鬼滅の刃 遊郭編とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

ときと屋の花魁。温厚かつ聡明な女性で、遊女たちから慕われている。急に行方の分からなくなった須磨のことを案じている。
炭治郎が男であることをあっさり見抜くものの、彼が須磨を探していることを知ると「何か事情があるのだろう」と親身に接した。身請けされる寸前に堕姫に襲われるも、炭治郎に救われて事無きを得る。

京極屋の主人

本名不明。京極屋を仕切る男。数日前に不審な死を遂げた女房のお三律のことで、「蕨姫が犯人なのでは」と疑ってはいるものの、自分も殺されるのではないかとの想いからこれを調べるどころではなく、ほとんど言いなりになっている。
妻のことは普通に愛していたらしく、彼女のことを想うシーンが描かれている。

お三律（おみつ）

京極屋の女将。炭治郎たちが吉原を訪れる数日前、不審な行動の多い蕨姫を問い詰める。幼い頃に聞いた「吉原にかつて存在していた怪しい花魁」と蕨姫が同一人物ではないかと疑っており、この時点で内心彼女を“人間ではない何か”だと推測。万が一の時の護身用にか、この時包丁を持参していた。
彼女の推測は正鵠を射たものではあったが、相手は人間の手に負えるはずもない強力な鬼であり、返り討ちにあって墜死する。

『鬼滅の刃 遊郭編』の用語

鬼殺隊（きさつたい）

数百名で構成される、鬼を滅するための組織。帯刀をしているが、政府非公認の組織であるため、炭治郎たちは警官と出くわした際には帯刀を咎められ逃走している。
「育手」に手ほどきを受け、最終選別試験を通過しなければ鬼殺隊員になることが出来ない。晴れて隊士となった者には隊服と、鬼を滅することができる日輪刀が支給される。隊服はとても丈夫で、弱い鬼ならば傷つけることが出来ない。隊服の背には「滅」の字が印字されている。

隊内には十の階級があり、その上に長である親方様と、最強の隊士である柱が存在する。各地には藤の花の紋をつけた家が存在するが、その家は鬼殺隊により助けられた人間の家で、鬼殺隊をサポートすることを意味している。その家では、怪我の治療などを受けることが出来る。規律として、他隊士の殺害や隊士同士で戦うこと、他隊士の鬼殺の妨害などが禁止事項となっている。

呼吸法

人間が、人間の理から外れた鬼と戦うために編み出した戦闘方法。
大量の酸素を体の隅々にまで行き渡らせ、身体能力を大きく底上げする事が出来る。この呼吸を「全集中の呼吸」という。この「全集中の呼吸」が基礎となり、この呼吸を応用して剣戟を繰り出す。他にも「全集中の呼吸」を四六時中維持し続ける「全集中の呼吸・常中」という呼吸が存在する。「全集中の呼吸」を維持し続けるのは至難の技だが、この呼吸ができるようになると身体能力を大幅に上げる事ができる。柱になるにはこの呼吸を体得する事が必須である。

鬼殺隊員が使用する剣技には複数の流派があるが、そのいずれも「日の呼吸」が開祖となり、日の呼吸から派生して様々な呼吸が生まれた。これは日の呼吸・唯一の使い手であった継国縁壱が、鬼殺隊の始祖となった剣士たちに自身の呼吸法を教えたことが由来している。現在では「炎」「水」「雷」「岩」「風」が基本の5流派となっており、ここからさらに流派が分かれている。恋柱・甘露寺が操る「恋の呼吸」は炎の呼吸からの派生で、霞柱・時透が操る「霞の呼吸」は風の呼吸からの派生。ただし、嘴平伊之助が扱う「獣の呼吸」は伊之助が独自に編み出したもの。自身の日輪刀の色で、適性の呼吸をある程度判定できるが、炭治郎のように漆黒の刀身を持つ者は適性のある呼吸が判別しずらいとのこと。実際、炭治郎には水の呼吸はあまり合っていなかった。

