ブルーピリオド(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ブルーピリオド』とは、2017年より山口つばさが『月刊アフタヌーン』(講談社)にて連載している「芸術」に向き合う若者を題材にした青年漫画である。特に熱中できるものもなく、日々の生活に虚しさを覚える高校2年生の主人公が、美術の授業をきっかけに絵の世界に惹き込まれ、日本で一番高い倍率を誇る「東京藝術大学」を受験することを決める。芸術の世界の厳しさに何度打ちのめされても、諦めきれずにもがき続ける主人公と仲間達の苦悩や葛藤が描かれた青春群像劇である。

世田介に自分を否定され、それなら力でねじ伏せたいと決意する八虎。

恋ヶ窪や田島、純田と一緒に藝大の文化祭に来た八虎。そこで予備校を辞めた世田介にばったり遭遇し、一緒にまわることになる。世田介と藝大生の作品について話すうちに、作品を肯定的に捉える八虎と、肩透かしだったと否定的な世田介の価値観の差がどんどん開いて行く。

そして、ついに世田介は八虎に「美術じゃなくてもよかったくせに」と言う。世田介にとって八虎は、なんでもそつなくこなすことが出来る「なんでも持っている人」と見えていた。そんな世田介の一言に八虎は完全にキレてしまう。側から見たら、人当たりもよくなんでも持っているように見える八虎も、今は美術に全てを賭けている。八虎にとっても今は美術しか無いのだった。そして、この悔しさから八虎の思考が完全に吹っ切れる。そこに受験絵画について悶々と悩んでいた八虎の姿はなく、自分の絵で周りをひれ伏せさせるという強い意志を持つようになっていた。

自分の絵の発見

行き詰まった八虎に打開策を提案する佐伯先生。

夏期講習も終わった11月、ここからクラスをして少人数制の指導に切り替わる。八虎と悠とマキは3人ともDクラスに振り分けられる。どこか個性的なメンバーが集められたDクラスの担任は、これまでと同じ大葉先生である。受験も佳境に差し掛かりつつある11月に、大葉先生が八虎たちに求めたのは対応力。今まで何かしらものを見て描いてきた八虎は、初めてモチーフがない課題を渡され困惑する。

試行錯誤を重ねるも、もともと真面目な八虎は悠のような自由は発想を得られないでいた。面白くしようとすればするほど、肩に力が入ってしまう八虎。そんな八虎にまたも佐伯先生が手を差し伸べる。それは、八虎が美大を目指すきっかけとなった森先輩のF100号の大作を八虎も作ってみないかと言う提案だった。

受験のための絵しか考えられなくなっていた八虎に、初心を思い出させる佐伯先生。

煮詰まった八虎に佐伯先生は「最近受験以外の絵を描いていないでしょう」と問いかける。そして、技術を身につけ上手くなることと、良い作品を作ることは別物だと言う。しかし、受験までの期間が短くなり焦りを覚える八虎は、受験対策以外のことをしている余裕はないとこの提案を断り、再び予備校の課題に向き合い始める。今まで身につけた技術で対応しようとする八虎の目に入ったのは、マキが描いた油画。人を飲み込むほどのエネルギーを持ったその絵を見て、技術力ではない根本的な問題なのだと八虎も気がつき、佐伯先生に再び会いに行く。

F100号の絵を描くことを決めた八虎は、失敗したくないと思ってしまう。それを見抜いた佐伯先生は、八虎が初めて描いた早朝の渋谷の話をする。そして、美術は文字じゃない言語であり、美術に失敗はないのだということを八虎に思い出させる。そして、自分の伝えたいことを具体するべく思考を深めていく。

尊敬している森先輩の絵を見て、自分の絵に必要なことに気づく八虎。

いまいち思考を具現化しきれずに悩む八虎は、早朝の美術室でユカに会う。八虎は、どこか思い悩んでいる様子のユカに連れられ、武蔵野美術大学(ムサビ)の森先輩の元を訪れる事になる。ユカが途中で行かないと言い出し結局1人で訪れることになった八虎は、誰もいない作業部屋で森先輩の新たな作品を目にする。森先輩の高校生の時とは異なる作風に八虎は疑問を覚える。しかし、そこには高校生の時と変わらない、先輩が伝えたい「祈り」という思いが込められていた。ただ伝える手段が変わっていただけなのであった。

F100号の大作を完成させる八虎。

森先輩の作品を見て、技術はただの手段であり言いたいことは別物なのだと理解した八虎はさっそく自分の作品に向き合い始め、ついにF100号の大作を完成させる。そして、佐伯先生に感動すると言わせたのだった。

過去の絵に縛られる

自分の絵を否定され、失意に暮れる八虎。

自分の作品に対する向き合いかたを掴み始めた八虎は、どんどん調子をあげていく。そして、受験前最後となる予備校内のコンクールが開かれる。自分でも調子が良いことがわかっている八虎は、その結果を楽しみにしていた。しかし、結果は下から3番目。大葉先生からはF100号の作品の焼き回しだと言われ、このままじゃ受からないと宣言されてしまう。

