アメリカン・ファクトリー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『アメリカン・ファクトリー』とは、アメリカ合衆国のドキュメンタリー映画。ゼネラルモーターズ工場跡を買収した中国企業フーヤオが経営する米オハイオ州デイトン市の車用ガラス製造工場を題材としている。バラク・オバマとミシェル夫人の製作会社であるハイヤー・グラウンド・プロダクションズの第1作であり、Netflixにより配信された。閉鎖された工場跡に中国企業が進出し工場を再開させるが、現地採用のアメリカ人と中国から来た本社従業員との文化の違いや価値観の違いから様々な問題が浮き彫りとなる。

工場内ではアメリカ人従業員が涙を流している。中国人の上司に怒鳴られたというのだ。アメリカ人従業員が所定の位置ではない場所で作業を進めていたため注意したのだった。また中国人上司はこの従業員の効率が悪いためもっと効率を上げろと言っているのだがアメリカ人従業員はできないと言い、中国人は理解できないという。仲裁に入る安全管理官はお互いに責任を擦り付ける両方が悪いと溜息をつく。

深まる二文化の溝

中国人向けにアメリカ文化セミナーを開催

文化の壁は思った以上に厚く、中国人従業員はアメリカ文化や、いかに上手にアメリカ人を使うかセミナーに参加している。講師は、「アメリカでは子供たちは甘やかされて育ち、我の強い性格となる。必要以上に自分に自信があり褒められることが大好きだ。反対に貶そうものなら大変なことになる」とアメリカ人の気質を説明し、「ロバは毛並みに逆らって撫でてはいけないっていうでしょ?それと同じだよ。逆らうと足蹴りされるんだ」とアメリカ人をロバに例えて説明する。そして「我々中国人はアメリカ人よりも優れているんだから彼らを指導し助けなければいけないんだ」と教育してセミナーは終わる。

不満を持つアメリカ人従業員が集まり意見を交換する

アメリカ人従業員も中国人には言いたいことが尽きない。女性アメリカ人従業員は「私たちのことを外国人と呼ぶがここはアメリカで中国ではないわ。中国人は休むことを知らず朝からノンストップで24時間、日曜日まで働き続けているし、時には私たちに昼休憩を取らずに生産を続けるように指示をするの」と不平を漏らしている。
また、別の男性アメリカ人従業員は「中国人は手を貸してくれない。ただ指示を出すだけだ。なぜその作業なのかと聞いてもその質問に答えは返ってこない。そしてその場を去って行ってしまう」と不満をあらわにしている。
別の女性アメリカ人従業員は「工場が伸び盛りの新しい企業だということはわかるけれど、優秀な人材を確保したいなら、少しでもお給料を上げるべきだわ。1ドルでもね」と言っている。
最後に、ベテラン男性アメリカ人従業員は「工場ができた時には明るい未来かと思ったけど、ふたを開けてみたらお先真っ暗だよ。我々に対するリスペクトが全くないんだ」と言う。
アメリカ人従業員だけで集まりお互いが意見の交換をしている。一人の男性は「始業当初に揃っていたアメリカ経営陣は皆格下げとなり、中国人が我々のすべてを支配している。2012年に前職を解雇となり4年間再就職活動をしてようやく職に就けたんだ。この仕事は好きだけれども我々の仕事を尊重してもらえないのならば意味がない。給料の問題じゃないんだ」と言い、別の従業員は、「中国人は使用した化学薬品をそのまま排水溝に垂れ流しにしていてやりたい放題だ。規則なんて言うのは全く無視して作業を進めている」と発言。ここでの話には意味があるのかどうかと疑問を持つ者もいたが、多くの意見が出された。しかし話は平行線のままで、日に日に労働組合加入デモが広がっていく。

