キューブ(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『キューブ』とは、1997年に公開されたカナダのSFホラーサスペンス映画である。役者が7人のみでワンセットの低予算映画だが世界的にヒットし、カルト的人気を誇る。
生まれも育ちもバラバラの男女6人が、突然謎の立方体キューブに閉じ込められてしまう物語。同じ脱出系の作品である『SAW-ソウ-』や『リミット』など、ソリッドシチュエーションスリラーの原点ともいえる映画となっている。ホラーサスペンスの鬼才ヴィンチェンゾ・ナタリが放つ珠玉の作品。ナタリ監督公認の日本版『キューブ』も制作された。

『キューブ』の概要

『キューブ』とは、1997年にカナダで公開されたSFホラーサスペンス映画である。日本では1998年に公開。配給は、クロックワークス、ポニーキャニオン。5000万円という低予算で作られた映画である。1つの場所でホラーサスペンス物語が繰り広げられる系統をソリッドシチュエーションスリラーといい、『キューブ』がその走りとされている。
まったく無関係の男女7人が、一辺が約4.2mの立方体(キューブ)の部屋が敷き詰められた建物に閉じ込められ、脱出を目指すストーリー。一部のキューブには危険な罠が仕掛けられており、7人は罠や仲間割れでメンバーを失いながらもキューブの謎を解いていく。
低予算映画にも関わらず世界的人気を得た『キューブ』は続編も制作された。2作目の『キューブ2』では3次元でなく4次元になったハイパーキューブから脱出する物語。3作目の『キューブZERO』は、1作目の『キューブ』より前の話になる。また、1作目の物語『キューブ』をリメイクした日本版『キューブ』も存在する。

『キューブ』のあらすじ・ストーリー

キューブの罠

オルダーソンは立方体の部屋の中にいた。なぜ自分がここにいるのか、ここはどこなのか、何もわからないまま隣の部屋に移動する。その瞬間、ワイヤーナイフの罠が発動し、オルダーソンはバラバラになって死亡する。

出会った5人

黒人警官のクエンティンは、謎の建物からの脱出を試みていた。クエンティンが辿り着いた部屋でワースという男性と出会う。さらに上の部屋から中年女性、ハロウェイが姿を現した。その後クエンティンは別の部屋で助けを求めていた女性、レブンを救出する。レブンの救出後、辺りを警戒する様子を見せるクエンティンに、ハロウェイは部屋で何が起きるのかを尋ねる。だがクエンティンも全ての状況を把握していない為、詳しい事を説明することはできない。
クエンティンとハロウェイが話をしている中、天井にある扉が開き、初老の男、レンが顔を覗かせた。次々と人が増えていく状況に戸惑いながらも、クエンティンはその場にいる者たちへ部屋に罠が仕掛けられている可能性がある事と、別の部屋で首を切られそうになった事を告げた。それを聞いて怯えるレブンとハロウェイ。ワースはクエンティンの話を聞いても、表情を一切変えないままだった。ハロウェイはワースが頭に怪我をしていることに気付くと、彼の診察をはじめる。ハロウェイは医者なのだった。

初老の男、レンは履いていた靴を脱ぐと隣の部屋へと投げ入れる。靴が部屋に入った途端、ガスバーナーが出現し靴は焼き尽くされた。その状態を見たレブン、クエンティン、ハロウェイの3人は呆然としてしまう。
パニックになるレブンとハロウェイを落ち着かせると、クエンティンは自分達がどうやってキューブまで来たのかの確認を始めた。しかし、全員が気づいたらキューブの中にいたという。明確な答えは出ないが、キューブに入ったという事は出られる可能性があるという事だ。レンの提案により、クエンティンたちは行動を開始する。部屋を移動していると定期的に機械音がする事と、部屋と部屋の境目に3つの数字が彫られている事に気づいた。だが、現状では数字の意味するところまでは解明できない。

最初の犠牲者

扉を開けたレンは、部屋の空気が乾いている事に気づく。部屋に分子感知器が設置されており、「罠がある可能性が高い」とレンは言う。レンは、これまで何度も脱獄を繰り返して来た囚人だったのだ。レンが脱獄のプロだという事を知った一同は、キューブからの脱出ができると思い安堵の表情を浮かべる。
レンは罠の気配が無い部屋へと移動した。だが、レンが部屋に入ると隠されていた罠が作動し、溶解度の高い液体を浴びせられる。罠から逃れ自力でみんながいる部屋に戻ったレンだが、その顔面はドロドロに溶けてしまっていた。レンはみんなが見ている前で、もだえ苦しみながら絶命する。
レンの壮絶な死に様を見ても、ワースだけは表情が変わらない。クエンティンは、なぜこのような事になったのか、自分達に今何が起きているのかをもう一度考えるようみんなに尋ねる。しかし、ハロウェイもレブンもなぜ自分がここにいるのかさっぱりわからなかった。この状況にハロウェイは苛立ちを募らせる。しかも、お気に入りの指輪も盗られていると言うのだ。それを聞いたクエンティンは、身につけていたものが没収された中、レブンのメガネだけが取られていない事に気づく。レブンに大学で先行している学科を聞くと、彼女は「数学」と答えた。
レブンは部屋と部屋の間に彫られていた3つの数字が「素数」に関係するものだと気づく。つまり、素数がある部屋には罠があり、素数がない部屋には罠がないというのだ。レブンの記憶力と計算力を頼りに、4人はキューブからの脱出を試みる。

