パラサイト 半地下の家族(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『パラサイト 半地下の家族』とは、2019年のスリラー、ブラックコメディー韓国映画。『殺人の追憶』『母なる証明』で知られるポン・ジュノ監督と主演ソン・ガンホが再度タッグを組み第72回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞。アカデミー賞では4部門で受賞と世界的に注目を集めた作品。韓国の貧しい地域の半地下のアパートで生活するキム一家は全員が失業中で貧困だが結束の固い家族。一方、豪邸で裕福な暮らしをするIT企業社長のパク一家。境遇の異なる二つの家族が思いもよらない衝撃の結末を迎える。

『パラサイト 半地下の家族』の概要

『パラサイト 半地下の家族』とは、日本では2019年1月に公開されたスリラー、ブラックコメディー韓国映画。『殺人の追憶』『グエムル-漢江の怪物-』『母なる証明』で知られる監督 ポン・ジュノとソン・ガンホ主演の映画。韓国で社会問題化されている階級社会、貧富の差を“半地下”住宅で暮らす貧しい一家と、“高台の豪邸”で暮らす裕福な社長一家を登場人物として描き、ブラックコメディー、サスペンス、ヒューマンドラマというエッセンスを加えたジャンルを超えた作品として世界中から賞賛された。アジア映画において初めて作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4部門でアカデミー賞を受賞、72回カンヌ国際映画祭では、満場一致で最高賞の「パルム・ドール賞」を受賞した。カンヌ国際映画祭の審査員長のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥは「この映画はまたとない体験で、まったく先が読めない映画」とコメントし、また「本作は我々に感動を与えた。この映画には様々なジャンルがミックスされていて、ユーモラスで切迫感とクローバル感を非常に効果的に表現したローカル映画だ。映画の本質とは政治的なものをメッセージとして送るものではなく、見た人が映画の中から汲み取るものである」と強調した。映画は全世界で空前と大ヒットとなり、日本でも47億円を超える興行収入を記録している。またアメリカではHBOでドラマ化も決定している。ポン・ジュノ監督特有の緻密に構成されたストーリは、観ている人の心をつかみ一時もはなさない。重いと思われそうなテーマを軸に地下室の存在や身分を偽り寄生する家族などのサスペンス、スリラー要素を加え、また要所要所にはパク家の妻の少しずれた感覚やWifiを探しトイレまで行く兄妹などコメディ色をちりばめる。かと思いきや後半では暗闇、殺人といった予期せぬ恐怖に陥れられる。相反する2つの家族をうまく表現するために使われる要素「臭い」にも注目したい。

『パラサイト 半地下の家族』のあらすじ・ストーリー

プロローグ

舞台は韓国の貧困地域。父親のキム・ギテク、母親のチュンスク、息子のギウと娘のギジョンからなるキム一家は小さく汚い半地下のアパートで貧困の生活を送っている。父親は幾多の事業に失敗した不器用な大黒柱、母親は元陸上ハンマー投げのメダリスト、息子は4度の大学受験に失敗するフリーター、娘は頭の回転が速い策略家。キム一家の貧困は相当なもので、Wifiは近所の店舗のものを勝手に使用し、通行人はキムのアパートの前で用を足すという毎日。家族で持ち帰りピザの箱折などをしながら細々と生活をしている。
ある晩、海外留学に行くための準備をしているギウの友人ミニョクは彼の士官学校出身の祖父が収集していたという財運をもたらすといわれる岩「山水景石」をキム一家にプレゼントした。キム一家は、「今の我が家にぴったりだ」と、このプレゼントに大喜び。
ギウとミニョクは、そのまま一緒に外出する。そして、ミニョクはギウに「大学生と偽り、IT企業の社長の富豪パク家の女子高生ダヘの英語の家庭教師を自分の代わりに続けてくれないか」と持ちかける。一度は断ろうかと思ったギウだが、給料のよさもあり、結局大学証明書の書類を偽造し面接を受け、無事パク家の英語家庭教師として採用される。

富豪パク一家との関わり

パク家は、父親がIT企業社長のドンイク、家事に全く向いていない少し感覚のずれた英語かぶれの美人母ヨンギョ、彼女はギウの家庭教師面接の間にもちょくちょく英語を挟んで会話をしていた。そして、花の女子高生のダヘ、注意散漫で落ち着きのないインディアンかぶれの小学生のダソンの4人家族。順調に英語家庭教師を続けるギウは、その働きぶりから一家の絶大な信頼を得る。ダヘの母親はダソンの美術の才能を盲目的に信じており今までに何度も自分の要求に合わなかった美術の家庭教師を解雇してきた。そして息子ダソンの美術の家庭教師を探していると知ったギウは、ダヘの母親のだまされやすく能天気な性格につけ込み、アメリカで芸術療法士として学んだと偽わらせたギウの妹ギジョンを紹介する。最初のギジョンの授業でギジョンはありとあらゆる専門用語を適当に並べ、見事にアメリカかぶれの母親ヨンギョの信頼を得ることができた。そしてダソンの家庭教師として採用されることとなる。

