金色のコルダ2(2f / 2ff / アンコール)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『金色のコルダ2(2f / 2ff / アンコール)』とは、株式会社コーエーテクモゲームス発売の女性向け恋愛シミュレーションゲーム『金色のコルダ』の続編タイトル。
『2』『2 アンコール』の順で発売、『2f』『2f アンコール』『2ff』は移植版。
季節は秋、前作の半年後のストーリー。
ヴァイオリン奏者の主人公のもとに、アンサンブルコンサートのお誘いが舞い込んでくる。そんな中、突如おとずれる学院の危機。
主人公は学院のため、仲間たちとコンサートの成功に向けて協力し、恋や絆が芽生えていく。

土浦 粱太郎(つちうら りょうたろう)

土浦と公園デート。

教会でのコンサートに、アンサンブルメンバーとして普通科2年のピアノ奏者である土浦 粱太郎(つちうら りょうたろう)を誘うと、彼から即座にOKをもらえる。
土浦と主人公は同じ普通科、彼は「普通科同時助け合おう」ととても協力的にアンサンブルに参加してくれたのだった。

コンサートの当日、教会の周りでバザーが開催されており、主人公と土浦はその賑わいの中を歩く。
バザーに並ぶ外国の雑貨の中で、主人公はオルゴールを見つける。
そのオルゴールが奏でるのは、あの有名なベートーヴェン作曲の「エリーゼのために」。
主人公はそのメロディを聞いて、昔知らない男の子がピアノで演奏してくれた、自分の大事な想い出の曲だったことを思い出したのだった。

昼休み、主人公と土浦は音楽教室の金澤から呼び出しされ、来年音楽科に編入しないかと提案される。
主人公と土浦は春に行われた学内音楽コンクールでの演奏でその実力が認められたのだ。
日頃音楽科を毛嫌いしている土浦は即座に断るが、金澤は「この先自分の音楽の将来にも関わるから一度よく考えてみろ」と諭され、土浦は黙ってしまった。

後日、金澤から音楽科編入についてもう一度呼び出しされる。
金澤は途中経過を聞きたいようだったが、土浦は「音楽科へ転科する」とすでに答えを出していた。
家族と真剣に話し合い、将来を考え、自分で決断した答えだという。
一方で主人公はまだ答えを出せず、一人焦るのだった。

図書館で土浦が音楽理論や音楽史の本を借りていた。
「音楽科に乗り込むからには準備しないとな」という彼はやる気で満ち溢れている。
まだ転科を迷っていた主人公は土浦に相談しようとするが、彼から「俺とお前はちがう、最後はお前が決めるしか無い」ときっぱり言われてしまう。
しかし彼は、焦る主人公を安心させるように「俺がそばに着いていてやる」と微笑んでくれたのだった。

放課後、どこからかピアノの演奏が聞こえてくる。
その曲は主人公の想い出の曲である「エリーゼのために」だった。
音をたどっていくと演奏していたのは土浦で、彼は「昔この曲を弾いて喜んでくれた女の子がいたんだ」と懐かしそうに話してくれたのだった。

最終コンサートが終わり、土浦と主人公はお互いを称えあった。
土浦はコンサートを通して、たくさんの音楽をまとめてひとつの音楽を作っていく良さを体感し、ひとつの音楽を築き上げていく指揮者に興味がわいたという。
そして彼は「そう思わせてくれた、アンサンブルに誘ってくれてありがとう」と主人公に感謝したのだった。
そこで土浦が突然、あの日教会のバザーでみたオルゴールを取り出し、主人公にプレゼントしてくれた。
2人の間に「エリーゼのために」のメロディが流れ出す中、土浦は自分の昔話を語ってくれた。
「10年前自分がまだピアノが楽しくて弾いていたとき、自分の演奏を聞いて感動してくれた人に出会った。そこで自分は音楽は人を感動させることを知ったのだ」という。
土浦は、主人公が覚えていたピアノを弾いていた男の子本人だったのだ。
10年前、春のコンクール、そして今回のコンサート、土浦のターニングポイントにはいつも主人公がいた。
土浦は「これからも長い付き合いになりそうだな」と笑い、2人の思い出となった「エリーゼのために」をいつでも弾いてくれると主人公に約束してくれたのだった。

志水 桂一(しみず けいいち)

