おはようとかおやすみとか(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『おはようとかおやすみとか』とは、2014年よりまちたが『月刊コミックゼノン』で連載していた、主人公と異母兄弟との共同生活をテーマにしたハートフル漫画作品である。デビュー作でありコミックゼノンマンガオーディションにて準グランプリを受賞。他人との共同生活を嫌い、1人で自由に暮らす事を望んでいたサラリーマン・日向和平(ひなたわへい)。新築マンションを購入した矢先に突然現れた腹違いの3姉妹との共同生活を通して、家族とは何か、自分の居場所はどこにあるのかという家族に対する価値観が変わっていく様を描く。

『おはようとかおやすみとか』の概要

『おはようとかおやすみとか』とは、2014年よりまちたが『月刊コミックゼノン』で連載していた、主人公と異母兄弟との共同生活をテーマにしたハートフル漫画作品である。2014年『月刊コミックゼノン』6月号の新人連載枠「ゴールドゼノン」にて初連載した。
同作は11月号にて一旦終了したが、好評を得て、2015年4月号から本格連載となった。まちたのデビュー作であり、2013年のコミックゼノンマンガオーディションにて準グランプリを受賞した作品である。
他人と暮らすことを好まず、自分の理想とする生活を夢見ていたハウスアドバイザーの日向和平は、念願の新築マンションを購入する。
しかし、その矢先に異母兄弟である3姉妹、国前穂高(くにまえほたか)・千世(ちせ)・千苗(ちな)が現れ、行き場のない妹達との共同生活を余儀なくされてしまう。
はじめは、自分のペースで生活できなくなったことに腹立たしさを感じる和平であったが、3姉妹との暮らしを通して、家族とは何か、自分の居場所とはどこにあるのかという家族に対する価値観が徐々に変わっていく姿を描くヒューマンドラマである。不器用に互いを思いやる和平と三姉妹、そしてそれを見守る他の登場人物の姿が描かれており、家族の大切さや温かさを思い出させてくれるハートウォーミングストーリーになっている。

『おはようとかおやすみとか』のあらすじ・ストーリー

和平と3姉妹の出会い

ハウスアドバイザーとして働く28歳の日向和平の理想は「古い家は壊し、新しい機能的な家を建てる」。
幼い頃に両親の離婚を経験し、絵本作家の父親に育てられた和平。その父が放浪の旅に出ることになり、古くて不便な実家をコインパーキングにし、新築マンションで一人暮らしをすることになった。

仕事を終えて念願の新築マンションに帰宅する途中、女子高生と小学生の双子の3姉妹に出会う。姉妹は人探しをしていると言い、「不動産会社勤務」「最近新築マンションに引っ越した人」「名前は日向和平」という情報から、和平は3姉妹が探している人物が自分であることに気付くのであった。
身に覚えのない3姉妹が自分を訪ねてきたことに困惑する和平に、3姉妹の長女穂高が一枚の手紙を差し出す。手紙の差出人は父親で、3姉妹は和平の腹違いの妹であること、3人の面倒を見てほしいということが書かれていた。

初めて会ったばかりの異母兄弟を受け入れることができず、同居を拒否した和平であったが、幼い双子の姉妹を震えながら抱きしめ「私たちをお兄さんの家に置いてください。」と懇願する穂高の姿を見て、3人には帰る家も他に頼る人もいないことに気付く。そして、「行くところを見つけるまで」という条件で3姉妹を家に置くことにするのであった。こうして和平と女子高生の穂高、双子の小学生千世・千苗の4人による共同生活が始まった。

共同生活のはじまり

一つ屋根の下で一緒に暮らし始めた和平と3姉妹。双子の千世・千苗は、広くて綺麗な新築マンションに大喜びし、のびのびと過ごしていたが、穂高は常に「また捨てられるのではないか」と心配している様子であった。一方の和平も幼い頃の家族の記憶がなく「理想の家族」がどういうものかイメージすることができず、3姉妹との関わり方に悩んでしまう。
あるとき、和平の態度から「追い出されてしまう。」と不安を感じた穂高は、和平に何も言わず千世・千苗を連れて家を出てしまった。
3姉妹と家族を作っていこうと決意した和平は、穂高達を家に連れ戻す。そして、「自分たちの帰る場所」として部屋のドアに3姉妹の名前が入ったプレートを付けてあげることにした。
穂高は、自分たちの居場所があることがうれしく、思わず涙を流してしまうのであった。