「寄生」パラサイトの始まり

次のターゲットは父親のギテク。過去に運転代行の仕事や駐車場係で高級車運転の経験もあることからパク家の運転手の座を得るべく動き出す。ギジョンは家庭教師の日、ちょうど仕事を終えて帰ってきた主のドンイクに鉢合わせる。ドンイクは自分の運転手にギジョンを家まで送るように命じギジョンは家がバレないよう近くまで送ってもらうが、その際、自分の下着を脱ぎ車内の見えないところへ隠し置いていく。そうすることで、主人ドンイクは運転手が自分の車を個人的出会いの場として使用し性行為を行ったと思い込むだろうと目論んだ。ドンイクはギジョンの目論見通り車内で下着を見つけ、ヨンギョにも見せる。ヨンギョは拒絶反応を示し二人で運転手を解雇することに決める。ギジョンは新しい運転手として自分の父ギテクを叔父と偽り紹介し採用となる。こうして無事ギテク、ギウ、ギジョンはパク家に雇われる。次は自分の母チュンスクをなんとかパク家に採用させなければならない。考えたギジョンはひょんなことから現家政婦ムングァンが桃の表面の細かい毛が1m以内にあるとアレルギー反応を起こすという重度の桃アレルギーだということを知り、これを利用することにする。アレルギー反応を起こした家政婦ムングァンが病院に行ったところあとをつけたギテクは自撮りを装いムングァンも撮影し、ヨンギョに見せる。ギテクは健康診断のためたまたま病院に行っていて彼の妻に見せるため自撮りをしたのだと言い、たまたま耳に入った会話からムングァンは結核を患っているらしいと虚偽の報告をする。ギテクはこの虚偽のシーンを何度も家で予行演習したおかげで、完全にヨンギョは騙されてしまう。そしてまたしてもだまされたヨンギョは家政婦を即座に解雇した。そしてギテクがドンイクに架空の高級人材派遣を紹介しチュンスクが新しい家政婦として採用されることとなる。このようにしてキム一家全員が身分をいつわりパーク家で働くこととなった。こうして貧乏一家のキム家は富豪のIT社長パク家に寄生虫のように入り込んでいった。すべてキム家に追い風が吹いているようだが、少しずつ何かが狂っていく。まず、ダソンがギテクとキジョンから同じ「臭い」がするという。この臭いは貧乏臭、地下臭なのかもしれないとキム一家は話す。

地下室の存在

ある晩パク一家はキャンプに行くためチュンスクに留守を任せ出かけていく。家主不在の豪邸をキム一家は4人で占拠しやりたい放題。お風呂に入りリラックスしたり、庭で遊んだり、夜になると宴会をして美しい庭を眺めながら酔いつぶれるまで羽目を外す。夜になり外は雷雨となっていた。すると、突如静寂を破るインターホンが鳴り響く。それはキム一家が策略し追い出した元家政婦のムングァンだった。彼女は地下室に大切なものを忘れたのでどうしても取りに行かせてほしいとすがり懇願する。このことは絶対に口外しないと約束し家に入り地下へと向かう。そこでチュンスクはこの豪邸には現オーナーのパク一家も知らないという秘密の地下室があることを知る。秘密の地下室への入り口は大きな食器棚の裏にあったのだ。元家政婦のムングァンはパク家の前の建築家のオーナーがこの豪邸を建てた時から家政婦をしていたためその存在を知っていたのだ。その地下室には彼女の夫グンセが多くの借金取りから身を隠すため何年も住んでいたのだ。ムングァンはチュンスクにどうかこのまま秘密を守り夫をかくまい続けてほしいと頼むのだが、チュンスクは警察に通報するという。すったもんだがあったのだが結局盗み聞きしていたギウが階段から落ちたときに、うっかりギテクを「お父さん」と呼んでしまい、身分をごまかして働いていることがバレてしまう。その様子をムングァンは一部始終携帯のビデオで録画していて、反対にキム一家を脅すのだった。キム家絶体絶命のピンチになったその時突然ドンイクからチュンスクに電話がかかる。大雨の被害でキャンプが中止になったので、急遽家に帰ってくることになったということだった。キム一家は大慌てで家を片付けて、なんとか宴会で乱れ切っていた豪邸内の体裁を表面的に整えるとムングァンとグンセを地下室に閉じ込める。