志水が学院のカフェテリアにて、自分のデザートをわけてくれる。

教会でのコンサートに、アンサンブルメンバーとして音楽科1年のチェロ奏者である志水 桂一(しみず けいいち)を誘ってみると、OKをもらえた。
志水は前からアンサンブル演奏に興味があったらしく、マイペースな彼にはめずらしくやる気になってくれたのだった。

主人公が練習しようと屋上に向かった先で、志水周りに散らばっている楽譜をあやまって踏んでしまう。
志水に謝るも、彼は「音符が読めれば大丈夫」と平気そうな顔をしている。
志水はこの間から作曲を始めており、夢中になってペンが進めていくうちに楽譜を散らばらせてしまったようだ。
「もう少しで曲がでできあがりそうなんです」と彼は嬉しそうに笑った。

休日、主人公と志水は2人で練習し、その後図書館へ向かう。
志水は、たくさんの言葉であふれている本を読むことが好きだそうだ。
また彼は、作曲を始めて刺激を受けることは大切だと知り、読書をはじめ、散歩や、誰かと会って話すことで刺激を得るようにしているのだという。
そこで志水は「アルマ・マーラー」について語りだした。
美しいアルマ・マーラーはたくさんの芸術家の創作意欲をかきたてた女性で、そういう人は霊感をあたえる女神「ミューズ」と呼ばれる。
一緒にいると自然と芸術が生み出されていくミューズ、まるで神様のようなそんな存在を志水も探しているのだと教えてくれた。

主人公が練習していると、フラフラと歩いている志水と出会う。
志水はどこか夢見心地で、歩きながら自分の求める音を探しているのだと言った。
彼の作曲方法は、自分の気持ち良いと思う音を重ねてメロディを紡いでいくこと。
志水に作曲を手伝ってほしいと頼まれ、主人公はヴァイオリンを演奏すると、「先輩といると僕の探していた音が次々に見つかりそうだ」と彼は喜んでくれたのだった。

ある日、志水に誘われ練習室へ向かう。
そこで彼は主人公の両手を自分の手のひらで包み込むようにやさしく握り、うやうやしく自分の額にあてながら語りだした。
「主人公のそばにいると、胸が輝くもので満たされ、くすぐったくてほほえみのこぼれるような幸せな気分になる。そして主人公の音がきれいだから、その美しさに触れるたびに彼の心の中で眠っていた音が呼び覚まされていく」と言うのだ。
志水に「あなたが僕のミューズなんです、先輩がいてくれたらなにもいらない」と告白され、自分の存在が彼にとってかけがえのない知ったのだった。

最終コンサートが終わり主人公が志水のもとへ向かうと、志水から「ずっと作曲しつづけていた曲が完成した」と報告される。
その曲は主人公のための曲で、志水が自分の胸の内の想いを音にしたものだという。
志水はその場でその曲を演奏すると、彼の周りにファータたちが現れ、祝福するようにキラキラと光り輝きながら舞い踊る。
それはとても幻想的な風景で、主人公は演奏にも胸を打たれたのだった。
そして「先輩とクリスマスを一緒に過ごしたいです」と志水に願われた主人公は、彼を包む光の中で歩き、2人の距離を縮めたのだった。

火原 和樹(ひはら かずき)

図書館の視聴ブースで、火原とともに音楽を聞く。

教会でのコンサートに向けて、アンサンブルメンバーとして音楽科3年のトランペット奏者である火原 和樹(ひはら かずき)に声をかけてみた。
イベント事が大好きな彼は、「コンサート?楽しそうだね!いいね!」と、喜んでアンサンブルに参加してくれた。

ある日学院の正門で、報道部の天羽 菜美(あもう なみ)が号外新聞を配っていた。
記事の特ダネは、なんと火原がTVのCMに出演するという情報だった。
さぞテンション高く話してくれるだろうと主人公が火原のもとに向かうが、火原はなにやら沈んだ様子で口数少なく、CMについて話そうとしなかった。

