勝手にふるえてろ(綿矢りさ)のネタバレ解説・考察まとめ

『勝手にふるえてろ』とは2017年に公開された日本のラブコメディ映画。芥川賞作家の綿矢りさの原作小説を松岡茉優主演で映画化。10年間も中学の同級生に片想い中で恋愛経験ゼロのヒロイン「ヨシカ」。そんな彼女に人生初めての彼氏ができる。ヨシカは片想いだけど妄想彼氏の「イチ」と初めて告白されてできた彼氏・会社の同僚「二」で勝手に二股を作り葛藤する。傷つきながらも暴走する主人公をコミカルに描く。監督は『でーれーガールズ』の大九明子。「第30回東京国際映画祭コンペティション部門」で観客賞を受賞した話題作。

『勝手にふるえてろ』の概要

『勝手にふるえてろ』とは2017年12月23日に公開された日本のラブコメディ映画である。『蹴りたい背中』で芥川賞を受賞した作家・綿矢りさによる同名小説を『でーれーガールズ』の大九明子監督で映画化した作品となっている。
興行収入は1.5億円。2018年3月にはメインで公開された劇場「新宿シネマカリテ」での興行収入が『グランド・ブタペスト・ホテル』を抜き、同館の興行収入1位となった。本作は多くの受賞歴がある。「第30回東京国際映画祭」コンペティション部門観客賞・東京ジェムストーン賞「松岡茉優」、「第27回日本映画プロフェッショナル大賞」ベストテン1位・作品賞・主演女優賞「松岡茉優」、「第22回日本インターネット映画大賞」2017年作品賞ベストテン第7位、「第10回TAMA映画賞」最優秀主演女優賞「松岡茉優」、「第42回日本アカデミー賞」優秀主演女優賞「松岡茉優」、「映画芸術」2018年日本映画ベストテン4位、「第29回日本映画プロフェッショナル大賞」2010年代映画(2010〜2019年)ベストテン第6位がある。その他海外でも多くの映画祭に出品された。
キャッチコピーは「この恋、絶滅すべきでしょうか?」。
我儘でひねくれ者で身勝手な24歳のOLヨシカ(松岡茉優)は中学の頃から片思いをしている相手がいる。その彼を頭の中では「イチ(北村匠海)」と呼び勝手に彼と妄想恋愛をしてきた。そんなヨシカは会社の同僚から人生初めての告白をされる。彼のことは「二(渡辺大知)」と頭の中で呼んでいた。告白されたことを喜んでいたヨシカだが「イチ」と「二」の間で心が揺れ動く。思いが募る一方の「イチ」と会って気持ちを確かめたいヨシカは同窓会を開くことを計画する。ヨシカは妄想を暴走させてもがき傷つきながらも現実を必死に生きる。全然キラキラしてなくて情緒不安定なめんどくさい主人公を演じた松岡茉優の演技力が見どころの作品である。

『勝手にふるえてろ』のあらすじ・ストーリー

私にはイチがいる

髪を触り合うヨシカ(左)と金髪の店員(右)

「あーぁ。私ってほんとクソヘタレ。思ってることたくさんあるのに何ひとつ言えてないんですよ」と、ある日江藤良香(えとうよしか)/「ヨシカ」は行きつけのバーガーショップで涙目で呟く。横にいる金髪の店員はヨシカの頭にそっと手を伸ばし優しく髪を撫でる。ヨシカは「私も触っていい?」と店員の髪に手を伸ばし撫でた。ヨシカこのまま本能のままに「イチ」と結婚したら絶対に幸せになれないと考えていた。それに比べて「二」と結婚したら幸せな花嫁タイムをエンジョイできちゃうと想像していた。けれどヨシカは涙を流して「やっぱりイチが好き」と言った。金髪の店員はそんなヨシカの話を黙って聞いてあげていた。

会社の休憩所にいるヨシカ(左)と来留美(右)

