orange(漫画・アニメ・映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『orange』(オレンジ)は、『別冊マーガレット』(集英社)と『月刊アクション』(双葉社)で連載された高野苺のSF恋愛ファンタジー漫画およびそれを原作としたアニメ、映画である。高校2年の始業式、高宮菜穂の元に10年後の自分から手紙が届いた。手紙には「転校生の成瀬翔を救ってほしい」と書かれていた。願いを叶えるため奮闘する菜穂と仲間達。友情と恋心が交差する中、5人は翔を救うことが出来るのだろうか。

『orange』の概要

『orange』(オレンジ)は、『別冊マーガレット』(集英社)にて2012年4月号から12月号まで連載された後に休載、その後『月刊アクション』(双葉社)に移籍し2014年2月号から2015年10月号まで不定期連載された高野苺のSF恋愛ファンタジー漫画およびそれを原作としたアニメ、映画である。番外編は2016年4月号不定期掲載が開始された。単行本は集英社から全2巻、双葉社から既刊6巻が刊行されていて、世界9か国で翻訳出版もされている。
高校2年生の春、高宮菜穂のもとに1通の手紙が届いた。差出人は10年後の自分。手紙を書いたのはどうしても叶えてほしいお願いがあるからだという。その日初めて寝坊したことも転校してきた成瀬翔のことも書かれていることに戸惑いを感じる菜穂だったが、次々に起こる手紙と現実の一致に手紙の内容を信じるようになる。「10年後の今、翔はここにはいません」「翔をささえてあげて」と書かれた手紙を胸に未来を変えようと奮闘する菜穂と仲間達。「翔を救いたい」と自分の弱さと向き合い、行動する勇気を手に入れる菜穂と母親の自殺で自分を責め続けるあまり周りと距離をとってしまう翔、そして恋と友情の間で揺れ動きながらも2人を応援する須和。物語が進むたび3人の成長する姿が見られ、応援せずにはいられない作品となっている。

『orange』のあらすじ・ストーリー

翔との出会いと菜穂の恋

16歳の春、高宮菜穂のもとに1通の手紙が届いた。差出人はなんと10年後の自分「叶えてほしいお願い」があるから手紙を書いたのだという。ここからパラレルラブストーリーが始まる。
菜穂の手紙にあった通り、東京から成瀬翔が転校してきた。席は隣。始業式が終わると、菜穂と仲の良い須和弘人、村坂あずさ、茅野貴子、萩田朔が翔を誘った。手紙には「この日だけは翔を誘わないでほしい。絶対に」と書いてあったが、なぜ誘ったらダメなのか分からない菜穂は言いだすことも出来ず、みんなで一緒に帰ることになった。あずさの家はパン屋でもらってきたパンをみんなで分け合う。菜穂はカレーパンが食べたいが、みんな食べたいからと遠慮してしまう。そんな菜穂の気持ちに気付いた翔は自分のカレーパンを差し出しメロンパンと交換した。少し照れた様子の菜穂と2人のやり取りを見つめる須和の背中が印象的である。その日は日が暮れるまでしゃべりながら帰った。家に帰った菜穂は日記をつける。手紙の存在を思い出し改めて読んでみると、今書いた日記の内容とまったく同じ。手紙が本当だと確信した菜穂は未来を知るのが怖いと手紙を遠ざけてしまう。

次の日、翔は学校を休んだ。そして、2週間来なかった。もしかしたら何か書いてあるかもと手紙を取り出す菜穂だったが、翔が休んだ理由は書いておらず代わりに球技大会で代打を断って後悔したから引き受けてほしいと書かれていた。そして、「この日、私は翔を好きになる」とも。球技大会の日、ひさしぶりに翔が学校に来た。学校に来なかったのはサボリだという翔に疑問を抱きつつも2週間前と変わらない笑顔に安心する菜穂。練習をしていないから保健係をしているという翔の隣に座ると足の痛みに気付かれる。菜穂は靴のサイズを間違われたのに言い出せず小さいサイズの靴を履いていると伝えた。手紙にあった通り5対6で負けているソフトボールの試合で菜穂は代打を頼まれた。自信がなく断ろうとした菜穂だったが、手紙を思い出し逃げずに立ち向かうことを決める。見事にホームランを打った菜穂はいつも負けてた臆病で弱い自分に勝ったと喜んだ。足の痛みが限界で保健室に向かおうとした菜穂の前に救急箱を持った翔が現れる。靴擦れした足を消毒しながら「我慢ばっかしてたら自分が損するよ」と伝える翔に「周りに迷惑かけなければ誰も気付かないし私が我慢したらそれで済むじゃん。いつもそうやってきたから」と苦笑いする菜穂。しかし、翔は「見てるよ、俺は気になる」と声をかける。周りに気を使いすぎる菜穂には「みてる」の言葉が優しく響いた。手紙に書いてあった通り、菜穂は翔を好きになった。