CMが放送された日から、学院中が火原のCMの話題でもちきりになった。
CMは、火原がトランペットを吹きならす青年を演じているさわやかな映像で、彼のイメージにぴったりのものだった。
しかし話題の中心にいるはずの火原の姿が見当たらず、主人公が学院中を探し回ると、彼は人気のない屋上にポツンとたたずんでいた。
主人公が元気のない火原にどうしたのかたずねると、実はCMのトランペットの演奏は火原のものではなく、プロの演奏の吹き替えに差し替えられた打ち明けられた。
「監督に、素人でただの高校生の音楽は全国に流せないと言われた。でも俺の演奏だと思っているみんなから演奏を褒められるんだ」という。
火原はあれは自分の演奏ではないと真実を話したいが、CMの秘密保持契約を結んだため、本当のことを打ち明けられないのだ。
正直者の火原は、みんなを騙しているのがつらいと苦しんでいたのだった。

CMの影響で学校中の注目のまとの火原に、天羽がインタビューしている。
「演奏の際に気をつけたことは?CM第二弾には出演したいですか?」と矢継ぎ早に繰り出される質問にたまらなくなったのか、火原は天羽に真実を話そうとする。
そこへ事情を知っている主人公と、彼の親友である柚木が止めに入る。
2人は火原をつれて人気のない屋上へ向かった。
柚木がCMのことを公表しようとしたことをたしなめると、火原は黙っているのはもう限界だと訴える。
「騙していることもそうだが、周りのみんなが誰も自分の演奏だと気づかないことが叫びだしたいほど苦しいのだ」と、彼は顔をゆがめる。
柚木はあの手この手で止めようとするが、火原は意思を変えようとしない。
そんな火原に、柚木は突然温度を失った冷たい目を向けた。
「お前が公表することでCM関係者や学院にも巻き添えを食らう、そこまでの覚悟はあるのか?甘えるのもいい加減にしろ」と、柚木は優等生の仮面を脱いで火原を叱った。
柚木は火原を一度落ち着かせるつもりで、今まで火原に見せていなかった自分の本性をさらけだしたのだ。
今まで見たことがない柚木の冷たい態度に火原は驚くが、柚木が心から心配してくれたとわかったと落ち着きを取り戻す。
落ち着いた火原に、柚木が「もっといい方法を考えよう」と提案する。
主人公と柚木と火原、3人でゆっくり考えることにして、その場はおさまったのだった。

後日3人で集まると、柚木が「今から50年後に公表してはどうか」と提案をする。
「50年たてば流石に時効だし、そこでなにかあっても自分と主人公がそばにいるやるさ」と笑う柚木に、主人公も同意する。
別の日、火原は普通科2年の加地 葵(かじ あおい)から「CMの演奏は火原先輩のものではないですよね?」と聞かれ、驚く。
いつか真実を話すことができる、そして加地のように自分の演奏を気づいてくれる人もいる、そのことで胸のつっかえが取れたような火原は、じょじょに普段の明るい彼に戻っていったのだった。

主人公は、火原がコンクールの応募書類を持っているところに出くわす。
火原はコンクールに出て、CMでは使われなかった自分のトランペットの演奏で自分の音楽がどこまで伝わるか挑戦したいというのだ。
その場で火原が演奏を始め、彼らしい音楽に主人公は拍手を送った。

最終コンサートが終わり、火原は主人公に「ずっとそばにいてくれてありがとう」と感謝を告げる。
自分が落ち込んだ時も前を向いた時も、ずっとそばにいてくれた主人公の存在が心の支えになったというのだ。
そして彼は、「自分の演奏も、大切なものも、自分の力で守りたい」と言い、主人公は火原から「きみがつらいときはいつでも助けてあげられるようにずっとそばにいたい」と告白されたのだった。

柚木 梓馬(ゆのき あずま)

柚木に「俺の本性を黙っていろ」と口止めされる。

教会でのコンサートに、アンサンブルメンバーとして音楽科3年のフルート奏者である柚木 梓馬(ゆのき あずま)に声をかけると、彼は快く了承してくれる。
しかし柚木の周りにいた彼の親衛隊から、「柚木様はお忙しい、迷惑をかけるなんて」と糾弾される。
そんな彼女らを優しくいさめてくれる柚木を見て「大変な人を誘っちゃったかな…」と主人公は少し後悔したのだった。

教会でのコンサートが無事終了し、一度学院へ戻ってきた主人公たち。
そこで主人公は柚木から声をかけられ2人で屋上へ向かうが、柚木からいきなり「俺の壁打ちの壁になれ」と言われ固まってしまう。
柚木は前から本音を遠慮なくぶつけられる相手がほしいと思っており、そこで主人公に目をつけたのだ。
「こんなこと言われたって周りに言っても信じないよ」という言葉通り、普段の柚木は品行方正、優秀な生徒のため周りからの信頼もあつい。
意地悪く笑う柚木を前に、主人公は途方にくれたのだった。

