SAINT LAURENT/サンローラン(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『SAINT LAURENT/サンローラン』とは、20世紀の「モードの帝王」と呼ばれるフランスのファッションデザイナー、「イヴ・サン=ローラン」の栄光と転落の約10年間を描いた伝記映画作品である。“フランスのアカデミー賞”と呼ばれるセザール賞では、最多10部門をノミネートしている。また日本では、本作品にむけて日本のモデル「栗原類」がヌードを披露したことで話題を呼んだ。「イヴ・サン=ローラン」の10年間にはなにがあったのか?イヴの成功の裏側にある、苦悩や愛人などの真相に迫った作品となっている。

『SAINT LAURENT/サンローラン』の概要

『SAINT LAURENT/サンローラン』とは、20世紀の「モードの帝王」と呼ばれるフランスのファッションデザイナー、「イヴ・サン=ローラン」の栄光と転落の約10年間を描いた伝記映画作品である。“フランスのアカデミー賞”と呼ばれるセザール賞では、最多10部門をノミネートしている。また、第87回アカデミー賞外国語映画賞のフランス代表作品に選出された作品だ。
監督のベルトラン・ボネロは2001年にジャン=ピエール・レオを映画監督役に起用した『ポルノグラフ』が、第54回カンヌ国際映画祭の国際批評家週間部門に出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞している。その後2008年、マチュー・アマルリックが主演の映画『戦争について』では、第25回マイアミ映画祭のカッティング・エッジ・コンペティション部門でグランプリを受賞と、これまでも多くの賞を受賞している。
本作品で主役の「イヴ・サン=ローラン」を演じたギャスパー・ウリエルは、2001年に『ジェヴォーダンの獣』で映画デビューを果たす。早くも2004年公開の『ロング・エンゲージメント』ではセザール賞有望若手男優賞を受賞した、今後注目されている若手俳優だ。そしてイヴ・サン=ローランに影響を与えた「ルル・ドゥ・ラ・ファレーズ」を演じたレア・セドゥは2008年、『美しいひと』で第34回セザール賞の有望新人女優賞にノミネートされると、翌年にはクエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』への出演でハリウッドに進出。また2014年、『アデル、ブルーは熱い色』と『Grand Central』での演技で、第19回リュミエール賞の最優秀女優賞を受賞している実力派女優だ。
始まりは1967年のフランス、パリ。その頃すでに革命的なコレクションをいくつも生み出していたイヴだったが、連日衣装の依頼が入り、忙しい毎日に追われていた。イヴは重圧に耐え忍び、精神安定剤を服用しながらデザイン画に向き合う日々を送る。そんな繊細なイヴを支えるのは公私共にパートナーであるピエール・ベルジェだった。
イヴのコレクションは大成功を収めたが、次に発表したオートクチュールが物議を醸す結果となり売り上げは低迷した。イヴのアイデアも尽き果ててしまい、限界に達してしまうのだった。そんな時不道徳な魅力を持つジャック・ド・バシェールと出会い、イヴは次第に彼に惹かれていった。ジャックに引きずりこまれたイヴは自分を見失い、デザイン画も手につかなくなってしまう。そして1976年。イヴはついに人前から姿を消してしまうのだった。
「モードの帝王」と呼ばれるフランスのファッションデザイナー、「イヴ・サン=ローラン」。彼の10年間にはなにが隠されているのか、誰も知らなかった衝撃の真相に迫っていく。

『SAINT LAURENT/サンローラン』のあらすじ・ストーリー

ミューズ、ベティとの出会い

衣装の状態をチェックするイヴ・サン=ローラン(右)の姿。

1967年。ファッションデザイナーのイヴは忙しい毎日に追われていた。イヴのアイデアはいつも独創的で、時代の最先端にあった。その革命的な才能によりコレクションを次々と発表し、日々衣装製作の依頼が入った。新作のデザイン製作が控えている中、同時進行で全ての依頼に応えなくてはならない。とにかく毎日が目まぐるしいものだった。
またイヴを支えるアトリエのスタッフも同様に、衣装製作に追われていた。スタッフの中でも戦力であるジャン=ピエール氏も焦りを見せる。縫い付けが上手くいかず涙を流す物もいれば、「魔術師じゃないんだから」と期日に見合わない依頼の多さに愚痴をこぼす者もいた。
アトリエの責任者であるマダム・ムニョスがデザイン画に取り組むイヴに次の依頼予定を伝える。急かすようなマダム・ムニョスの口調にイヴは耐えながら、平静を装うのだった。
イヴの唯一の休息の場はナイトクラブだ。イヴの公私のパートナーであるピエール・ベルジェの監視の目をくぐり抜けては、友達を連れて毎夜ナイトクラブへと繰り出す日々。ある日の夜、イヴはナイトクラブで当時「シャネル」のモデルをしていたベティ・カトルーと出会う。黒いスーツスタイルで踊る彼女を見たイヴは興味を抱いた。スーツを着たベティは非常に美しく、中性的な魅力があった。それはまさに、イヴが思い描いていた「女性が男性の服を着る」というインスピレーションをかきたてるものだったのだ。ナイトクラブに流れる音楽に合わせて踊るベティに、イヴは臆することなく声をかけた。恥ずかしがりやで引っ込み思案のイヴからは、普段なら考えられない行動だ。その日からイヴとベティは仲を深め、生涯心の友となる。

