ハートの国のアリス(ハトアリ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ハートの国のアリス』とは、QuinRoseから発売された童話『不思議の国のアリス』がモデルの恋愛アドベンチャーゲーム。QuinRoseの看板作品の1つ。不思議な「白ウサギ」によって、ある日、銃弾飛び交う物騒な世界「ハートの国」に連れ去られてしまったアリス。アリスは非現実過ぎるこの出来事を「夢」だと受け入れ、夢から目覚めるまでの間、ここでの暮らしや住人達との交流を楽しむことにする。

『ハートの国のアリス』の概要

『ハートの国のアリス』とは、恋愛アドベンチャーゲームブランド「QuinRose」が発売した、「不思議の国のアリス」をモデルに制作された恋愛アドベンチャーゲームである。QuinRoseの看板作品として多くの後続シリーズがあり、それら全てに『○○の国のアリス』という名が与えられている。
元は2007年2月14日にパソコン用ゲームとして制作された。初版はQuinRoseとは別レーベル「QuinRose UnderGarden」制作作品として発売していたが、スタッフそのものはQuinRoseと共通していた。
2008年9月18日に、友情イベントや自動発生イベントが追加されたPS2移植版が発売。さらに翌年2009年7月30日に、このPS2版の内容をそのまま移植させたPSP版が発売された。2010年3月14日に、CGやシナリオを一新ししたボリュームアップ版『アニバーサリーの国のアリス』がPC版で発売。翌年に、そのPSP版となる『ハートの国のアリス~アニバーサリーVer.~』が発売されることとなった。2013年10月31日には、ストーリーの追加に加え、ゲームシステムをターン形式からノベル形式に変更した『新装版ハートの国のアリス』が発売される。こちらの新装版はスマートフォン対応のゲームアプリとPSP版、PSVita版による発売が行われた。またイラスト担当者をイラストレーターのひめりんごから漫画家の藤丸豆ノ介に変更。尚、藤丸豆ノ介はシリーズ4作めである『ダイヤの国のアリス』からイラストの担当を務め、以降の作品は全て藤丸豆ノ介がイラスト担当となっている。移植版やリメイク版などの発売は後続シリーズでも行われているが、ここまでの量が行われているのは『ハートの国のアリス』のみである。QuinRoseの作品内でも最多とされている。その他にもノベル化やコミック化、さらにはアニメ映画化など様々なサブカルチャーへの展開も行われており、QuinRoseを代表する看板作品の1つとなっている。
そんな本作の世界観のモチーフは、世界的有名児童文学『不思議の国のアリス』。喋る「白ウサギ」や首を刎ねたがる「ハートの女王」、ナゾナゾ好きの「チェシャ猫」など、『不思議の国のアリス』を彷彿とさせる要素が多く存在。そこに銃や斧、マフィアに領地争いといった原作にはない物騒な要素を加えた、「銃弾飛び交うワンダーランド ハートの国」を舞台に物語を繰り広げていく。主人公のアリスもその見た目は『不思議の国のアリス』を想像させる様相をしているが、その性格は「リアリストで卑屈」とファンタジーな世界観とは真逆をいく設定となっている。
さらに恋愛アドベンチャーゲームでありながら、ヒロインであるアリス自身には、己の過去が原因で恋に臆病という設定がある。しかしある日「白ウサギ」によって「ハートの国」に攫われた彼女は、元の世界に帰る為にそこに住む住人達と交流をしていかなければなくなる。この交流を通して、恋愛臆病者のアリスがどう恋愛をしていくか、といった点が本作の主だった物語となっている。恋愛が主軸というよりは、アリスなりの恋というものへの答えや卑屈な自分との向き合いが行われるか、そういったアリス自身の成長に注目したシナリオが物語の主軸となっているといえよう。

『ハートの国のアリス』のあらすじ・ストーリー

本作は恋愛アドベンチャーゲームであり、冒頭の共通ルート以外は各攻略キャラにあわせたストーリーが存在する。基本的には各キャラ1ルート(1END)だが、なかには特殊な条件をクリアする事で解放される特別なENDも存在している。