昼休み、主人公は進路について話している火原と柚木に遭遇する。
柚木は、家の事情で大学に行ったら音楽をやめるつもりだそうだ。
「柚木は音楽が好きなのに、本当にやめないとだめなのか?」と悔しそうな火原に、柚木は「誰もが自分の好きな道を選べるわけではないさ」と諦めた表情をしていたのだった。

ある日、柚木の噂話を耳にする。
柚木の家族が経営している会社が危機に陥っているというのだ。
主人公は柚木のことが心配になり探すと、柚木から「本当のことさ」と告げられる。
いつもの優しい笑顔を崩さない柚木だが、主人公は柚木がどこか無理をしているように感じた。

第二コンサートが終わった後、火原が柚木を探しているところに遭遇する。
火原から「柚木が朝から元気がなくて気になっている」と聞き2人で柚木を探すと、彼はひとり舞台袖にたたずんでいた。
2人が駆け寄るが、「放っておいてくれ、ひとりにしてくれ」と冷たい態度をとる柚木からは、いつもの余裕が感じられない。
しかし火原はその場から譲らず、同じくその場にとどまる主人公に、柚木はあきらめたように語りだした。
実は、実家の会社がかなり危ない状態で、柚木に音楽をやらせている余裕はないと言われたのだという。
音楽をやっていいのは高校の間だけ、柚木はその約束に納得していたはずだったが、突然音楽の道を断念せざるをえない状況になって初めてようやく自分がどれだけ音楽を愛していたか気づいたというのだ。
「音楽の道が完全に閉ざされた今になって、音楽が好きだと気づくなんてね」と自虐的な笑みを浮かべた柚木に、2人はかける言葉がみつからなかった。

それから数日過ぎ、柚木のことを案じる毎日を送っていた主人公に、柚木から「いい話がある」と呼び止められる。
なんと柚木の実家の会社が危機から脱出できたというのだ。
ただ今回のことで心労がたたって祖母が倒れ、会社は下の世代が引き受けることになり、柚木にも家業の一端を背負うように改めて言われたという。
心配する主人公だが、柚木からはあの日のような落ち込んだ様子は感じられない。
彼は今回のことで絶対的だと思っていた実家が案外もろいものだと知り、絶対的なものなどない、「音楽の道へ進めない」という約束も不可能じゃないと思ったという。
「自分のやりたいことについてもう一度よく考えることにするよ」とほほ笑む柚木からは、実家からの束縛から離れ自由に前向きに生きていく力強さを感じた。
主人公は、なにごともあきらめていた以前の柚木からの心境の変化を感じたのだった。

最終コンサートが終わり、主人公は柚木から鍵をモチーフにしたネックレスをプレゼントされる。
「もともと存在しない扉だってお前だったら開けてみせる」と言う柚木は、主人公と出会って不可能なことも可能だと知り、主人公は自分にとって可能性そのものだと感じたという。
実家に縛られすべてをあきらめていた柚木は、主人公と過ごし自分の世界が大きく変わったと感じていた。
そして彼は、これからはあきらめることはやめて、自分なりに手をつくしていくことにしたという。
「お前は俺のそばにいるのが当然って俺は思うけど、どう思っているのは俺だけ?」
柚木はいつもの彼らしくイジワルそうな顔をして、主人公を抱き寄せたのだった。

加地 葵(かじ あおい)

加地と下校デート、公園に寄り道する。

教会のコンサートでのアンサンブルメンバーを探すため、主人公が学院内を歩いていると、先日普通科2年に転入してきた加地 葵(かじ あおい)と出会う。
そこで主人公は、加地と、主人公をコンサートに誘った星奏学院OBの王崎 信武(おうさき しのぶ)の2人に面識があることを知る。
加地と王崎は、昔同じヴァイオリン教室に通っていたことがあるというのだ。
ということは、加地は楽器が弾ける?
そんな期待とともに彼をアンサンブルに誘うも、「もうヴァイオリン"は"弾いていない」と断られる。
含みのある返答に問い詰めると、加地はヴィオラなら今も弾いているという。
自分は加地にどうしてもとお願いし、ヴィオラ奏者としてアンサンブルメンバーとして加ってもらうことになった。