場面は変わって10年後の世界が描かれる。赤ちゃんを抱きながら菜穂を呼ぶ須和。10年後の世界で2人は夫婦になっていた。

上田先輩からの告白

転校早々翔は1つ年上の先輩、上田莉緒に告白される。翔は「上田先輩と付き合ってもいいと思う?」と書いた手紙を菜穂に渡し、勇気を出した菜穂は下駄箱にだめと書いた紙を入れた。しかし、告白の返事をせかされた翔は菜穂の思いを知る前に付き合うことを決めてしまう。10年後の自分の後悔をまた1つ消せなかったことにショックを受ける菜穂。手紙には「翔が呼んだら応えてあげて」と書かれていたが、上田先輩に気を使い今までのように話せなくなってしまった。しかし、このままではいけないという気持ちや須和からの応援もあり、勇気を出して話しかけると翔には笑顔が戻った。
ようやく菜穂と話せるようになった翔は上田先輩と別れることにしたと伝える。菜穂が驚いていると「菜穂が「だめ」って言ったじゃん」と話す翔。上田先輩と付き合うことを決めた後、翔は下駄箱の中の手紙を見たのだった。
会話の中で翔に好きな人がいると知った菜穂は自分の事だとは気付かずもやもやする。翔も菜穂が好きだとは伝えない。お互いの相手の事を大事に思っているものの一歩踏み出す勇気はまだないのであった。

その後、翔から別れ話を切り出された上田先輩だったが、すぐに別れたことが納得出来ないようでたびたび菜穂に絡むようになる。文化祭で翔と花火を見る約束をしている菜穂に用事を言いつけたり、菜穂が翔の誕生日にプレゼントしようとしているものを「私があげるからあげないで」と言ったりしたのだが、貴子が「アンタがどんな奴か学校中に言いふらす「学校のミスが後輩イジメてる」って言ってあげる」と言い返すと絡むのをやめた。

母の死と手紙が届いた理由

手紙に書いてある事が全部本当に起こると感じた菜穂は改めて手紙と向き合うようになる。そこには「この手紙を書いたのは、16歳の私にこの後悔を一生残してほしくないからです。10年後の今、翔はここにはいません。大切なものを失わないで。翔のことをしっかり見ていてあげて下さい」と書かれていた。
昼休み、翔は須和と萩田と共にパンを買いに行く。お母さんがお弁当を作ってくれないらしい。放課後は須和が翔をサッカー部の見学に誘う。菜穂、あずさ、貴子の3人も見学に行くことになり、活躍する翔を応援する。自分でお弁当を作っているという話を聞いた翔が「ついでに俺にも作ってよ」と言うので「うん!いいよ」と元気よく答える菜穂だったが、冗談だと言われてしまう。作ってあげたい、でも冗談って言ってたし迷惑かもと悩む菜穂だったが、手紙には「作ってあげればよかったと後悔している。翔にお弁当を作って渡してほしい」と書かれていた。後悔を減らすために張り切って2人分のお弁当を作る菜穂。しかし、渡す勇気が出ないまま放課後になってしまう。2人で廊下を歩いている時に翔がお弁当を入れたバッグを触りそうになり、思わず避けてしまう菜穂。気まずい空気が流れ、翔は行ってしまう。お弁当なんて作らなければ良かった、手紙なんかで自分の性格は変わるわけないと落ち込む菜穂だったが、部活が終わった翔に勇気を出して謝ると2人で帰ることになった。
公園のベンチで話す翔と菜穂。そこで初めて始業式の日、翔の母が自殺したことを知った。悲しそうな翔の横顔を見ながら、始業式の日「翔を誘わないで」と手紙に書いてあったのはこのことだったのか、どうして誘っちゃったんだろうと後悔する菜穂。手紙は後悔を消すために送られてきたのにこのままじゃ同じことを繰り返すと感じた菜穂は翔にお弁当を渡す。冗談と言っていた翔は「ほんとは期待してた」と言い、嬉しそうに笑った。菜穂は1つ後悔を消したのだった。

