チェブラーシカ(Cheburashka)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『チェブラーシカ(Cheburashka)』とは、1969年〜1983年まで旧ソ連(ロシア)で製作された全四話からなる人形アニメである。南国産オレンジの箱に詰められてやってきたチェブラーシカと、動物園で働く心優しいワニのゲーナを中心とした物語。チェブラーシカの愛らしさが日本を始め世界各国から人気を集める一方、孤独やアイデンティティといったテーマも描かれている。ダークな側面も持ち合わせる独特な世界観を持つ作品としても注目されている。

『チェブラーシカ』の概要

『チェブラーシカ』とは、絵本『ワニのゲーナ』を原作とした人形アニメである。「こんにちは、チェブラーシカ」、「ピオネールに入りたい」、「チェブラーシカと怪盗おばあさん」、「チェブラーシカ学校へ行く」の四話からなる。作者エドゥアルド・ウスペンスキーは、児童文学のみならず詩や寸劇の脚本も手掛けるなど幅広い分野で活躍した。当初の絵本では主人公がゲーナだったにも関わらず、人形アニメからはチェブラーシカの人気によってタイトルを交代した。作品は、チェブラーシカと共に瞬く間に好評を博し、ロシアのみならず日本でも紹介され、スウェーデンでは1971年に『ドルッテンとゲーナ(Drutten och Gena)』オリジナルシリーズも製作された。2009年には日本でテレビアニメ化『チェブラーシカ あれれ?』、2010年には人形アニメ『チェブラーシカ』が製作された。アネクドートと言われるロシアの滑稽な小話にもキャラクターが登場するほどの人気ぶりを見せる。
この作品は資本主義でありながら資源不足である皮肉や環境汚染を取り上げるエピソードもあり、旧ソ連の体制批判を目的の一つとされている。製作当初の厳しい検閲から「架空の世界だ」とくぐり抜けられるため児童文学に取り入れたとされ、人形アニメにして歴史の産物とも言える。
果物屋のおじさんが南国からやってきたオレンジの箱を開けると正体不明の小動物が眠っていた。大好きなオレンジを食べているといつの間にか眠ってしまっていたという。箱から出すと、ぼんやりしている彼は何度も倒れるため、「ばったり倒れ屋さん」を意味する「チェブラーシカ」と名付けられる。その後は正体不明という理由で動物園にも入れてもらえず電話ボックスで孤独な生活を送るチェブラーシカ。そこに「友だち募集、50歳の若いワニです」というポスターを目にしてワニのゲーナと友達になるのであった。お互い孤独だった二匹はやがて親友になり、時々シャパクリャクといういじわるばあさんから嫌がらせを受けたり、近所の子供たちから仲間外れにされることがあっても、仲良く遊び場を作り、旅に出かけるのであった。

『チェブラーシカ』のあらすじ・ストーリー

第一話「こんにちは、チェブラーシカ」

果物屋のおじさんが作業をしているとオレンジの箱に動物が入っているのを見つけた。起き上がらせてもばったり倒れるためおじさんはその動物にばったり倒れやさんを意味する「チェブラーシカ」と名付ける。動物園に連れて行かれたチェーブラーシカはどの檻に入れていいのかわからないと追い出されるも、動物園の前で客引きをする仕事をもらう。近くの電話ボックスで孤独な生活を送っていた時、ワニのゲーナが友達を募集しているというポスターを見て彼の家を訪ねる。ゲーナの家にはこども劇場で働く少女のガーリャと子犬のトービク、そしてチェブラーシカが訪ねてきて仲良くなるのだった。そこに孤独なライオンのレフ・チャンドルが現れるも、友達が出来ていたゲーナを見て「羨ましい」と言って去ろうとした。そこにトービクが「ボクが友達になる」と言うと彼は嬉しがり、二人は共に去っていくのであった。ゲーナは自分以外にも孤独な人、動物がたくさんいるのかもしれないと友達を作る目的の「みんなの家」を建て始めるのであった。いじわるすることで有名になりたいおばあさんのシャパクリャクから作業中にスイカの皮を投げ入れられる嫌がらせを受けながらも、チェブラーシカとガーリャだけではなく、キリンのアニュータ、サルのマリーヤ・フランツェブナとその調教師やネコが続々と現れついに完成する。しかし協力して家を建てる過程で皆はすでに仲間になっていため、友達を作ることを目的とした「みんなの家」は必要なくなった。そこでチェブラーシカが幼稚園にしたいと提案。それを見ていたシャパクリャクも彼らのお互いを思いやる姿を目の当たりにし、「もういじわるしません」と紙を渡すのであった。