共通ルート

白うさぎのペーターによって、ハートの国に連れ去られるアリス。

ある昼下がり。自宅の庭で姉のロリーナと共に過ごしていたアリス。だが、姉がトランプを取りに行ってしまった為、1人で姉の帰りを待つことに。すると、そんなアリスの前に二足歩行で喋る「白ウサギ」のペーター・ホワイトが現れる。ペーターはアリスを攫い、いつの間にか庭に出来ていた大穴から彼女を「ハートの国」へ連れ去ってしまう。連れ去られた先でアリスは、彼から「ハートの小瓶」の中に入った謎の薬を無理やり飲まされ、この国で行われている「ゲーム」へ強制参加させられてしまう。
「ハートの小瓶」の中に再び薬をためれば元の世界に帰れるようだが、その為にはこの国の住人達と交流しなければならないという。突然の非日常過ぎる出来事に怒るアリスだったが、現実主義者な性格が幸いし「この世界は夢なのだ」「だから、覚めるまで楽しめばいい」と開き直ることに。
こうして元の世界に戻るその日が来るまで、アリスはこの「ハートの国」に滞在することを決めるのだった。

ハートの城

エース BESTEND

エース(画面右の青年)の方向音痴に付き合わされ、森の中で迷子になるアリス(画面左の少女)。

共有ルートを見終えた後に発生する滞在先を選ぶイベントで「ハートの城」を選ぶ事で、発生可能となるルート。滞在先決定後に発生するフリータイムに、幾度となくエースのもとに足を運び、特定の回数の時に特定の時間帯でエースと会う事ができれば物語が進行する。
ハートの城の客人として、城の騎士であるエースと話をするようになったアリスは、ある時を堺に彼から一緒に外へ出かけないかと誘われるようになる。しかし方向音痴であるエースと共に行くお出かけは、毎度必ず迷子になってしまい目的地に辿り着く前に夜の時間帯が来てしまう。仕方なくエースと共にキャンプをして夜を明かすアリス。しかし最初こそは、そんな迷子になるばかりのお出かけの日々に文句を言っていたアリスだったが、次第にエースと共にキャンプをする事を楽しみに思うようになる。
だがキャンプが楽しくても、男女2人っきりで1つのテントで過ごす事にはなかなか慣れる事ができない。しかしある日、そんな本音の一端をエースに漏らしてしまった事をきっかけに、2人の関係が変わり始める。アリスが自分の事を男として意識している事に気づいたエースは、彼女の本音を聞いて以降、アリスを口説き始める。しかし過去のトラウマから恋に臆病になっていたアリスは、エースの口説きを回避したい。だがそれでもなぜかエースにお出かけの誘いを受けると断れず、彼と共にキャンプをする日々を過ごす。しかし、以前と関係性が変わったからか、エースは時折アリスに彼の中にある深い闇を垣間見せるようになる。エースの抱えている闇に気づく度に、アリスはエースに惹かれていくようになる。だがそれでも恋だと認められなかったアリスは、エースに口説かれるような空気になる度にそれを拒絶する。しかしエースの方はそんなアリスの態度を面白がっているようで、口説きの内容はどんどんエスカレートしていく。
結果、エースの口説きに揺さぶられたアリスは、少しずつ自分の思いが恋である事を受け入れ始める。だがその反対に、今度はエースの方がアリスとあまり会わない方がよいのではと考えるようになる。本人もなぜそのように思うかはわからないという。
その内2人はキャンプだけではなく、アリスの自室でも2人っきりで過ごすようになる。その頃にはエースもアリスの態度を面白がるというよりも、本気で彼女の事を好き始めているらしく、アリスに対する強い独占欲を見せ始める。そうしてハートの城で開かれた舞踏会をきっかけに、2人は正式に恋人同士となる。だがアリスの恋に対するトラウマが払拭できたわけではない為、エースと付き合う日々の中でそのトラウマが頭をもたげ始めてしまう。さらに恋人同士になりはしたものの、エースにまだ一言も「好き」と言えてない事に気づく。元々自己肯定感が低いアリスは、次第に暗い気持ちに苛まれるようになる。しかしそんな根暗な自分をエースに受け入れて貰えた事で、アリスは無理にトラウマを払拭する必要も、根暗な自分を変える必要もない事に気づく。
そうしてエースの存在がアリスの中で大きくなったある日、ハートの小瓶の中身が溜まり、元の世界に帰れる可能性が彼女の前に提示される。だが、エースの事を特別に思うようになっていたアリスは、彼のもとに残る事を選ぶのだった。