OLのヨシカは在籍している経理部で素早く電卓を叩き事務作業していた。ヨシカのデスクに「これお願いします」と他の課の男性社員から書類が差し出され数字のチェックを頼まれた。ヨシカは作業を続けながら横目で書類を見て顔を上げずに「ここ間違ってますよ」と計算間違えを指摘する。男はヘラヘラと間違いを認めて「億単位の仕事じゃなくてよかった〜」とわざとらしくヨシカにアピールした。男は話しながらヨシカの奥に置いてあるペン立てから鉛筆を借り、「1」という数字を逆さから無理矢理「2」と直す。借りたり返したりする度に男性のネクタイがヨシカの顔に当たり彼女の作業の手が止まる。そのことにムッとしたヨシカは男を睨みつける。男はヨシカが不機嫌になったのを悟りその場を後にした。
休憩時間になり、歯を磨きながらヨシカは同僚の月島来留美(つきしまくるみ)に先程の男の愚痴を言い、休憩室で来留美は会社で好きな人がいることをヨシカに打ち明けた。ヨシカは恋愛と仕事を分けたいから会社での恋愛が考えられないと嫌味っぽく言った。ヨシカの言い方を気にせず来留美は「中二から同じ好きな人がいるヨシカの方があり得ない」と穏やかに言った。ヨシカは「来留美はイチのこと知らないから」と言ったが、来留美は「誰だろうとあり得ない、1だろうと2だろうと」と言った。来留美はヨシカの言う「イチ」を数字にかけてそう言ったのだが、それを聞いたヨシカはそれに対して思わず笑ってしまった。昼寝時間の消灯になりヨシカは爪を噛みながら目を瞑った。

ヨシカはまどろみながら中学時代を思い出していた。騒がしい教室で一宮(いちみや)/「イチ」が他の生徒たちにからかわれている。ヨシカは視界の隅でそれを見ていた。ヨシカはボサボサの髪にメガネ姿で教室の後ろの席に座り、一人で『天然王子』という漫画を描いていた。イチはヨシカに話しかけ漫画を手に取り読んだ。イチはそこに描かれてた主人公の髪を「変な髪型」と言ったが、それはイチの髪型と同じマッシュルームカットだった。ヨシカはそうと知らずに自分が「変な髪」と言われたと思い慌てて自分の髪を手で撫で付けた。友達に呼ばれて向こうへ行ってしまうイチを視線で見送り、ヨシカは左胸に手を当てて俯いていた。

夢みがちなヨシカの日常

趣味の絶滅危惧種について調べているヨシカ。

別の日、ヨシカはマッサージを受けながら整体師に自分の作った造語「視野見」について語っていた。「視野見」とは視線を逸らさず視界の端で物を見ることだという。そしてそれを使ってみていたイチとの思い出を話す。イチは中学の時みんなにからかわれて猫じゃらしみたいだったけど、ヨシカには猫じゃらしじゃなくて王子なのだという。あえてイチと距離を置いていたというヨシカの話に対して整体師はマッサージをしながら相槌を打つ。ヨシカは私だけが彼の特別な理解者だと自負していた。
帰宅中のバスの中でも隣で編み物をしているおばさんにイチのことを語る。ヨシカは「中学時代イチをモデルに漫画を描いていたことがバレたかもって心配していたのは杞憂だった。だって特別な理解者だから」とニヤニヤしている。隣のおばさんは編み物をしながら笑顔でヨシカの話を聞いていた。
ヨシカは駅の落とし物ボックスに拾った手袋を入れながら、今度は駅員にイチの理解者であることを惚気る。そしてコンビニにいる風変わりな店員にもイチとの惚気話を聞かせる。さらにヨシカの話は止まらず、釣り場で釣りをしているおじさんに「視野見」のやり方を教える。ヨシカはこういう会話をSNSでやればいいのだけど、それは恥だと思ってるからできないのだと言った。

自宅に帰ったヨシカはうがいをしてスウェットに着替え、中学時代と同じようにメガネをかける。隣の部屋の住人がずっとオカリナの練習をしている音が聞こえる中、ヨシカはいつもの日常を送る。晩ごはんと洗い物を終えたヨシカは、ベッドに寝転がりネットで絶滅危惧種についての記事を読んでいた。その時玄関のチャイムが鳴った。ヨシカは宅配業者にそっけない対応をするが、彼が去ったあと表情を一転させ意気揚々と荷物を運び入れた。荷物の中身を見たヨシカは感無量で思わず息を呑む。中から取り出したのは大きなアンモナイトの化石だった。ヨシカは嬉しさのあまり声を出して笑い、アンモナイトの渦巻きをくるくる指で辿っていた。
翌日、ヨシカはいつものバーガーショップで金髪の店員にご機嫌でアンモナイトの化石が届いたことを報告する。そしてまたバスの中でもヨシカのアンモナイトの話は続き、隣の編み物をしているおばさんに高額なアンモナイトの化石「異常巻きは流石に手が出せない」とにやけた顔で話していた。