次なるミューズ、ルルとの出会い

正面からこちらを見ている女性がルル・ドゥ・ラファレーズ。奥にいるのがイヴ・サン=ローランだ。

イヴは1968年以降もファッション界を賑わせた。当時流行りだった「モンドリアン・スタイル」を取り入れた「モンドリアン・ルック」の成功に続き、「マニッシュ・ルック」、「少女ルック」など数々の作品を生み出すイヴの創造力は止まらなかった。このようにして60年代後半は快調に進んでいたのだった。同年、アメリカの画家である「アンディ・ウォーホル」からコレクションをたたえる手紙を受け取る。しかしどの言葉もイヴの心を動かすことはできなかった。イヴにとってはコレクションもデザインも過ぎ去っていくものであり、新しい刺激を求めていたのだった。
ある夜イヴはいつものようにナイトクラブへ出かけると、そこには貴族の娘であるルル・ドゥ・ラファレーズの姿があった。ルルはフランスで最も高貴な家柄のひとつであるアラン・ドゥ・ラファレーズ伯爵と、パリのモデル、マキシム・バーリーの娘だ。母親の美しさを受け継いだ容姿はベティと同様に、中性的な魅力を感じさせた。またルルが身に着けている衣装は今までにないスタイルで、イヴの関心を強く引きつけたのだった。後にルルは、ベティに続きイヴの絶対的なパートナーになり、アトリエでの仕事を手伝うようになる。
その後イヴとピエール、ベティ、ルルを含めた数名の人間が、サンローランの下着部門を担当している、デザイナーのサンチェス宅に集まった。そこにはオランダ系の女優「タリタ・ゲティ」もいた。イヴはタリタの魅力的な容姿に、「君は美しい」と恍惚の表情で声をかける。
タリタの美しさに感動しながらも、「パリは醜くなった」とイヴは話した。パリでは何も見つけられなくなったと嘆き、新しいものを見つけたいという思いを馳せていた。

デザインの転換と、転落

イヴの「解放コレクション」を見守るベティ(左)とルル(右)。

イヴは「イヴ・サンローラン」の代表的なファッションから、毛皮のコートなどを取入れた40年代風のデザインへ転換を始めた。常に現代的なファッションを展開させてきた「イヴ・サンローラン」にはなかった試みである。こうしてイヴは次の春夏コレクションで、40年代風のドレスを取入れたデザインを発表することに決めたのだった。
1971年。「解放コレクション」と題された春夏コレクションでは、イヴのモデルたちが毛皮のドレスをまとってランウェイを歩いている。しかしイヴの思いとは裏腹に、観衆の反応は悪かった。イヴが新しく展開させた40年代風のオートクチュールは後に物議を醸す結果となってしまった。酷評を受けたイヴは荒れ、イヴを支えてきたパートナーのピエールに当たり散らすのだった。
ある日、「イヴ・サンローラン」の顧客の1人であるドゥーザー夫人が、以前から依頼していたオートクチュールの受け取りに来店した。仕上がったスーツを試着したドゥーザー夫人は、角張った肩と野暮ったい見た目に困惑する。イヴがデザインしたスーツは「メンズライク」で、通常の女性用スーツを想像していたドゥーザー夫人は「女性用のスーツを頼んだつもりだった」とイヴに言う。予想外の言葉に難色を示したイヴだったが、ドゥーザー夫人に、ヘアゴムをとり髪の毛をかき上げるように提案した。そして使用していたベルトを違うものに変えるように、店のスタッフに指示したのだ。
イヴの指示によって変身したドゥーザー夫人は、別人だった。ドゥーザー夫人は、野暮ったい見た目から「かっこいい女性」に変身した鏡の中の自分を見て、「なんて素敵なの!」と喜んだのだった。

売り上げの低迷

ナイトクラブに毎夜くりだすルル(左)とイヴ(真ん中)とベティ(右)。

「イヴ・サンローラン」が低迷し始めたさなか、イヴは自身のヌードを世間に発表した。男性用香水の広告としてヌードを起用するというイヴの考えは、世間を煽るようなものだった。反逆的なイヴの行動にピエールは窮した。
1972年。「イヴ・サンローラン」のオートクチュールの売り上げが伸び悩み、業績不振に陥り始める。この頃から規制製品を安価で作るデザイナーが現れていたのもあり、株主との関係まで脅かされていた。ピエールは取引先との会議に出席した。取引先はコレクションの開催を年に1回にすることや、オートクチュールとプレタポルテを合体させようと新たな規制を提唱するが、ピエールはどうにか免れる。また、イヴに対するドラッグや過労などの噂が広がっていることを追求する取引先に対して、ピエールは「いたって健康だよ」と主張したのだった。しかし「イヴ・サンローラン」の栄光を取り戻したいと意気込むピエールの思いは虚しく、結果として会議は難航した。

