ハサウェイ・ノア（機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ）とは【徹底解説・考察まとめ】

病院での治療が終わり、処刑直前に放ったハサウェイの言葉である。

「マフティーとしていいたいことはいった。いつかは、人類の健やかな精神が、この地球をまもると信じている。それまでは、人の犯した過ちは、今後ともマフティーが、粛清しつづける」

としており、ハサウェイは自身の死に際して人類に希望を見いだしつつも、同時に人の過ちを許すつもりもなかった。
ここで自分が死しても、同じ志を持った人間が必ず現れるだろうという旨の言葉を残して、銃殺されていったのである。

ガンダムシリーズはリアリティを標榜した作品群であるが、全体に通じる作品テーマとして「世直しのための革命が必要」という理念が色濃く、ハサウェイや、その行動のモデルとなったシャアも、そのような理念と信念に基づいて行動した。
そして、その理念の行き着く果てとして、シャアの場合は行方不明という形で、ハサウェイは処刑されるという形で人生を終えている。

現実でいうならば、キューバ革命に関わった「チェ・ゲバラ」ことエルネスト・ゲバラがカストロの革命運動に途中参加し、3年ほどで革命に成功しつつも、キューバへ帰る道を閉ざされた中で死んだ、その生き様や思想にも共通する部分がある。

ハサウェイ・ノアの裏話・トリビア・小ネタ／エピソード・逸話

遅れて正史に組み込まれた主人公

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』から直接続く物語として、1989年に発表された小説である。
当時より映像化が希望される事は多かったが、その機会に恵まれず20年以上の時間、作品としては小説のみの存在で留まっていた。

ガンダムシリーズの主人公としては1991年の『機動戦士ガンダムF91』のシーブック・アノーや、1993年の『機動戦士Vガンダム』のウッソ・エヴィンよりも先輩格にあたるが、映像化されたのは2021年と原作発表から30年以上も経過してからの事であった。
『機動戦士ガンダムUC』のヒットにより、宇宙世紀0090～0100年代を舞台にしたガンダムシリーズが制作されていく中で『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』がやっと映像化の機会を得たという経緯もある。

そして、ガンダムシリーズの制作を手がけるアニメ会社「サンライズ」は、ガンダムシリーズが紡いだ物語を、架空の歴史としてまとめているのだが「正史」としてカウントされるのは「映像化された作品のみ」と定義している。

このような訳で、ハサウェイは後輩の主人公達よりもずっと遅れて映像化＝正史に組み込まれた主人公という事になり、愛機Ξガンダムと共に、歴代主人公の一人として正式にカウントしてもらえる権利を得たのである。

完全飛行できるガンダムを愛機とした初の人物

1991年に「ガンダムF91」が登場するまで、ガンダムシリーズでは基本的にモビルスーツは、単独での完全な飛行能力を備えていないものがほとんどだった。
飛行できても、変形を要したり、パーツの換装が必要であったり、単独飛行できても実用レベルに達していない、あるいは稼働時間が短い、など制約が多く、例えばロケットを装着した鉄人28号が自在に空を飛び回る、というような運用は行われてこなかった。

その意味において、Ξガンダムは1989年の時点で史上初「変形もパーツ換装も必要とせず、完全な飛行能力を得たガンダム」であり、同時にハサウェイは史上初の、飛行できるガンダムのパイロットという事にもなる。