて欲しいと。

高橋は5か月の間、ずっと車イスで移動する練習を重ねてきた。ついにボールに触ろうとする。だが、上手くボールを扱えず、シュートもろくに打つことができなかった。だが、彼のその努力をかって、藤倉が今日から全体練習に参加するようにと声をかける。練習中、ボールを受け止めきれず転倒する。その時、野宮が現れ、転んだ高橋の姿を写真に収める。野宮は自問自答していた。自分はやり切ったのかと?

しかし、この間喧嘩騒ぎが原因で警察がやってきて、野宮は拘留されてしまう。どこで道を間違えたのかと考える野宮。昔、仲が良かった高橋との思い出がよみがえる。他にも祖父と祖母が田舎に帰ってしまった時のことを思い出していた。被害者との示談が成立し、彼は72時間で出ることができた。外では母親が待っており、抱きしめてくれた。帰りに、前にバイク事故を起こした現場へと向かう野宮。あの日の自分に生きていてくれてありがとうと言う。そして、ここから始まるんだと。

仲間がいる安心感を知る高橋。

夏美から電話がきて、応募した漫画が賞を取ったことを知る。戸川からは明日はタイガース最後の日になるかもしれないと連絡がくる。
高橋は転倒してしまったショックとローポインターというポジションへの不満の為、病院を抜け出していた。1人、夜の街を彷徨う高橋だったが、ガラの悪い連中に絡まれ、暴行を受けてしまう。車イスから落ちてしまい、困り果てる高橋。そこにふみかと、花咲、白鳥が駆け付ける。ふみかが知らせてくれたようだった。白鳥は退院して最先端治療を受けることにした。素直に喜ぶ高橋。白鳥は語る。お前の頑張りは知っているぞと。
高橋は脱走したことをナースに怒られていた。そんな時、『調布ドリームス』の永井が来ていることを知る。高橋は思い切って、ローポインターのことを永井に尋ねた。

『リアル』の登場人物・キャラクター

人物相関図

登場人物相関図。

主要人物

kinako_18
kinako_18
@kinako_18

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