再び10年後の世界が描かれる。萩田の運転するファミリーカーに乗り込み、翔に会いに行く5人。それぞれが届けられなかった想いと果たせなかった約束を胸に持ちながらゆっくりと進んでいく。

家に帰った高校生の菜穂は手紙の続きを読んで涙する。
「翔は17歳の冬、事故で亡くなりました。みんなや、私達との約束もすべて置いて。私達が後悔しているのは、翔は救えた、ということ」
菜穂が翔を救うことを強く決意した。

文化祭

菜穂たちの学校では文化祭の最後に花火が上がる。その花火を2人で見ようと翔と約束した菜穂だったが、先輩の嫌がらせによって待ち合わせに遅れてしまう。来ないと諦めかけた翔のもとに菜穂が走ってくる。
2人で見た花火は特別でお互いに素直な気持ちを伝えることが出来た。

翔の誕生日と告白

翔の誕生日を聞き出し、無事に誕生日会を開く6人。また1つ後悔を消すことが出来たと菜穂は喜んでいた。そんな中プレゼントに花束を贈った須和は教室を出ていく。雰囲気を察し、萩田を連れてあずさと貴子も教室を出ていった。
須和のアシストに背中を押された翔は「自分で買った花じゃなくてごめん。でも俺の気持ちは気づいてもいいよ」と告白をした。返事はしないままだったが、2人の間には確かにいい雰囲気が漂っていた。

翔の自殺未遂を防ぐため奮闘する菜穂と須和

喜んだのも束の間、次の手紙には翔が東京の友達と会って悩みを相談した際に笑い飛ばされ自殺未遂を起こしたことが書かれていた。自殺未遂をさせまいと、自分を責め続けている翔を抱きしめ「もう何も後悔するな。お前は悪くない」と伝える須和。翔にどう思われるか不安でなかなか行動できなかった菜穂だったが、気持ちをストレートにぶつける須和を見て「翔にどう思われるかじゃない。ただ伝えたい。気持ちをしってほしい」と強く思った。そして、「翔死なないで、翔を失いたくない」「私も翔のことがすき。すきだから…絶対にいなくならないで」と涙を流しながら伝える。素直な気持ちを伝えた2人のおかげで、翔が自殺未遂をすることはなかった。

体育祭で深まる絆

体育祭の日元気が無いように見える翔。心配する5人に翔は素直な気持ちを打ち明けた。生きていれば見に来てくれたであろう母親のことを思うと楽しく過ごすことに罪悪感を感じるのだという。
心を開き始めた翔に思い思いの言葉をかける5人。須和の「重かったら無理して持たなくていいんだよ。俺たちがいるから。大丈夫。みんなで持てば重くない」という言葉はきっと1人で抱えるしかないと思っていた翔の心に響いただろう。

クラスで1番足の速かった翔はリレーのメンバーに選ばれる。手紙には翔が転んで責任を感じることになるからリレーに出るのを止めてほしいと書かれていたが、翔はリレー出場に前向きだった。運命は少しずつ変わっていると感じた菜穂は自分の意思で手紙とは違う行動を起こす。みんなが翔と走りたいと手を上げ、いつもの6人でリレーに出ることになった。

「負けるな!」「約束」「ずっと一緒」「10年後も」「待ってるよ」「みんなで」翔への伝言を繋ぎながら必死に走る5人。前に走る選手をドンドン追い越し、翔は1位を勝ち取った。
リレーが始まる少し前、菜穂たちはこんな約束をしていた。
・リレーに勝ったら菜穂が翔にキスをする
・リレーに負けたら菜穂が須和にキスをする
見事リレーで1位を勝ち取った翔は菜穂の頬にキスをした。

二年参りと初めての喧嘩

一緒に年越ししようと集まる菜穂、翔、あずさ、貴子、萩田、須和は来ていなかった。
この日の手紙には2人になった時おばあちゃんの話をして、ケンカしてしまうと書かれていた。「翔を傷つけないように言葉に気をつけて」という言葉を胸に翔と話す菜穂。
クリスマスの日に会えなかったのはおばあちゃんが肺炎になりかけて入院したからだと話す翔はいつもより元気が無かった。「ばあちゃんがいなくなったら俺ひとりになる」と呟く翔を励まそうと思いを巡らせる菜穂。手紙にはおばあちゃんに会ったと書いてあったからと「大丈夫だよ」と伝えるも翔には届かない。無理して笑いながら「ばあちゃんが心配だから側にいたいんだ」と帰ろうとする翔が心配でつい「おばあちゃんなら大丈夫だから いなくなったりなんかしないから絶対」と言ってしまった菜穂。翔は「何も知らないくせに」と怒った。母親が自殺したのは自分のせいだという思いが強い翔は不安で仕方なかったのだ。謝罪の言葉も聞かず帰ってしまう翔の姿に呆然と立ち尽くす菜穂のもとに須和が現れる。
未来の須和はここで菜穂に想いを伝えていた。しかし、2人を応援すると決めた須和は菜穂を抱きしめ「翔といられる時間をちゃんと大切にしろ」と背中を押した。