主人公と加地の練習中、2人は自分がなぜ自分が演奏しているその楽器を選んだのか、という話になる。
加地は、ヴィオラには子供が使う分数サイズがなく、そのため子供が手を出せない大人の楽器という憧れがあり選んだという。
また耳の良い加地は、中音部を担当するヴィオラを弾いていると、高音部と低音部が聞こえてきて演奏が楽しいのだそう。
加地は「君のヴァイオリンの音を聞きながら演奏するのはもっと楽しいよ」と笑ってくれたのだった。

放課後、主人公は1人で練習している加地を見かける。
しかし加地は見られたくなかったようで、主人公が「一緒に練習しない?」と誘っても断られてしまう。
彼は、「アンサンブルメンバーの中で自分だけレベルが低いから、合わせるなんてできない」と言ってその場から去ってしまった。

練習を終え主人公が帰宅しようとすると、加地から相談があると言われ、一緒に下校することになった。
途中の公園で寄り道をし2人でベンチに座り、話し出した加地から出た言葉は、「アンサンブルメンバーから抜けたい」という言葉だった。
彼は「自分には音楽の才能がなく、コンクール参加者との演奏には決定的な違いがある、自分には分不相応だ」というのだ。
また彼にとって主人公は憧れの存在であり、だからこそ自分が主人公の足を引っ張るような真似はしたくないのだという。
どうにか一緒につづけてほしいと主人公がお願いすると、彼はしぶしぶ続けることを約束してくれる。
しかし彼はあきらめず、「もしも使えないと判断したら僕のことは切ってね」と言うのだった。

主人公が広場で練習していると、ヴァイオリンの音を聞いた加地がやってきた。
そして加地は、「神様は自分に素晴らしい音楽とはどんなものなのか聞き分ける力を与えてくれたけど、音楽の才能自体は与えてくれなかった。」と、これまでの自分のことを語ってくれた。
加地は昔ヴァイオリンのコンクールに出場したが、優勝者と自分の実力の違いにかなわないと感じ、挫折し、ヴァイオリンをやめていたのだという。
しかし音楽自体を嫌いになったわけではなく、昔からあこがれていたヴィオラを趣味でつづけていた、そんな中加地は屋外で練習している主人公に出会った。
主人公の演奏は加地の理想の音、彼が演奏したいと思い描いていた音そのもので、一瞬で虜になったというのだ。
加地が転校してきたのは、主人公に、主人公の演奏にもう一度会いたかったからだという。
そんな主人公とアンサンブルを組んで、ともに過ごし演奏を聞けたことで、加地は「音楽的な活躍はできないが、ヴィオラを弾くことをを自分の楽しみとして続けたい」と思い直したと言った。
そして先日とはちがい、加地は主人公を練習に誘い、2人は演奏を楽しんだのだった。

最終コンサートが終わり、主人公は加地から彼の胸の内を告白される。
加地は、「コンクール参加者のような素晴らしい音楽を生み出せない自分を長い間許すことができなかった、でもコンサートを終えた今はこれが僕なんだって受け止められるようになった」と言う。
彼はコンサートを通して、才能がなくても自分が音楽を愛していることを自覚したのだ。
「人と比べることを止め、演奏する以外のことでも音楽を愛していきたい」と言う加地からは、以前のような苦しみは感じなかった。
そして彼は「もしかして、自分は主人公の美しい音楽をほめたたえるために優れた耳を与えられたのかもね」とほほ笑んでくれたのだった。
そこへ突然音楽の妖精リリが現れ、「お前はとっくに音楽の祝福を受けていた、気づかなかっただけなのだ」と告げる。
コンサート参加者の中でリリが見えないのは加地だけで、彼は自分には音楽の祝福がないことを思い知らされているような気分だったのだ。
驚き喜ぶ加地、「なにもかも君のおかげだね」と言い、そして主人公へ、「音楽を、そして君を愛してる」と告白したのだった。

衛藤 桐也(えとう きりや)

