レプリカズ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『レプリカズ』とは、2018年にアメリカで製作されたSFスリラー映画である。『トランスフォーマー』シリーズのロレンツォ・ディ・ボナベンチュラら製作スタッフが集結し、洗練されたタッチで近未来の世界を演出した。主演のキアヌ・リーブスは主人公の天才科学者を熱演するだけでなく、製作にも名を連ねている。不慮の事故で家族を失った科学者ウィリアムが、自身が研究する神経科学を用いて家族を取り戻そうと奔走する姿を描く。近未来の科学技術を描くSF要素と、家族愛がテーマとなった重厚な作品である。

『レプリカズ』の概要

『レプリカズ』とは、2018年にアメリカで製作されたSFスリラー映画である。日本では2019年5月17日に公開された。監督は『デイ・アフター・トゥモロー』の脚本を務めた、新進気鋭のクリエイターであるジェフリー・ナックマノフだ。また、本作品の脚本には『エンド・オブ・キングダム』のチャド・セント・ジョンが起用され、物語に厚みを加えた。そして『マトリックス』シリーズ、『ジョン・ウィック』シリーズのキアヌ・リーヴスが主人公を務め、苦悩する天才科学者を熱演した。彼は製作指揮にも名を連ねている。その科学者の妻役にはイギリスの女優アリス・イヴが抜擢され、前半と後半で微妙に変化していく難しい役柄を見事に演じ切った。

製作を担当するのは『トランスフォーマー』『RED』を手掛けたロレンツォ・ディ・ボナベンチュラら一流のスタッフだ。先進テクノロジーやアンドロイド、クローン合成の様子などを美しく洗練されたタッチで描く。培ってきた巧みなカメラワークと、CG技術は本作でも健在である。
また、本作の音楽は作曲家ホセ・"ペペ"・オヘダと、遠隔操作での戦闘を描いた『アイ・イン・ザ・スカイ』の音楽を手掛けたマーク・キリアンが担当した。オーケストラにエレクトロニクスをミックスしたハイブリッドな編曲内容となっており、どこか南米の民族音楽を思わせるような調べも特徴的だ。エンドロールではRick Garcia & Liela Avilaによる「I Will Live Forever」が主題歌として流れる。

天才科学者ウィリアム・フォスター(演:キアヌ・リーヴス)は超人的なひらめきと才能に恵まれ、最先端の神経科学の分野の第一人者である。妻のモナ(演:アリス・イヴ)と3人の子供に恵まれ、幸せな家庭を築いていた。友人であり同僚のエド・ホイットル(演:トーマス・ミドルディッチ)と共に、人間の記憶や意識をコンピュータに転移させるという研究を行っている。度重なる実験を繰り返し、その途方もないプロジェクトは成功目前にまで迫っていた。だがそこへ悲劇が起きる。思いもよらぬ突然の事故により、ウィリアムは家族4人全てを失ってしまうのだ。そして彼は、科学者として越えてはならない倫理を犯すことを決める。それは家族の複製(レプリカ)を作り出し、クローンとして甦らせるという奇想天外な計画だった。遺体から意識と記憶を抽出し、それを移した脳を持つクローンを作り出すというのだ。そして苦難の末、この前代未聞の偉業をウィリアムは成し遂げてしまう。だがその成功の過程には、常人では考えられないような悲しい決断が待っていた。

近未来のクローン技術と神経科学を題材としつつ、科学者としての倫理感や家族への愛がテーマとして横たわる。主人公は家族を取り戻すべく苦悩し、葛藤するが、やがて暴走して行く。近未来SFの世界観を扱うスリラー映画でありながら、家族愛や倫理など重厚なテーマも抱えた作品となっている。

『レプリカズ』のあらすじ・ストーリー

天才科学者と最先端の神経科学

脳のデータを操作可能なヘッドギアを装着するウィリアム

プエルトリコのバイオ医療系企業、バイオナイン産業はある研究プロジェクトを行っていた。神経科学者のウィリアム・フォスター(演:キアヌ・リーヴス)は、その研究所に雇われ、その驚くべき最先端の実験を行っている。それは人間の意識をデータ化して、合成されたボディ(アンドロイド)に転移(インプリント)させるというものだった。ウィリアムはこの困難な実験に、同僚であり友人でもあるエド・ホイットル(演:トーマス・ミドルディッチ)らと共に挑んでいた。

実験はすでに最終段階に差し掛かっていた。研究所に実験対象のドナーが到着する。死亡して24時間以内の兵士である。その遺体から意識や記憶などの神経情報を抽出し、合成された脳へと移し替える実験だ。人間の脳、あるいは心を複製(レプリカ)する途方もないプロジェクトである。世界を揺るがすこの試みは成功目前であった。