貧乏臭

その後まもなく豪邸にパク一家が帰宅しギテク、ギウ、ギジョンは身を隠した。地下室に閉じ込められたムングァンとグンセは脱出に成功する。あと一歩でヨンギョにたどり着くというところでチュンスクに見つかってしまい殴られてしまう。その拍子に地下室に続く階段から落ち頭を強打する。そんな騒動に一切気が付かないパク一家は過去に息子のダソンが「幽霊」に遭遇し誕生日のトラウマとなったことを語る。「幽霊」とは本物の幽霊ではなく地下室の住人グンセだった。深夜になってもキム一家は動くに動けない状態でテーブルの下に隠れているとそのそばでドンイクはヨンギョに「ギテクの臭いがする」という。これを聞いて一刻も早く豪邸から逃げ出さなければと考えタイミングを見計らいギウとギジョンとギテクは豪邸からの脱出に成功する。やっとのことで豪雨の中自分たちの半地下の家へとたどり着くが、半地下のアパートは豪雨により浸水し家に入ることは不可能だった。やっとのことで山水景石だけは持ち出すことができたが、一家は仕方なく何百人もが避難している避難所へ向かう。正体がいつパク家にばれてもおかしくない状態に陥ったキム家は困惑している。ギテクは計画があると話す。その計画とは「計画というのは無計画だ。計画があるから予定外のことが起こるのだ。計画しなければ予定外のことも起こらない」というのだ。

誕生日の悲劇

両家にとってそれぞれ大変な一日が終わりその翌日は快晴となった。パク夫妻は息子の誕生日会にキム一家を招待する。ギテクはヨンギョと買い物へ、チュンスクは豪邸で誕生会の準備、ギウとギジョンは招待客として参加した。ギウとギジョンは買い物の帰り道にヨンギョがギテクの「臭い」を嗅ぎ不快そうにしているのを見て憤りを感じる。誕生会の最中にギウは山水景石を持ち拘束していた二人を殺害するため地下室へと降りてゆく。が途中で山水景石を落としてしまう。拘束されていた縄を外すことができたグンセは待ち伏せしていて石を取り上げギウの頭を殴る。ムングァンは先日階段から落ちて頭を強打したため頭から出血しすでに死亡していた。石で頭を殴られ気絶したギウを残しグンセは包丁を持って誕生会へ侵入する。そこで誕生日ケーキを運んでいたキジョンの胸を刺す。その後ろでグンセを見たダソンはいつか見たトラウマとなった幽霊だと思い気絶してしまう。瀕死で重傷のギウはダヘに担がれ豪邸の外へ連れ出され、ドンイクはダソンを病院に運ぶためギテクに車のカギを渡すように言う。ちょうどそこでは、娘のギジョンを刺された母チュンスクが半狂乱となりグンセともみあいになり、チュンスクは近くにあった串を手に取りグンゼを串刺しにする。ギテクがドンイクに投げたカギは、まさに倒れたグンセの下敷きとなってしまった。カギを取ろうとしたドンイクはグンセの「臭い」に顔をしかめた。それを見たギテクは怒り心頭でドンイクを刺してしまう。

悲劇の後

事件後1か月、ギウは警察官が見守る中病院で目を覚ますとすぐに取り調べを受ける。手術の後遺症で笑いたくもないが笑い続けるギウ。ギウとチュンスクは裁判所で執行猶予つきの有罪判決を受ける。ギジョンは死亡、ギテクは行方不明となっていた。ギウは退院後また以前の半地下のアパートで暮らしている。事件が落ち着いたころからギウはしばしば悲劇の豪邸が見える丘に登って双眼鏡で豪邸を覗いていた。ある寒い冬の晩、ギウはまた山に登って双眼鏡で豪邸を覗いていると豪邸の一部の電灯がついたり消えたりして点滅していることに気が付いた。モールス信号だと気が付いたギウは父親が通信をしていることを解読する。父親からの伝言では事件のその後が語られている。豪邸はしばらく空き家だったものの新たな住人が購入し住んでいた。ギテクは事件後屋敷に戻りずっと秘密の地下室に閉じこもっていたというのだ。父親は新しい住人が住み始める前に元家政婦の死体を埋めて、以前グンセが生活していたような状態で住人の目を盗みながら食料を盗み、地下室で生活していた。ギテクは息子がこのメッセージを受け取りこの地下室から出してもらえることを望んでいる。ギウは大学に行き卒業してたくさんお金を稼ぎまっさきにこの豪邸を購入して、また両親と一緒に住もうと希望を抱く。が所詮は夢、現実には今まで通りの生活が目の前に待っているのだった。

『パラサイト 半地下の家族』の登場人物・キャラクター

キム家

キム・ギテク(演:ソン・ガンホ)

吹き替え:山路和弘
半地下のアパートで暮らす全員失業中の一家の主人。宅配ピザの箱を折る内職をしている。楽天的で温厚なゆえ、妻に逆らうことができない。飲食や駐車場係など、これまでに様々な職業を経験しているが、どれも失敗している。ドライバーの経験があり、パク家のドライバーとして身分を偽り就職する。雇用主からは絶大な信頼を得ている。

キム・ギウ(演:チェ・ウシク)

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