衛藤と休日デート、お気に入りのハンバーガーショップでランチ。

コンサートに向けて、主人公は学院の練習室で練習を始める。
練習に集中していると、後ろからいきなり声がかかり、驚いて振り返るとそこには私服姿の知らない青年がしゃがみこんでいた。
なぜここにいるのか尋ねると、彼はドア開いてたから勝手に入った、としれっと答える。
そして気が付かなかった主人公をからかい、「星奏学院ってレベル高いって聞いたんだけどこんなもん?」と鼻で笑い、その場から去ってしまった。

休日、主人公は1人で練習した後、友達と遊びにでかけた。
するとそこで、先日練習室で失礼な発言をした彼を見かけ、とっさに追いかけ声をかける。
彼も友達と遊びに来ており、彼が衛藤 桐也(えとう きりや)だと紹介される。
衛藤は主人公が持つヴァイオリンケースを見て、「休日返上で練習なんてあれから上達したの?」と主人公の技術をまた冷やかした。
すると衛藤の友達が「衛藤もヴァイオリン弾くもんな、国際コンクールで優勝したこともあるっていうし、すごくうまいよな~」と言う。
主人公は、衛藤がレベルの高いヴァイオリン奏者だと知ったのだった。

主人公が下校しようと正門前を通ると、また学院に忍び込んでいた衛藤から声をかけられる。
学院の制服を着ていない彼はすごく目立っているが、彼はそんなことつゆほど気にしていない様子だ。
衛藤は主人公の普通科の制服を見て「独学で音楽をやっているのか?」と尋ねた。
「そうだ」と答えた主人公、どこが気に入ったのか衛藤は「休日遊びにきたらヴァイオリンの練習を見てやるよ」と申し出てくれたのだった。

休日、衛藤に会いに行くと、彼はヴァイオリンを弾いていた。
衛藤が弾いていたのは、彼が今度出場するコンクールに向けての曲だという。
彼の友達は拍手喝采、そして彼らは主人公に「君も演奏してみなよ」とはやし立てる。
主人公が演奏を披露すると友達はさらに喜んでくれたが、衛藤だけは黙り込み難しい顔をしてしまう。
衛藤は主人公の演奏を聞いて、なにか考え込んでこんでいるようだった。

そんなある日、衛藤の友達から電話をもらい、衛藤のもとへ向かう。
なんと先日衛藤が国内コンクールで優勝したのだという。
衛藤の快挙に沸く周囲に、特別騒ぐことじゃないと、と彼はいつにもまして機嫌が悪そうにしていた。
そして主人公に向かって、「仲間や観客と楽しんでいる主人公の演奏は甘い」八つ当たりのように怒りだした。
衛藤はこれまで数々のコンクールで勝つための音楽を演奏してきたが、主人公の演奏を聞いて、自分の弾きたいと思う音楽が変わってきたという。
「今まで迷うことなく演奏してきたのに手ごたえを感じなくなった、俺がこんな風に思い始めたのはお前のせいだ」と衛藤は主人公を責める。
そして、「あんたとなんか出会わなければよかった」と言い残し、コンクールの賞状を投げ捨て、その場から去ってしまった。

数日後、帰宅途中の主人公を衛藤が呼び止めた。
そして彼から「最強だと思っていた自分の演奏が、誰かの影響を受けてしまったことがショックだった。それを認めたくなかった」と打ち明けられ、先日の暴言について謝られる。
「あんたに出会わなければよかったなんて嘘だ、意地はってごめん」と謝る衛藤を主人公は許し、2人は無事仲直りしたのだった。

最終コンサートが終わり、見に来てくれた衛藤は演奏に感激しているようだった。
そして先日と打って変わり、主人公に会えたことがうれしいと話し出した。
彼は主人公の演奏を聞いて「自分も誰かの心に響く音楽を弾いてみたい、愛しいと思われる音を奏でたい」と強く思ったというのだ。
衛藤は来年星奏学院に進学するという。
「俺を待っていて」という彼の笑顔を見て、主人公は来年が楽しみになったのだった。

不動 翔麻(ふどう しょうま)

転んだ主人公を心配してくれる不動。

ある日の朝、遅刻しそうになり急いで学院に向かっている主人公は、同じく遅刻ギリギリで登校している普通科3年の不動 翔麻(ふどう しょうま)と出会う。
パタパタと金魚みたいにあわただしく走る主人公に、彼は「パタちゃん」というあだ名をつける。
しかしどこか懐かしさを感じるそのあだ名、主人公は小さかったとき一つ年上の男の子からも「パタちゃん」と呼ばれていたことを思い出し、その男の子が不動だということに気づく。
主人公と不動は昔仲良くしていた幼馴染だったのだ。