抽出した神経情報はコンピュータの記憶装置へ保存される。そしてデータ化され、脳の内部をマッピングすることが可能となる。そしてそのデータ化された合成脳を見られるヘッドギアを装着することで、ウィリアムはそのデータを操作することも出来てしまうのだ。適正に配置しなおし、安定させる。いわば刷り込みの作業(インプリント)だ。無事にインプリントは終わったが、アンドロイドを起動すると、それはいきなり暴走を始めてしまう。兵士の自我が自らを認識できず、混乱した為だ。アンドロイドは狂乱状態に陥り、ウィリアムはシャットダウンするほか無かった。実験はその成功を目の前にして、失敗に終わる。

このアンドロイドの胸に刻印された「345」の数字。ウィリアムらは無感情にそれを345番と呼ぶ。この数字が単なる名称なのか、345体目のアンドロイドなのかは分からない。だが、このプロジェクトにはこれまで膨大な資金と長い年月が投入されてきたのは確かだ。研究プロジェクトの責任者ジョーンズ(演:ジョン・オーティス)は、ウィリアムにいよいよ最後通告を突き付ける。これ以上の失敗は許されないのだ。次の実験で成功しないと、この研究は打ち切られる可能性があるとの示唆であった。

家族を救うため、倫理を捨てる

出典: www.pepe0325.work

ウィリアムを襲う悲劇

失意のウィリアムは帰宅する。そこには美しく理知的な妻のモナ(演:アリス・イヴ)と共に築いた幸せな家庭があった。3人の子供達の顔も見える。長女のソフィ(演: エミリー・アリン・リンド)、長男のマット(演: エムジェイ・アンソニー)、末っ娘のゾーイ(演:アリア・リーブ)だ。特にゾーイは大はしゃぎの様子である。この日、フォスター家では家族旅行を計画していたのだ。これまでウィリアムは家族との時間を犠牲にして研究に没頭してきた。照れくさそうにしているが、マットとソフィも父親と過ごせることを心から喜んでいる。久々に取れた週末の休暇であった。

実は以前から、妻のモナはウィリアムの実験に反対していた。優秀な外科医でもあるモナは、一度死んだ命を無理やり呼び戻すような研究は道徳的に、そして自然の摂理にも反していると言う。ともあれ、楽しみにしていた休暇である。一家はウィリアムの運転する車で家族旅行へと出発した。

ところが日没が迫る頃になると、急激に天候が悪化してしまう。激しい暴風雨が一家の乗る車を襲ったのだ。横殴りの突風とぬかるんだ道路に車は翻弄される。そして雨により視界が悪い中、さらにアクシデントが重なる。突然、倒れた木の一部がフロントガラスを突き破り、モナは重傷を負って気を失ってしまう。それを見て動転したウィリアムは、ハンドル操作を誤った。車は木立の中へ突っ込み、脇に流れていた暗い川へ転落する。その衝撃で彼は気絶してしまった。
しばらくして気が付いたが、3人の子供達とモナはすでに息をしていなかった。ウィリアムは車中から家族を運び出し、無残に変わり果てたその姿に絶望する。その時、悲嘆に暮れるウィリアムの脳裏をある考えがよぎった。「まだ死んでいない」とウィリアムはつぶやき、覚悟を決めたように立ち上がる。家族を救う方法がたった一つあることに気付いたのだ。
ウィリアムはすぐさまエドに連絡を取った。不審がるエドに対し、協力するよう説得する。彼の協力無しに家族は取り戻せないのだ。エドに研究機材を持って来てもらい、ウィリアムはモナと子供達の遺体から、神経情報を抽出した。エドは葛藤し、反対していたが最後には協力に同意する。親友のウィリアムに心から同情したのもそうだが、エドにとってモナと子供達は家族も同然であったからだ。必要な準備を済ませると、すぐに2人は研究所に向かった。
エドはクローン技術の専門家である。ウィリアムはクローン合成に必要な装置の扱い方と注意事項をエドから手早く教わった。その後、家族のDNAを採取し終えると、ウィリアム同様に悲しむエドに遺体の処理を頼む。とても自分の手で処分など出来そうも無かったのだ。そしてウィリアムはデータ化され、記憶装置に保存された家族と共に自宅へと戻るのであった。