ペーター BESTEND

ペーター(画像右、兎耳の青年)と一緒に眠りにつくアリス。

共有ルートを見終えた後に発生する滞在先を選ぶイベントで「ハートの城」を選ぶ事で、発生可能となるルート。滞在先決定後に発生するフリータイムに、幾度となくペーターのもとに足を運び、特定の回数の時に特定の時間帯でペーターと会う事ができれば物語が進行する。
ハートの城に滞在を決めた後、客人としてペーターとも会話をしていくようになるアリス。しかし勝手にアリスへの好きが高じてストーカーまがいをするペーターに、彼への不満や嫌悪は日々溜まっていく。だがペーターの方は、そんなアリスの反応も前向きに捉え、彼女の嫌悪に気づいた様子も見せずに己の好意をさらけ出す。それどころかアリスがペーターに自分の本音をぶつける為に放った「うさぎが嫌い」という言葉を聞いた時には、アリスが嫌いならと自分の外見で1番うさぎらしい要素である耳を切り落とそうと言い始める。彼の本気を察したアリスは、ペーターから向けられる愛が自分ではどうすることもできない重たいものである事に気づき恐怖する。
しかしアリスがペーターを拒絶しようとペーターの方からアリスの方に寄ってきてしまう為、アリスは彼を受け入れる事しかできない。しかも、ペーターが可愛いうさぎ姿にいつでもなれると知ったアリスは、その可愛さに虜になってしまう。その事に気づいたペーターもアリスが望むならと、彼女と過ごす時はうさぎ姿で居るようになる。その内にアリスは、次第にペーター自身に絆されていく。同時に、ペーターが実は単純に人付き合いが上手くない、だから愛し方を間違えているのだという事に気づき、彼に対する嫌悪感もなくなる。

しかし嫌悪感がなくなったからといっても、ペーターが自分に向けるような愛情がアリスの中に生まれはしない。それどころか、アリスはこの不思議な世界を自分が見ている夢だと思いこんでおり、これもいつか目が覚めるまでだから、という考えで過ごしていた。そんなアリスの内心に気づいていたペーターは、彼女をなんとかこの世界に引き留めようと必死になる。そんな彼の姿に、アリスは自分がいつからかこの夢から覚めたくないと願っていた事に気づく。ある日の夜の時間帯、アリスがいなくなるのではないかと不安にかられたペーターを慰めていると、アリスは彼からキスをされる。驚くアリスだったが、彼女はペーターからのキスを受け入れ、以来彼と夜を過ごす時はキスをする事が恒例となる。アリスが自分の事を受け入れてくると知ったからか、ペーターの行動はエスカレートしていく。そうして最後には「恋人」のような関係になりたいとアリスにせがむようになる。だが同時に、人付き合いが上手くないペーターはアリスから「友達」だとは思っている事を伝えられ、それだけで嬉しくなり舞い上がる。するとその会話以降、これまで以上の執着と独占欲をペーターはアリスに向けてくるようになる。そうして自分以外の他者と仲良くするアリスに耐えられなくなった結果、やはり友達より大事な存在である「恋人」になりたいとアリスに訴える。ペーターとそういう関係になるつもりのなかったアリスは彼の訴えを断る。だがある時間帯、仕事中のペーターとふと目があった際に向けられた特別な笑みを前に、アリスは自分が彼の事をそういう意味で好きなのだと自覚する。しかし過去のトラウマから二度と恋などするものかと決めていたアリスは、彼に堕ちてしまった自分にショックを受けてしまう。だが、ペーターからの強い押しから、どうせ夢なのだから恋をしてもいいかと思い直し、最終的には彼の恋人の座に収まる。すると今度は、人前もはばからずペーターがアリスにくっつくようになってしまう。そしてそれはどうやら、アリスがまだこの世界を夢だと思い、いつか目が覚めると考え続けている事に起因しているようだった。そんな時、アリスはこの世界で夢を見る時に限り出会う事ができる住人・ナイトメアから、ペーターがアリスをこの世界に連れてくる事になった経緯を教えてもらう。肝心な理由ははぐらかされたものの、ペーターが自分とこの世界で過ごすようになるずっと昔からアリスの事を深く思っていたと知った彼女は、ただ流されるがままに恋人になった自分の不誠実さに悩む。そうしてある日、ついにその事をペーターにこぼしてしまう。しかしペーターの愛は深く、そう思っていたというアリスの事すらも受け入れ許してしまう。そんなペーターに戦慄するアリス。けれどペーターへの好意は消えず、ペーターが狂っていると気づきながらもアリスは彼からの愛を受け入れる。
そうしてついにやってきた、元の世界に帰れる日。小瓶の中の液体がたまった事で、元の世界へ帰るか否かの選択権がアリスに与えられる。アリスは悩みながらもペーターの居るこの世界に残る事を選ぶ。だがアリスの決断を知らなかったペーターは、彼女がまだ元の世界に帰るつもりでいると思い、「帰らないで欲しい」「愛している」と自分の気持ちをぶつける。そんなペーターの純真さに胸を打たれつつ、元の世界を捨て自分の好きな人と自分の為に生きる事を選んだアリスは、そんな現状に悲しみを覚える。そうしてペーターの訴えを受け入れ、彼と共に改めてこの世界での日々を過ごし始めるのだった。

