愛の渦(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『愛の渦』(映画)とは劇団「ポツドール」の主宰者であり劇作家として活躍中の三浦大輔が監督を務めた、セックスが題材の成人向け映画作品である。戯曲『愛の渦』は岸田國士戯曲賞受賞。待望の映画化に注目が集まった。舞台はとあるアパートの一室。そこはセックスを目的に集まった男女が乱交パーティーを行う裏風俗だ。集まったのはニートや女子大生、保育士にサラリーマンと見ず知らずの男女10名。肉欲に溺れる男女と交錯する人間模様を浮き上がらせた、セックスがテーマの映画となっている。

『愛の渦』の概要

向かって左から工員(演:駒木根隆介)、常連(演:赤沢ムック)、フリーター(演:新井浩文)、女子大生(演:門脇麦)、ОL(演:三津谷葉子)、ニート(演:池松壮亮)、サラリーマン(演:滝藤賢一)、保育士(演:中村映里子)

『愛の渦』とは劇団「ポツドール」の主宰者三浦大輔が監督を務めた、セックスが題材の成人向け映画作品である。三浦大輔が初めて原作・監督・脚本を務めた最初の作品だ。原作『愛の渦』の戯曲は、第50回岸田國士戯曲賞を受賞している。企画を立ち上げて映画化に至るまで2年の歳月が費やされた大作であり、待望の映画化として注目を集めた。この映画は冒頭と末尾以外アパートの一室で撮影が行われており、バスタオル1枚で物語が進む。シチュエーションが変化することなく、濡れ場と会話でストーリーが展開される。インパクトの強い実力派役者たちの自然な演出が光る作品だ。またニートと女子大生の濡れ場を撮った、独特なカメラワークにも注目したい。
主人公のニート役を演じた池松壮亮は(『海を感じる時』『大人ドロップ』『紙の月』ほかと合わせて)第88回キネマ旬報ベスト・テンで助演男優賞を受賞した。また、第38回日本アカデミー賞・新人俳優賞(『紙の月』『ぼくたちの家族』と合わせて)も受賞している。またヒロインの女子大学生役を演じた門脇麦も第88回キネマ旬報ベスト・テンで新人女優賞 (『シャンティ デイズ 365日、幸せな呼吸』『闇金ウシジマくんPart2』と合わせて)を受賞している。
男女のセックスがテーマであるこの作品の舞台は、都内某所のとあるアパートの一室、「秘密クラブ・ガンダーラ」
そこはセックスを目的に集まった男女が乱交パーティーを行う、いわば裏風俗だ。最初の参加者は8人。男性陣はニート・サラリーマン・フリーター・工員。女性陣は女子大生・常連・保育士・ОLで構成されている。後にカップルの男女が加入し10人になる。プレイ前は見ず知らずのバスタオル姿の相手を前に、ぎこちない雰囲気の男女。しかしセックスの回数を重ねるにつれて開放的になり、それぞれが内に秘めていた欲望が露わになっていく。本作品の主人公であるニートは、親にもらったお金で乱交パーティーに参加。最初の相手に選んだ女子大生とのセックスで、次第に行為を抱いていく。またニートの愛撫によって、秘めていた肉欲がむき出しになる女子大生。うつむきがちだった最初の姿を忘れさせるほど、豹変した姿を見せるのだった。体を重ねることで生まれる感情。それは「性欲」なのか、「愛」なのか。ニートを演じる池松壮亮と女子大生を演じる門脇麦が織りなす静かで荒々しいセックスは、まさに「愛の渦」である。

『愛の渦』のあらすじ・ストーリー

出会い

乱交パーティー会場のエレベーターで出会うニートとサラリーマン

舞台は都内某所で男がお金を引き出すシーンから始まる。ATMでなけなしの2万円をおろした男は、疼く股間を握った。寒空の中男が携帯でどこかへ電話をかけ、プルルルルとコールが2回なったあと、「あの、着きましたよ」と唐突に会話が始まった。「つきあたりにマンションがあるから、そこの301ね」電話の相手が案内したところは、とあるアパートだった。
会場に向かうまでのエレベーターでサラリーマン風の男と乗り合わせる。相手の男が3階のボタンを押したところを見て、自分と同じ階であることに気づく。羞恥心から同じ階で降りることを恐れ、4階のボタンを押したのだった。
エレベーターは4階まで上がったが、階段を使って男は下へ降りた。階段で3階へ降りたところに扉があり、インターホンを押すと中からチンピラ風の若い男が現れた。中へ入りおろしたばかりの2万円を渡すと、若い男は受け取ったお金を乱暴にズボンのポケットへとしまったのだった。男に案内されて階段を降りると、そこには見ず知らずの男女が複数いた。慣れた感じで相手を一瞥する女と気恥ずかしそうに視線を泳がせる女。それに好奇の目でこちらを見る男。そして部屋の扉から現れたのは、エレベーターで乗り合わせたサラリーマン風の男だった。みんなどこか浮足立った雰囲気を醸し出していた。それもそのはず、ここは乱交パーティーの舞台。「秘密クラブ・ガンダーラ」だ。

