アメリカン・ファクトリー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『アメリカン・ファクトリー』とは、アメリカ合衆国のドキュメンタリー映画。ゼネラルモーターズ工場跡を買収した中国企業フーヤオが経営する米オハイオ州デイトン市の車用ガラス製造工場を題材としている。バラク・オバマとミシェル夫人の製作会社であるハイヤー・グラウンド・プロダクションズの第1作であり、Netflixにより配信された。閉鎖された工場跡に中国企業が進出し工場を再開させるが、現地採用のアメリカ人と中国から来た本社従業員との文化の違いや価値観の違いから様々な問題が浮き彫りとなる。

中国から派遣されてきた鋳造エンジニアの中国人ウォン

中国から派遣されてきた鋳造エンジニアの中国人ウォン は、二人の子供と奥さんを中国に残し単身でアメリカに来ている。オハイオ州の第一印象は平地であることだという。彼は18歳の時フーヤオで働き始めた。それから20年間鋳造場で働いている。仕事はきついが楽しく仕事をしている。しかし、言葉の壁、文化の違いのため短い時間でチーム全員をまとめるのはとても難しいと答える。またアメリカに来てからは、食事をする時間もほとんど取れず昼食代わりにスポンジケーキのおやつのトゥインキ―を2個食べるのだという。作業は時に危険を伴う。生産途中で不具合から製品が破損し、その破片が残ってしまうことがある。そんな時は素手を機械に直に突っ込み破片を取り除かなければならない。その時にできたやけどの跡が今も腕にいくつも残っている。

鋳造場責任者のロブ

鋳造場責任者のロブは母の日に自宅にウォンを招いて一緒に週末を楽しんだ。翻訳機を使いながらもコミュニケーションを図った。そこでロブはウォンが2年は家族から離れた遠いこのアメリカで海外手当もない中働かなければならないことを知り、よりこの工場で働く中国人を尊敬の眼差しで見るようになった。
お互いの文化を知ることはお互いを知ることだ。「お互いの文化を知って中国人同僚と仲良くなることができたと思うよ。感謝祭には、仲良くなった中国人の同僚を家に招待して、一緒に過ごそうって閃いたんだ。中国では禁止されている拳銃を持たせてあげたり、乗馬やバイクに乗せてあげたりと楽しい休日を中国人同僚と過ごしたよ。4~5人ぐらいかと思っていたら13人も家に来ていたんだ。」と懐かしく復活祭の日を振り返る。

フーヤオの時代

起工式の日

中国人による工場の買収は新聞にも大きく取り上げられ話題となっていた。ワシントンポストの一面にも大きくこのニュースは掲載された。経営陣が集まったフーヤオのミーティングではフーヤオ・アメリカ・ガラスの社長のジョンが経営陣に新聞掲載時のインタビューの状況を説明している。新聞社のインタビューには、2000人いる従業員のなかで我々にとって不運なことに一番労働組合に力を入れている人物が答えていたのだった。フーヤオは労働組合を作らない方針で会社を運営している。アメリカ中が今後のフーヤオの動静を見守っているのだった。
社名の看板、会社案内のパネル作成など起工式の準備は着々と進んでいる。そして工場内の従業員も自分の仕事を熱心にしている。
いよいよ起工式の日、ツァオ会長が下見の際に断言した通り快晴となったオハイオ州デイトン。来賓客、メディア関係が次々と到着する。中国本土からも来賓客が駆けつけていた。モニターからは「いよいよ5億ドルをこの事業に投資したツァオ会長の夢が実現する」というアメリカ人従業員のスピーチが流れている。
いよいよ起工式が始まりツァオ会長が演説を始め、オハイオ州の上院議員シャーロッド・ブラウンも引き続き挨拶をするが、演説の中で、「この工場も他のアメリカの工場と同じように組合に加入するべきだ」と言い、「加入の賛否を投票によって決めるべきだ」と公言するのだった。この労働組合の話を聞いた中国人サイドは公の場でツァオ会長が否定している労働組合の話を持ち出したことに対して怒り、不満をあらわにした。
起工式が終わった後、従業員のロブは、来賓客を工場見学へと案内する。工場見学中には、作業すべてがMade in USAであることを強調する。
その後の記者会見ではもちろん上院議員が口にした労働組合についての質問が出される。ツァオ会長はその件に関しては回答を控え、経営陣も対処策を模索する。副社長のデイブは冗談半分で「上院議員の首を大きなハサミで切り落とそう」などと言っている。
その後の経営会議では、ツァオ会長は、「生産への影響を与える可能性もあり、また企業にダメージを与える労働組合を形成するつもりはない」と断言する。労働組合は会社の損失を生む可能性があるというのだ。「労働組合を作るなら工場は閉鎖する」とまでツァオ会長は発言する。しかしまだツァオ会長の気は収まらず、「労働組合は私の生産を妨害し、少しずつ会社の損失を大きくしていく。現社長ジョンが社長のポストを守りたいなら私の助言をよく聞きなさい」と続ける。