「イチ」への止まない想いと「二」の出現

会社に着いたヨシカは来留美と隣同士のデスクで仕事をしていた。来留美の元にあった書類に2という数字が1とよく判別できないような字で書かれていた。ヨシカはそれを見てその字は昨日の男のものだと気づく。来留美は「明日の飲み会で直接文句言ってやろうね」と言うがヨシカは行きたくなかったのでTVがあるから無理だとすっとぼけて言った。来留美はいうも来て欲しくてヨシカを説得する。来留美は飲み会を機に片想いの相手・高杉に告白しようと思っていた。自分もイチに恋してるヨシカは、それを聞いて来留美のため会社の飲み会に行くことを決意した。来留美の好きな高杉のことを「出来杉」と呼びからかうヨシカ。来留美はヨシカは本当に人の名前を覚えないし変なあだ名をつけると言った。課長はサスペンダーをつけて口髭を生やしているからあだ名は「フレディ」。ヨシカの自宅の隣人はオカリナを吹いているから単純に「オカリナ」と呼んでいた。

飲み会当日、先日ヨシカに計算を間違いを指摘された男が乾杯の挨拶をしていた。一人隅っこにいたヨシカは来留美に引っ張られて高杉のいるテーブルに無理矢理同席させられた。一生懸命高杉に話しかける来留美だが、高杉のインテリな語り口調にヨシカは笑いを堪えるのに必死だった。ヨシカは盛り上がってきた飲み会の雰囲気に苛立ち、たまらずその場から抜け出した。苛立ちを吐き出すように壁にもたれかかり「ファックファックファック…」と小声で連呼する。「どうしました?」と後ろから話しかけられビックリするヨシカ。振り返るとそこには先程挨拶をしていた男がいた。彼はヨシカを気にしてあとを追ってきたのだ。「俺のこと知ってくれてます?」と聞かれるとヨシカは思わず「に」と答えてしまう。「え?」と言う男性社員に対してヨシカは慌てて彼の書いた数字の「2」のことを説明する。それを聞いた男は照れ笑いをしてつい、ヨシカに「かわいい」と言ってしまう。驚いたヨシカは気まずくなって店に戻ろうとするが、無理矢理引き止められスマホで2ショットを撮られた。キョトンとするヨシカに男は気まずそうに「この写真送るので…」と言い結局LINEも交換することになった。
帰宅後、ヨシカはお風呂上がりに交換したLINEの画面を眺める。ヨシカは「きりすけ」となっていた名前を削除し「二」と変更した。隣から下手くそなオカリナの音色が聞こえてくる。ベッドでまどろむヨシカはまた中学時代を思い出していた。

黒板に反省を書いている中学時代のイチ。

ヨシカは誰もいない教室に戻るとそこには黒板いっぱいに「僕は忘れ物をしません」と書かされているイチが一人居た。そっと机から忘れ物を取ったヨシカは思い切って「緑川先生に書かされてるの?」とイチに話しかける。ヨシカは答えてくれないと思って教室を出ようとしたが、イチは「100回書いたらチェックしに来るって」と答えた。嬉しくなったヨシカは「シンプソンズみたい」とイチに言った。聞いてるのかわからないイチは数を数えながら黒板に文字を書き続ける。振り返らずそっけなく「誰それ外人?」と返事をしたイチだが、それでもヨシカは会話ができてることを喜んだ。「ひとつくらい変えてもバレないんじゃない?」とヨシカが言ってみるとイチは書いてる文の最後を変えて「僕は忘れ物をします」にした。そのことに歓喜するヨシカはテンションを上げて一人で『シンプソンズ』のことを話し始めるが、イチは振り返り無表情でヨシカを見ただけだった。ヨシカは我に返り急いで教室を飛び出した。