乱交パーティーへの参加に戸惑う女子大生

事務所で乱交パーティーの説明を聞いて困惑する女子大生

一方、レディースコミックに掲載されていた広告を見て参加を申し込んだ女子大生。扉の向こうにある事務所のような一室で硬い表情をした女子大生に、店長の男は淡々と説明を始めた。乱交パーティーのルールを聞いて戸惑う女子大生。「気に入らない人がいたら断ってもいいんですか?」と尋ねると男は「いいですよ」と答えた。その返事に安堵の表情を見せた女子大生だったが、「だけど拒み続けてたら、何のためにここに来たのって話になっちゃいますよ」と言われ、再び表情が硬くなる。「ここはセックスをしたくてしたくてしょうがない人たちが集まるところなんです。それなのに何もしないっていうのは、おかしいですよね」と煙草の煙を吐き出した。ここはネットで“乱交パーティー”と検索しないと出てこない店なのだ。そのことを男に指摘された女子大生はうろたえてしまう。答えを出せないままの客を前に店長の男は参加をやめるように伝えるが、女子大生はとうとう参加を決意するのだった。

乱交パーティーの幕開け

OLに耳打ちをするフリーター

シャワーを浴びて行為に備えたバスタオル姿の男女の前に店長の男が現れ、その横にチンピラ風の店員が立っていた。店長はルール説明を始めた。自らの股間の前でコンドームの装着の仕方をジェスチャーで説明した後、「最後に男性の方。女性の嫌がることはやめてもらって、女性の意思を尊重してエッチしてください」と伝える。その言葉に男性陣は静かに頷く。誰もが静かにその話を聞いていたが、カウンター席に座る痩せすぎの女だけが親し気に店員に話しかけていた。
店長と店員が去った後、男女は緊張で黙り込んだ。気まずさに耐えきれず笑い出すフリーター。それを機にOLが向かいに座る保育士に声をかけた。OLは今日が初めての利用なのかと尋ねる。保育士は今日が2回目であることを話すと、痩せすぎの女は週5で通っているという話だった。店員に親し気に話しかけていた痩せすぎの女は、常連客というわけだ。
話題はダイエットの話に切り替わり、女たちはお互いをほめ合い、乱交パーティーの舞台に合わない会話がただダラダラと流れていた。流れを変えようとフリーターが保育士の会話に割って入るが、女はそれを振り切ってしまう。2回目のスルーでフリーターは黙ってしまい、首をかしげている姿がOLの目にとまり思わず笑う。フリーターの男もそれにつられて笑った。
目の前で永遠とダイエットの話を繰り広げる保育士をよそにフリーターとOLは2人だけの会話を始め、いい雰囲気になっていく。その様子を気にする保育士の元へ、ここぞとばかりにサラリーマンの男が近寄った。「なんか緊張しますよね」と声をかけるサラリーマンだったが、またもや保育士の女はスルー。空振りのサラリーマンは所定の位置に戻るのだった。会話が盛り上がるフリーターとOL。フリーターが女に何か耳打ちをすると、2人は立ち上がった。「先に下の部屋へ行ってもいいですか?」と気恥ずかしそうに言うOL。「この前の時は、男の人たちで話し合って決めてましたけど」と保育士が冷たく言い放つと、2人はベッドの置いてある部屋へ移動するのだった。

オープンになっていくサラリーマンと保育士

ベッドへ向かうサラリーマン(真ん中)と保育士(右)を凝視する常連(左)

