魔法のリノベ(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『魔法のリノベ』は、作者星崎真紀による住宅リノベーションを題材とした漫画であり、2015年から双葉社が発行する主婦向け漫画雑誌『JOUR』に連載されていた。家族経営のまるふく工務店を舞台に、気弱な長男の福山玄之介と、大手工務店から転職してきた主人公の真行寺小梅コンビの活躍を描く。家と家族の問題を抱える施主の要望を、リノベーションで解決していくヒューマン系お仕事漫画である。クールに見えて人情派の真行寺とお人好しな玄之介の成長も物語の見どころである。

『魔法のリノベ』の概要

『魔法のリノベ』は、作者星崎真紀による住宅リノベーションを題材とした漫画である。リノベーションとは、住宅において間取りの変更など大規模な改築工事のことをいう。それを請け負うまるふく工務店は男ばかりの家族経営。父である社長の判断で大手工務店に勤務していた真行寺小梅が入社してくるところから物語は始まる。女性に甘く弱気な長男の福山玄之介とコンビを組んで和室を広いLDKにリノベしたい夫と改築したくない妻、若夫婦に立ちはだかる壊せない壁とつぶせない庭など様々な家と家族の問題をリノベーションで解決していく。出てくる物件と、その家の家族の人間関係やそれぞれの思いが丁寧に描かれており、その家族にとって最適なリノベが提案されていく話はお仕事漫画でありながらもヒューマンドラマもあり、優しい雰囲気の漫画になっている。作中では様々な間取りが紹介されており、リノベーションの予定があってもなくても新居を探すようなワクワク感が楽しめるのも魅力の一つである。

『魔法のリノベ』のあらすじ・ストーリー

思い出が宿る場所

福山家が家族経営する男だらけの「まるふく工務店」は、売り上げの悪いリフォーム部に新しく真行寺小梅(しんぎょうじ こうめ)という女性営業マンを迎える。
出社初日、真行寺は長男の玄之介(げんのすけ)と、西崎宅へ向かう。7年前相続した古臭くて使いにくい家を、リノベーション(リノベ)したいという西崎。玄之介が奥様にキッチンに関する希望を聞くが「高くなければ良い」とそっけない。不思議に思いつつ奥様にキッチンのカタログを渡そうとすると、真行寺が「お菓子作りやそば打ちを趣味にする男性も増えているので、夫婦で見て欲しい」と、ご主人にカタログを差し出した。部屋にそば打ちの本があったことや、ご主人には手荒れがあるが奥様の手は綺麗だったことなどから、家事をしているのはご主人の方だろうと当たりをつけていたようだ。
後日再び西崎家を訪ねた真行寺たちは、奥様から「まるふく工務店を選ぶメリットがない」と告げられ、入れ替わりに真行寺の元勤め先の大手会社の営業マンがやってくる。その男の顔を見た真行寺の表情で、玄之介は彼と真行寺の関係を察する。
帰社後、設計担当の三男、竜之介(たつのすけ)を加えてプランを練り直す3人。玄之介は家への不満を口にするご主人と、それをニコリともせず聞いていた奥様のことを思い出す。登記簿謄本を調べると、西崎家は奥様のご両親が建てた物件だと分かった。もう一度、今度は現在使われている柱などを残すプランを提案する。思い出の詰まった場所を残せるプランに奥様は喜び、まるふく工務店に依頼を決定。両親との思い出の場所を残すことができた西崎は、新たな生活の一歩を踏み出した。

壊せない壁とつぶせない庭

今回の依頼主の加藤は、家の真ん中にある庭を潰して広いLDKにしたいという。最初に依頼した別の業者に「できない」と断られ、まるふく工務店に相談したようだ。断られた理由は、建物の素材が2×4(ツーバイフォー)な為、壁を大幅に無くすと建築物の強度を低下させてしまう可能性があるからだ。しかし玄之介はリノベできると言い切ってしまう。会社に戻った2人は早速竜之介に相談する。加藤から預かった住宅購入時の書類を確認した竜之介は「この家は建蔽率いっぱいまで使って建てられている為、これ以上の増築はできない」と言った。
真行寺たちは謝罪に出向き別のプランを提案するが、奥様が溜まっていた鬱憤を爆発させてご主人を責め始め、ケンカになってしまう。
後日奥様に話を聞くと、新築を買い直す話が出ているようだった。しかし奥様は自分のワガママで余計なお金を遣うことなどが気になり素直に喜べない様子。真行寺は奥様が抱いていた家に対する希望を聞いて新しいプランを提案し、無事成約となる。