小さな亀裂

出来立てのガラスが木っ端みじんに砕ける場面

現場では責任者が「ガラス一枚されど一枚。この一枚は高品質、適正価格でお客様への元へと届けられ信頼につながるのだ。だから一枚一枚心を込めて生産するように」と促すのだった。
しかし、生産ラインでは、不具合があり出てきたガラスは木っ端みじんに弾けてしまう。この日はちょうどHONDA社員が工場見学に来ており生産過程の一つ一つを見ていた。が、その視察団の目の前で起こってしまった出来事だった。中国人副社長のジミーはとにかく生産量とスピードが最重要事項だと言っている。長年働く工員は、「品質管理部門と中国人生産部門での意見が合わず間に立つ自分たちは板挟みだ」という。
工場内では安全管理を担当するジョンが温度計にて各所測温し点検をしている。安全ラインから逸している部門もあり解決が必要だと判断する。ツァオ会長同伴での構内見回り中、アメリカ人から苦情が出ているかとのツァオ会長の問いに対しジミーは、高温での作業となるところがありアメリカ人従業員から室温が上がりすぎていると苦情が出ていると説明し、予算が許す限りは対応するつもりだとツァオ会長に回答している。その後中国人従業員だけを集めて集会が開かれる。そこでツァオ会長は「残念ながら目標の売り上げに達することができなかった。我々は非常に困難な課題に挑んでいるのだ。我々は生粋の中国人だ。どこで死んでもどこで埋葬されても中国人であることに変わりはない。現在我々中国人がアメリカまで来てアメリカの工場を稼働させ成功に導こうとしている。いくらお金を儲けるかは問題ではない。我々が工場を軌道に乗せ成功することでアメリカ人の中国人への見方、中国という国への考えが変わるということが重要なんだ。中国人一人一人は母国中国に対して何らかの貢献をしなければならない。ここにいる君たちは今がチャンスである。アメリカ人従業員は十分な能力がないうえに、労働組合が間に入ったら会社にとってさらにマイナスになるだろう」と集会を締めくくりツァオ会長は中国へと戻った。
ツァオ会長は繰り返しフーヤオのモットーは隠し立てのないクリーンな事業だと言っている。

中国本社訪問

フーヤオ・アメリカ工場従業員が中国本社へ訪問

アメリカからフーヤオ・アメリカ工場の各部門のスーパーバイザー達が中国のフーヤオを訪問する。本社との合同会議が行われその後本社の工場見学を行われた。アメリカ人スーパーバイザーたちは熱心に中国人の作業を観察しビデオに収めている。
午後の見学では中国人従業員の点呼、挨拶練習の場に遭遇するアメリカ人。ビシッと一列に並び点呼をして掛け声を皆で掛ける姿にアメリカ人一同は唖然とする。
現地中国人従業員とアメリカ従業員カートがアメリカ工場の問題について話している。中国人はまず勤務体制の違いを口にする。「アメリカでは月8日の休日があり、土日は休み、一日の勤務時間は8時間だが、中国工場では月の休みは1日か2日で12時間の交代制だ」と。そしてアメリカ人従業員は、「問題はやはりアメリカ人が怠惰で、ガラス(会社)のためではなく、お金のために仕事をしているということだ」とアメリカ人自身が言う。中国工場では給料は何もしなくても会社から自動的に支給されるのではなく努力し、その姿勢を示すことで得ることができるものだと考えており、アメリカ人とは認識が違う。勤務中はアメリカ人は雑談やジョークを言いながら仕事をするが中国では一切私語はしない。中国人従業員は休暇を取ることもままならず出稼ぎで来ている従業員は、家族の元に帰れるのは年1回か2回だ。小さい子供がいても会うこともままならないが彼らに選択肢はない。やる気があるアメリカ人にも中国工場の労働環境は理解ができない。
そして盛大な中国旧正月のイベントの日が来た。大会場では歌のパフォーマンスやダンスなどが次々披露される。招待されたアメリカ人たちは最初は文化の違いに困惑気味だったがイベントが進むにつれてその雰囲気に溶け込み最後には舞台にあがりYMCAの歌に合わせて踊りを披露する。こうしてイベントは大盛況で幕を閉じた。