主人公は、ある日不動が路上ライブで演奏しているのを見かける。
彼はロックバンドを組み、星奏学院で軽音楽同好会を作ろうと日々努力していたが、音楽科のある学校の生徒がなぜロックを?と通りゆく人々の反応は薄い。
それでも不動はめげず、自分たちの活動の証をこの学院に刻んでやる、と闘志を燃やしていた。
そんな彼を見て主人公は胸をうたれ、彼を応援し始める。
応援してくれる主人公を通して、不動は今まで興味がなかったクラシックに耳をかたむけるようになり、彼は主人公の演奏に胸をうたれる。
そして、主人公が普通科ながら音楽科の生徒とともにコンサートに向けて頑張っていると知り、不動も主人公を応援するようになったのだった。

文化祭、不動のバンドは講堂のステージで演奏することになっていた。
講堂には主人公とアンサンブルメンバーによるバンド演奏のおかげでたくさんの観客が集まり、今までまともに聞いてもらえずにいた不動たちの演奏は、たくさんの人々へ届けることができた。
そして好評を得て、無事同好会を発足することができたのだった。
主人公たちアンサンブルメンバーと不動は文化祭の打ち上げと軽音楽同好会発足のお祝いをともにする事になり、そこで2人の距離は急接近し、不動は主人公のことをただの幼馴染の女の子ではないと意識し始めたのだった。

最終コンサートが終わり、コンサート後に不動は主人公を呼び出してクリスマスプレゼントを渡してくれる。
それは前に2人でデートしたとき、主人公が気に入った写真たてで、中には幼いころの2人の写真が飾られていた。
そして不動から「どうもお前が好きみたいだ、一緒に恋を始めてくれないか?」と告白され、不動と主人公の関係は幼馴染から恋人へと変わったのだった。

金澤 紘人(かなざわ ひろと)

休日に1人で練習している金澤とばったり出会う。

主人公が練習終わって帰宅していると、同じく帰宅途中の音楽教師の金澤 紘人(かなざわ ひろと)に出会う。
2人がたわいもない話をしていると、そばを通りかかった車が急停車し、中から男性が降りてきた。
「金澤さん」と声をかけてきたその男性は、星奏学院の次期理事長である吉羅 暁彦(きら あきひこ)だった。
金澤と吉羅は大学自体の先輩後輩で、以前から面識があったのだ。
久しぶりの再会に喜ぶ吉羅が金澤を飲みに誘い、「君も一緒にどうだい?」と主人公も誘われ、3人で馴染みのバーへ向かう。
席に座りヘビースモーカーの金澤が煙草を吸おうとすると、吉羅が「これ以上喉を痛めることをしないでください」と止める。
そこで主人公は初めて、金澤が喉を痛めていることを知ったのだった。

放課後、主人公はアドバイスをもらうために金澤に演奏を聞いてもらう。
ヴァイオリンは専門外と言いながらもしっかりと演奏を聞いてくれた金澤から、とあるポイントを指して、もっと歌い上げるようにしてみてはどうかと指摘される。
彼は手本を見せようと指摘したポイントを歌うような素振りを見せたが、突然止めてしまう。
そしてバツが悪そうにその場から去ってしまった。

主人公は金澤のことが気になり、吉羅に金澤の過去を聞きにいくことにした。
すると吉羅は、金澤の過去の苦悩を教えてくれた。
金澤は昔ヨーロッパで活躍する一流のオペラ歌手だったが、喉に腫瘍ができて引退したというのだ。
金澤の喉は治療しようとしまいと、元の歌声をだすことができなくなってしまう、手の施しようがないものだった。
心血を注いで磨き上げた自分の音楽を失う苦しみを、金澤は味わったのだ。
そこへ金澤が割って入り、自らについて語ってくれた。
「確かに自分の人生は歌でできていたから、歌えない人生なんて残りかすみたいなもんだと思っていたし、思うように歌えなくなったことで歌いたいという気持ち自体なくなっていた。」
でも最近、一生懸命コンサートに取り組んでいる主人公たちをそばで見守って、歌いたくなってきたというのだ。
彼は「俺も新しい音楽の形を見つける時期がきたのかもかもな」と主人公を安心させるようにほほ笑んでくれたのだった。