翔の想い

場面は変わり、転校してから自殺するまでの翔の記憶が書かれる。

急に転校すると言われた事、大事にしていたサッカーのバックやスパイクを勝手に捨てられた事、離婚した事。いつも何の相談もせずに決めてしまう母親に対して反発する気持ちがあった翔は、約束を破り菜穂たちと楽しんだ。その日、母親は自殺した。
母親の自殺は翔の心に暗い影を落としたが、菜穂たちと過ごす時間は楽しかった。悩みや辛いことは知られないようにした。話せば一緒にいられなくなってしまうから。
東京の友達と会った。サッカー部で先輩からいじめられた時助けられなくてごめんと謝られ、つい今の辛い思いを吐き出した。しかし、本気で聞いてくれる人はいなかった。笑い飛ばされた。その日、翔は自殺しようとする。気付けば病院に運ばれていて助かったが、翔の心には生きる希望がなかった。
体育祭でリレーのメンバーに選ばれたが、ゴール前で転んでしまった。負けた事に酷くショックを受けた翔だったが、菜穂たちは「翔は悪くない。翔のせいじゃないよ」と励ましてくれた。
年越しの日元気が無かった翔に菜穂が「辛いことがあったら今日は忘れて楽しもうよ」と声をかけてくれた。母親との約束を破って菜穂たちと過ごした日を思い出し、自分が母親を殺したと思い込んでいる翔は酷い言葉を菜穂にぶつけてしまう。菜穂に怒っているわけじゃない。あの日の自分に対して怒っていた。全部最初からやり直せたらいいのに、そしたら誰も傷つけなかったのにと。

菜穂に酷い言葉をぶつけた日、須和が菜穂に告白したと聞いた。菜穂のこと好きじゃないと嘘をついたけれど、菜穂と須和が付き合ったら安心だなと思った。でも、バレンタインに須和にチョコをあげるのかなと思ったら切なくなった。
母親の携帯を見付けた翔は、未送信のメールを見付ける。そこには今まで勝手だと思っていた母親が自分を守るために行動していたことが綴られていた。
「翔のことを傷つけていたのは、いつもお母さんだった。これからは翔が楽しいと思う事を、やりたい事をして下さい。ジャマしてごめんね」
やっぱり俺のせいだと感じた翔は「全部どうでもいいか」の気持ちと共にトラックの前に飛び出した。

戻らない2人の関係

仲直り出来ないまま冬休みが明け、翔と再会する菜穂。緊張の面持ちで声をかけるが、思いのほか怒った様子がない。喧嘩してないと笑う翔に安心した菜穂だったが、何かと理由をつけて避けられる。謝っても縮まらない距離に菜穂は授業中に泣きだしてしまう。先生に指示されても教科書を読めない菜穂の代わりに立って音読し始める翔。須和、あずさ、貴子、萩田の4人はその様子を心配そうに見つめていた。

場面は10年後の世界。5人は翔と約束した弘法山に来ていた。翔との思い出を振り返ると次々に後悔の言葉が出てくるあずさや貴子。後悔しても仕方ないと諫める萩田。複雑な気持ちを抱え見守る菜穂と須和。その時、菜穂が高校時代の先生が話してくれたブラックホールの話を思い出した。ブラックホールを使えば、タイムスリップ出来るかもという話だ。現実的ではないとつっこみながらも地球上のブラックホールと言われている「バミューダトライアングル」の存在やタイムカプセルに手紙を入れる方法を話す萩田。もしかしたら翔を助けられるかもしれないと思いを込めて5人は手紙を海に流すことに決めた。

手紙を届ける方法
・手紙を入れた瓶を海に流す
・バミューダ海域に到着し、過去にタイムスリップする
・手紙を拾った人にポスト投函してもらう
・日付指定をして2012年の4月に届けてもらう

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