中国人従業員が集まり会議する

アメリカ人従業員との関係がなかなかうまくいかないため中国人側でも再度話し合いの場が持たれる。その都度問題があれば提起するように中国人従業員に指示する。一つ目の問題としてアメリカ人に残業を命令することはできないのかという質問に、人事からは残業は命令できないと言われているとの回答があったが、質問した中国人は納得がいかない。中国では命令を受けたら残業を行うのは義務なのになぜできないのかと抗議する。アメリカ人に訴えられてもいいから土曜日も働くように命令すべきだという。
中国人の中にはお互いの気持ちがわかる工員もいるが、アメリカでのプレッシャーは大変なもので、中国で働くよりストレスがたまる、アメリカに来ればもっと楽な生活ができると思っていたが大きな間違いだったとこぼしている。

労働組合をめぐる対立

デイトンにあるUAW LOCAL 696ホールで行われた労働組合の集会

アメリカ人側の不満はどんどん大きくなってきていた。
ある日、デイトンにあるUAW LOCAL 696ホールでフーヤオの従業員のために行われた全米自動車労働組合の会合に多くのアメリカ人従業員が参加していた。参加者はフーヤオの労働環境の現状を報告する。はじめに話を始めたアメリカ人従業員は、娘がネイルサロンで働いているが、昨年の給料は娘のほうが13,000ドル上回り年収40,000ドルだったのに対し自分の給料は27,000ドルだったという。
別のアメリカ人従業員女性は、自分のチームの同僚が解雇されたという。その理由は1週間病院に入院して欠勤したからだという。もし自分が将来病気で入院したなら自分も解雇されるのだろうかと不安に感じているという。
アメリカ従業員男性は同僚が座っていた段ボールから出火したが消火活動もせずそのまま働き続けたという。考えられない職場環境での労働を虐げられていた。
そのあとも次々と不満が爆発していく。従業員の権利を守るためにも労働組合に加入しなければならないと力説する。アメリカ人従業員は、勝つまでこの戦いを続けると息巻いているのだった。
結局中国経営陣はすべての従業員の給料を2ドルアップすることで歩み寄ることにした。ジェフ・リュー社長は熱く2ドルアップの報告をするが、アメリカ人従業員は「たった2ドルの賃金アップか」と思ったのか、「賃金アップではなく組合加入を訴えているのに経営陣は何もわかっていない」と思ったのかその真意はわからないが、冷めた目でその様子を見ていた。
工場の外では相変わらず労働組合加入へのデモが過熱している。当然の権利だと主張しているが中国人は見向きもしない。アメリカ人従業員の中には労働組合加入にそれほど関心がない人もいる。きちんと仕事をしていれば必要はないし、今日現在毎日働ける職場があり、きちんと給料をもらっているということが重要だという意見もあった。アメリカ人従業員内でも意見が二つに割れていた。
労働組合問題が過熱しているため、ツァオ会長はまた予定外の渡米を余儀なくされた。中国人経営陣での対策会議が開かれるが開口一番ツァオ会長は、「予定外の渡米は予算もかさむし会社に損害を与えることになる。なぜ私が動かなければならないのだ、毎月私が渡米したいと思っているのか」と口にし、本題へと入る。会社ではすでに労働組合賛成過激派を解雇したりいろいろ試し状況は多少改善しているという。解雇した従業員の補充には若くて優秀な人材を採用するようアドバイスするツァオ会長。この場に至ってもツァオ会長はこの工場はあくまでアメリカ会社でありアメリカ文化で運営していくのだと主張する。本国との違いでなかなかうまくいかないがツァオ会長は「多額の投資をすでにしているので後には引けない。しかし今のところマイナスにしかなっていない」と苦笑いしている。
工場の外には相変わらず労働組合賛成派がプラカードを持って抗議しておりメディアも来て取材している。
ウォンもこの騒動には頭を悩ませているが、中国側は労働組合に会社をコントロールされたくないというはっきりした意志を持っていると言い、中国のことわざに例えるなら「一山不藏二虎」だという。一つ場所にお互いに相容れない二人の強者が共存することはできない意味のことわざだ。
とうとう労働組合賛成か反対かの投票が行われた。開票は公正を期すためフーヤオと全米自動車労働組合の両者の立ち合いの元で行われた。結果は組合反対448票、組合賛成が168票だった。結果を聞いた中国人従業員はガッツポーズで喜び、アメリカ人従業員は解雇になることを恐れた若手が意見を変えて組合反対に投票したんだろうと肩を落としていた。