それからしばらく経ってから中学生のヨシカは緑川先生と美術室にいた。笑いながら先生はイチのノートを見ている。先生は彼に反省文を書かせると一つだけ全然反省してない文が紛れてるのだと横にいたヨシカに説明する。この一年ずっとそうと言ってクスクス笑うと先生は嬉しそうにノートを眺める。ヨシカはイチと自分のつながりを感じ1人幸せを感じていた。
現実でヨシカは釣りのおじさんにその時の自分の気持ちを聞いてもらっていた。一年間も自分とのやりとりをイチが覚えていたという喜びと同時に、それを知らない先生に対し「それは私とイチが精神的に繋がってる証拠なんです。だから先生、それ自分の手柄にしないで」と黒い感情を抱いていた。釣りのおじさんと別れ公園を後にするヨシカにスマホの着信が鳴る。それは二から誘いの連絡だった。

人生初めての告白

「こんなはずじゃなかった」と項垂れる二(左)と冷めた目で眺めるヨシカ。

その夜、ヨシカはヘッドフォンで音楽を聴きながらクラブの前に立っていた。ヨシカの元にやってきたのはスーツ姿の二だった。二は軽い感じでヨシカに話しかけ、先にクラブに入っていく。大音量の音楽が流れる店内、二はお酒に酔い甘えた感じでヨシカのことを知りたいと言った。ヨシカは自分のプロフィールをまるで文章を読み上げているように淡々と答えた。ヨシカは自分の好きな絶滅した動物のことを語ろうとしたが、二はそんなことよりヨシカがさらっと言った「彼氏なし」だけに反応し、ヨシカのことを知りたいと言ったのに自分のことばかり話し始めた。運動が好きだという二は空気を読まずその場で立ち上がり反復横跳びまでしてヨシカを引かせた。ヨシカは二に構わず流れている音楽が良くて嬉しくなった。それも束の間、二は今度は「なんだよここうるせーよ」とゴネ出した。ヨシカは本当に来てみたかったからクラブに行きたいと二に言ったのだが、二には合わなかった。二は強引に嫌がるヨシカの腕を引っ張り外へ行こうと連れ出した。そんな二にヨシカは「うざい」とつい本音が溢れてしまう。
ヨシカは泥酔の二にイラ立ちながらもフラフラ先行く二を心配して後を追いかける。二が向かった先はまさかのホテル街だった。不安げなヨシカが二に話しかけると、二は気持ち悪さを我慢できずに嘔吐してしまう。二はヨシカ買ってきた水も吐き出してしまい「こんなはずじゃなかったのに!」と言い、苛立ちながら嘆いた。ヨシカはラブホの前に座り込んでしまった二に対して「もう帰りましょう?」と声を掛けると、二は「江藤さんの胸…」と話し出した。ヨシカは見えたのかと思って慌てて自分の胸元を確認した。「…赤い付箋…」二は構わずヨシカとの出会いを語り始めた。半年前、ヨシカの所属する経理部が株主総会前ですごく忙しかった頃、赤い付箋を左胸にくっつけたままのヨシカがニのいる一課に書類を突き返しにきたことがあった。それ以来二はヨシカのことが気になるようになったと言った。昨日の飲み会の企画も実は二がヨシカと自然に出会えるためにために仕向けたものだったそうだ。そう説明すると二は「言いたいことがあったんだ」とよろよろと立ち上がった。二はキリッとした顔でヨシカを真っ直ぐ見つめ「江藤さん、俺と付き合ってください」と言った。二はホテル街の灯りが背後から差し込み、ヨシカからは二は輝いて見えた。しかし他のカップルのふざけたやり取りが耳に入り現実に戻る。二はキザな口調で「待つぜ、俺は」とヨシカに告げた。

浮かれている場合じゃないのかもしれない

浮かれてレジに座るヨシカ(左)とコンビニ店員(右)

二に告白をされた帰り道、ヨシカは放心状態で駅を歩いていた。駅員と目が合うと駅員は黙ってヨシカに向かって親指を立てグッドサインをした。それを見たヨシカはヨッシャーと喜びだし踊るような足取りで改札を出た。ヨシカはコンビニに駆け込み売り場から飲み物を掴みそのままリズム良くレジカウンターに飛び乗って座った。ヨシカはいつもの店員に「わかります?私こう見えて今告られたんです!」と得意げに言う。店員もヨシカと同じテンションで「どーりで!おめでとうございますぅ」と喜ぶ。会計もしてない飲み物を開けぐいっと豪快に飲むと、残りを店員に渡し店員はその残りをグイッと飲んだ。ヨシカは高笑いをしそのまま今度は釣りのおじさんのところに駆けつけた。おじさんははしゃぐヨシカにテンションを合わせて彼女の自慢話を聞いた。しかしヨシカはおじさんとの会話で「好きです」とは言われてないことに気づき考え込んだ。そしてふとまたイチとの中学時代のワンシーンを思い出す。