新たな仲間

素数を頼りに移動を続ける4人だが、途中で行き詰まってしまう。なんと、天井を除いた5つの扉全てに罠が仕掛けられているのだ。天井の部屋の数字を確認する為、クエンティンがハッチに手をかけ扉を開ける。すると、上から1人の男が降ってきた。彼の名前はカザンといったが、彼は様子がおかしかった。「この部屋緑」と呟き、頭を壁に打ち付け始めたのである。カザンを落ち着かせるため、ハロウェイが話しかける。だが、カザンの口からは意味不明の言葉ばかりがでてくる。そして、カザンがいた部屋に移動しようとすると、彼は移動する事を拒み癇癪を起こした。

安全な部屋に罠が

カザンを含む4人は別の部屋への移動を続けていた。その中でハロウェイは、ここがニューメキシコなのではないのかと推測する。キューブのような巨大な建物は都会だと目立つため、人里から離れた場所にあるのではないかと考えたのだ。そして、この建物は政府がらみの軍需産業の為に作られたのではないかと考察する。
レブンが安全な部屋を見つけると、ハロウェイは1番先にその部屋に移動をした。最初は無気力で消極的だったワースも、素数の計算に協力をするようになっている。素数のない部屋へ移動したクエンティンだが、その時レブンが部屋に仕掛けられている罠に気が付いた。ワイヤーナイフの罠を間一髪でよけるクエンティン。命こそ落とさなかったものの、クエンティンはケガを負ってしまう。
ハロウェイがクエンティンの手当をする間、ワースがカザンのお守役を任される事になった。ワースはしぶしぶカザンがいる部屋に移動する。クエンティンは、ワースがこのキューブに関連していて、実は罠がある事もわかっていたのではないかと推測していたのだ。そしてクエンティンは、レブンとハロウェイに自身の推測を語った。

ワースの正体

カザンを連れて戻ったワースは、部屋の空気が重くなっている事に気づく。レブンは、「罠の有無は素数で表されているのではない可能性が高い」と話す。しかし、素数以外の答えを見つける事が出来ていない。ハロウェイの提案により、一行は安全な部屋でしばし休息をとることにした。
休憩の後、レブンはもう一度数字について考える。しかし、何度計算をしても答えに辿りつくことは出来ない。そのうち、カザンが部屋の中で排泄してしまう。その様子に呆れるレブンとクエンティン。その状況になぜかワースは笑っていた。
楽観的な態度のワースにクエンティンはケンカをふっかける。「絶対にこの建物から脱出する」と意気込むクエンティンに対し、ワースは「絶対に脱出はできない」と言う。そして、ワースは「ここに出口なんてない」と口にした。ワースはキューブの外壁の設計者だったのである。しかしワースは外壁を設計しただけで、建物を建てた理由や内部の構造、そしてキューブの制作を依頼した黒幕のことも知らないらしい。
全てを白状したワースは笑顔で「肩の荷が降りた」と言った。ワースの態度に激怒したクエンティンは彼を殴りつける。だが、建物の事を知っているのはワースただ1人だけだ。我に返ったクエンティンは、殴る手を止めた。
ワースから建物全体のサイズを確認したレブンは、再度計算を進める。そしてレブンは"デカルト座標"という答えに辿りついた。レブンは、部屋の境目に書かれていた数字は部屋の場所の緯度や経度を示していると説明する。そして、今いる部屋はキューブの端から7番目に位置している事もわかった。だが、自分達がいる部屋の位置は分かっても、罠の確認方法は不明のままだった。4人は再び移動を始める。

部屋の移動を続ける一行だったが、ある部屋の数字を見てレブンは頭を抱えてしまった。3つの数字を計算したところ、その部屋の位置はキューブの外になってしまうと言うのだ。さらに移動を続けると、罠のある部屋に囲まれてしまう。部屋には人の声に反応して四方八方から針がでてくるという罠が仕掛けられていた。「引き返した方がいい」と言うレブンに対し、クエンティンは「部屋を突っ切って先に進むべきだ」と告げた。
ワース、レブン、ハロウェイとカザンの順番に移動を開始した。最後に部屋を移動するクエンティンが、あと一歩で安全な部屋に移動ができると思ったその時、カザンが声をあげてしまった。カザンの声に反応した部屋は、容赦無くクエンティンに針を向ける。クエンティンは間一髪で罠を抜ける。
カザンのせいで死にかけたクエンティンは怒りを爆発させ、カザンをかばうハロウェイを「偽善者」と呼び、暴力を振るう。するとレブンが「ここがキューブの端だ」と告げる。重々しい空気の中、ワースが外へ通じる扉を開ける。キューブの外には暗闇が広がっていた。建物から下を見ると、底なし沼のようになっており、ここから落ちたら助からないという事は明白だった。下の様子を確認するため、服で作ったロープを体に巻きつけたハロウェイが降下することになる。

