鉄人28号(Gigantor)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『鉄人28号』とは、横山光輝による漫画を原作とする、日本初の巨大ロボットものシリーズである。
少年探偵「金田正太郎」と、彼に操られる巨大ロボット「鉄人28号」の活躍を描く。
元々は少年探偵漫画だった所に「巨大ロボット同士のプロレス」という内容が加わった事で、昭和30年代に凄まじい人気を誇った。
『鉄腕アトム』と並び、我が国の漫画・アニメ黎明期における金字塔に輝く作品として、強く日本人の記憶に残り続ける作品である。

『鉄人28号』の概要

『鉄人28号』とは、横山光輝による漫画を原作とする、日本初の巨大ロボットものシリーズである。
英語タイトルは1950年代から1990年代にかけては『Gigantor(ジャイガンター)』だったが、2000年代以降は英語圏でも『Tetsujin 28-go』と日本語がアルファベットで音写されたタイトルが用いられている(同様の現象は『仮面ライダー』などにも見られる)。

少年探偵「金田正太郎」と、彼に操られる巨大ロボット「鉄人28号」が、悪人達やその操るロボット達に対して敢然と立ち向かう。
人間をはるかに超えるサイズと怪力を誇る鉄人と、敵ロボットの迫力ある「プロレス」が1950年代から1960年代初頭頃に、少年達の心を鷲づかみにして「巨大ロボット」への憧れを植え付けた。

『マジンガーZ』に『機動戦士ガンダム』や『新世紀エヴァンゲリオン』といった日本を代表する、あらゆる巨大ロボットものは本作の影響下にあるものとされている。
『鉄腕アトム』と並び、我が国の漫画・アニメ黎明期における金字塔に輝く作品として、強く日本人の記憶に残り続けている。

本作は、漫画家としてまだ中堅どころであった横山光輝が上記の『鉄腕アトム』を参考に、己の新聞記者時代に技術者から学んだ「機械ものは最初大きく作らざるを得ず、やがて技術発展と共に小さくなる」という言葉をヒントにした事から生まれた。

すなわち、未来の世界を舞台に高度な人工知能を搭載した等身大ロボット達を描いた『鉄腕アトム』に対して、本作は時代設定を執筆当時の昭和30年代(1950年代)として、人に操られる事でしか動けない大型ロボット達を描いたのである。

そのため「常に良い子」のアトムに対し、鉄人は「良いも悪いもリモコン(操縦器)次第」だった。
操縦者がその気になれば、英雄的な行動から破壊行動まで、どんな行動でも思いのままに取らせる事が可能であるという点が、当時の少年達にクリーンヒットした。
いわば、自動車や飛行機に憧れる心を、そのまま巨大ロボットという架空の存在へスライドさせる事に成功したのである。

歴史的な人気作であるため、派生・続編にあたる作品も漫画から舞台、果てはテレビCMまでと数多い。

『鉄人28号』のあらすじ・ストーリー

漫画版

『鉄人28号』(原作版)

栄光の初代『鉄人28号』そのものにあたる作品。
物語はアニメ版の第1期と共通する部分が多いが、当初は「少年探偵もの」として連載がはじまった経緯もあり『少年探偵団』や『名探偵コナン』などに通じる、少年ヒーローものとしての側面も強い。

少年探偵、金田正太郎はある日、とてつもないサイズの巨大ロボットが大暴れしている現場に出会う。
それは「鉄人27号」との事だったが、誤報だった。27号とされたのは、どうやら「鉄人28号」であるのが真相だという。27号は28号によって簡単に破壊されてしまっていた。
正太郎はなんとかして鉄人28号の大暴れを止めると、その力を我がものとした。

その後、鉄人は正太郎の亡き父親、金田博士が制作した旧日本軍の秘密兵器であるという事が判明する。開発が間に合わず、戦争中に日本を守る事はできなかったが、今ここに鉄人はその使命を果たす時が来たのだ。

正太郎は自身の後見人である、ロボット工学の権威・敷島博士と、警視庁の大塚所長の手助けを経て、日本にはびこる悪人達、そして彼らの操るロボット達との戦いをはじめる。
そして鉄人は、その後に日本へ現れるバッカス、ブラックオックス、モンスターといった数々の強敵と戦い続けたのだ。

時には負ける事もあったが、その都度、正太郎や仲間達の機転、運の良さで危機をくぐり抜けていく。
やがて鉄人も旧式化していくが、それでもロケットを背部に搭載して空飛ぶ能力を得たり、正太郎自身の成長によって日本を守り続けたのだった。

『鉄人28号 皇帝の紋章』(派生版)