悲しい決断

ウィリアムが手にしている機械が脳の記憶装置である

ウィリアムの自宅の地下室には広いスペースがあり、これまで物置として使用していた。そこへエドが密かに研究所から運び出した機材を設置する。人体を合成するための材料も研究所から全て持ち出して来た。発覚すれば全てを失う、危険な綱渡りであった。だが、どうしてもクローン用のポッドが3つしか用意できない。研究所に今ある資材には限界があったのだ。つまり家族は4人いるのにも関わらず、3体のクローン合成しか出来ないことになる。つまりウィリアムは家族の誰かひとりを選び、この世界から消してしまうという、残酷極まりない決断を下さねばならないのだ。

時間は限られていた。嘆き悲しみ、ウィリアムは苦悩する。そして小さなメモに家族の名前を記し、悲壮な思いでクジ引きを行ったのだ。引かれたクジの紙に書かれていたのは、幼い末娘の名前であるゾーイの文字であった。

その間もエドによって準備は進められていた。朝までかかり、ようやくクローン合成の全ての作業が完了した。出来上がったクローンに神経情報をインプリントすれば家族は取り戻せるだろう。だがもうひとつ、ウィリアムには悲しい作業が残っていた。モナとソフィ、マットの記憶からゾーイの思い出を全て消し去らねばならない。

最初からゾーイが存在しない事にしなければ、彼らが生きていることにも齟齬が生じてしまうからだ。例えばゾーイだけが死んだ事にするなら、なぜ死んだのかの説明が必要だ。そして、どうしてその記憶が自分たちに無いのかという疑問も起きるだろう。ゾーイを甦らせられないのなら、それは避けては通れない作業だった。

父親にとって、これほどまでに残酷で悲しい作業があるだろうか。全てを終え、ウィリアムは嗚咽するのだった。

家族を取り戻す

出典: film-tales.com

ポッド内部のモナ。この後クローンとして甦る

エドによるとクローン合成には17日の期間が必要だという。研究所を欠勤し、ウィリアムは自宅で家族を取り戻す作業に没頭していた。だが、肺炎だと研究所に偽るのにも限界があった。エドから連絡を受け、ウィリアムは急ぎ出勤する。滞っている業務をなんとかこなし、自宅に戻ると学校の教師が来ていた。そろって無断欠席をしている子供達を不審がり、どうしたのかと指摘される。クローンの合成に傾倒するあまり、家族周辺へのアリバイにまで手が回らなかったのだ。「もう隠し通せない」と言って恐れるエドとウィリアムは口論となるが、彼をどうにか説得して落ち着かせる。その後、慌てて全員のスマートフォンやパソコンを使い、ウィリアムはアリバイ工作を実行したのだった。

それだけではなかった。意識のインプリント技術がまだ未完成であったのだ。その研究についても連日頭を悩ませていたウィリアムだったが、解決策は一向に見出せない。クローンの方は順調に育ち、ポッドの中を泳ぎ回っている。だがインプリント技術が完成しなければ、前回の実験と同じ結果となる可能性は十分にあった。そしてさらに問題が持ち上がる。
合成を開始して17日が経過した。エドがやって来て指摘する。「すぐにポッドから出さないとクローンの身体に様々な不調が起こる。ポッドの中ではとても成長が早いから、これ以上留め置くのは危険極まりない」行為なのだと。ウィリアムはインプリントの問題が片付くまでの措置として、ポッドから出したクローンに麻酔薬を打つことを決める。昏睡状態にして栄養剤を点滴しながら、ベッドで眠らせておくことにしたのだ。

安全面を考慮すると、昏睡にできても3日が限界である。幸いなことにクローンは完璧な出来で、唯一の光明であった。昏睡状態で眠る家族には、エドが栄養剤を投与して世話をする。その間ウィリアムはクローンの状態を確認しつつアリバイを作り、実験の記録を幾度となくチェックしていた。だが解決策はいまだ見出せずにいた。

絶望に打ちのめされ、諦めかけたその時である。触れるとモナが反応することをウィリアムは発見する。いかに脳が空虚なクローンであっても、触れた相手の存在を感じられるのだ。これまでの実験では、インプリントする合成脳をアンドロイドに埋め込んでいた。失敗の原因は人工的なボディを人間の意識が認識できず、拒絶した為であったのだ。このひらめきにより、ウィリアムは希望を見出す。すぐさまモナの神経情報を、クローンの脳にインプリントすることにした。

試みは大成功であった。目覚めたクローンは以前と変わらないモナそのものだった。ウィリアムとエドは抱き合って成功を喜ぶ。すぐにクローンのモナを落ち着かせ、再び眠らせた。次に目覚めた時に家の中が以前と同様でなければならない。エドを見送り、地下室と家中の片づけをするウィリアムであったが、同時にゾーイのアルバムの写真やゾーイの着ていた服、大事にしていたぬいぐるみまで処分しなければならなかった。大切な思い出ではあったが、家族の為には全て消してしまわねばならなかったのだ。