夫婦の寝室

河内邸での“相見積もり”の競合相手になったのは、真行寺が勤めていたあの会社だ。帰り道で、そのライバル会社の営業マンに声をかけられる。何でもない様子の相手とは違い、真行寺は動揺しているようだ。フェアに勝負しようと言う男に、真行寺は「そうですね久保寺さん」と返す。
久保寺と別れた後、2人は河内の奥様から近くの喫茶店に呼び出され「主人に内緒で別のプランも作って欲しい」と頼まれる。今回は寝室を大きくするという依頼だったが、奥様は寝室を別にしたいらしい。フェアに勝負しようと言われたことや昔のいざこざを思い出し、真行寺は久保寺に寝室別プランについて教えてしまう。
後日、河内から寝室別のプランの事を競合相手から聞いたと怒りの電話がかかる。最新トレンドを反映したプランを提案させてもらったのだが、配慮不足だったと謝る玄之介。次第にご主人の怒りも薄れ、寝室別のプランも見せて欲しい、これをきっかけに夫婦で本音で話し合えるかもしれないと話す。真行寺たちは、河内が今後の人生を最良の形で過ごせるようにプランを練り直す。
プレゼン当日久保寺が出したプランは、ご主人の希望通り広い寝室を作るというものだった。対して真行寺は、家の中をぐるっと一周できるような回遊動線プランを提示。コミュニケーションが取りやすく、また寝室のベットの間にスライドウォールを設置することで、個室を持つ自由と生活を共有する幸せの両方を感じられるようになっている。河内はまるふく工務店のプランを選んだ。

片付かないキッチン

今回はオープンキッチンのLDKを、キッチンとリビングに分けたいと言う佐竹からの依頼だった。家に人を呼ぶことが多いが、オープンキッチンなのでごちゃごちゃとしていて見栄えが良くないという。帰り道、またもや久保寺が現れる。再び相見積もりがバッティングしたようだ。
帰社後の打ち合わせで、真行寺は生活からリノベしてはどうかと提案する。後日奥様と細かく打ち合わせをしていると、ご主人と久保寺が現れ「全面リフォームすることに決めた」と告げる。
その夜、玄之介と息子の進之介、真行寺の三人で夕食を取っていると、玄之介の電話が鳴った。電話の相手は佐竹の奥様だった。玄之介の整頓アドバイスを気に入り、まるふく工務店なら丸ごと入れ替えなくとも、望んでいるキッチンを作ってもらえるのではと連絡してきたのだった。奥様のキッチンへの願いは、夫婦二人の今も子供が生まれてからも家族が共同作業する場所になることだった。
プレゼン当日、まるふく工務店は使う人のストレスを軽減する「ライフオーガナイズ」を基本に作成したプランを提案。収納を増やし調味料などの出しっぱなしを防ぐこと、キッチンが丸見えにならない位置にドアを付けることで奥様の希望を叶えることができる。佐竹様はまるふく工務店にリノベを依頼することにした。
仕事後、どうしても話さなくてはいけないことがあると久保寺に呼び出された真行寺。久保寺は、自分を陥れて成績を伸ばそうとしていたというデマを信じて裏切ってしまった過去を謝り、もう一度やり直したいと言ってきた。あまりの厚かましさに呆れる真行寺だった。

鬼門の家

外壁屋根塗装のリフォームをまるふく工務店に依頼していた小山田が、突然キャンセルしたいと言ってきた。真行寺と玄之介が事情を聞きに行くと、奥様は「外より内を変えるべきだということに気付いた」と言う。どうやら誰かに風水的に間取りが良くないと言われたらしい。
翌日、新しい見積書を持って話を聞きに行くと、風水に拘りだしたのは義姉から「不幸が続くのは悪い間取りのせいだ」と言われたからだと分かった。鬼門だらけの間取りを作ってしまったと責任を感じる奥様。なんとか力になりたいと思った真行寺は、トイレの移動と屋根と外壁を予算内で何とかすると言い切ってしまう。真行寺も、玄之介と過ごすことで何かが変わってきていた。そして後日、予算以内に収められそうだと報告すると、奥様は安心した様子でまるふく工務店にリノベを依頼した。
その夜真行寺と玄之介が屋台で飲んでいると、真行寺に久保寺からメールが届く。何かあったのかと返事をすると、過去に自分と三角関係で揉めた桜子という女性との結婚話を止めて欲しいと言ってきた。呆れる真行寺に、久保寺は桜子との結婚話が勝手に進んでしまっていることを相談する。真行寺が会社を辞めることになったのも、桜子が自分の良いように周りを動かしていたからだと、やっと気づいた久保寺だった。

女ばかりの家

今回は三世帯、女性4人の浅間家のリノベ。全体的に仕切っているのは長女であった。それぞれの要望を聞いてみるが、予算や優先順位の話で不穏な空気を感じ取った真行寺。案の定、予算が足りないとなった時、お金を出す長女が次女を蔑ろにして自分の意見を押し通そうとして場の空気は最悪に。長女希望の増築案は白紙となった。
真行寺たちは浅間家のみんなが笑顔になるようなリノベにする為、それぞれの生活時間帯や動きを知ろうと話を聞きに行く。そして出来上がったプランは家族全員の希望を叶え、今より暮らしやすくなるものだった。皆がリノベしてよかったと思える家をテーマにしたプランで、浅間家全員が笑顔になれたのだった。
一方、真行寺に会いに来た久保寺。今まで真行寺にしたことを謝り、桜子と別れて一からやり直すと伝えて去っていった。

