嘘解きレトリック(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『嘘解きレトリック』とは2012年から都戸利津が『別冊花とゆめ』で連載していたミステリー漫画であり、現在は完結している。物語は日本、昭和初年から始まる。「人の嘘が聞き分けられる」少女・浦部鹿乃子と、貧乏探偵・祝左右馬が様々な謎を解いていく。左右馬と鹿乃子が中心のレトロモダン路地裏探偵活劇。

馨は、父の知人の娘で笛沢 咲子(ふえさわ さきこ)と結婚が決まったことを左右馬と鹿乃子に告げた。馨は「今朝、官舎に『この婚姻は呪われている、不幸になりたくなければ破棄されたし』という脅迫文が届いた」と良い、左右馬に助けを求める。左右馬はその後、馨の後をつける怪しい女性を見つけ、その女性こそが笛沢咲子であることが判明した。左右馬は咲子には他に一緒になりたい人がいると推理し、変な噂を流し馨に断らせるのはやめて咲子自身が縁談に断りを入れればいいと伝える。しかし咲子の両親は家柄の良い馨の家との結婚を非常に喜んでおり嫌だと言えなかったと泣いた。
左右馬は「どうするかは自分で決めるように」と咲子に言ってその場を去るが、そのとき左右馬と鹿乃子は馨が川に入っているところを目撃する。橋の上でふらついていた青年が川に落ち、飾り職人だという青年が作った洋髪飾りを川で探していたのだと馨は言う。左右馬と鹿乃子はその髪飾りが咲子がつけていたものと同じだと気付く。青年には身分違いの恋人がおり、その恋人は家柄の良い他の男と結婚をさせられることになったのだという。その恋人と出会ったきっかけである髪飾りを作り、青年は自分の心を押しとどめ憔悴していたところ川に落ち馨に助けられ、病院に搬送された。左右馬はそこで、その青年の恋人は笛沢咲子と伝える。馨は次の日左右馬と鹿乃子の元を訪れ、婚約を解消したと告げる。馨と別れた帰り、鹿乃子は左右馬と一年近く一緒にいるのに左右馬の母や父など左右馬自身のことを何も知らないと気づく。

たの湯殺人事件

ある日、左右馬宛に差出人不明の手紙が届き、その手紙の内容に従って左右馬は田打町(たうちちょう)の旅館「たの湯」一人で向かった。左右馬は旅館で手紙の差出人を一日中まったが、結局誰も現れなかった。手紙には、以前左右馬達が解決した実原久の事件の手掛かりである鶴の背守りの絵が描かれていたため、左右馬は実原邸を尋ねた。左右馬は久と皐月に話を聞くが、二人ともそのような手紙は出していないという。
実原邸から探偵事務所に帰ると、左右馬は馨を始めとした警察官に囲まれる。左右馬が昨日宿泊した旅館「たの湯」の桔梗の間で他殺体が発見され、左右馬にも犯行の疑いがかけられているという。鹿乃子は、実原邸で史郎と名乗っていた青年の助けを借りて左右馬の無実を証明しようとする。青年はたの湯では関内 要(せきうち かなめ)と名乗っており、鹿乃子と要は協力して事件発生当時の左右馬のアリバイを証明する。アリバイが分かって釈放された左右馬が「要こそが左右馬を呼び出した張本人だ」と言うと、要は「手紙を書いたことを認めるが、何が起こるかまでは知らなかった」と話す。要は、今回の件を企てたのは集山(たかやま)という男だという。そして集山が恨んでいるのは左右馬の異母兄である篤嗣(あつし)で今回の事件は篤嗣が自分の身代わりに左右馬を使って起こしたことだったという。