真実を知らされるモナ

ウィリアムに真実を告げられたモナ

家族のクローンへのインプリントは滞りなく終わった。翌朝目覚めたウィリアムが見たものは、以前と変わらぬ家族の姿であった。記憶や思考、動作に何も問題はない。ウィリアムは密かに歓喜する。そこへ、エドから知らせが入る。間もなくドナーが実験室に届くと言うのだ。もう失敗は許されない。次の実験に成功しないと予算が打ち切られ、研究は終わる可能性があった。それと同時に、クローンを作るために持ち出した機材や材料の横領が発覚してしまう恐れもある。そうなれば、エドもウィリアムもきっと逮捕されてしまう。

家族のことも心配だが、まずは実験を成功させなければならない。だが同じことをしていては再び失敗を繰り返すのは明らかだ。引くに引けないウィリアムは、あるアイデアを思い付く。ドナーが汚染されていると虚偽の報告をし、わざと実験を中止させる。そして、機材を手にトイレへ向かい、ウィリアムは自らの神経情報を抽出したのだ。凄まじい痛みに襲われ、ウィリアムは苦悶する。だが自分をアンドロイドへとインプリントできれば、実験は必ず成功すると確信していた。なぜなら、自分のコピーなのだから研究を最も理解している。アンドロイドの身体にも違和感を覚えず、定着するはずだと。

このひらめきをエドに伝えたうえで協力を求め、インプリントの準備を頼んでおいた。

ウィリアムが帰宅すると、何らかの異変を感じて不安そうにするモナがいた。どこか脳裏の片隅に、事故の事や消したはずの記憶がフラッシュバックとして甦っているようなのだ。勘の鋭いモナは、いったい何があったのかと夫に詰め寄る。これ以上隠すのも忍びない。ウィリアムは真実を明かすことにした。そして、モナだけでなく子供達もがクローンであることを告げる。その事実にショックを受けるが、賢明な妻であるモナは夫の深い悲しみを理解するのだった。

そんなある日の夜、長女のソフィが自室の片隅に見慣れない文字を見つける。「ゾーイって誰?」と言って、彼女は家族の前で訝しげな表情を浮かべた。それは末娘のゾーイがイタズラで書き残した自分の名前だった。ウィリアムの隠ぺい工作に見落としがあったのだ。答えに窮し、ウィリアムはどうしていいか分からなかった。するとそこへ訪れたのは研究所の責任者であるジョーンズだった。彼はどういうわけか、ウィリアムが成し遂げた計画を全て知っていた。ジョーンズはウィリアムを脅迫する。「世間にこのことが露見すれば、科学者としてのお前のキャリアは終わるだろう。インプリントに必要なアルゴリズム(アンドロイドに定着させる為のデータ)を渡せ」と。しかも「クローンは研究所のものだ」と言い、家族3人の返却までも口にしたのだ。

実は、バイオナイン産業はウィリアムの研究を、初めから軍事に転用することを考えていた。ジョーンズという名前ですら偽りである。せせら笑うかのようにジョーンズは秘密を明かし、資金もあり力もある組織であることを暗に匂わせ協力を迫るのだ。
ウィリアムは大人しく従うふりをしながら、隙を突いてジョーンズを殴り気絶させた。そしてアルゴリズムが保存された記憶装置を電子レンジで破壊してしまったのだ。家族にはゾーイが存在したことを明かし、逃亡するしかないと説得。モナとふたりの子供たちはウィリアムと共に逃げることを決断する。

「研究成果」を狙う組織

出典: www.pepe0325.work

組織のエージェントがウィリアムの家族を狙う

逃亡の準備が整い、一家は車に乗り込む。だがウィリアムは思い立ち、モナたちを待たせてひとりで引き返す。そして、ゾーイの記憶装置を携え戻ってきた。家族は全員、一緒に居なければならない。たとえ意識データのみだとしても、ゾーイがこの世界に存在した証は今やこの記憶装置だけなのだ。誰も言葉にしなかったが、モナや兄妹も同じ思いであった。

