ブレイクダウン(さいとう・たかを)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ブレイクダウン』とは、さいとう・たかを&さいとう・プロダクションによる、サバイバル・ファンタジー劇画である。
1970年代に人気を博した同氏の少年劇画『サバイバル』を青年向けの物語として再構成したかのような内容が特徴であり、ファンタジー要素が薄れた代わりに、災害に見舞われた人間が置かれるシビアな環境をリアルに描き出している。

『ブレイクダウン』の概要

『ブレイクダウン』とは、さいとう・たかを&さいとう・プロダクションによる、サバイバル・ファンタジー劇画である。
1995年から1997年にかけてリイド社が発刊していた漫画雑誌『リイドコミック』にて連載されていた。
現実世界で起きた阪神・淡路大震災の記憶も生々しい頃に描かれたため、同震災で起きた種々の被災内容を参考にしながらも、巨大隕石が地球に降り注いで世界中が壊滅したという設定が起こされている。
日本のテレビ局の社員であった大友海里を主人公にして、環境の激変と、そこから生じる人々の混乱、絶望する人間と生き抜こうとする人間の交錯を描く。

物語全体の流れとしては、1970年代に人気を博した同氏の少年劇画『サバイバル』を青年向けの物語として再構成したかのようなものとなっているが、阪神・淡路大震災があった事と、連載雑誌が青年誌とされた事によって、ファンタジー要素が薄れた。
具体的には主人公が異様にタフであったり、妙に知識が豊富であったりせず、自然環境に通じているだけの普通の青年として描かれる。

全体的に希望が少なく『サバイバル』に比べて、より重苦しい雰囲気が作品全体に漂っている。
そのような事情もあり、本作品は途中で打ち切りの憂き目にあってしまっており、真の意味の完結には繋がらなかった。

物語は、20世紀末の日本から始まる。
宇宙から、直径約300mほどの小惑星「ウィルビー」が地球へ接近している事が世界で確認されていた。
そんな頃、うだつのあがらないテレビ局社員「大友海里」は、親友のアマチュア天体家で、衛星の軌道追跡で名を挙げた「鳩山」から連絡を受ける。鳩山曰く、なにやらウィルビーをめぐる情報に"変な動き"をキャッチしたらしい。
すぐに信州の山奥にある天体観測小屋へ来てほしいと要請され、大友は取材を名目にして、有能だが傲慢な上司「内海」と共に鳩山の元へと向かった。

辿り着いた天体観測小屋で、鳩山が見せてきたものは、ミサイルを積んだ軍事衛星の写真であった。鳩山の推測では、これはアメリカやロシアなどの軍事大国による極秘実験で、ウィルビーにミサイルを撃ち込み爆破するつもりなのではないか、という事だった。

やがて、軍事衛星は鳩山の推測通りミサイルを発射。ミサイルはウィルビーへ命中するが、それが悪夢の始まりだった。
ウィルビーは内部に圧縮ガスを蓄えており、爆破によってガスを噴出。分裂しつつ、その軌道を大きく変えながら地球への衝突コースに入ってしまい、最終的に太平洋へ落下して世界中に大地震を引き起こす。

天体観測小屋も倒壊しはじめる。
大友達は小屋の地下に避難して揺れの収まるのを待ち、再び地上へ姿を現したが、その目に入ったものは壊滅した世界の姿だった。
すべてのインフラが破壊され、人々の文明的生活は成り立たなくなった。もはやあるものは、生きようとする人間の執念と、文明の残滓のみである。
鳩山は最後までウィルビーの軌道を追跡するため、避難を拒んで死んだ。
残された大友は、内海を連れ立ち、そしてサバイバルに突入していくのだった。

『ブレイクダウン』のあらすじ・ストーリー

ウェルビー衝突~団地到着

20世紀末。
地球近傍に、小惑星ウェルビーが接近していた。
そんな中うだつのあがらないテレビ局社員の大友は、親友のアマチュア天体家かつ、衛星の軌道追跡によって名の知られている鳩山から連絡を受けた。鳩山がいうには、どうもウィルビーをめぐる情報に"変な動き"があるらしいというのだ。
それを伝えたいので、すぐに信州の山奥にある天体観測小屋へ来てほしいと要請された大友は、上司の内海に怒鳴られながらも取材を名目にしつつ、彼を引き連れて鳩山のいる長野へと車で向かった。

やがて長野にある天体観測小屋へ辿り着くと、鳩山はさっそく一枚の写真を見せてくる。
それは、ミサイルを積んだ軍事衛星を写したものであった。これがなんなのかという疑問に対して、鳩山は「これはアメリカやロシアなどの軍事大国による極秘実験であり、ウィルビーにミサイルを撃ち込み爆破するという計画が実行されている可能性がある」という推測を語る。

やがて、軍事衛星は鳩山の推測通りにミサイルを発射し、ウィルビーは爆破されるのだが、それこそは絶望の始まりであった。
ウィルビーは内部に圧縮ガスを蓄えていたのだ。
このため、ミサイル爆破によってガスを噴出してしまい、大きく従来の軌道を外れて地球への衝突コースに入ってしまい、最終的に太平洋へ落下して世界中に大地震を引き起こす。

その破壊の力は大友達にも襲いかかった。
大友と内海は小屋の地下に避難して揺れの収まるのを待ち、再び地上へ上がるが、その目に入ってきたのは崩壊した世界の姿だった。
鳩山は、その最期までウィルビーの軌道を追跡しつつ死んだ。

