YAWARA!(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『YAWARA!』とは浦沢直樹による漫画及びそれを原作としたアニメ作品である。ビッグコミックスピリッツで1986年から1993年まで連載され、単行本は全29巻、発行部数は約3000万部。 1989年にはアニメ化されて大ヒットし、世に女子柔道ブームを巻き起こした。祖父に英才教育を受けた柔が、オリンピックや世界選手権で世界の強豪とぶつかる柔道漫画。柔は柔道に後ろ向きであったが、松田や富士子、ジョディらとの出会いによって次第に前向きに取り組んでいく。また、純愛ラブストーリーとしての側面も魅力である。

一本背負い

正式名称は一本背負い投げ。相手の片腕を掴んだ状態から背負い投げをする柔道の投げ技の一つで、本作における猪熊柔の得意技でもある。「一本背負い」とは通称であり、伝説の柔道家である木村政彦選手やバルセロナオリンピックで金メダルを獲得した古賀稔彦選手などが得意とした。相手の懐に入り相手を背負って投げるため、小柄な選手が得意とすることが多いが、体の大きな選手が一本背負い投げを行うと迫力がある。

ユーゴスラビア

ユーゴスラビアとは、かつて南東ヨーロッパのバルカン半島地域に存在した、南スラブ人を主体に合同して成立した国家の枠組みの事。国名として「ユーゴスラビア」を名乗っていたのは1929年から2003年までの期間である。本作では、48kg以下級でロシアのフルシチョワを破って柔が優勝した柔道世界選手権がユーゴスラビアで開催された。

バルセロナオリンピック

1992年7月25日から8月9日までの16日間、スペインのバルセロナで開催されたオリンピック競技大会。国際オリンピック委員会会長 のフアン・アントニオ・サマランチの出身地であるスペインカタルーニャ自治州バルセロナでのオリンピック開催実現に向けて、1986年のIOC総会で開催が決まった。このバルセロナオリンピックよりプロ選手の出場が拡大し、競技のレベルが劇的に上がった事でも知られている。柔道女子無差別級で柔がカナダのジョディ・ロックウェルを破って金メダルを獲得し、ソウルオリンピックに続いて2連覇を果たした。

国民栄誉賞

国民栄誉賞とは、日本の内閣総理大臣表彰のひとつで、当時の首相・福田赳夫により創設された。内閣総理大臣や政権による表彰としては「内閣総理大臣顕彰」があったものの、プロスポーツ選手は対象外であり、福田赳夫首相が通算本塁打の世界記録更新を控えたプロ野球選手の王貞治を表彰しようと創設した。猪熊柔がソウルオリンピックに続き、バルセロナオリンピックで金メダルを獲得した後に、国民栄誉賞を受賞している。

世界柔道選手権大会(せかいじゅうどうせんしゅけんたいかい)

世界柔道選手権大会は、国際柔道連盟が主催する柔道の世界選手権大会で、通称「世界柔道」。柔道の世界一を決定する大会である。この大会の権威はオリンピックと同格で、現在でもIJFワールド柔道ツアーで最高峰に位置付けられている。オリンピックでは実施されない無差別も行われる。本作ではユーゴスラビアで柔道世界選手権大会が開催されており、松田が会場に間に合わなかった事で絶不調に陥った柔が、松田の事を好きな気持ちを再認識する事になった、ストーリー上重要な大会でもある。

『YAWARA!』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

本阿弥さやか「女王とお呼びなさい!!」

紫陽花杯で、聖身女学館の大将として出場した本阿弥さやかがいよいよ登場。

柔の所属する三葉女子短大に対抗して、本阿弥さやかも聖身女学館で柔道部を結成し、大学女子団体戦の紫陽花杯に参戦。数合わせで柔道部に入部させた4人はあっという間に敗退し、大将である本阿弥さやかが呼ばれた時に言ったセリフ。満を辞して登場する、本阿弥さやかの自己愛にあふれたセリフ。

フルシチョワ「速い!!」

圧倒的な速さで、フルシチョワを投げる柔。

世界選手権での柔はなぜか絶不調で、得意の一本背負いをなかなか決めることができず、なんとか48kg以下級の決勝戦にコマを進めるものの、柔の対戦相手はロシアの強豪選手のフルシチョワ。誰もが負けを心配していた。言いようのない不安に包まれながら決勝戦に望む柔。相変わらず調子が上がらずにフルシチョワに苦戦する柔であったが、その時松田が会場に到着。柔が試合中に関係者席を見ると、そこに松田の姿が。客席で応援する松田のその姿を目の端で捉えた柔は、その瞬間不安は消え、突然生き返り、フルシチョワが全く追いつけないスピードで懐に潜り込むと、綺麗に一本背負いを決めた。試合中に本調子になった柔の常人離れしたスピードを表したフルシチョワのセリフである。

伊藤富士子「立ってられる気がしない」

一瞬で、富士子の懐に潜り込む柔。

全日本選手権の準決勝で本阿弥さやかを破った柔。決勝戦の相手は何と親友の伊東富士子である。柔道初心者からどんどんと実力を付けて、全日本選手権の決勝にまで上り詰めた、今や実力者の伊東。試合前は手を抜かずに全力で挑むことを誓い合う2人であった。しかし試合がはじまった瞬間に柔の足技が次々と飛んできて、全く立っていられないと思った瞬間に既に背負われていた。これまで横で柔の強さをずっと見てきた富士子であったが、初めて柔と対戦して、その天才的な強さを身を持って持って体感する事となった。

猪熊滋悟郎「逃げてなにが柔道!!一本勝ちしてこそ柔道ぢゃ!!ようやったぞ、ノッポの姉ちゃん!!」

テレシコワ相手に、最後まで攻め切った富士子を称える滋悟郎。

柔の祖父である猪熊滋悟郎は「一本とってこその柔道」ということをくり返し言っている。伊東富士子が世界柔道選手権無差別級の準決勝で、最強柔道家のロシアのテレシコワと戦った際、ポイントで優勢となっていながら、滋悟郎の教えを守って最後まで攻めの姿勢を崩さなかった結果、最終的には一本負けしてしまう。ポイントでリードした際に、組み合わずに逃げて時間切れを待てば勝てたかもしれないが、負けて帰ってきた富士子にかけた言葉。逃げの柔道を嫌う滋悟郎らしい名言。

猪熊柔「ううん。教えてくれたのはみんなの方...一生懸命やるのって、いいね。」

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@tomonori0526

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