フーヤオの進む道

オートメーション化が進む工場

組合投票のあった翌日、フーヤオの従業員全員を集めてジェフ・リュー社長は集会を行う。そして「今後はチームワークをより重視し、どんな問題が浮上しても、たとえ時間がかかったとしても解決するように努めよう。また優秀なアメリカ人従業員を中国へ招待する」と約束した。アメリカに昔の輝きを取り戻すため一丸となって頑張ろうと力説するのだった。
そのころ同時に中国フーヤオでもアメリカフーヤオガラスプロジェクトについて従業員へ「我々のグローバル戦略の確固たる基盤を築くことに成功した。オペレーション運営においては2倍の伸び率となり、売り上げ、利益ともに目標到達した」と報告がなされていた。
ツァオ会長は中国の寺院を参拝し、貧困に苦しんだが幸せだった子供の頃を懐かしく思い返していた。「今は全く正反対の何の不自由もない繁栄時代を生きているが心の中にはぽっかり穴があいている」と話していた。また、「虫を追いかけながら野原を駆け回っていたころが懐かしい。この数十年新しい工場を建設し走り続けてきた。環境を破壊し平和を乱したのだろうか。私は善人なのか悪人なのか。悲しいときにはついそんなことを考える。人生を仕事に捧げて来たんだ」と昔を振り返りながら話をしていた。
ロブは2年半働いたフーヤオを1週間前解雇されていた。解雇理由はコンピューター入力が遅かったからだというのだ。だが、ロブは、この2年半に後悔はない、いい中国人の友達もできたと振り返っている。
ウォンはアメリカでの経験を振り返る。「中国にいたころは食べ物に不自由せず子供たちを立派に育てられたらそれでいいと思っていた。ほかには何もいらなかった。しかし自分世代はきっともっといろいろな欲求があるのだろうと思う。行きたいところを旅したり、買いたいものを購入したり」とアメリカの生活で少し考え方を変えて物事を見ていた。

フーヤオ・アメリカ工場ではツァオ会長がまた視察に来ていた。工場のオートメーション化を図っているのだ。次々に従業員を解雇し機械を導入している。工場の従業員はすべて機械に交換される。そうすることで、作業が遅いとストレスを抱えることもなくなるというのだ。

「2030年までに世界中で3億7500万人がオートメーション化により違う職種での仕事を見つける必要があると見込まれている。今後この劇的な変化に政府、企業、従業員がどう取り組んでいくかがカギとなるだろう。
最後に、フーヤオ・アメリカ工場では、2018年以降黒字決済となっている。が、給料はいまだ1時間14ドルである。現在、アメリカ人2200名と中国人200名がデイトンの工場で働いている」とナレーションが流れる。

『アメリカン・ファクトリー』の登場人物・キャラクター

中国人側

会長 ツァオ・ダーワン

真ん中 ツァオ会長

中国の起業家。 世界最大のガラスメーカーの1つであるフーヤオグループの会長。
もともと貧しい家庭で育ったが、商才があり、16歳で行商を始め、1976年には中国にあるガラス工場で働く。その後1987年にフーヤオを設立し、1993年に上海証券取引所に上場した。

社長 ジェフ・リュー

右 ジェフ・リュー

アメリカ人社長が退いたのちにフーヤオの社長となった。1963年生まれで27年間アメリカ、26年間中国で生活をしてきた両文化がわかる中国人だ。

副社長 ジミー・ワン

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