帰り道、また金澤と遭遇し途中まで一緒に帰ることになった。
そこで金澤は、主人公に感謝していると告げる。
自分が最近歌いたいという気持ちを取り戻せたのも、コンサートに向けて努力する主人公の演奏をそばで聞いていたからだというのだ。
金澤は、これから喉の治療法がないか真面目に探してみるという。
そして「完全に戻らなくても今の自分に出せる声で歌っていくさ」と過去から吹っ切れたように笑ってくれたのだった。

最終コンサートが無事終わり、金澤は主人公に「今日のコンサートは忘れられない宝物になるぞ」と断言する。
そして彼は「主人公が音楽の道を歩んでいくなら、俺が主人公が望むだけそばにいてやる」と微笑み、寒空の下で冷えていた主人公の肌をあたたためるように自分の上着で包み込み抱きしめてくれたのだった。

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遙かなる時空の中で2(遙か2)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

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『遙かなる時空の中で2』とは、Windows95 / 98 / Me用恋愛アドベンチャーゲーム。コーエーテクモゲームズのルビーパーティ原作で、キャラクターデザインを水野十子が担当した。PlayStation 2用ソフト、PSPソフトも発売。前作『遙かなる時空の中で1』から100年後の世界が舞台で、ゲームシステムは1作目を世襲。平安時代の京都をモデルにした「京」と呼ばれる異世界に引き込まれてしまった女子高生、高倉花梨が活躍する。

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遙かなる時空の中で1(遙か1)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

遙かなる時空の中で1(遙か1)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『遙かなる時空の中で1』とは、2000年4月6日に発売されたPlayStation用恋愛アドベンチャーゲーム。コーエーテクモゲームズのルビーパーティ原作で、キャラクターデザインを水野十子が担当した。平安時代の京都を舞台にした「京」と呼ばれる異世界に引き込まれてしまった女子高生、元宮あかねが活躍する。2018年2月22日に本作のリニューアル版である『遙かなる時空の中で Ultimate』がPlayStation Vita、スマホとタブレットに対応したiOS、Android版が発売されている。

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金色のコルダ3 AnotherSky(ゲーム)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

金色のコルダ3 AnotherSky(ゲーム)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『金色のコルダ3 AnotherSky』とは、株式会社コーエーテクモゲームスから発売された女性向け恋愛シミュレーションゲーム『金色のコルダ3』のIFストーリーを描いたタイトル。 季節は夏。ヴァイオリニストの主人公は自分の音楽を見つけるため各学校に転校し、それぞれのメンバーと全国学生音楽コンクール アンサンブル部門での優勝を目指す。 『金色のコルダ3』でライバルとして登場したキャラクターたちと仲間になり、彼らと共に過ごしながら、音楽と恋愛が盛りだくさんの青春恋愛ストーリーを楽しむことができる。

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遙かなる時空の中で6(遙か6)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

遙かなる時空の中で6(遙か6)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『遙かなる時空の中で6(遙か6)』とは、コーエーテクモゲームス(ルビー・パーティー)制作の女性向け恋愛アドベンチャーゲームである。『遙かなる時空の中で』シリーズの第6作目で、シリーズ15周年の記念作品でもある。平凡な高校生活を送る主人公は、ある日突然「黒龍の神子」として異世界である帝都東京に召喚され、人々を苦しめる怨霊を倒す使命を与えられる。主人公は元の世界に戻るため、帝国軍と鬼の一族、2つの抗争に巻き込まれながらも仲間とともに戦い世界を救うストーリーである。

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【声優】日野聡が演じた乙女ゲームキャラクターまとめ!『AMNESIA』のトーマ・『金色のコルダ』の衛藤桐也など!

【声優】日野聡が演じた乙女ゲームキャラクターまとめ!『AMNESIA』のトーマ・『金色のコルダ』の衛藤桐也など!

声優・日野聡が演じた乙女ゲームの登場人物・キャラクターをまとめました。『AMNESIA』のトーマや『金色のコルダ』の衛藤桐也など、魅力的なキャラクターばかりとなっています。日野聡が好きな方はもちろん、乙女ゲームに興味がある方もぜひチェックしてみてください。

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