深まる溝

意見箱から用紙を回収する人事課社員にクレームを入れるアメリカ人従業員

アメリカ工場ではアメリカ人の不満が少しずつたまっていっている。人事課が意見箱から用紙を回収していると一人のアメリカ人従業員が近づいてきて、「常設されている電子レンジが2週間も前から壊れているのにそのままだし、休憩所として使用していた場所が工場の生産ラインとして使用され休憩場所がなくなった」と苦情を言ってきた。
中国での視察を終えてアメリカに戻ってきたカートは早速今までは別場所で座って行っていた日々の始業前ミーティングを工場内で立ったままする中国スタイルに切り替えてみた。中国で見たように一列にビシッと並び規律のとれたミーティングとは全くかけ離れてたものだった。
クリーンルームで作業している従業員は緊急の際の出口はなく、唯一の出入り口は部屋の反対側についており火事など何かあったら部屋から出ることはできず閉じ込められることを心配しており、ガラスを運ぶ従業員は運ぶガラスの束が大きすぎて危険を伴うことを心配し、フォークリフトを運転する女性従業員は「中国人に指示されたが業務内容は自分にとって荷が重すぎるので私はできないと断り仕事を遂行しなかった」と言い、15年GMで勤務した経験豊かな従業員はフーヤオで働き始めて大けがをした。安全面に問題があることを報告し、従業員からの不満は積もる一方だった。

工場では労働組合に加入するべきだとデモをする人々が集まり、一方で中国人にはアメリカ人の組合回避コンサルタントが労働組合のマイナス点について講義している。
労働組合問題が可熱する中、ツァオ会長は中国からアメリカ工場へとやってくる。そして、「フーヤオのマネージメント能力があればこれらの問題も解決するはずだ。このような問題を避けるためフーヤオ・アメリカ工場は責任者、スーパーバイザーにアメリカ人を起用し、彼らには多額の給与を支払っているのにどうなっているのだ」と言い残して去っていく。
工場内に中国人従業員を集めてミーティングを行っている。ツァオ会長は、「工場稼働後1月から10月までのマイナス額は40,000,000ドルとなった。早くマイナスをプラスにしなければならないが、新経営陣体制で実現するだろう」と言い、そこでツァオ会長はジェフ・リューを新社長として皆に紹介する。期待が外れたアメリカ人経営陣を辞めて中国人を経営陣とする体制へと変えたのだった。ジェフは1963年生まれで27年間アメリカ、26年間中国で生活をしてきた両文化がわかる中国人だ。
クリスマスには工場でクリスマス会が開催された。その場で新社長のジェフ・リューはみんなが力を合わせて一丸となり頑張ろうと皆に声をかける。その場にはツァオ会長の姿もあった。外は雪が降り続いている。

それぞれの従業員の想い 2

フォークリフト運転手のジル

GM閉鎖で職を失い姉の家に居候していたフォークリフト運転手のジルが引っ越しをしたというので訪問した。家賃480ドルのアパートを知人に紹介してもらい引っ越しをしたところだった。自分の「城」をまた持て、自立できたことに喜びを感じていた。

中国人従業員の寄宿舎

中国人従業員は宿舎で食事を自分たちで作り食べている。夕食後の一服が至福の時だと語る。従業員というのは線路を敷く役割を担っており電車が発車できる体制を整えるのだ、我々従業員は自分ができる最大限の努力をするだけだと語る。ちょうどその時、国に残している奥さんからのメッセージを受け取る。体調を心配している様子だ。物心がついてから泣いた記憶はないが、アメリカに着いた当初は寂しくて涙を流したという。夜が更けてくると家族と一緒に居れない寂しさが押し寄せてくると語る。

アメリカ人従業員ロブ

ロブは自分の牧場でフーヤオで働き始めてからを振り返る。採用前はガラスについては何も知らなかった自分が今は多くのことを中国人から学ばせてもらった。普通なら自分のような高齢になるとなかなか採用してもらうことができないのはよくわかってる。彼ら中国人同僚は自分の本当の兄弟だと思っているとロブは話す。

中国人上司に怒られ涙を流すアメリカ人従業員

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