徐々に家族になっていく4人

慣れない共同生活が続く中、和平は双子の姉妹、千世・千苗に歩み寄ろうと好きなキャラクターのカバンを買ってあげることにした。しかし、間違って違うキャラクターのカバンを買ってしまう。千世・千苗は、うれしかったとお礼を言うが、和平は気を使わせてしまったと落ち込んでしまう。
次の日、ちゃんとした家族になれるわけがないと落ち込みながら帰宅していると、近所のおばさん・大森に話しかけられる穂高を目撃する。4人での生活を不審がる大森に対して穂高は「私たちは家族ですよ。兄がいるから心配なんてなにもありません。」と伝えた。
和平が帰宅すると部屋が甘い匂いに包まれていた。千世・千苗は和平をリビングに連れて行き、間違いだったとしてもカバンを買ってくれてうれしかったと伝え、穂高と一緒に作ったクッキーを和平にプレゼントするのであった。
穂高・千世・千苗の行動に心の奥が暖かくなる和平は、1人で考えるのではなく、こういったことの積み重ねで「家族」になっていくのだと感じ始めるのだった。

後日、和平は3姉妹と一緒にショッピングモールに出かける。
いつもわがままを言わず家事ばかりしている穂高を楽しませるためである。和平が会社の同僚である蓮見(はすみ)と 加東つかさ(かとう つかさ)に穂高のことを相談していたのもあり、偶然を装った二人とショッピングモールを一緒に周ることになってしまった。
今まで家のこと妹達のことを何よりも優先して生きてきた穂高にとって、いろいろなお店を巡ったり普段着ないようなかわいらしい服を着たりすることは新鮮で、リフレッシュして楽しむことができた。
そして、和平が自分のことを気にかけてくれたことをつかさから聞き、うれしくなるのであった。

穂高に友達ができる

穂高の同級生である江藤桜(えとうさくら)は、いつも教室で一人静かに過ごす穂高のことが気になり、話しかけたり、人気カフェのドリンク券を見せたりし、友達になるために行動する。しかし、その真意がわからない穂高は桜の行動を理解できず悩んでしまう。

その夜、和平と3姉妹が家でのんびりしているとき、和平は穂高が何か悩んでいることに気付く。学校で新しい友達はできたかと尋ねると穂高は「友達はいません。毎日話しかけてくる子はいますが、いつも何か怒ってるし、なんか不審なことを言われるんです。」と答えた。和平は穂高に、その子とちゃんと話をしてみるようアドバイスをする。

次の日、桜はいつものように穂高に話しかけ、スーパーでの買い物に付き合うことになる。買い物をしながら会話するうちに打ち解けていく2人であったが、穂高にとって今までは家族が人間関係のすべてであったため、桜とどのように親しくなっていけばよいかわからないでいた。そこへ偶然通りかかった和平に思わず「桜は友達ではない」と伝えてしまい、桜はその場から走り去ってしまう。
和平は穂高に「千世や千苗にするのと同じように大事にすればいい。」とアドバイスをした。
そして、穂高と桜はお互いの誤解を解き、友達になることができた。桜は穂高にとって初めての友達になったのである。

和平と父親の関係の変化

会社で休憩中に和平は絵本作家である父親が書いた絵本を読んでいた。
3姉妹と暮らすようになってから父親がどんな人間であったのか気になったり、自分の子どもの頃のことを思い出すことが増えたりしており、父親のことを気にかけるようになっていたのである。和平は自分が幼い頃から抱いていた父親のイメージと父親の絵本から感じる印象のギャップに戸惑いを隠せないでいた。

帰宅し、3姉妹に父親の絵本を渡すと大喜び。3人は無邪気で変な欲のない子どものような父親のことが好きだというのであった。千世・千苗は絵本を読みながら父親を思い出し、「まいごシリーズ」の登場キャラクターであるハリネズミが和平にちょっと似ていると話し出し、和平はうれしくないと思った。