ジャックとの出会い

ナイトクラブでイヴを見つめるジャック。

スランプに陥ったイヴは、日々の重圧から抜け出すために大量の精神安定剤の服用するようになる。窮地に追いやられたイヴは友人のベティとルルを連れて、逃げ出すかのようにナイトクラブへ繰り出した。
1973年のある夜、イヴはナイトクラブで「シャネル」や「フェンディ」のデザイナーである「カール・ラガーフェルド」の恋人、ジャック・ド・バシャールと運命的な出会いを果たす。ナイトクラブのソファに座るイヴを見つけたジャックは、熱い視線を送っていた。イヴもその視線に応えるように、ジャックを見つめ返した。美しい容姿と不道徳な魅力をまとったジャックの姿が、イヴの脳裏に焼きついて離れなかった。この夜を機に2人は急接近したのだった。
ジャックは容姿だけでなく、肉体的にも魅力のある男だった。2人の距離が近づくにつれてイヴはすっかりジャックの虜になり、快楽の世界へと足を踏み入れてしまう。
ジャックの部屋には多くの男たちが出入りした。そこでは乱交が行われ、大量のドラッグをムード作りの材料にしていた。ジャックの世界に引きずり込まれ、イヴは身も心も捧げてしまう。ジャックへの愛は深まる一方で、またそんなイヴをジャックは受け入れるのだった。
そしてイヴは、遂にジャックとの同居のために家を購入する。ジャックと出会ってから、イヴの心の中にはジャックの存在しかなかった。次のコレクションや「イヴ・サンローラン」の評判などは、どうでもいいものになっていた。

最愛の愛犬ムジークの死と、ジャックの消失

逢瀬を重ねるイヴとジャック。

ジャックと出会ってから変化していくイヴの姿に気づいたのはピエールだった。ピエールは「奴にのめり込むな」とイヴに忠告する。しかしピエールの声が届くことはなく、イヴは日を追うごとに姿を変えていった。ジャックとのセックスとドラッグに溺れていったのだった。
この頃からイヴはドラッグによる幻覚を見るようになった。イヴは自分の足元でうごめく、白い蛇を眺めた。確実にイヴの体はドラッグに蝕まれていったのだが、その後もジャックとの逢瀬を重ねることはやめられなかった。
ある日イヴは、過剰なドラッグ摂取によって酩酊するジャックの目の前で倒れてしまう。そして一緒にいたイヴの愛犬ムジークが、床に散らばったドラッグを間違って食べてしまうアクシデントも起きた。イヴが気づいた時にはムジークは死んでおり、イヴは悲しみに暮れてしまう。悲しむ姿を見かねたピエールは、ムジークの代わりを探し始める。ルルを含めたアトリエのスタッフに愛犬と同じ犬種である「フレンチ・ブルドッグ」を集めさせる毎日が続いた。
この事件に憤慨したピエールは、ジャックに姿を消すように命じる。ジャックはとうとうイヴの前から姿を消したのだった。
同年に、「イヴ・サンローラン」が発表した「オピウム」というドラッグの名前を用いた香水がまたしても物議を醸してしまう。取引先であるアメリカは医薬品会社の名を掲げていたため、「反ドラッグの国であるからドラッグの名前を使用した商品は認められない」とピエールに訴えた。しかしピエールは発表の取りやめを申し出る取引先に対して、強気な姿勢を見せる。ピエールは険しい表情を浮かべる取引先の男に対して、「反ドラッグであろうと、『イヴ・サンローラン』と取引している以上は『オピウム』を展開する」と反論したのである。目の前の悲しみに明け暮れるイヴの裏側では、苦境を乗り越えようとするピエールが勇んでいた。

錯乱

ショーの中止を訴えるイヴと話すピエール。

ジャックが自分の前から姿を消したことを知ったイヴは深く傷ついた。愛犬ムジークの死に次いでジャックが消失したのだ。イヴはアトリエのスタッフを使ってジャックへ手紙を送るも、当然ながら返事は1通もこなかった。その頃、売り上げの低迷から姿を見せなくなったイヴの姿に、世間では「自殺」という言葉が触れ回っていた。
1974年のある日、イヴはホテルの一室から電話をかけた。相手はイヴの行方を追う記者だった。なんとイヴは過去に何があったのか、その真相を語ろうとしていたのだ。突然のカミングアウトに記者たちの間ではイヴの話題で持ち切りになる。しかしそれに気づいたピエールは、記者へ掲載しないように圧力をかけたのだった。
その後もイヴの状態は悪化し、命の危険に関わるような突発的な行動をとるようになった。ピエールはその度に肝を冷やす思いだったが、愛しいイヴの元を去ることはしなかった。
1975年。ショーを目前に控えてもなおイヴは1枚もデザインが描けなかった。アトリエの一室で机に向かうイヴに、ピエールは心配そうな表情を浮かべている。「まだ1点もデザインができていない」と急かすピエールに、「分かってる」とイヴは言葉数少なく答えた。イヴは「無意味なことだと思わないか」とショーの中止を求めるが、もちろんピエールが取り合うことはなかった。
そしてイヴはとうとう限界を迎えたのだった。

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