体操服姿のイチは夕日を背にヨシカに「こっちを見て 俺を見て」と言う。ヨシカはその言葉がイチから聞けたのは「視野見」だけで我慢し続けたご褒美だと思っていた。
その思い出を夢見て眠っていたが、ヨシカは煙に咳き込み目を覚ます。気づくと布団の端が隣に置いてあるストーブにつき燃えていた。「死ぬー!」と飛び起き水をかけてみるが全く火は消えない。慌てて玄関を飛び出すと隣人のオカリナも煙に気づき、慌てて飛び出していた。オカリナは必死にヨシカの手を掴み「避難しましょう!」と言うがそこでヨシカは立ち止まり自宅に戻った。オカリナはヨシカの姿を追いかけ玄関の前で「死なないで!」と連呼する。煙で真っ白の室内に入ったヨシカは部屋中の窓を開け、燃えてるストーブごと布団にくるみバスタブに押し込んだ。「死ね死ね死ね死ね!」と叫びながら布団を風呂の水に沈める。ジュっと音を出しやっと火元は鎮火した。それでもなお玄関の外にいるオカリナは「死なないで!」と必死にヨシカに呼びかけ続ける。呆然と上がった息を整えるヨシカはその声に「わかってる まだ死ねない」と独り言で答えた。

イチに再会するための計画が動き出す

同窓会の計画の話をしてるヨシカ(左)と金髪の店員(右)

ヨシカは和菓子屋で味見のお菓子をかじっていた。ヨシカは店員のおばさんに「とにかく一刻も早くやりたいことをやっておかないと 人間死んじゃうって私わかったんです!」と熱く訴えかける。おばさんは相槌を打ちヨシカを励ます。過去のことばかり思い出してないで今のイチに会って「前のめりに死んでいこう」と決意する。おばさんはそんなヨシカの想いを「討ち死に」と例えた。おばさんは大声で大石内蔵助の「辞世の句」を詠み出し、切り火を切ってヨシカを見送った。
ヨシカは「ヨシ!」と言いながら、和菓子屋で買ったお菓子の箱を自宅アパートの住人たちに配って歩いた。最後に一番心配してくれたオカリナの元へお菓子を届けた。その際表札を見て、自分が心の中で適当につけたあだ名のオカリナが本名も「岡 里奈(おかりな)」だと言うことを知る。オカリナはヨシカに「名前に支配された人生なんです」と言った。ヨシカは自宅で中学時代の卒業アルバムを調べ、海外留学した同級生「紫谷玲奈(むらさきだにれな)」を確認する。彼女の名前をパソコンで調べSNSに登録がないか調べるとまだないことがわかった。ヨシカはそのことに歓喜し「紫谷玲奈」の名前を使ってSNSのアカウントを作った。
バーガーショップで金髪の店員に今立てている計画のことを話す。ヨシカは「紫谷玲奈」の名前を使って同窓会を企画し、自然にイチと再開できることを目論んでいた。ヨシカはボヤを起こしたことで「一度死んだも当然、人生やり直す覚悟ができた」と意気込んだ。
バスに乗っていつも隣に座ってる編み物のおばさんにも今の決意を語る。「人生の大半をかけた恋をそろそろ動かしたい」「神様死ぬ前にどうかもう一度だけイチと合わせてください」そう言うヨシカに「可愛い女だね」とおばさんはニコニコ応援してくれた。

バスを降り、会社に向かう道すがらヨシカはスマホで同窓会の連絡を確認する。安倍(あべ)という同級生がまだイチと連絡が取れないことをヨシカこと「紫谷玲奈」に報告していた。安倍は「紫谷玲奈」に対してイチの実家に連絡したらどうだと提案する。電話が苦手なヨシカはそのことにショックを受ける。「神様〜」と情けない声を出すヨシカに背後から来留美が話しかけてきた。ヨシカは来留美が高杉のことを「アキラ君」と呼んだことから、来留美は本当に高杉と付き合えたことを知った。来留美は金曜の飲み会の後二にヨシカのこと色々聞かれたことをヨシカに話すと、ヨシカはニヤけた顔して黙り込んだ。そしてヨシカはドヤ顔で二に告白さたことを来留美に報告した。来留美ははしゃいで「どうするの?」と聞くとヨシカは「私にはイチがいるから」と答えた。その時ヨシカのスマホに二からのお誘いメッセージが届いた。寒いのにクリスマスに奥多摩行こうと言う二に全く行く気がないヨシカだったが、来留美に有名なパワースポットがあると聞かされて行くことに決めた。

