グリンゴ/最強の悪運男(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『グリンゴ/最強の悪運男』とは、2020年2月に日本で公開されたブラックコメディ。友人のリチャードとその愛人エレーンが共同経営する製薬会社でコツコツと真面目に働いてきたハロルド。彼にまさかの解雇の危機が迫り、愛する妻からは離婚を切り出されるという人生最悪の窮地に立たされる。「正直者はバカをみる」を地でいってきた彼が、一発逆転を狙って身代金500万ドルという偽装誘拐を企てたことで、メキシコの麻薬カルテルを巻き込んでの大騒動に発展する痛快娯楽大作。

『グリンゴ/最強の悪運男』の概要

『グリンゴ/最強の悪運男』とは、本作で極悪上司を演じるオーストラリア出身のジョエル・エドガートンの兄のナッシュ・エドガートンが監督を務めたリベンジ・ムービー。彼はこれまで『マトリックス』『シン・レッド・ライン』『スターウォーズ』シリーズ等、数々の話題作にスタントマン、俳優として関わる。映画監督としても活躍してきた彼が今回挑むのは、貧乏くじを引き続けてきた男であるハロルドがある陰謀に巻き込まれたことで自我に目覚め、自分の運命を変えようと彼なりに奮闘する姿を通して、善と悪がしのぎを削る社会を皮肉った問題作である。メキシコロケを通して、現地の活気に満ちた情景で楽しませる。特にハロルドとミッチが体験するベラクルスのお祭りは南国ならではの刺激に満ちた描写が秀逸である。

また、大勢の現地のスタッフと俳優を採用することで、リアリティが生まれ、バイタリティーあふれるメキシコの魅力を最大限に引き出している。製作には、2003年の映画『モンスター』で第76回アカデミー賞主演女優賞に輝き、それ以降も女優業にとどまらず、製作者としての経験も積んできたシャーリーズ・セロンが参加。彼女はまったく悪びれない悪役として描かれる、ハロルドのモンスター上司のエレーン役で強烈な印象を残した。

興行収入:全世界で約12億円と予想よりも少ない結果になった。
公開された映画館数:封切り時は全米2404館で公開されたが、3週目には2314館から117館まで減少。
映画の評価はあまり高くないようである。ストーリー展開と人物描写に甘さが目立ち、まとまりがないとの声が上がっている。また、ドラッグがらみという重いテーマにしてはコメディ色が強く、犯罪が軽く扱われている印象を与える。

『グリンゴ/最強の悪運男』のあらすじ・ストーリー』

突然の解雇の危機がハロルドに迫る

シカゴのプロメチウム製薬会社の社長であるリチャード・ラスクに電話がかかってきた。2日前に共にメキシコ出張して行方がわからなくなっていた管理部長のハロルド・ソインカからだった。ハロルドは緊迫した口調でリチャードに「リチャード。俺は誘拐された。今犯人たちに銃を向けられている。助けてくれ!」と懇願する。冷静になって状況を明確に説明しろとリチャードが促すと、「誘拐犯は『500万ドル送金しろ。でないと殺す』と言ってる!」とハロルドが絶叫する。話は2日前にさかのぼる。

シカゴのプロメチウム製薬会社で管理部長として働くハロルドは、誠心誠意会社に尽くしてきた。上司のリチャードは彼の長年の友人で、プロメチウム製薬会社の経営者であり、エレーン・マーキンソンはその共同経営者。リチャードとエレーンは公私ともにパートナーで、強力な利害関係を維持してきた悪辣な人物だった。ハロルドはリチャードにコネで入社させてもらって以来、会社に忠誠を尽くし、懸命に働いてきた真正直人間だった。管理部長としてメキシコ工場への出張も多いという負担もあるが、ボニーという、愛する妻との家庭生活にも不満はなく、これまで彼なりに充実した人生を送ってきた。そんな彼に人生最大の危機が訪れ、起死回生の作戦に出る。

会計士の友人スチュー(右)と朝早く情報交換するハロルド。

家の前の雪かきを終え、愛犬の早朝の散歩を済ませ、車で出勤するハロルドの一日は普段通りに進んで行くはずだった。友人の会計士スチューに会うまでは。出社前にスチューとカフェで合流したハロルドは、彼から現在のハロルドの経済状態を知らされる。ハロルドはボニーがもう1台車を欲しがっていることをスチューに何げなく告げるが、スチューからは「インテリアデザイナーのボニーの顧客は今のところリチャード1人しかいないのに、彼女が借りている事務所は賃料が高すぎる。ボニーがこのまま贅沢を続けていくといずれ破産するぞ」と今の経済状態への真剣な対応を迫られる。