再び車の運転席に座ると、ウィリアムはエドの船のことを口にする。家族旅行で借りるはずだったものだ。まずはその船が停泊する港を目指し、フォスター家は全員揃って逃走を開始する。
だが、どう逃げても組織のエージェントはすぐに現れ迫ってくる。研究所での実験動物には、自動的に追跡装置が脊柱に埋め込まれる仕様だったのだ。子供たちはウィリアムが口にしたその事実に怯え、訳が分からず混乱する。だがモナは理解した。自分たちもこれまでの実験動物と同様に追跡装置の埋め込まれた、組織にとっては単なる研究成果であると。
追跡装置は当然、簡単に外せるものではない。モナの機転で彼女が働く病院の処置室に向かう。そして医療用の高圧電流を流し、その追跡装置を破壊した。これで追手から逃れられると思ったが、ウィリアムが逃走用の船を準備する間、家族から離れた隙にエージェントが家族みんなを連れ去ってしまった。

ウィリアムは仕方なく、急ぎ研究所へと向かう。

研究室に着くと、そこにはジョーンズ、捕まったウィリアムの家族、そしてなぜかエドが待っていた。エドはモナや子供達の遺体を処分した際、ジョーンズに見つかり全てを白状していた。そして脅迫され、心ならずも協力させられていたのだ。ウィリアムが家族をクローンとして甦らせた事や、逃走用の船の場所をジョーンズに伝えたのも彼だった。ウィリアムは友人であるエドの苦衷を理解し、彼を許した。だがジョーンズは「もうお前に用は無い」と言い、容赦なくエドを撃ち殺す。そして間髪を入れずモナにまで銃口を向けたのだ。

アンドロイド345番

ウィリアムの意識を持つアンドロイド

ウィリアムはジョーンズの脅迫に従い、その言う通りにする。つまり、アンドロイドにインプリントを定着させる事である。すでにウィリアムは、家族のクローンに対してインプリントを成功させており、彼の頭の中にはそのアルゴリズム(定着させる為のデータ)が残っていたのだ。しかしそれは見せかけであった。ウィリアムが実行したのは、ジョーンズや組織が求めていた成果では無かった。合成ボディのアンドロイド345番へインプリントしたのは、自らのコピーである神経情報だったのだ。危険な賭けであったが、見事に成功する。インプリントは定着し、無敵の合成ボディを持つもう1人のウィリアムが誕生したのだ。345が追手のエージェントを防ぐ間、ウィリアムは家族を救い出す。そしてふと、あるひらめきが頭によぎる。家族の安全を確認すると、1人研究室へと戻る。「パパはどうしたの?」と不安そうに子供達が言うと、モナは「忘れ物があるのよ」とつぶやいた。

研究室では自らのコピー、345がジョーンズを倒していた。息も絶え絶えのジョーンズにウィリアムと345は言う。「この研究を利用したビジネスで大富豪になる気は無いか?家族の命の保証と、もう追わないことを約束するなら第二の人生を与えてやろう」と、取引を持ち掛けたのだ。ジョーンズはウィリアムの提案を了承した。つまり、もう命の尽きるジョーンズから意識を抽出し、クローンとして甦らせたうえで協力させるという計画だ。「また会おうウィリアム」と、言い残しジョーンズは死んだ。そしてウィリアムはゾーイの記憶装置を取り戻す。ここに引き返したのは家族の安全を確保する事と、奪われていたゾーイの為だったのだ。

そしてその手はずと隠ぺい工作は、ウィリアムの分身345に委ねればよかった。能力も考え方も、その天才的ひらめきもウィリアムと共有するアンドロイドである。安心して後の事を任せ、ウィリアムは家族の元に戻った。

その後、場面は美しい砂浜に変わる。晴れ渡る青空と、真っ直ぐな水平線が続く。モナそしてソフィとマットの姿がそこにあった。眩しそうなモナの視線の先、ウィリアムが歩いている。そしてその傍らには末っ娘ゾーイの笑顔があった。モナを見つけ、うれしそうにゾーイが駆け出す。フォスター家にとって、それはまるで夢のような光景であった。ウィリアムは自分の分身345と共に、ゾーイのクローンを作り出していたのだ。再び家族を取り戻し、研究からも解放され、ウィリアムは幸せな暮らしを手にしたのであった。

そして、もう一人のウィリアムである345の姿はアラブ首長国連邦にあった。超高層ビルの中に秘密研究所を構え、ジョーンズと組んで世界の富豪相手のビジネスを行っていた。それはクローン製作を請け負い大金を稼ぐという、前代未聞の独占的ビジネスだった。
「ウィリアム、出番だぞ」と、ジョーンズが呼びかけると345は振り返る。そして「神経インプリメント起動、バイオプロトコルを開始する」と、傍らに控えた技術者に命令した。それは、モナたち家族のクローンにインプリントした際、ウィリアムが口にしたのと全く同じセリフであった。

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