減築の家

今回は二階建の家を平家にしたいという織部からの依頼。全面バリアフリー且つ無駄のない家にリノベしたいとのことだった。会社に戻ると社長と竜之介が真行寺を待っており、桜子が会社に押しかけてきていたことを告げられる。
バリアフリー化は病気のご主人が将来車いすでも生活できるようにするためのものだが、それは必要なものであって要望ではない。リノベが終わったあと後悔しない為にも、真行寺と玄之介は更に話を聞くことにした。
その夜真行寺は、どんな別れ方をしたら桜子が自分のところへ来ることになるのかと久保寺に聞く。すると、別れることに納得しない桜子に「君を選んだことは間違いだった」と言ったという。呆れを通り越し、何もかも忘れて山に登りたくなる真行寺。
後日、織部宅を再訪問した真行寺たちが会社に戻ると、桜子が真行寺を待っていた。皆の前で被害者のように振る舞う桜子に、きつく忠告する真行寺。玄之介は真行寺の心中を慮り、何とか丸く収めようと久保寺の代わりに頭を下げて謝る。

動線の悪い家

次の依頼は、築16年のメゾネットマンションに住む長谷部からの「無駄な動きの多い間取りを改善して欲しい」というものだった。長谷部宅で細かい打ち合わせをしていると母親が帰ってくる。長谷部は母親にリノベの件を秘密にしていたようだ。今後口を出してきそうな母親の登場に気を引き締める真行寺だが、後日やはり口出しがあったことを知る。母親に強く意見が言えない長谷部に、後々悔いの残らないよう然るべき時にはしっかり自分の意見をぶつけるようにと励ますが、説得はうまくいかなかったようだ。母親から「予算を増やしてでも上下階を入れ替えるように」と意見が出た。真行寺は母親向けプランと長谷川用プランの2つを用意し、どちらにするかを長谷部に選んでもらうことにした。2つのプランを比べ、これからの人生を考えた時、夫婦で暖かい家を作っていくためには母親に頼ってばかりではいけないと思った長谷部は、当初の予定通り動線を効率的に変えるプランを選んだ。受注拡大は逃したが、長谷部の笑顔に喜ぶ玄之介。しかし真行寺はちゃっかり母親の二世帯住宅のリノベのアポを取っていた。全てを丸く収めた真行寺を見た玄之介は、今までの自分は形だけ丸く収めていたということに気付き、自分のリノベは真行寺に出会ったことかもしれないと口に出す。

風見鶏のある家

今回は、現在の2LDKから秘密基地のような仕掛けのある部屋を増やしたいという依頼だ。面白そうな物件に惹かれた竜之介は、真行寺と玄之介と共に松田家に向かう。風見鶏のあるおしゃれな家は、まさに独身男の夢の要塞のようだ。増築を希望しているご主人に、竜之介はスキップフロアを提案をする。個性的な間取りを喜んだご主人は、自身のブログについ相続出来てラッキーだと書いてしまい炎上。奥様の怒りを買い、売却も視野に入れることになった。これを聞いた真行寺は家のことを最終決断しているであろう奥様に話を聞くことにした。奥様が納得できるようなプランを考えておくので、物件に気持ちが残っているなら連絡するようにと言って別れる。玄之介は、故人との繋がりが感じられれば、家に対する思いも違ってくるのではないかと真行寺に相談する。玄之介と真行寺は、登記簿や飾ってあった写真から繋がりを探し出し、後日松田にプランの説明をする。真行寺は故人と松田の父親との関係や建てた家から感じられる思いを交えてプレゼンし、相続に引け目を感じていたご主人に故人の思いを引き継いでいくことを喜べるようにしたのだった。

おとうさんの家

今回の依頼は鎌田からの防犯リフォーム。泥棒に狙われやすい家を安心できる家にしたいという事だった。玄之介は窓と鍵の交換に加え、お風呂のリフォームを取り付けることに成功。しかし後日、鎌田の娘の深雪がまるふく工務店を訪れ、契約のクーリングオフを申し出る。その上、悪徳商法とまで言われ気落ちする玄之介。深雪は実家を売却し、父親と一緒に暮らせるマンションを買いたかったが父親には納得してもらえないでいたようだ。譲らない両者はクーリングオフの期限まで話し合いをすることになった。そして期限当日、真行寺と玄之介が鎌田の家に行くと、家の前に深雪と向かいの家の山田がいた。鎌田は山田に恋心に似た思いを抱いており、まだ娘のいる茨城には行きたくないようだった。事情を聞いた玄之介は、5年先までの安心を目的とした防犯と導線の改善リノベを提案する。
家を出た真行寺と玄之介は、進京不動産の営業とばったり会う。それは玄之介の二番目の奥さんと駆け落ちした福山家次男の寅之介(とらのすけ)だった。

マドリストの夢見る家

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