その晩、和平が寝ていると音信不通だった父親から連絡があり、翌日カフェで待ち合わせることになった。和平に怒られると思い「なまはげ」のお面をかぶってカフェに来た父親。3姉妹を勝手に預けたことに怒っていた和平であったが、自由奔放な父親と会話するうちに怒りが徐々に消えていくのであった。
父親は「これで最後だから!」と今はコインパーキングになっている実家があった場所に和平と訪れる。家族で過ごした思い出の家があった場所を見ながら感傷に浸り、今にも消えてしまいそうな父親の後姿を見て、和平は思わず「まだやる事があるからな?3人を嫁に出すんだぞ!しっかりしろよ?」と言い放った。
3姉妹と出会うまでは父親に関心を示さず、「よくわからない人」と感じていた和平であったが、3姉妹と家族になっていく中で父親との関係も徐々に変化していくのであった。

千世・千苗にとっての家族

父親とのわだかまりが消えた和平は3姉妹と母親の関係が気になり、穂高に母親と連絡をとっているのか尋ねる。穂高は、和平が家から出て行ってほしいと思っているのではないかと勘違いし、心を閉ざしてしまう。
悩んでいる穂高の様子に気付いた桜は、穂高の話を聞いてお兄さんを信じてみるようアドバイスをするのであった。
そして、帰りが遅いことを心配して迎えに来た和平に穂高は「良くしてもらっているのに、期待に応えられなくてごめんなさい。」と伝えた。和平は、「穂高なりにやってきたんだろ。わかってるから大丈夫。」と穂高の気持ちを理解し、受け入れるのであった。

この出来事から穂高と和平は以前よりも打ち解けていくが、千世と千苗は「和平君に穂高をとられた」と感じ、やきもちから和平の言うことを聞かなくなる。
ある晩、やきもちを焼いている千世・千苗の機嫌を直してもらおうとケーキを買ってきた和平であったが、千世と千苗は「ケーキなんていらない!」とそっけない態度をとってしまう。それを見た穂高が、「そんな言い方はないよ?」と注意すると双子は拗ねて部屋にこもってしまう。
自分たちが悪いことをしたとわかっている千世・千苗に対して穂高は「ちいとちな(千世・千苗の愛称)が居なきゃいや。ちいとちなが一番大好きだよ。」と伝え、仲直りするのであった。
和平は、そんな3姉妹の様子を見て家族が絶妙なバランスで成立していること、揺らいだり綻んだりしても誰かが拾い上げてちゃんと家族の形にくっつくことに気付き、家族はおもしろいなと思うのであった。

和平と書店店員・片山翠(かたやまみどり)の出会い

ある日の帰宅途中、和平は誰かに後をつけられている気配を感じる。
ストーカーかと思い、声をかけるとそこに見知らぬ女性がいた。その女性の名前は片山翠。和平が時々買い物に行っていた書店で働いており、最近和平が来店しない事が気になり、偶然電車の中で見かけて声をかけようと思わず後をつけてしまったのだと言う。そして、和平の事を好きになってしまった事を告げる。いきなりの告白に驚く和平だが、ほぼ初対面の翠の告白を断るのであった。
和平は罪悪感を抱えつつ、もう会うこともないだろうと思っていたが、数日後に偶然町の中で翠と再会する。転んでケガをした翠を放っておけない和平は、家まで送ることにした。家では翠の母親が待っており、母親のペースにのまれて帰るに帰れなくなってしまった和平は夕飯をご馳走になる。
帰る際に和平は、片山家の雰囲気や家の空気感に居心地の良さを感じ「なんか良い家だな」と思うのであった。
和平は帰宅した後、お土産でもらってきた肉じゃがを妹達と一緒に食べた。妹達は「よそのおうちの味がする」と喜び、和平もおいしいと感じるのであった。

後日、和平はタッパーと肉じゃがのお礼にと穂高が焼いたクッキーを持って、翠が働いている本屋に向かった。
翠にタッパーを返し、一緒に電車に乗って帰宅することになった和平は、片山家がとても居心地の良い家だと思った事や団らんや温かみを感じる自分の理想の家かもしれないと思った事を話したのだった。すると翠から「自分が欲しかったものを、今4人で作っているんですね。」と言われる。
翠の話を聞いて、良い家族・良い家は自分たちで作っていくものなんだと納得する和平であった。