長谷川裕一による派生漫画作品。

舞台は昭和30年代初頭。
鉄人28号を操縦する正太郎の元に、アリス・ドラグネットと名乗る少女が現れた。併行するように、日本各地に怪ロボット軍団が現れる。
それは、世界各国のロボット研究者に送られた7つの「皇帝の紋章」の争奪戦のためだった。7つ紋章が集まれば、ヒトラーがナチス・ドイツ敗戦直前に日本へ運び込んだという秘宝の在処にたどり着けるというのだ。

正太郎は秘宝に興味などない。しかし、ロボット達が日本で暴れて起こる被害を食い止めるために、争奪戦参加するのだった。
全ての戦いを終えた鉄人は、正太郎の決意の元、また、おぼろげながらに芽生えたらしき自身の意思でこの世から去っていった。

『鉄人奪還作戦』(派生版)

さとうふみやによる派生漫画作品。
本作は打ち切り作品であり、真の完結には至っていない。

舞台を執筆当時(2007年)現代とされた。
極秘に「鉄人計画」を進めていた緋川(ひかわ)研究所がPX団によって爆破された。
目的は鉄人28号の盗難だ。警視庁零課から鉄人奪還の命令を受けた正太郎は、ギャングの村雨とともに、PX団の地下基地に潜入を試みる。
当然、彼らにはPX団と、そのロボット達が襲いかかるのであった。

紆余曲折の末、正太郎は鉄人を取り戻す。
そして自分に課せられた運命に立ち向かう決断をするのだった。

アニメ版

『鉄人28号』(第1期)

原作版をアニメーション化した作品。
テレビのカラー化以前の作品であり、白黒の映像となっている。
このため、当時の視聴者だった人間には「鉄人の色=白黒」というイメージが焼き付いている者もいる。

おおよその物語は原作版と同一だが、アニメオリジナルのストーリーが展開されたり、鉄人が最初からロケットを背負っていて空を飛べるなど、いくつかの差異がある。
1950年代の日本では、テレビを所持していない家庭も多く(テレビは高級品で、低所得者層には買えなかった)本作が放映される時間帯には、テレビを持っている家に、少年達が押しかける光景が見られたという。

『太陽の使者 鉄人28号』(第2期)

1980年代に放送された、アニメ第2期。

設定・デザイン共に一新され、主人公の金田正太郎はインターポール所属のメンバーとなり、鉄人28号の操縦者となる。
インターポールは邪悪な宇宙魔王の差し向けるロボット達と正々堂々と戦うのだ。
幾多の敵を打倒した正太郎と鉄人28号は、やがて地球を飲み込もうとする巨大な宇宙魔王と対峙する事になる。

鉄人のエネルギー源たる太陽光線も断たれて絶体絶命の中、仲間から「宇宙魔王の核となる暗黒太陽を破壊すれば勝てる」という情報がもたらされる。
決死の覚悟で、暗黒太陽を破壊するため、巨大な宇宙魔王の体内へ飛び込む正太郎と鉄人28号。
そして破壊される暗黒太陽。任務は成功に終わった。
かくして宇宙魔王は滅び、地球に平和が訪れたのだった。

『超電導ロボ 鉄人28号FX』(第3期)

1990年代に放送された、アニメ第3期。

本作は時代設定がアニメ版の初代『鉄人28号』から十数年後とされており、正太郎は成人して家庭を持っている。
これにより主人公は正太郎から、その息子「金田正人(かねだ まさと)」にバトンタッチし、主役ロボットも新たに「鉄人28号FX」が登場した。
時々、父の正太郎が操る元祖鉄人も救援に駆けつけ、新旧の鉄人が共闘する物語として描かれる。

正人とFXは、悪の組織「ネオ・ブラック団」の差し向けるロボット達といくつもの激戦を繰り広げ、これを打倒していく。
やがて、ネオ・ブラック団の総統「ゾーン」の正体は、同団の幹部「デビル火刀(かとう)」が創り出した幻影であった事が発覚。

デビル火刀はかつて、人間によって宇宙開発用に開発されたロボットだったが、その人間の手で宇宙に捨てられた経緯から人間を憎悪するようになっていたのだ。
しかしデビル火刀を認める訳にはいかず、正人とFXはこれを打倒。

だが、平和はまだ訪れなかった。
ホワイト彗星の地球衝突予測だ。正人と鉄人はこの彗星破壊に挑むも、スカーレット・ローズなる女の手によって邪魔だてされる。
しかし、その行動の真意は、自身の母を見殺しされたという誤解に過ぎなかった。

やがてスカーレットの誤解が解けると、FXはブラックオックスと共同で最終兵器「ジェノサイドバスター」を発動し、ホワイト彗星を破壊。
こうして地球に平和が訪れたのだった。

『鉄人28号』(第4期)

2000年代に放送された、アニメ第4期。
放送当時は深夜アニメ枠であった。このため、メインの視聴者層を20代以上の大人に設定。

その結果、これまでの荒唐無稽かつ勧善懲悪の、少年漫画の世界を崩さなかった世界観を大きく逸脱。
物語の舞台は昭和30年代(1950年代)として設定され、放送時期より半世紀以前の時代を描いている。すなわち広義の意味での時代劇(狭義の時代劇が、明治維新以前を舞台にしたものとして)になった。