第二話「ピオネールに入りたい」

ゲーナの誕生日。いつものように一人で過ごすと思っていたところにお届けものとしてプレゼントと共にチェブラーシカがやってくる。プレゼントを開けると小さなヘリコプターが入っており二人で遊ぼうとしていたらチェブラーシカがヘリコプターにつかまったまま飛んでいってしまう。着陸した先にゲーナも急いで向かうとソ連のボーイスカウトである「ピオネール」が作業をしていた。チェブラーシカとゲーナは仲間に入りたいとお願いするも、ピオネールの一員になるには鳥の巣箱を作ったり行進できるよう立派にならないと入れないのだと跳ね除けられる。彼らのいうような立派な子になるため、ゲーナとチェブラーシカが巣箱を作ってみたり行進の練習をしていると、子供が梯子に登り、マンホールのふたを開けたり危険なことをして遊んでいるのを目にする。遊び場がないから危険なことをするのだと、ゲーナは子供の遊び場を作り始める。ゲーナがコンプレッサーを勝手に持ち出していたことで警察に声をかけられるも子供広場の功績からお咎めはなかった。そこに廃品回収鉄屑収集をしているピオネールが通りがかり、それを見たゲーナは川底から鉄屑をたくさん拾って彼らに持っていった。巣箱を上手く作れなかったり行進もできない彼らだが、子供広場を作りたくさんの鉄屑を拾ってみんなのためにたくさん良いことをしたと「ピオネール」に入れてもらえることになった。

第三話「チェブラーシカと怪盗おばあさん」

ゲーナとチェブラーシカは初めての旅行で大荷物を持ちモスクワ発ヤルタ行きの区間電車に乗る。無事席に着いた二人だったが少し目を離した隙にシャパクリャクが切符二枚と財布を盗む。その後に来た車掌が切符がないことを指摘し、二人は次の駅で降ろされてしまう。物を盗んだシャパクリャクを発見するも逃げられてしまい家に帰ることを決める。心が折れそうになりながらもお互いを励まし合いながら線路に沿って道を引き返す二人。線路に沿って歩けば道を迷わないと言いながらも行き止まりの道を歩いてしまった。一度は落ち込むものの木の実を見つけた彼らは夢中になって採集する。そんな中チェブラーシカが旅行者の仕掛けたトラバサミという脚を挟む罠を見つけ、ゲーナが落とし物だと思い届けてあげようと近づくと罠に引っかかるのであった。チェブラーシカのみならずシャパクリャクも引っかかり、怒ったシャパクリャクはアリの巣と旅行者のテントの間に砂糖の道を作り、それぞれ箱に入っている川の魚を仕留めるための爆弾とケーキを入れ替えるなどして旅行者たちにいやがらせをする。一方ゲーナとチェブラーシカは川で泳いでいた子供たちに出会う。彼らは身体中汚れていて川が汚染されていることを知る。そこで二人は工場に向かい廃棄物を流さないよう工場長に掛け合い廃棄をやめてもらう。しかしそれでも川が綺麗にならず、工場から川の中に廃棄物が流れるパイプを見つけ尻尾で堰き止める。綺麗な川を取り戻した彼らは子供たちからお礼に綺麗になったカエルをもらうも、自由にしてあげようとチェブラーシカが放すのだった。そこに旅行者たちが押しているトロッコに乗ってシャパクリャクが登場。荷物も切符も返してもらい二人は無事汽車に乗れることとなった。最後にシャパクリャクが、お菓子の箱に爆弾を入れてチェブラーシカに渡し、爆弾とは知らずにそれを旅行者が奪った途端爆弾が爆発して旅行者に一泡吹かせた。そうして帰る支度を始める一同だが、汽車に乗れる切符は二枚のみで、シャパクリャクとチェブラーシカを席に座らせゲーナは一人汽車の屋根に乗る。しばらくすると、やっぱり一緒がいいとチェブラーシカが屋根にやってきて次いでシャパクリャクもやってくる。シャパクリャクは盗んでいた楽器のガルモーシカをゲーナに返し、三人は並んでゲーナの演奏を聞くのであった。