友の死に悲しむ暇もなく、命からがら長野の山を下山する大友と内海だったが、降り立った下界はすべてのインフラが破壊され、人々の文明的生活は成り立たなくなっていた。
大友は山の麓の人々に協力するも、内海は精神に異常をきたして行動不能になる。そして、麓の人々も多くが鉄砲水に呑まれて死んでいってしまう。

しかし大友は運良くか、はたまた運悪くか生き延び、とある団地の廃墟にたどり着くのだった。

団地出発~東京到着

団地では、ウェルビー衝突による大災害をかろうじて生き延びた人々が、共同生活を営んでいた。
リーダー格となっているのが、江藤という中年と、蜂谷というチンピラだ。
主に江藤が団地内部での耕作や人々の管理を行い、蜂谷は団地の外から生活物資を集めるなどで作業分担がされていた。

大友はそんな団地の人々に、歓迎4割、拒絶6割といった具合に迎え入れられる。
最愛の息子を亡くして失意の底に沈む女性、神田とも出会う。
そんな彼らと大友はしばらく生活を共にしていたが、やがて団地に伝染病が発生。それに伴うような形で大友は団地から追い出されてしまうも、持ち前の知識で人々を助けようとする行動から、最終的には信頼を勝ち得る。

しかし、留まる事はできなかった。
神田が蜂谷に強姦され、そして生き別れのもう一人の息子に会いたいと願ったからである。
大友は神田を連れ、団地を旅立った。

その最中で、パソコンを使いこなす少女、誉田季美子と出会って連れ立つも彼女は平然と人を殺して食糧を奪うような悪人だった。
そんな季美子を連れた大友と神田は、逃げ込んだ地下駐車場で結ばれるも、季美子の錯乱によって火事が発生。
これを季美子はなんとか逃げおおせるも神田は爆発に巻き込まれ、息子に再会する事なく亡くなってしまう。

大友は火事を逃げ延びた。
結ばれた相手を失ったショックで大友は生きる気力を失いかけるも、神田の遺志を継ぐ事に執念を燃やす事でかろうじて立ち上がり、彼女の息子がいたという東京へ足を運ぶ。

しかし、やはり東京も壊滅していた。
出会うのは、人としての情緒を失った獣のような人間達ばかりである。
大友は彼らの脅威に苛まれながらも、子どもがいる場所の情報を探した結果、崩壊した都庁の最上階付近に、その存在を感じ取り、命をかけて都庁を登った。その先に出会った子ども達の中に、神田の息子は見あたらなかったが、彼らにこの後の世界を生きる希望を見いだした大友は子ども達を護る決意を固め、廃墟東京の大地を踏みしめるのだった。

『ブレイクダウン』の登場人物・キャラクター

大友海里

すべてコマが大友。

本作の主人公。争いを好まず、柔和かつ正直な性格をしている。
とあるテレビ局の報道部に所属する25歳の男性である。自然の知識が豊富で、野草の種類や動物の行動をよく知っており、また、トレッキングや野外活動にも詳しい。
しかしテレビ局の社員としては落ちこぼれであり、上司の内海からの評価は最悪で、同僚からもなんら期待はされておらず、窓際社員の扱いであった。

高校生の頃、交通事故で両親と妹を一気に失っている。その辛い経験から、生命は非常に尊いと考えており、自身に辛く当たる内海が相手であっても危機に陥った際には見捨てず救助活動に当たる。
しかし地球規模の災害の前には、そんな彼の優しさも絶望に飲み込まれていき、自暴自棄になっていく。
それでも一時的に心を通わせた「神田」という女性のため、その生き別れた子どもを探すべく、廃墟の東京を訪れ、物語の最後まで捜索を続けた。

鳩山

黒色の服を来た人物が鳩山。

大友の親友で、アマチュアの天体観測家。
しかしプロ顔負けの知識や技術を持っており、天体・衛星の軌道追跡の第一人者とされ、その名は世間に知れ渡っている。
軍事衛星による小惑星ウィルビー爆破を推測し、大友を自分の天体観測小屋に招待した。
ウィルビーの地球衝突が確実になっても避難を拒み、その軌道を最後まで観測し続けて死亡した。

内海

眼鏡をかけた人物が内海。

大友の上司。
エリート報道マンであり、大スクープのためには手段を問わない。
優秀ではあるが傲慢な性格であり、鳩山への取材が終わったら大友はクビにしようと考えていた矢先に被災。

また、自然科学にはかなり疎いらしく、山へ登るのに革靴で来たり、小惑星の衝突が地球に甚大な被害をもたらす事を理解できなかったりした。
そのため文明を失った後の世界では無力であり、最終的に精神に異常をきたした挙げ句、鉄砲水に飲み込まれて死んだ。

蘇我昌也

頭に包帯を巻いた人物。

街の河川敷で負傷者の治療に当たっていた医師。
多くの人間が動けなくなり、先輩格に医師すら逃げ出す中でも希望を捨てず、ひとり「医者」として人々を手当てすべく奮闘していた。
大友が河川敷へ鉄砲水が来る事を予測した再、その言葉を聞き入れて、負傷者を連れて高台へ避難した。

脚を負傷した女性

脚が瓦礫の下敷きになった状態で救助され、蘇我の元へ運ばれてきた女性。
クラッシュ症候群を罹っており、十分な医療機器も援助も得られない状況で助かるには、麻酔なしで負傷部位を切開し、毒素を排出する他なかった。
そのため当初は泣き喚いて蘇我をやぶ医者呼ばわりしたが、落ち着くにつれて蘇我に信頼を寄せるようになった。
蘇我と共に高台に避難している。

駐在

2hmiya18
2hmiya18
@2hmiya18

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