真実(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『真実』とは、2019年の日仏共同制作のヒューマンドラマ映画。2018年にカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した是枝裕和監督の作品。代表作は『万引き家族』『誰も知らない』など。主演には、フランスを代表する大女優カトリーヌ・ドウーヴを起用し、すべての撮影をフランスで行った監督の初の国際共同製作映画ということで、世界から注目を浴びる。『真実』の出版を機にベテラン女優ファビエンヌとその娘リュミールが心に秘めている真実、彼女たちを取り巻く人々の思いが暴かれてゆく。

自伝本について「ファビエンヌと話がしたかったからここに来たんだろ?だったらなんで自分も連れて来たんだ?幸せな家族をファビエンヌに見せて嫉妬させたかったからじゃないのか?」とハンクに言われ自分でも気が付いていなかった心の奥底にある母親への対抗心に気が付く.。

リュミール「これはママの魔法?」「ママを許しそうだから」

ようやく少しずつ語られなかった真実が明らかになってくる。リュミールは自分が信じていた事実と実際の事実が違っていたことにショックを受け、母は自分のことをちゃんと見ていてくれたことを知る。不可能だと思っていた、母との和解に信じられないリュミールが発する一言。

ファヴィエンヌ「あなたがいなくなってとても孤独だった」

撮影中の映画のワンシーンでファビエンヌ演じるエイミーはすでに宇宙で暮らす母より年上となっている。次の面会は7年後、その時にはもう会うことはできないかもしれないという場面でいうセリフ。アドリブで転ぶシーンをしたあとに、「あなたがいなくなってとても孤独だった」というファヴィエンヌは、マノンを通して彼女にうり二つの今は亡きサラに話しているようだ。セリフでしか本音が言えないファヴィエンヌ。この一言にサラへの思いが詰まっている。横顔しか映らないアングル、哀愁のただよう雰囲気はさすがの大女優といえるパーフェクトなワンシーン。

名シーン・名場面

ファビエンヌとリュミールの母娘和解のシーン

終盤の映画の中では一番ひきつけられるシーン。作中なんども歩み寄りを試みるが結局は演じることでしか言葉を口にすることができないファビエンヌ。最後の最後でようやく真実が明らかになり抱擁する。この抱擁は真実なのか演技なのか。

『真実』裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

「1日8時間」のルール

すべての撮影をフランスで行った今回の映画。一番違うのは、フランスのルールに基づくというところ。日本のように泊まり込みで撮影するのではなく作業時間は一日きっちり8時間で夜は皆それぞれ家に帰って家族団らんを楽しむ。もっと撮りたいと思っても撮れないのは最初はジレンマだったが、撮影を進めるにともないリズムのできて体力的にも楽にとり終わることができたと監督は話す。

小道具

白い三角形の物体

よく見ると作中何度か出てくるファビエンヌが精神安定剤として使っている白い三角形の物体。
実はこれは特別なものではなくごく普通の街の文房具店で購入できる3色の蛍光ペンだった。監督が一見すると何かわからないけれど日常で使うものを探してほしいという監督の指示だった。

シャルロットのカメラ

作中シャルロットはいつも首からカメラを提げている。実はこれは是枝監督の娘のもので私物だった。いつも首にかけて歩き回っているといいことで、暗に登場人物の中で一番傍観者として観察、監督をしているということを表した小道具。

言葉の違い、文化の違い

ファビエンヌの家でリュミールとハンク二人で寝ているシーン

是枝監督の書いた日本語の台本をフランス語に翻訳した台本は、撮影直前まで何度も話し合い、繰り返して読み、フランス人にとって不自然ではないか、翻訳後のニュアンスが日本語から大きく離れていないかなど双方の気になる点はすべて直したのだが、日本語のニュアンスをそのままフランス語に翻訳することは、ほぼ不可能だった。日本語はフランス語と違いあいまいな表現のよさがたくさんある。例えば、ハンクに向かってファビエンヌが言うセリフに「役者っていうほのど『あれ』じゃない」というものがある。日本語の「あれ」の中には侮辱的な意味も含まれているが、フランス語にするとただ単に「大した役者じゃない」になってしまう。このような翻訳のジレンマは付きまとう。
あるシーンでは是枝監督は最初に親子3人が川の字で寝るというシーンを書いていたが、フランスでは小学生に入った子供は親と一緒に寝ることはない。親と一緒に寝ているのはトラブルをかかえた子というイメージになってしまうということがわかり書き直した。

監督の日常へのこだわり

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