良い家を目指して

和平は、翠と話をしてから自分たちの家はよい場所なのか考えるようになる。3姉妹に今の家を居心地よく思っているのか聞くと「ふつう」「別にいいんじゃない」という答えが返ってきた。
そこで、和平は家をより良い場所にするために要望や希望を書いて入れることができる「目安箱」を設置することにしたのであった。
一週間後、中を確認すると「毎日ケーキを食べたい」や「おもちゃを買ってほしい」などの千世・千苗の要望しか入っておらず、穂高は特に要望がないと答えた。その答えに和平は落ち込んでしまう。

その晩、穂高は千世・千苗から「別にって言われるとかなしいじゃん。なんでもいいから、考えて何か言ってあげるのが大事な気がする。気持ちを伝えたらうれしい顔すると思うよ。」と言われ、一晩考えることにした。
翌朝、穂高は「休みの日にスーパーへみんなでお買い物に行きたい」という要望を和平に伝える。
そして、次の休日4人は一緒に買い物に出かけた。
3姉妹が話しながら買い物をしたり楽しくアイスを食べたりする姿を見て、和平もうれしい気持ちになるのであった。

魔女おばさんとの出会い

千世・千苗の通学路に魔女が出るという都市伝説を聞いた穂高。千世・千苗に怖い人に声をかけられたりしていないか尋ねると「マジョさんは怖い人じゃないよ」という答えが返ってきた。
詳しく話を聞くと千世が転んでケガをした時に魔女おばさんに助けてもらい、家でお菓子までご馳走になっていたのだった。穂高は2人を心配し、知らない人についていかないよう注意した。

後日、千世・千苗は魔女おばさんの家に行き、しばらく遊びに来られないことや知らない人の家に行ってはいけないと穂高に怒られたことを伝える。
迷惑をかけたことを申し訳なく思った魔女おばさんから連絡をもらった穂高は、千世・千苗を迎えいった。
魔女おばさんといろいろ話している内に心を開く穂高。
実は、魔女おばさんの娘が結婚後にイギリスに行ってしまった為、ずっと空き家で近所ではお化け屋敷として有名だった家に越してきたことで魔女であるという都市伝説が生まれたのだった。
魔女おばさんから娘の話を聞いていると、「お母さんは子供と離れたくないものです?」と穂高はふと尋ねる。
「元気でいるならそれでいい。でも、もし何かあればすぐ、どこにでも飛んでいきますよ。母親は死ぬまで子供の母親です。」と答える魔女おばさんの言葉に複雑な表情を浮かべる穂高であった。

3姉妹と母親の再会

魔女おばさんの家から和平と3姉妹が帰宅する途中、ある女性が声をかけてきた。その女性は、3姉妹の母親だった。
千世・千苗は驚きながらも母親に駆け寄るが、さみしくなってしまったと泣き出す母親の姿を見て穂高は困惑する。母親は、新しい旦那と3姉妹の5人で暮らすために迎えに来たと和平に告げるが、どうしていいかわからない穂高は思わずその場から逃げ出してしまう。
3姉妹の母親の突然の訪問に憤りを感じる和平であったが、穂高を追いかけようとする母親を引き止めて「穂高が考える時間をください。」と伝えた。
了承した母親であったが、穂高たちを引き止めないでほしいと言われ困惑しながらも、その身勝手さに腹立たしく感じるのであった。

自宅に戻り穂高と話す和平。穂高は、和平の家に来ることになった経緯を次のように話し始める。
もともと母親と3姉妹の4人で暮らしていたが、母親が新しい恋人と再婚することになった。
その際、母親は穂高に「彼は子供が苦手みたい」と伝え、遠回しに「子供はいらない」と匂わせてきたのだ。そして、「自分は寂しいがどうしたいか穂高が決めてよい」と穂高に残酷な選択を迫ったのだった。
それを聞いた和平は、何も言ってあげることができなかった。

翌朝、千世・千苗にこれからどうしていきたいか和平が問うが、2人は穂高が決めたことに従うと答えた。和平は3姉妹のためにどうしたらよいのか悩むのであった。

7pErika55
7pErika55
@7pErika55

目次 - Contents