そしてテーマを「第二次世界大戦後の混乱期を克服し、高度成長期を突き進む日本と、今なお戦争で受けた傷に苦しみ、翻弄され、時代に取り残された人々。そして、それらを見つめる旧日本軍の遺産、鉄人28号」とし、暗く重い空気が漂う作品となっている。

正太郎が偶然、鉄人28号の操縦者になり、敷島博士と大塚所長の手助けを経て、敵と戦っていくという流れ自体は原作と同一である。
ただし、戦いに至る「理由」が、正義と悪の構図ではなく、上記のテーマに併せて「戦争を原因、あるいは遠因として犯罪の道に足を踏み入れざるを得なかった者達と、それを取り締まるものの戦争を知らない正太郎」というものになっている。

終盤の物語は特に原作から大きく改変され、鉄人に「太陽爆弾」という、爆発すれば世界が滅んでしまうような恐ろしいものが仕掛けられている事実が判明する。
これにより、鉄人は日本政府より危険視され、必要のないものとして見なされるようになっていく。

その事に正太郎は苦しむが、それでも鉄人を使って日本の危機に立ち向かう。
しかし最終決戦を終えた鉄人は、正太郎のコントロールを離れ自ら溶鉱炉へ向かっていく。リモコンが破壊され、制止も効かない。
だが、溶鉱炉へ「自殺」しに行く鉄人のその様は「自分は暗く辛い記憶の遺産であり、もはやこれからの日本には必要がない。お前(正太郎)はこちらに来なくていいのだ」とする、鉄人自身と、そして制作者たる父、金田博士の別れの言葉を伝えているかのようであった。

『鉄人28号ガオ!』(第5期)

2010年代に放送された、アニメ第5期。

第4期とは打って変わって、視聴者対象を幼児に設定。
『アンパンマン』のような世界観となり、明るくポップで可愛らしいデザインのキャラクター達が、楽しげな掛け合いをする作品となった。
原作版よりも視聴者の対象年齢が低い構成のため、特に第4期でシリーズのファンとなった視聴者からは、見向きもされなかったという逸話、もしくは失敗談がある。
その反面、放送期間そのものは3年弱にも及び、歴代アニメ最長の放送期間を誇っている。

物語はオムニバス形式を取っており、基本的に一話完結。ショートアニメのため、1話の尺は8分程度と短い。
まるで教育アニメかのような内容の回が多いが、最終回付近では、ややヒーローらしさが出て「人類滅亡危機一髪!」などとして、鉄人が地球に迫る危機を救った。

『鉄人28号 白昼の残月』(劇場版)

アニメ第4期と世界観を共通させる、劇場用作品。
ただし設定はアニメ第4期をリセット・再スタートしたものとなり、話は続いておらず単独の物語となっている。

ある日、鉄人28号と共に活躍する正太郎の前に、同じ「ショウタロウ」の名を持った男が現れる。
その人こそは、正太郎の義兄であった。彼はなかななか子どもが生まれない金田夫妻の元に引き取られた養子だったが、非常に大切にされた。だが、戦争で正太郎が生まれるよりも前に死んだと思われており、父の金田博士は悲しみのあまり、二人目の息子にも同じ「正太郎」の名を付けていたのだ。

しかし、兄のショウタロウは、戦争で心を大きく傷つけられており、平和の世界に馴染めない。
やがて金田博士もう一つの遺産「大鉄人」が東京に姿を現す。大鉄人はその名の通り、鉄人の何十倍もの大きさを誇る決戦兵器だった。そのボディのあちこちをkり離し、着弾地点を灰燼に帰す事が可能な広域破壊兵器「廃墟爆弾」を発射可能な脅威の存在だ。

それが、今の世に復活してしまった。
だが、そんな兵器のある世の中こそ心地が良いと、ショウタロウには思えてしまっていた。
なぜなら、ショウタロウは鉄人の正規操縦者として育てられていた人間だからだ。戦う事でしか己に存在意義が見いだせない。しかし、それを実現する「鉄人の操縦者」としての立場は、正太郎の誕生によって、自身の名前と共に奪い去られてしまったという思いがあった。

だから、今の世の中で、自分の存在意義を確立するには、正太郎から鉄人操縦者の資格を奪うしかないと思い詰めていたのだ。
だが、大鉄人の復活に対応して必死の姿を見せる正太郎に心が変容していき、二人は和解する。

正太郎とショウタロウは力を合わせ、鉄人28号を使って大鉄人を止めた。そして「この日本の時代の波に流し消されないよう、戦って、生き抜いていくつもりです」と誓いを立てるのであった。

実写版

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