ハロウェイの死とクエンティンの本性

ハロウェイがキューブの外壁を調査するも、手がかりになりそうなものは何も見つけられない。ロープを支えるみんなの手も限界が近い。ワースがハロウェイに戻るように促すが、彼女はその言葉を無視して調査を続ける。その時、建物全体が地震のような揺れに襲われた。その衝撃に耐え切れなくなった一行は、ついにロープを離してしまう。寸でのところでクエンティンがハロウェイの手を掴むことに成功するが、彼は故意にハロウェイの手を離してしまった。
悲鳴をあげ、暗闇に落ちるハロウェイ。レブンとワースはハロウェイの死に言葉を失うが、クエンティンはそんな2人の感情を無視して、暗号を解くように指示を出した。しかし、レブンはハロウェイの死にショックを受け何も考える事ができないでいる。「少し眠ろう」というワースの言葉に、一行は休息を取る事にする。

クエンティンは、眠っているレブンを安全な別の部屋に無理やり移動させる。そしてレブンに、2人でキューブから抜け出す事を提案する。しかし、ワースとカザンを裏切るという行為に恐怖を感じたレブンは、クエンティンから逃げ出した。
クエンティンがレブンを襲おうとしたその時、ワースが助けに現れる。クエンティンは、ワース、カザン、ハロウェイをスパイ扱いして、ハロウェイがあんな死に方をしたのは当然の報いだと口にした。その言葉を聞いたレブンは、クエンティンがハロウェイをわざと落とした事を知る。クエンティンはワースを殴りつけると、別の部屋に向かって彼を投げ入れた。レブンは、その部屋の罠の有無を確認していないことに気付き悲鳴を上げる。
クエンティンから投げ落とされたワースだが、ある物を見て笑いはじめた。その部屋にはレンの死体があった。元いた部屋に戻ってしまっていたのだ。だが、そこでワースはレンが劇薬の罠にかかった部屋がなくなっている事に気が付いた。罠の部屋はなくなり、代わりに外に繋がっている。部屋が移動しているという事実に、レブンは移動の法則は"順列"が関係している事に気づく。そして、「27の部屋が出入口になっている」と言う。しかし、その27の部屋に行くだけではキューブから脱出することは出来ない。なぜなら、27と言う部屋はもともと通路だったのだ。27の部屋が通路に戻っている時間帯でなければ、キューブからの脱出は出来ない。レブンは次に27の部屋が通路になる時間を出すべく計算を開始した。

カザンの能力

レブンの計算によると、あと2回建物が動いたら27の部屋が通路になる。そして、罠を見破る法則もレブンは解明していた。素数が何個あるかによって、罠の有無がわかるというのだ。しかし、計算機もない状況では素数の数を確認出来ないとレブンは言う。だがその時、カザンが数字を呟いた。その数字とは、レブンが計算できないと言った因数の数だったのだ。カザンは難しい計算を一瞬で解く能力を持っていたのである。カザンの能力を信じることにした一行は、27の部屋へ向けて移動を始めた。
罠をくぐり抜ける方法は判明したが、クエンティンの態度は酷くなる一方だった。ワースに暴力を振るい、カザンに無理やり計算をさせ、レブンにきつく当たる。そしてとうとう我慢の限界を迎えたワースの手により、クエンティンは階下の部屋へと落とされた。頭から血を流し、動かないクエンティンをその場に残して3人は先を急ぐ。

脱出

ついに3人は27の部屋へ辿り着いた。脱出を目前に、3人の目の前に再びクエンティンが現れた。レブンとワースを刺したクエンティンは、出口に向かうカザンを追いかける。クエンティンとカザンが揉み合っていると、部屋の移動が始まった。クエンティンは27の部屋から出ようとするが、最後の力を振り絞ったワースがクエンティンの足を掴んだ。その間に、カザンは出口へと逃げる事に成功した。
脱出を果たせず、ワースとレブン、そしてクエンティンは27の部屋で息を引き取る。一方、カザンはゆっくりと光の指す出口の方に向かって歩いて行く。カザンの体が光に包まれ、物語は幕を閉じる。

『キューブ』の登場人物・キャラクター

クエンティン(演:モーリス・ディーン・ウィント)

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