第四話「チェブラーシカ学校へ行く」

ゲーナはチェブラーシカにテレグラムを送り空港で待ち合わせをしていた。しかし時間を過ぎてもチェブラーシカは現れず、道中シャパクリャクのいたずらを受けながら仕方なしに彼の家まで行った。家に着くとチェブラーシカはおもちゃで遊んで待っており、彼は受け取ったテレグラムの字が読めず理解ができなかったという。そこでゲーナは、明日は年度始めの9月1日だから丁度良いと、チェブラーシカに読み書きを学びに学校へ行くことをすすめる。それを盗み聞きしていたシャパクリャクも新しい人生が始まるのだとワクワクし、彼女もまた学校へ行くことを決めた。ゲーナとチェブラーシカは制服を調達するためお店に向かうも店員にサイズがないと追い出される。次いでシャパクリャクも自分の制服を頼むが学校へ行くには歳を取り過ぎていると相手にしてもらえない。そこでクマネズミという理由で怖がられているラリースカを使って驚かすことで店員を脅し制服を手にした。翌日チェブラーシカとゲーナが学校へ向かうと学校の前には校長先生と動物のお世話をしている少女が座っていた。校長先生の話によると、なんと学校の工事が終わらず途方に暮れていたという。そこに制服を着たシャパクリャクが現れ無理矢理学校内へと入っていく。中にはカードで遊んでいる作業員がおり、シャパクリャクがラリースカを使い驚かせて脅して彼らを働かせた。これで学校が始まると喜んだ一同だったが、校長先生はまだ問題を抱えており自然科学の先生が足りていないのだと肩を落とす。そこにゲーナが自然科学の先生として名乗り出て、またシャパクリャクもいたずらを教えると名乗り出るのであった。

『チェブラーシカ』の登場人物・キャラクター

チェブラーシカ

CV:大谷育江
よく口にする言葉は「わかんない」。南国のオレンジの箱に入ってやってきた男の子(性別を示唆する設定はないがロシア語の性質上、彼が話しかけられる言葉から男の子であるとされている)。劇中で「出来損ないのおもちゃみたいだ」、「子熊にみえるのだけど...」という証言があるが、図鑑にも載っていない正体不明の小動物である。分類のない彼はそれ故に孤独で、友達になってもらえないのではないかと不安を口にする場面がある。自身が正体不明であるためか、シャパクリャクがけしかけたクマネズミのラリースカに対しても偏見を持たず唯一怖がらなかった。それに対してシャパクリャクはそれに対し「物を知らない子だねぇ」と言ったがこれは彼の魅力の一つである。寂しがり屋でいつもひたむきな優しい性格。

ゲーナ

CV:斎藤志郎 / 江原正士(DVD版)
心優しいワニのゲーナ。男性。毎日アパートから動物園に通勤し、閉園までオリの中にいる仕事をしている。寛大で責任感の強い性格の持ち主でいつも誰かのために行動を起こしている。孤独な暮らしをしていたがチェブラーシカと親友になった。自身を「若い50歳のワニ」と表現し、間違っていると指摘された際は、ワニは300年生きるから若いんだと反論した。ガルモーシカというロシア式のアコーディオンを演奏し、歌も歌う。パイプでシャボン玉を飛ばす。数日で「みんなの家」を建てたり、子供の遊び場を作ったりするほどの建築の腕前も持つ。

シャパクリャク

CV:鈴木れい子 / 京田尚子(DVD版)
有名になるため人騒がせをするいじわるおばあさん。ラリースカというクマネズミを飼い、いつもカバンの中に忍ばせている。彼女の行動は、警察の『悪ふざけをする年金生活者監督局』の帳簿に登録されており、若い頃はアメリカでスパイ活動をしていた。「バットマンの自動車のタイヤをパンクさせ、バックス・バニーのにんじんに農薬をかけてだめにし、ミッキー・マウスのしっぽに空き缶をゆわえつけた」という容疑でFBIから指名手配されている。チェブラーシカらと初めて対面する場面ではいたずらを仕掛けるも、エピソード終盤には改心した様子を見せたり(その後も繰り返すが)、盗んだ物は返す、などという友好的な面も見せる。いたずらを仕掛けるが最後には友好的に行動するといった掴み所のない性格とも言える。第三話では「チェブラーシカみたいな子をいじめるなんて許せないんだよ」と発言していることもあり、彼女自身のいたずらの目的はただ有名になることだけかもしれない。名前の由来はフランス語で「オペラハット」を指す「シャポークラク」。またロシア語で「女スパイ」を指す「シュピオンカ」とも音が似ている。

ラリースカ

シャパクリャクに飼われているすばしっこいクマネズミ。ネズミという理由でみんなから嫌われており、シャパクリャクがカバンの中から彼女を取り出し驚かせている。いつもシャパクリャクの言うことをよく聞き、リードに繋がれて散歩をしている場面もある。言葉を発しない。

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