日の呼吸の使い手は継国縁壱のみであり、それ以外に習得できたものはいなかった。それは、鬼舞辻無惨と縁壱の兄・厳勝が鬼となった上弦の壱・黒死牟により、日の呼吸を扱える可能性のある剣士を皆殺しにしてきたためであった。しかし、「ヒノカミ神楽」と名前を変え、竈門家で継承を続けてきた舞いを炭治郎が戦闘に用いたことで、本作の時代では唯一の日の呼吸の使い手となった。ちなみに、炎の呼吸はこの日の呼吸と混同されるのを防ぐため、「火の呼吸」と呼ぶことを固く禁じている。

日輪刀（にちりんとう）

鬼を滅する事ができる唯一の武器。
太陽に一番近い山・陽光山で採れる猩々緋砂鉄・猩々緋鉱石を原料に作られる。これらの原料は太陽の光を吸収している。
別名「色変わりの刀」といい、持ち主に応じて刀身の色が変わる。その色によって刀の特性が変わる。炭治郎の日輪刀は黒色となったが、黒色は前例が少なく詳細がわかっていない。それ故、刀身が黒くなった者は出世しない剣士と言われている。

『鬼滅の刃 遊郭編』の名言・名セリフ／名シーン・名場面

宇随天元「人間様を舐めんじゃねぇ！！」

上弦の陸・妓夫太郎の毒に冒されて力衰え、死に近づいていく天元。そんな身で自分たちに勝てるわけがないと嘲笑する妓夫太郎と堕姫に、天元が切った啖呵が見出しのものである。

この時の天元はかなり追い詰められており、炭治郎たちも健在ではあっても妓夫太郎たちを相手に有効な策も無く、空元気と言われれば否定できないセリフである。しかしどこか開き直ったような口調と、それでもなお覇気を失わない天元の姿は、強敵を前に委縮していた炭治郎たちの背中を強く押し、何度追い詰められても粘り続け、ついには勝利を手にするに至る。
「鬼殺隊の隊士の心の支え」たる柱としての務めを全力で果たす、天元の最高の見せ場である。

竈門炭治郎「本当はそんなこと思ってないよ 全部嘘だよ」

炭治郎たちに敗れた妓夫太郎と堕姫は、残り少ない命を敗因を巡る醜い口論に費やす。ついには互いの人格を否定するようなことを口にし始めた彼らを止めたのは、先ほどまで熾烈な戦いを繰り広げていた炭治郎だった。

二人の犯した罪は計り知れなく、それは未来永劫決して許されない。だからこそ、せめて血を分けた実の兄妹だけは、互いを傷つけ合うべきではない。炭治郎は妓夫太郎たちを「もしかしたら自分がこうなっていたかもしれない姿」として、どこか己と重ね合わせて見ており、自分自身に向けた言葉とも見て取ることができる。
本作の枕詞として公式が使用する言葉に「日本一慈しい（やさしい）鬼退治」というものがあるが、そのフレーズにふさわしい名シーンである。

梅「何回生まれ変わってもアタシはお兄ちゃんの妹になる絶対に！」

炭治郎たちに敗れ、ついに絶命した妓夫太郎は、気付けば深淵の闇の中に佇んでいた。やはり自分は地獄行きなのだろうと考え、そうなって当然の人生を歩んだことに後悔は無いが、唯一の心残りは妹の梅のことだった。
もし自分のような悪人の妹としてではなく、優しい人間の下に生まれて育てられていたら、梅にはもっとマシな人生があったのではないか。そんな物思いに耽る兄を追いかけて、死してなおその後をついていこうとする梅を、妓夫太郎は拒絶する。地獄にまでついてこなくていい、次に生まれ変わったら人並みの幸せを手に入れてほしい。しかしそんな彼の想いを無視し、梅は兄の背中にしがみつく。その際に口走ったのが見出しのセリフである。

本エピソードにおいて妓夫太郎と堕姫（梅）は紛れもない悪役であり、作中で行った、そしてこれまで行ってきた悪行は決して許されるものではない。しかしそんな彼らにも家族を想う気持ちが、本物の絆があったのだ。
もう一度それを確認した二人の未来が、どうか今生よりまともで幸せなものであってほしい。そう願わずにはいられない、心揺さぶる名場面である。