さらに、スチューは気になる情報をくれた。プロメチウム製薬会社は同じ業界のパウエル社に買収されそうになっているとのこと。スチューはパウエル社の上層部から聞いたらしい。寝耳に水のハロルドはリチャードからは何も聞いていないと慌てるが、「リチャードはうわべばかり気にしている信用できない人物で、そのうちに裏切られるぞ」とスチューに忠告された。

スチューの忠告に半信半疑のハロルドは、通勤途中の愛車の中で音楽をかけながら楽しそうにハミングをしていた。まさか自分の家計が破綻するとは真剣に受け取れない彼の楽観的な性格が見てとれる。

遅刻してきたハロルドを部下たちの前で叱り、自分のオフィスに招きいれるリチャード(左)。

不安な気持ちのまま出社したハロルドを部下の前でリチャードが「遅刻だぞ」と叱る。コネでハロルドを入社させた手前、リチャードは部下の前ではハロルドに厳しくしないとえこひいきをしていると思われるからである。リチャードのオフィスに招き入れられたハロルドは道路が渋滞していて遅刻したことを詫びた。ハロルドはリチャードに、メキシコ工場で在庫品の紛失が起きている件で、翌日メキシコ工場にリチャード、エレーンとハロルドの3人で視察に行くことを告げられた。その件では自分が工場長のセルリーノ・サンチェスと解決するつもりでいたハロルドは、今回の出張に対して不可解な思いにとらわれるが、社長のリチャードの要求は飲まざるを得ないこともわきまえていた。

リチャードのオフィスを出る間際にハロルドはさっきスチューから聞いた買収話を持ち出した。老獪なリチャードは「俺を信じろ」とそつのない返事をする。そして、ゴリラのたとえ話を持ち出した。オフィスの書棚から取り出した分厚い本を掲げながらハロルドに説明を始める。2頭のゴリラがニンジンを食べていたが、飼育係がある日、1頭のゴリラにニンジンの代わりにバナナを与えた。すると、もう1頭のゴリラもバナナ欲しさにニンジンを食べなくなったというたとえ話だった。「俺を信じろ、今はニンジンを食ってろ。いつかバナナを食えるようになるさ」とハロルドをなだめる。

秘書のミアの視線を気にしながら、リチャードのパソコンから買収計画のデータをコピーするハロルド。

ハロルドは仕事中に自分のパソコンでメールのチェックをして、自分の口座の残高が489ドルしかないことにようやく気づく。しかも、借入金が1万ドルを超えていた。思ってもいない苦境に愕然とするハロルド。そこへリチャードから電話が入る。取引相手との会合が長引き、社に戻らずにバスケットボールの試合に行くので、自分のバッグを体育館に持って来るようにとの指示だった。プロメチウム製薬会社にはリチャードを始めとするバスケットボールチームがあり、今日他のチームとの対戦が予定されているのだ。リチャードのオフィスに入り、彼のバッグを持ち出そうとすると、目の前のパソコンが開いたままなのに気づいた。隣のスペースにいる社長秘書のミアの視線を伺いながらパソコンを盗み見ると、そこには「パウエル社との会合」というフォルダーがあった。察しがついたハロルドはこっそりと情報をコピーする。

その夜ハロルドは妻のボニーにリチャードの家の内装の進み具合を聞いていた。朝のスチューの忠告を思い出した彼は、ボニーの事務所の賃料が高いことをさりげなく話すつもりで、「リチャード以外の顧客は見つかったか」と探りを入れるが、ボニーは大丈夫だとしか言わない。ボニーにもっと家計のことを考えて欲しいと思っているが、気の弱さからなかなか言い出せない。

麻薬の運び屋・マイルズに恋人のサニーとメキシコ旅行のチャンスが到来

麻薬の運び屋のマイルズと恋人のサニー(右)は同じギター店で働いている。

あるギター店。マイルズは若い客の弾くギターをそばで聴いている。その客に「独学でギターをマスターしたのはすごいな」とお世辞を言っている。客の対応が終わったマイルズが受付のサニーのそばに来る。マイルズとサニーは恋人同士だ。そこへ彼の知り合いのネリーが来店。
自分の友達のドラッグをメキシコに運ぶ仕事をどうしてもマイルズにやってほしいネリーが、報酬額を当初の2倍に増額し、「ガールフレンドのサニーもメキシコに同行してもいい」という許可を出すとマイルズは承諾する。マイルズの話によると、ネリーはミュージシャンでこれからツアーが始まるので、自分がメキシコに行けないからマイルズに行って欲しいと頼んできたそうだ。