佐伯澄子暗殺事件

左右馬と鹿乃子は九十九夜町に戻ってくると、また探偵事務所の仕事に取り組んだ。左右馬は、日々頑張る鹿乃子を見て、自分も篤嗣のところへ話をしに向かう決意をする。

和泉河伯爵(いずみかわはくしゃく)の別邸についてお茶屋で聞く男性がいた。彼は実原邸で史郎と名乗っていた青年で、今回お茶屋ではハナサキカオルと名乗っていた。
その頃、左右馬と鹿乃子は左右馬の兄である篤嗣に会いに行くため汽車に乗っていた。左右馬の実家につくとそこには豪邸があり、表札には佐伯(さえき)と書かれていた。佐伯家の使用人伝いに「会う必要がない、理由もない」と面会を拒絶された鹿乃子と左右馬は、篤嗣が怒って何かしてくるまでしつこく粘ることに決めた。その後、左右馬と鹿乃子は佐伯篤嗣の妻であり橘(たちばな)侯爵の一人娘でもある佐伯 澄子(さえき すみこ)とコンタクトを取るが、そこに一人の青年が現れ「澄子に話がある」と言う。青年は四日前に澄子に酔ったところを介抱してもらい、澄子に好意を抱いていることを告白し去っていった。その話を聞いていた鹿乃子は、今の告白がすべて嘘であると左右馬に話す。
左右馬と鹿乃子が青年に接触を図ると、青年は「お前もあの女に頼まれたのか」とふたりに尋ねた。左右馬が話を合わせていると、青年はある女から澄子と駆け落ちをしろと依頼されたと言う。青年と別れた左右馬が、澄子に青年の話を打ち明けると、澄子は左右馬の話を信じると言った。
左右馬と鹿乃子が佐伯邸を去る直前、澄子は「篤嗣にも誰にも知られず今回の件の首謀者の女性を見つけることは可能か」と問う。左右馬は篤嗣と縁談があった女性全員に会うことができるなら可能だと答える。澄子は明後日篤嗣と共に招かれている園遊会に女性たち全員出席するため、それに左右馬と鹿乃子も来てほしいと言う。
園遊会当日、左右馬は技師の格好で鹿乃子は澄子の遠縁として潜入していた。園遊会の最中に起きた殺人未遂事件を解決した左右馬と鹿乃子は、犯人を逮捕した報酬として、徳田史郎と名乗る人物についての情報を篤嗣から貰い、帰りの汽車に乗り込んだ。
九十九夜町に戻ってきた左右馬と鹿乃子は、篤嗣からもらった徳田史郎を名乗る青年の資料を見ていた。
「たの湯」で起こる事件の二週間前、篤嗣の前に青年は寺原光太郎(てらはら こうたろう)と名乗って現れていたという。篤嗣から得た情報では何もわからずに困っていると、青木 麗子(あおき れいこ)と名乗る一人の女性が探偵事務所を訪ねてきた。鹿乃子は、麗子が話す生い立ちもここに来た理由もすべて嘘だと気付く。左右馬は、麗子が捨てた新聞のページには麗子が知られたくない情報が載っていたと推理し、鹿乃子と一緒に図書館に向かう。図書館で無くなった新聞のページを探すと「蘭子へ 心配している連絡乞う 鈴乃」という尋ね人の欄があった。
左右馬と鹿乃子は尋ね人を出していた槇原 鈴乃(まきはら すずの)の家に出向き、鈴乃とその婚約者である鈴村 柾(すずむら まさき)から話を伺う。鈴乃は左右馬に蘭子(らんこ)を探してほしいと依頼する。蘭子が十日前に急に姿を消した理由は、一月前に鈴乃と柾の結婚が決まったことだという。探偵事務所に帰ってきた左右馬は麗子に本名が明石蘭子(あかし らんこ)だと分かったこと、鈴乃が泣いていたことを蘭子に伝える。蘭子は「鈴乃の幸せを心から祝えない醜い自分で鈴乃の傍にいたくないからだ」と、家出の理由を話した。左右馬は蘭子に「嘘をついて鈴乃の傍にいてもいいのではないか」と話し、「蘭子が嘘をついたのは鈴乃の幸せを願えないからだけではなくて、それでも願いたいからじゃないか」と続ける。それを聞いた蘭子は、鈴乃の傍に戻ることを決意する。

