真実(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『真実』とは、2019年の日仏共同制作のヒューマンドラマ映画。2018年にカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した是枝裕和監督の作品。代表作は『万引き家族』『誰も知らない』など。主演には、フランスを代表する大女優カトリーヌ・ドウーヴを起用し、すべての撮影をフランスで行った監督の初の国際共同製作映画ということで、世界から注目を浴びる。『真実』の出版を機にベテラン女優ファビエンヌとその娘リュミールが心に秘めている真実、彼女たちを取り巻く人々の思いが暴かれてゆく。

名シーン・名場面

ファビエンヌとリュミールの母娘和解のシーン

終盤の映画の中では一番ひきつけられるシーン。作中なんども歩み寄りを試みるが結局は演じることでしか言葉を口にすることができないファビエンヌ。最後の最後でようやく真実が明らかになり抱擁する。この抱擁は真実なのか演技なのか。

『真実』裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

「1日8時間」のルール

すべての撮影をフランスで行った今回の映画。一番違うのは、フランスのルールに基づくというところ。日本のように泊まり込みで撮影するのではなく作業時間は一日きっちり8時間で夜は皆それぞれ家に帰って家族団らんを楽しむ。もっと撮りたいと思っても撮れないのは最初はジレンマだったが、撮影を進めるにともないリズムのできて体力的にも楽にとり終わることができたと監督は話す。

小道具

白い三角形の物体

よく見ると作中何度か出てくるファビエンヌが精神安定剤として使っている白い三角形の物体。
実はこれは特別なものではなくごく普通の街の文房具店で購入できる3色の蛍光ペンだった。監督が一見すると何かわからないけれど日常で使うものを探してほしいという監督の指示だった。

シャルロットのカメラ

作中シャルロットはいつも首からカメラを提げている。実はこれは是枝監督の娘のもので私物だった。いつも首にかけて歩き回っているといいことで、暗に登場人物の中で一番傍観者として観察、監督をしているということを表した小道具。

言葉の違い、文化の違い

ファビエンヌの家でリュミールとハンク二人で寝ているシーン

是枝監督の書いた日本語の台本をフランス語に翻訳した台本は、撮影直前まで何度も話し合い、繰り返して読み、フランス人にとって不自然ではないか、翻訳後のニュアンスが日本語から大きく離れていないかなど双方の気になる点はすべて直したのだが、日本語のニュアンスをそのままフランス語に翻訳することは、ほぼ不可能だった。日本語はフランス語と違いあいまいな表現のよさがたくさんある。例えば、ハンクに向かってファビエンヌが言うセリフに「役者っていうほのど『あれ』じゃない」というものがある。日本語の「あれ」の中には侮辱的な意味も含まれているが、フランス語にするとただ単に「大した役者じゃない」になってしまう。このような翻訳のジレンマは付きまとう。
あるシーンでは是枝監督は最初に親子3人が川の字で寝るというシーンを書いていたが、フランスでは小学生に入った子供は親と一緒に寝ることはない。親と一緒に寝ているのはトラブルをかかえた子というイメージになってしまうということがわかり書き直した。

監督の日常へのこだわり

是枝監督の作品には日常生活を描写したシーンが多く出てくるが、今回も屋敷の中ではフランスの日常生活が垣間見られる。食卓にはフランスにいるにも関わらず出てくるのはイタリアン。パリの屋敷を舞台に撮っているのにエッフェル塔は出てこない。これはフランスが舞台だという特別感を出すのではなく、日常を描写したかった監督のこだわりだ。

『真実』の主題歌・挿入歌

是枝監督初の「フランス映画」には、「ロシア人」作曲家アレクセイ・アイギを起用。ロシアの現代音楽シーンの第一線で活躍し、次世代の音楽シーンを牽引する存在として注目されている。彼の代表作には『草原の実験』『私はあなたのニグロではない』『マルクス・エンゲルス』などがある。
テーマは動物園で庭にいる亀、ファビエンヌの愛犬、子供と一緒に賑やかに過ごす一日をイメージしている。

ED(エンディング):アレクセイ・アイギ『La famille de Lumir』

keeper
keeper
@keeper

Related Articles関連記事

万引き家族(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

万引き家族(英題:Shoplifters)とは、2018年に公開された日本映画である。監督は『そして父になる』などで知られる是枝裕和。主演はリリー・フランキーと安藤サクラ。 第71回カンヌ国際映画祭において最高賞のパルム・ドールを獲得するなど、国内外で高い評価を受けた。 貧困のなか、万引きによって生計を立てながら身を寄せ合う家族6人の姿を描く。

Read Article

デイブレイカー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『デイブレイカー』とは、オーストラリア出身のスピエリッグ兄弟の監督・脚本によるSFアクション・ホラー。人口の9割以上がヴァンパイアと化した近未来を舞台に、人間の減少により血液不足に陥った状況を解決するために代用血液の開発を進めていたヴァンパイアの男が、人間とヴァンパイアの双方を救う新たな道を探ろうとする。09年・オーストラリア・アメリカ製作。

Read Article

歩いても 歩いても(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

兄の命日に久々に実家に集まった横山家。しかし次男の良多は父と折り合いが悪く、気が重い。食卓には母の作った手料理が並び、思い出話に花が咲く。そんな何気ない会話の中に、家族それぞれが抱えた事情が見え隠れする。どこにでもある家族の夏の一日を静かに繊細に描いた、是枝裕和監督の思いが詰まったホームドラマ。

Read Article

そして父になる(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『そして父になる』とは、”赤ちゃん取り違え事件”を扱った、2013年制作の日本映画。TVドキュメンタリー出身の是枝裕和が監督・脚本・編集を担当し、主演の福山雅治が初の父親役を演じた。第66回カンヌ国際映画祭では見事に審査委員賞を受賞し大きな話題となった。ある日、突然6年間育てた息子が病院で取り違えられた他人の子どもだったと知らされた対照的な2組の夫婦が、過酷な決断を迫られ、それぞれに葛藤を繰り返す中で本当に大切なものを学んでいく姿を描く。

Read Article

ガタカ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ガタカ』とは1997年にアメリカで製作されたSF映画。 遺伝的優劣によって人生が左右される近未来社会の中で、遺伝的問題を抱えた1人の青年が不屈のチャレンジ精神で人生を切り開き、夢を叶えようとする姿を描いている。遺伝子がすべてと言われる世界の中で、当り前である概念を打ち砕き、不可能を可能としようとする姿に周囲が心動かされていくヒューマンストーリーでもある。現実感のある設定と名言の詰まったセリフの数々は、見る者の心に訴えかけ、今もって語り継がれる作品となっている。

Read Article

海街diary(漫画・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『海街diary』(うみまちダイアリー)とは、『月刊フラワーズ』にて2006年から連載されている吉田秋生による漫画、及びそれを原作とする映画である。外に女を作り出て行った父と、それにショックを受け新たな男を作り家族を捨てた母親。そんな両親を持つ三姉妹が父の訃報をきっかけに腹違いの妹・すずと出会い、絆を深めながら生き生きとそれぞれの人生を生きていく様が鎌倉を舞台として叙情的に描かれている。

Read Article

目次 - Contents