調子を上げている自覚があったからこそ、評価の低さに衝撃を受ける八虎。悩んで、努力して、試行錯誤して、そうしてやっと見つけた1つの答えですらすぐに鮮度が落ちてしまう。常に新しいものを求められるその厳しさに八虎は打ちひしがれる。それと同時に、過去のアイデアを無意識のうちにコピーしようとしていた自分の甘さに気づく。そんな、自己否定の真っ只中にいる八虎に、父親は無条件の信頼をおく。お前は大丈夫だというその言葉で、八虎は再び前を向き始める。

潰れた友人を見て自らの精神を保つ桑名マキ。

1月になり迎えたセンター試験。学科が終わり、絵に専念し始める八虎たちには重苦しい空気が漂っていた。そんな中、1次試験へ向けた対策が本格化して行く。1日中絵を描き、否が応でも順位を意識させられるその雰囲気に追い詰められる人が出始める。そんな中で、過去の合格者の作品をライバルとして比較し始める八虎に、大葉先生は比較のしすぎは危険だと言う。一位の絵ではなく、自分にとって最高の絵を目指す必要を説かれた八虎はさらに作業時間を増やしていく。

一方マキは、現役で藝大に主席として合格した姉と自分を比較し続け苦しんでいた。自分よりも追い込まれている人を見ることで、自分の正気を保とうとするマキ。しかし、その本当のライバルは姉ではなく自分だということを大葉先生は見抜いていた。追い込まれ、一人また一人と脱落して行くなか、1次試験は1週間後に迫る。

自分の悩みを恋ヶ窪に打ち明ける八虎。

1次試験まで残り数日となったある日、八虎は高校の友人である恋ヶ窪に悩みを打ち明ける。そこで、真面目で自由な発想が足りないと言われ続けていた八虎は、それが恐怖心からきていることに気が付く。そして、恋ヶ窪は恐怖への対処法を助言する。これにより、八虎は課題に迎合していた今までの考えから、課題を自分のものにすると言う思考へ変化させることが出来る。

藝大受験

藝大の1次試験で八虎が描いた絵。

いよいよ1次試験当日。八虎と同じ藝大の1次試験を受験していたユカは、試験開始のチャイムと同時に席を立って出て行ってしまう。いっぽう八虎は、自画像という課題に向き合っていた。自分をどのように捉えているのかを問われ、八虎は不良と優等生という自身の二面性について描こうとする。しかし、これを目立つ構図に落とし込む作業に苦戦する。そんな時、八虎の前で作業していた受験生(三木きねみ)の不注意により、八虎は自画像を描くための鏡を壊されてしまう。

想定外の出来事に動揺する八虎だが、割れた鏡から二面性ではなく、多面性というさらに複雑な自分の性格を見出す。この発想から構成を決めることができた八虎は、ここから今まで習得した全ての技術を持ってこの絵を仕上げていく。そして、絵を描き始めた頃の藝大に受かりたいという感情と、その後苦悩の末に浮かび上がってきた全員を力でねじ伏せたいという感情、そして最後の最後に友人の助言により手に入れた描くことを楽しむという感情。これらの、これまで築いてきた全ての感情を同時に解き放つことができた八虎は、1次試験の課題を描き切ることができたのだった。

八虎はユカを助けようとするが、いつも正しい場所にいる人には分からないと跳ね除けられてしまう。

1次試験の3日後に行われた合格発表で、油画の現役生は八虎、悠、マキの3人が1次試験を通過する。2次試験を5日後に控え、休む間もなく2次試験へ向けた対策が始まる。そして、色の使い方を上達させようと努力する八虎の前に、1次試験に落ちたユカが現れ美大に行くことは辞めたと告げられる。

八虎を美術の世界に導いたユカの辞めるという発言に動揺しながらも、八虎は本人の選択を尊重しようとする。しかし、ユカが1次試験で教室を出て行ったことを知り、八虎はユカに電話をかける。そして、正しい場所にいる人に話せることはないと一蹴されてしまう。予備校での2次試験対策中も悶々としている八虎に、悠は溺れた時の苦しさは溺れた人にしか分からない、その人と話すためには八虎も飛び込まなければならないと助言する。そんな中行われたのは、互いのスケッチブックを評価し合うという授業。そこで、マキと八虎は自分にとって普通だと思っていたことが自身の個性になっていることを知る。他人に評価してもらうことで客観視の重要性を知った八虎は、ユカがこれまでに描いた作品を見る。日本画専攻のはずなのに、日本画ではなく他の作品にユカの個性を感じた八虎は、ユカが日本画を選択したことに疑問を持つ。そして、ユカと同じところへ飛び込む決心をする。

自分の裸体を描いている八虎とユカ。

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