真実(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『真実』とは、2019年の日仏共同制作のヒューマンドラマ映画。2018年にカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した是枝裕和監督の作品。代表作は『万引き家族』『誰も知らない』など。主演には、フランスを代表する大女優カトリーヌ・ドウーヴを起用し、すべての撮影をフランスで行った監督の初の国際共同製作映画ということで、世界から注目を浴びる。『真実』の出版を機にベテラン女優ファビエンヌとその娘リュミールが心に秘めている真実、彼女たちを取り巻く人々の思いが暴かれてゆく。

吹き替え:長克巳
ファビエンヌの現在のパートナー。フランス人だがイタリア料理が得意。

ピエール(演:ロジァー・ヴァン・フール)

吹き替え:佐々木敏
リュミールの父親。長年音信不通となっていた。自伝本では死んだことになっているが、元妻ファビエンヌの自伝本に書かれている自分の出演料をせびりに屋敷へ突然やってくる。結婚していたころは映画監督助手をしていたこともある。細かい手作業が得意で屋敷にあった紙芝居の箱を修理する。

『真実』の用語

自伝本『真実』

本作のタイトルにもなっている50万部発行となったファビエンヌの自伝本。この自伝本をきっかけに語られなかった真実と書かれた嘘に家族は翻弄される。
大女優は私生活を100%犠牲にしないと成功しないと考えるファビエンヌは、もちろん自伝本も女優としてのファビエンヌとして書いている。
自伝本の中では、長年音信不通の元夫ピエールは死亡したことになっており、公私共に世話になっている個人秘書リュックも存在していない。よきライバルでありよき友だったサラについても一言も触れていない。一度も行ったことのない娘のリュミールの学校の迎えのシーンは詳細まで作り上げられ語られている。

サラ

女優だったサラは、ファビエンヌのライバルでありよき友であった。素晴らしい演技をしていたサラは、ファビエンヌが取ったセザール賞の候補者でもあった。母親業を放棄していたファビエンヌに変わりファビエンヌの娘リュミールの世話をしており、リュミールにとっては母代わりだった。約40年前にお酒を飲んで海に泳ぎに行ってそのまま帰らぬ人となってしまった。容姿はマノン・ルノワールとよく似ていて、マノンはサラの再来と言われている。
ファビエンヌは、70歳を過ぎた今もサラの存在を感じながら演技をしている。が、自伝本『真実』には一言もサラについてふれていない。

『母の記憶に』

作中でファビエンヌが演じている最新作映画のタイトル。SF作品で、治療することができない難病にかかり、余命2年と分かって、年を取らず病気も進行しないという宇宙での暮らしを選び、7年ごとに地球に戻ってくる母とその娘の物語。
ケン・リュウの短編『母の記憶に』を原作にしている。
作中冒頭では、記者がファビエンヌにインタビューをしており、その中で、ファビエンヌは『母の記憶に』について「大した作品じゃないわよ」と言っている。サラの再来と評判の新進女優マノン・ルノワールと共演することだけが目的でこの役を引き受けたことを作中で娘のリュミールに告白する。

『ヴァンセンヌの森の王女』

作品中にたびたび出てくる物語のタイトル。シャルロットは寝る前にリュミールに読み聞かせてもらっている。一方ファビエンヌは同物語の魔女役を演じている。登場人物の魔女は人間を動物に変える魔法を持っている。
ヴァンセンヌの森はパリの東部に実在する森林公園である。

セザール賞

作中で過去にサラを差し置いてファビエンヌが取った賞として紹介される。実際にセザール賞は存在しており、フランスにおける映画賞でアメリカ アカデミー賞に相当する賞である。
実際ファビエンヌ演じるカトリーヌ・ドヌーヴも1981年、1993年、2016年にセザール賞を受賞している。

『真実』名言・名セリフ/名シーン・名場面

名言・名セリフ

ファビエンヌ・ダジュヴィル「真実なんて退屈だわ」

ようやく自伝本を読んだリュミールは、翌日嘘で固められた自伝に怒りをあらわにしてファビエンヌに詰め寄り「どこに真実があるの?」と問う。それに対し「真実なんて退屈だわ」と返す。これを皮切りに表に出ない「真実」と語られる「嘘」に引き込まれていく。

ファビエンヌ「ひどい母親で下手な女優であるより、ひどい母親、ひどい友人でも大女優のほうがましでしょ。あなたが許してくれなくてもファンは許してくれるから」

娘のリュミールに理解してもらえず歯がゆい思いをしているファビエンヌ。わがままで謝ることを知らずに生きてきているためどんなときでもつい本音が言えない。サラの死に関してリュミールと言い合いが白熱しサラの死は自分のせいだと言われてつい言ってしまう一言。女優として私生活を犠牲にして生きてきているファヴィエンヌならではの言葉だ。

ハンク「本当は、嫉妬させたかったんじゃないの?」

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