次に動き出したはサラリーマンの男だった。先ほどまで保育士の横に常連が座っていたのだが、常連はカウンターに現れた店員の元へ駆けよった。ソファに1人取り残された保育士。そこへサラリーマンが声をかけ、男と女の短いやり取りが始まった。会話が弾みだした頃、サラリーマンは保育士の近くへ行こうと立ち上がったが、その瞬間、腰に巻いていたバスタオルがずり落ちてしまう。それを見た保育士は思わず噴き出した。その場に柔らかい空気が流れる。安堵したサラリーマンは保育士の横へ行き、軽快に会話を始めるのだった。しかし肝心なことを言えずにいるサラリーマン。保育士は早くセックスをしたい思いだったが、はやる気持ちを抑えながらサラリーマンからの誘いを待っていた。
部屋中に男女の喘ぎ声が響き渡る中サラリーマンから誘いの声はかからず、とうとう痺れを切らした保育士は、自らベッドの部屋へ「行こう」と声をかけたのだった。ベッドの部屋へ向かい透けた黒いカーテンを手ですくいあげると、中には激しいセックスを繰り広げる男女とそれを見つめる常連の姿があった。常連はカーテンをくぐって新たに入ってきたサラリーマンと保育士を見て、へぇーともいわんばかりの顔をする。気まずい様子で前を通る2人を一瞥した後、常連はベッドの部屋を出た。
サラリーマンと保育士が姿を消すと、次に動き出したのは巨体の工員だった。カウンターの椅子に腰をかけてお菓子を食べている常連におずおずと近づくと、「あの、下に行きませんか?」と声をかけた。常連の女は「あー」と言って工員を見つめると工員は困惑した様子で「え、だめ?」と尋ねる。常連はあっさり「いいよ」と返事をすると、トイレへ頻繁に行っていた工員に対して先にシャワーを浴びるよう催促するのだった。

動き出すニート

行為を始める前のニートと女子大生

一方で取り残されたニートと女子大生は、未だに沈黙を続けていた。かたくなに顔を上げようとしない2人。部屋にはすでに複数の男女の声が激しく響き渡っている。長い沈黙を続けていた2人だったが、ついにニートの男が動き出した。ニートがゆっくりと近づくと、気配を感じてうつむく顔を上げた女子大生。男女の視線がぶつかる。「初めての方ですか」とニートが声をかけると、女子大生は「あ、はい」とは小さく返事をした。ニートと女子大生のたどたどしい会話が始まる。ニートがゆっくりと近寄り女子大生の目の前で足をとめた瞬間、ニートは勢いよくソファに押し倒されてしまう。焦った様子で行為を始めようとする女子大生に必死で抵抗するニート。その様子を見つめる常連の姿に気づいたニートは「下へ行きませんか」と声をかける。女子大生も常連の視線に気づき、静かに頷いた。ソファをゆっくり立ち上がると、女子大生は意を決したようにニートの腕を強くつかんだ。
黒いカーテンをくぐると、そこには行為を終えた男女の姿があった。白いベッドに向かいあうニートと女子大生。女子大生は眼鏡をはずすし、「よろしくお願いします」と頭を下げた。それに答えるようにニートも頭を下げ「じゃあ、失礼します」とぎこちない動きで距離を縮めた。なれない様子で女子大生を押し倒すも、頭がベッドから落ちてしまう。ニートが「もうちょいこっちです」と蚊の鳴くような声でくリードし、お互いに位置を調節しながら体制を整えた。ゆっくりと近づきニートが女子大生の乳房を触ると、女子大生は静かに声を漏らした。
その頃シャワーを浴び終わった工員は、再び常連に声をかける。煙草を吸い終わるのを待つように常連が告げた瞬間、アパートの一室に響き渡る女の喘ぎ声。その声を聞いてベッドの部屋へ向かった常連。そこで見た光景は、一心不乱に腰を振るニートと女子大生の姿だった。無我夢中でセックスをする2人の様子を見つめる6人の男女。女子大生の激しい喘ぎ声がアパートの一室に響き渡った。

下ネタで距離が近づく男女

下ネタを話し始める保育士

8人の男女が行為を終えて、始まりと同じようにバスタオルを巻いて向かい合う。再び訪れた沈黙。空気を変えようとしたサラリーマンが唐突に自己紹介を始めた。それにつられるように次々と自己紹介を始めるが、「これよかったら使ってください」と言って店員が持ってきた大人の玩具は再び空気を気まずくさせたのだった。耐えかねたOLは、「こういう場所ですし、そういう話をした方がいい感じですよね」と周囲に同意を仰ぐ。それに対して「こういう場所だからといって、そういう話ばかりするのは」と体裁を貫こうと紳士的に答えたサラリーマンだったが、それに異を唱えたのは常連の女だった。常連の女は「ここはスケベな人しかきちゃいけないんだよ」と男を一瞥する。
そこから雰囲気は一転。話の口切りを求められた看護師が「エッチな話でも、しますか」と下ネタを始めると、周囲の雰囲気は徐々に打ち解け始めるのだった。保育士がフリーターに次の相手をお願いすると、それに便乗したサラリーマンが先ほどの紳士的な態度が噓のように、ここぞとばかりにOLを誘う。会話を弾ませる男女のやり取りを見て笑顔を見せる工員に「初めてだったの?」と常連の女が会話を割って声をかけた。周囲の視線が工員に注がれると、男はためらいがちに童貞であることを自白する。そしてもう1回自分とセックスしてほしいと常連にお願いすると、女は「じゃあ、よろしくお願いします」と笑顔を見せるのだった。
和気あいあいと会話が弾む中で冴えない表情をしている女子大生に気づいた保育士。「大丈夫?」と声をかけるとOLが「もしかして引いてます?」と続けた。女子大生は静かに顔を上げると、数回瞬きをする。「正直に申しますと、自分でも変だなと思うくらい今すごく楽しいんです」と話す女子大生。そして部屋の片隅で自分と同じようにうつむいているニートに「今、楽しくないですか?」と問いかけた。ニートはその問いかけに顔を上げると、「僕もそう見えないかもしれないんですけど、楽しいです。すごく」と返事をするのだった。その姿を見た女子大生は微笑んだ。