メキシコシティ国際空港に降り立ったマイルズ(右)とサニ―。

メキシコシティ国際空港。飛行機から降りたマイルズとサニーは、同じ便で到着したリチャード一行とすれ違う。サニーは2人だけでのバカンスにワクワクしていた。

プロメチウム製薬会社のメキシコ工場視察に訪れたリチャードたち

リチャード(左端)とエレーン(左から2番目)はメキシコ工場長のサンチェス(ハロルドの右側)、彼の助手のヴェガ(右端)と初顔合わせをする。

メキシコシティ国際空港に到着したリチャード、エレーン、ハロルドがエスカレーターで1階に降りると、工場の運転手をしているエンジェル・ヴァルヴェルデが待っていた。ハロルドはエンジェルにバーベキューのお土産を渡す。リチャードとエレーンをエンジェルに紹介して、一行はプロメチウム製薬会社のメキシコ工場に向かう。工場に着き、工場長のセルリーノ・サンチェスと彼の助手のロベルト・ヴェガとの顔合わせが終わると、サンチェスのオフィスで、リチャードとエレーンとサンチェスの3人だけで話し合いが始まる。なぜか管理部長のハロルドは外で待たされた。
さっそくリチャードがサンチェスに在庫報告書の説明を求める。在庫の減り方が尋常ではないことの言い訳をするサンチェス。実は、プロメチウム製薬会社は、この工場で秘密裏に医療用大麻の錠剤を製造していた。それをサンチェスはヴィリェガスが仕切っているブラックパンサーという麻薬カルテルの組織にハロルドに内緒で横流ししていたのだ。しかもリチャードとエレーンは、サンチェスにお金が必要な時には、裏ルートで売人に錠剤を売ることを許可していたが、今後はブラックパンサーとの取引を即刻止めることを命令する。窮地に陥ったサンチェスは、ブラックパンサーに今後の麻薬取引を断る話をしに行く必要に迫られる。リチャード、エレーンとサンチェス工場長との三者会談に呼ばれなかったハロルドの心中は穏やかではない。在庫管理の担当者である自分がこの在庫問題を解決するべきなのにと疑問が湧いてきた。

リチャード(右端)、エレーン(真ん中)、ハロルド(左端)はホテルのレストランで夕食をとる。

その夜、ホテルのレストランでの夕食時。ハロルドはロビーで待機しているエンジェルに差し入れを届ける口実を作り、中座している間にこっそりとリチャードとエレーンの話を椅子に隠していた携帯電話で録音する。2人が自分の部屋に引き上げた後、ハロルドは録音を再生する。リチャードとエレーンは、買収が成立したらハロルドは人員削減の対象になり、会社には残れないと話していた。そして、リチャードはハロルドと結婚する前のボニーは今より23kgも太っていたとエレーンに暴露した。ここまで聞いてハロルドは携帯電話を閉じた。自分のいないところでハロルドの悪口を言っているリチャードとエレーンに激しい怒りが込み上げてきた。

ハロルドの妻のボニーはハロルドに自分が不倫をしていることを告白し、離婚を突きつける。

自分の部屋に入ったハロルドは、ベッドの上でシカゴにいるボニーに、ビデオチャットで怒りをぶちまけた。これまで自分が尽くしてきた会社とリチャードに裏切られ、どこにも持っていきようのない悔しさをにじませている。いつもは飲まないお酒を今夜は飲むぞと意気込んでみせるハロルド。彼の話を静かに聞いていたボニーは、たとえ話を持ち出した。「見えないゴリラの実験」についてである。ビデオ映像に、黒いシャツの人と白いシャツの人がいて、白いシャツの人がボールをパスする回数を数える。その映像の中にゴリラの着ぐるみが通る。集中して数える人にはゴリラが見えないという実験である。ハロルドはそのゴリラが見えないタイプの人だと揶揄する。ハロルドが戸惑っていると、ボニーは自分が不倫していること、ハロルドと離婚する気でいることをメールしたのに、「あなたにはそれが見えなかった」と告げる。ボニーの突然の告白に混乱するハロルド。ボニーが言いたかったのは、不倫がゴリラで、ボールは結婚生活だということだった。不倫の相手は誰だとハロルドは問いかけたが、ボニーはビデオチャットを終わらせた。
突然すべてがガラガラと音を立てて崩壊してしまった。愛する妻が自分に隠れて不倫をしていた事実を知ったハロルドはどうして自分だけがこんな悲惨な目に合うのかと絶望する。

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