バタフライ・エフェクト(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『バタフライ・エフェクト』とは、2004年に公開されたアメリカ映画。
「バタフライ・エフェクト」とはカオス理論の一つで「小さな蝶の羽ばたきが、地球の裏側で台風を起こすこともある」と表現される。
幼い頃の悪戯に運命を狂わされたエヴァンとケイリー。愛するケイリーを救うためエヴァンは何度も過去に戻るが、必ず悲劇的な運命を辿ってしまう。まさに小さな羽ばたきが台風に変わるように。人生を操るという神にも許されない行為をしたエヴァンがたどり着いた最後の人生とは。全米映画史上最も切ないハッピーエンド。

エヴァン「君を迎えに来る」

「君を迎えに来る」というメッセージをケイリーに見せるエヴァン

13歳の時に爆弾事件を起こしてしまった後、エヴァンは引っ越しをすることになる。
引っ越しのトラックに乗ったエヴァンに駆け寄るケイリー。
エヴァンは日記の紙に「君を迎えに来る」と書き記し、窓越しにケイリーに見せる。
トラックは無情にも出発し、車のミラーに映るケイリーはどんどん小さくなっていく。
お互いに信頼し支え合っていたケイリーと別れる悲しさがひしひしと伝わってくる。
エヴァンがケイリーを深く愛していたことがわかる場面でもある。

ケイリーの叫び

エヴァンを泣きながらなじるケイリー(右)

最初の人生で、自分が過去に戻れる能力があると分かったエヴァンはケイリーの元を訪ねる。
そしてケイリーの父親が映画撮影と称して何をしていたのか確かめようとした。
しかし思い出したくない記憶を探られ、辛い気持ちが蘇ったケイリー。
エヴァンに向かって「私が好きならなぜ連絡くれなかったの?ここで腐る前に」と叫ぶ。
ケイリーは父親から性的虐待を受けた傷を抱えたまま、惨めな生活を送っていたのだ。
そして引っ越しの日の「君を迎えに来る」と宣言してくれたエヴァンが連絡をくれることを心の奥でずっと待っていた。
ケイリーのエヴァンに対する深い信頼と愛情、裏切られた悲しみや絶望がひしひしと伝わる切ないシーンである。

棺へのメッセージ

棺に花束とメッセージを置くエヴァン

最初の人生で、エヴァンと再会した後、性的虐待の傷を抱えたままケイリーは自殺してしまう。
兄のトミーから「お前も殺す」と脅迫され、ケイリーのお葬式に参列もできず、エヴァンはそっと遠くから様子を見守った。
参列者が去った後、エヴァンは棺に白い花束とメッセージを書いた紙をそっと置いた。
その紙は幼い頃引っ越した時にケイリーに見せた「君を迎えに来る」と書いたメッセージだった。
過去に戻り、必ずケイリーを救おうとエヴァンが決意するきっかけとなるシーンである。

エヴァン「次の30秒でどちらかの扉を選ぶ」

ケイリーの父、ジョージに立ち向かう幼いケイリー(左)とエヴァン(右)

エヴァンはケイリーの父ジョージが映画撮影と称して、性的虐待をしていた過去に戻る。
エヴァンは「次の30秒でどちらかの扉を選ぶ。ひとつは娘にトラウマを与える扉。」とジョージに言い放ち、このままだと娘にトラウマを植え付け、自殺に追い込むことになってしまうと脅す。
そしてエヴァンは「もうひとつの扉は娘をいい父親らしく扱う」とジョージに言い、ケイリーにも「二度と私に触らないで」と宣言させる。
エヴァンのあまりの迫力にジョージは恐れおののき、「分かった」と約束する。
これをきっかけにジョージはケイリーに性的虐待をすることはなくなった。
しかしエヴァンがついでに「ちゃんと息子(トミー)をしつけろよ。奴はサドだ」とジョージに言ったことが影響して、今度はトミーを殴りながら育てるという流れになってしまい、新たな悲劇が生まれる。

父の苦悩

父ジェイソン(左)に首を絞められる幼いエヴァン(右)

幸せな人生をやり直すためにはどうしたらいいかを聞くために、エヴァンは父と面談した日に戻る。
しかし父ジェイソンは「神様の真似をしてはいかん」と必死に説得する。
ジェイソンは過去を変えようとする行為は他人の人格を変えてしまったり、母を殺す恐れもあると諭すのだが、エヴァンは聞き入れない。
父もまた愛する者を救うためエヴァンと同じように過去に戻ることを繰り返し、失敗してきた。
その悲劇の繰り返しをなんとしても防ぐため、ジェイソンはエヴァンを殺そうと首を絞める。
愛する妻アンドレアにこれ以上害を及ぼさないための必死の行動だったが、ジェイソンは警備員に殴られそのまま亡くなってしまう。

エヴァン「レニーが使うだろ。君らがよけりゃいい」

自殺しようとしてトミー(右)に助けられるエヴァン(左)

爆破事件で両手両足を失ってしまう人生にたどり着いたエヴァン。
絶望のあまり、風呂場に水を貯めて溺れて自殺をしようとする。
そこにトミーが通りかかり、エヴァンを助ける。
トミーは冗談めいて「トースター入れろよ」と悲しげな顔で呟く。
するとエヴァンは「レニーが使うだろ。君らがよけりゃいい」と泣きながら言葉を絞り出す。
ケイリー、トミー、レニーが幸せになった人生を守るために自分が犠牲になるつもりだったエヴァンの悲壮な決意が感じられる。

『バタフライ・エフェクト』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

劇中で主人公たちが観ている映画はサイコホラーの傑作『セブン』

劇中で映画館に貼られた『セブン』のポスター

最初の人生で爆弾事件を起こした後、エヴァンとケイリーとトミーは映画を見に行く。
実は実際に当時大ヒットした『セブン』というサイコホラー映画を見るという設定になっている。
主演のブラッド・ピットとモーガン・フリーマンのポスターも劇中に登場する。
映画館でトミーが暴力事件を起こしながらも不敵な笑みを浮かべるというサイコチックな場面があるのだが、『セブン』のサイコストーリーと連動して一層不気味な雰囲気を醸し出している。

もうひとつのエンディング・ストーカー編

監督・脚本を手掛けたエリック・ブレスとJ・マッキー・グラバーは撮影時3つのエンディングを撮っている。
一つ目は映画で上映された、ニューヨークの雑踏で再開したエヴァンとケイリーが別々の人生を歩むエンディング。
二つ目はストーカー編と呼ばれるエンディングである。
雑踏でケイリーを見かけたエヴァンがケイリーの後を静かにつけていくというシーンになっている。
監督は後に「希望を残すエンディングもいいかと思ったが、これでは今までの行為がムダになる」と述べ、このエンディングは採用しなかった。

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