修羅場の幕開け

女子大生とのセックスを邪魔されてバイトに文句をつけるフリーター

keeper
keeper
@keeper

Related Articles関連記事

万引き家族(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

万引き家族(英題:Shoplifters)とは、2018年に公開された日本映画である。監督は『そして父になる』などで知られる是枝裕和。主演はリリー・フランキーと安藤サクラ。 第71回カンヌ国際映画祭において最高賞のパルム・ドールを獲得するなど、国内外で高い評価を受けた。 貧困のなか、万引きによって生計を立てながら身を寄せ合う家族6人の姿を描く。

Read Article

重版出来!(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『重版出来!』とは2012年から松田奈緒子が小学館『月刊!スピリッツ』に連載中の青年漫画。週刊コミック誌『バイブス』の編集部を舞台に、主人公の漫画編集者・黒沢心が一癖も二癖もある漫画家たちや出版業界に関わる様々な業種の人々と一冊の本を生み出すため奮闘するお仕事漫画。2016年には黒木華主演でTBS系列にてドラマも放映。脚本は映画『図書館戦争』シリーズなどで知られる野木亜紀子。後に『逃げるは恥だが役に立つ』、『アンナチュラル』などのヒット作も手掛ける。

Read Article

夜のピクニック(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『夜のピクニック』とは、恩田陸の青春長編小説『夜のピクニック』を原作としたヒューマンドラマである。「みんなで夜歩く。ただそれだけなのに、どうしてこんなに特別なんだろう」をキャッチコピーにして、2006年9月30日に公開された。主人公の甲田貴子は、北高に通う高校3年生である。北高には、一昼夜かけて80㎞を歩く「歩行祭」という伝統行事があった。貴子は、高校生活最後の歩行祭で「同じクラスの西脇融と話をする」という1人だけの秘密の賭けをしていた。青春時代の輝きや、友人の大切さなどを感じる青春映画である。

Read Article

彼らが本気で編むときは、(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『彼らが本気で編むときは、』とは、家族の在り方やLGBT差別の問題について扱った、萩上直子監督のオリジナル脚本によるハートフル映画である。物語は、小学生のトモの母親が家出をしてしまうところから始まる。トモは母が帰ってくるまで面倒を見てもらおうと、叔父であるマキオの元へ向かうが、マキオは恋人であるトランスジェンダーのリンコと一緒に住んでいた。トランスジェンダーであるリンコにとまどうトモだったが、リンコの優しさやリンコを取り巻く人々との触れ合いを通して、心を開いていくストーリーとなっている。

Read Article

銀魂(実写映画)のネタバレ解説・考察まとめ

「銀魂」(実写版)は、2017年7月に公開された福田雄一監督による日本映画。空知英秋作画の漫画「銀魂」の実写化作品で、原作の長編「紅桜編」がベースです。「紅桜編」は、妖刀紅桜を利用して国の転覆を目論む鬼兵隊と、それを阻止しようとする主人公坂田銀時と仲間たちの戦いを描いたもの。原作はSF時代劇コメディです。実写版はそれを忠実に再現し、ギャグ満載、時にほろりとさせる内容になっています。

Read Article

あのこは貴族(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『あのこは貴族』とは、山内マリコの小説『あのこは貴族』を原作としたヒューマンドラマ映画である。2021年2月に公開され、「富裕層」と「庶民」の鮮やかな対比が観客からの高い支持を得る。お嬢さん育ちの華子は婚活の末に理想の男性と結婚するが、嫁ぎ先からの重圧に悩む。大学進学を機に上京したが学費が続かず中退後、就職した美紀。「他力」を享受する特権階級と「自力」が前提の一般人を隔てる見えない壁。交わらないはずの「階層」を飛び超えた2人に見えてきた新しい自分。監督は、「グッド・ストライプス」の岨手由貴子。

Read Article

目次 - Contents