鹿乃子誘拐事件

ある日。探偵事務所に馨の姉の雅が訪ねてきて、「たの湯」での事件後に左右馬と鹿乃子が話していた人物について教えてほしいと二人に聞く。左右馬は、嘘が聞こえる能力以外の事の顛末を伝え、篤嗣からもらった関内要の写真を雅に渡す。雅と別れた後、くら田でご飯を食べている左右馬と鹿乃子の元に馨がやってきて「関内要を知っているか」とふたりに尋ねた。左右馬は、雅にしたのと同じ説明を馨にした後、なぜそんなことを聞くのかと問う。馨によると、「たの湯」の事件について調べなおしていた田内署(たうちしょ)の刑事が「たの湯」に宿泊していた関内要が偽物であることを発見し事件に深く関わっていた左右馬と鹿乃子の話ももう一度聞きたいため近々田内署に来てほしいという。
その後、田内署に向かう汽車の中で、左右馬は嘘が聞こえる力がなくなることを不安がっている鹿乃子に気づいていた。左右馬が「力がなくても探偵事務所を追い出したりしないと」鹿乃子に伝えると、鹿乃子は「力が使えなくなったとしても一緒にいてくれるのはなぜか」と聞く。その問いに「鹿乃子と同じ理由だよと」と左右馬が答えると、鹿乃子は自分が少しでも左右馬にとって特別な存在であるならうれしいと思う。
乗り換えのため一度汽車を降りた二人は人込みを進む。左右馬が鹿乃子に話しかけようと後ろを向くと、そこに鹿乃子の姿はなかった。左右馬は鹿乃子を攫ったのが関内要を名乗る人物だと気付いた。その頃、関内要を名乗る人物(以下、史郎と表記)に攫われた鹿乃子は二人で汽車に乗っていた。史郎は鹿乃子に自分の幼少期を語り始める。もともと捨て子だった史郎は、自分の力を必要として傍にいることを許してくれた詐欺師の武上(たけがみ)に協力していた。一方、左右馬は雅に鹿乃子が連れ去られたことを電話で告げると、雅は左右馬に「詐欺師の武上 喜三次(たけがみ きそうじ)が去年服役を終えて出所している」と伝える。
武上の元を訪れた史郎は「僕が分かりますか?」と聞くが、武上は「知らない」と嘘をつく。次に史郎は、九年前自分に死んでほしかったのかと武上に聞くが、武上は「知らない」と答える。鹿乃子は史郎に「耳に聞こえる嘘か本当かだけが真実じゃない、ちゃんとその人の心を見つめないと自分の答えは出ない」と訴えかける。

九十九夜町の住人のこれから

史郎は左右馬と鹿乃子に「これから警察に行きこれまでの自分の人生を全て話す」と伝えた。その後、事務所まで帰る途中で鹿乃子は「自分が左右馬と一緒にいたいのは隣にいられるのが幸せだからだと」と左右馬に話すと、左右馬は「自分が鹿乃子の隣にいるのも同じ理由だ」と話した。はじめに鹿乃子を見た左右馬は、鹿乃子が面倒を避け生きていきたいのに人と関わりたがる自分と同じだと気付く。そして左右馬は鹿乃子を探偵助手へと誘ったのだった。
後日、左右馬と鹿乃子は探偵事務所に訪ねてきた雅から、出所しても身元を引き受ける人がいなかった史郎が無事に実原邸に引き取られる予定だと聞く。カフェローズの女給のリリーと貫二は結婚し、澄子は篤嗣との子供を授かり、千代と耕吉は新天地に向かうため船旅をするなど、それぞれの人物のいろんなことが変わった。鹿乃子と左右馬は、今日も二人で町の事件を解決するのだった。

『嘘解きレトリック』の登場人物・キャラクター

主要人物

浦部 鹿乃子(うらべ かのこ)

本作の主人公で、「嘘が聞こえる」能力を持つ少女。昭和初年に生まれ育った村を出て、九十九夜町にたどり着いたところを左右馬に探偵助手としてスカウトされる。第五巻にて史郎に自分の能力を見破られ、葛藤や不安に悩まされるが左右馬と過ごし事件を解決していくことで自分に自信を持つようになる。

祝 左右馬(いわい そうま)

九十九夜町にて祝左右馬探偵事務所を営む探偵。面倒ごとを避ける性質なため、殆ど依頼が来ず貧乏暮らしをしている。「嘘が聞こえる」という鹿乃子の能力を買い探偵助手として雇う。幼少期は芸妓の母の死後、父の実家である佐伯家に引き取られる。本妻の息子である生真面目な性格の篤嗣とは折り合いが良くない。中学で出会った馨とは探偵になっても交流がある。

徳田 史郎(とくだ しろう)

久の孫探しの際名乗り出た青年。実際は久の孫ではなく更に徳田史郎という名前も偽名であった。鹿乃子の嘘が聞こえる能力を見破り、第九巻では鹿乃子を誘拐する。自身も嘘が聞こえる能力があったが、ある時聞こえなくなってしまう。捨て子であった史郎は幼少期に武上に拾われ霊能者として人々の嘘を聞いていたが、嘘が聞こえなくなり武上が警察に捕まってからは他人になりすまし生きてきた。鹿乃子を武上の元に連れていき過去の真実を聞こうとするが武上からは答えを貰うことができなかった。崖下に落ちそうになったところを左右馬ろ鹿乃子に助けられて警察に自首することを決める。出所後は実原家に引き取られることとなった。関内 要(せきうち かなめ)、翡翠様(ひすいさま)、春吉(はるきち)などの名前を名乗っていた。

九十九夜町の人物

端崎 馨(はなさき かおる)

九十九夜町にて警察をしている。非常に実直な性格で嘘をつくことができない。その素直な性格から左右馬に信頼されている。中学時代、左右馬に警察官に向いているといわれ警察官になった。

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