クリスマス当日。奥多摩に来たヨシカは寒さに震えながら二と釣りをしていた。ヨシカは白々しくトイレと見せかけてその場を離れる。パワースポットの滝についたヨシカはすでに並んでいた観光客の列につく。順番が来たヨシカは周りの人に習って空気を集めるような身振りで体にパワーを浴びさせる。ヨシカはその場で座り込みイチの実家に「紫谷玲奈」として電話をかけた。母親が言うにはイチは現在東京にいるらしい。そのことに興奮するヨシカ。ヨシカはイチの母親に12月30日の同窓会のことを伝えるように頼み電話を切り、一人河原で待つ二の元にご機嫌で戻った。奥多摩から帰る途中、二は見晴らしのいい崖に車を止めた。二は「これ、クリスマスプレゼント」とヨシカに小箱を手渡す。開けてみるとそこには赤い付箋が入っていた。少し期待外れなヨシカに対して「俺たちの出会ったきっかけ」と嬉しそうに二は言った。
帰宅したヨシカはアンモナイトの化石に対して手を合わせお礼を言って一日を終えた。

keeper
keeper
@keeper

Related Articles関連記事

リトル・フォレスト(漫画・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『リトル・フォレスト』とは、主人公の成長を描くヒューマンドラマであり、五十嵐大介による漫画、漫画を基にした森淳一監督、橋本愛主演の映画である。漫画『リトル・フォレスト』は、作者の実体験を基に制作され、2002年12月から講談社発行の『月刊アフタヌーン』で連載された。映画『リトル・フォレスト』は、2014年8月に公開された『夏』『秋』、2015年2月に公開された『冬』『春』の4部作である。東北地方の小さな村に住む主人公のいち子が、自然に向き合いながら自分を見つめ直すストーリーとなっている。

Read Article

LIFE!〜人生に捧げるコント〜(テレビ)のネタバレ解説・考察まとめ

LIFE!~人生に捧げるコント~とは、NHKが制作しているコントを中心としたバラエティ番組。『人生』をテーマにしており、ウッチャンナンチャンの内村光良が中心となっている。内村にとってはNHKでの初のレギュラー番組。一度見たら忘れられない個性的すぎるキャラクターたちや、多分野に渡る豪華ゲストが特徴。

Read Article

かもめ食堂(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『かもめ食堂』とは、フィンランドのヘルシンキに日本人女性・サチエがオープンした小さな食堂を舞台に、3人の日本人女性とフィンランド人との穏やかで心温まる交流を描いたヒューマンドラマである。群ようこの同名の小説をもとにした映画であり、小林聡美、片桐はいり、もたいまさこの3人が主演の萩上直子監督作品。かもめ食堂がヘルシンキの人々に受け入れられ、身近な食堂としてみんなの居心地の良い居場所になっていく物語である。

Read Article

今夜、ロマンス劇場で(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『今夜、ロマンス劇場で』とは2018年に公開された、主演綾瀬はるかと坂口健太郎によるラブストーリー映画である。映画監督を目指す健司が通い詰めていた「ロマンス劇場」で、モノクロ映画に出演している映画のヒロインである美雪に出会う。ある日、美雪が現実世界に現れ、健司は美雪に色のある現実世界を案内していくうちに、健司と美雪は惹かれ合っていく。しかし、美雪にはある秘密があった。切なくもあり、昭和中期を舞台とした切なくもあり温かい気持ちになるラブストーリー映画となっている。

Read Article

万引き家族(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

万引き家族(英題:Shoplifters)とは、2018年に公開された日本映画である。監督は『そして父になる』などで知られる是枝裕和。主演はリリー・フランキーと安藤サクラ。 第71回カンヌ国際映画祭において最高賞のパルム・ドールを獲得するなど、国内外で高い評価を受けた。 貧困のなか、万引きによって生計を立てながら身を寄せ合う家族6人の姿を描く。

Read Article

目次 - Contents