ビバルディ BESTEND

ビバルディ(画像右の女性)の部屋で、ビバルディと共に過ごすアリス。

共有ルートを見終えた後に発生する滞在先を選ぶイベントで「ハートの城」を選ぶ事で、発生可能となるルート。滞在先決定後に発生するフリータイムに、幾度となく女王ビバルディのもとに足を運び、特定の回数の時に特定の時間帯でビバルディと会う事ができれば物語が進行する。
ハートの城に滞在を決めたアリス。そこで彼女はビバルディに城へ住まわせて貰う事に対する挨拶をしに行く。ビバルディが短気でイライラしがちで処刑ばかりを行う人物である事を知っていたアリスは、自分も首をハネられないかと不安になる。だがそれ杞憂に終わり、それどころか余所者(余所の世界から来た者)という事で彼女に気に入られる。
そうしてハートの城に住まう者としてビバルディのもとに足繁く通う日々を過ごしていると、アリスはある時から彼女の部屋に招かれるようになる。そこは限られた者しか入れない特別な部屋だった。この部屋でビバルディと2人っきりの時間を過ごすようになったアリスは、ビバルディという人物の素顔を知っていくようになる。冷酷な処刑好きな女王として世間に名を馳せているビバルディであったが、実はその素顔は可愛いものが大好きな幼い少女で、見た目よりもどこか子供っぽい人物だった。さらにアリスは彼女がキング(ハートの城の王様)に恋している事を知る。ビバルディいわく、女王・王様といった立場はこの世界の「役割」の1種でしかなく、実際に結婚しあっている間柄ではないのだという。実際、ビバルディの女王という役割も、前任の女王がいなくなってしまった事である日突然与えられたものであり、それまでの彼女は役のない「役無し」と呼ばれる住人であったという。そうして突然「女王」として連れて来られたハートの城で出会ったのが、その頃からすでに「王様」としての役割を全うしていたキングだった。女王になったばかりの少女にキングは優しく接してくれ、その事がきっかけとなりビバルディはキングに惹かれるようになる。だが「役割」が重要視されるこの世界のルールに則り、役割以上の関係をキングと築く事はビバルディにはできなかった。

そんな彼女の素の姿、抱えている事情を知る度に、ビバルディの支えになりたいと強く思うようになるアリス。ある時、キングと2人っきりで話す機会を得たアリスは、そこで思い切ってビバルディの事を話題にあげてみる。すると、そこで発覚したのはアリスの想像を超える事実だった。実はキング自身はビバルディの気持ちに気づいている、その上で今のまま放置しているらしい。なんでもビバルディは絶えず愛人を作っており、相手に飽きてはその度に処刑を行っているという。ビバルディに飽きられたくないという気持ちから、ビバルディに手を出さないのだというキング。しかしそれと同時に、彼女に飽きられ愛想をつかれ処刑を言い渡される彼女の愛人達の姿を眺めるのが好きなのだという。曰く、そうしている内はビバルディが自分(キング)の事を好きだと思い続けている証になるからだそう。そんなキングの狂った気持ちに気づいたアリスは、この世界は狂っている、と改めて自分が来てしまった世界のイかれ具合を認識する。
しかしビバルディの事を大事に思う気持ちが消えたわけではないアリスは、自分が彼女の支えになろうと彼女のもとに足繁く通い続ける。するとそうしている内に、小瓶の中の液体がたまり、アリスが元の世界に帰れる日がやってくる。アリスは元の世界に帰るかどうかで悩むが、最後はビバルディのもとに残る事を決め、ハートの国に戻る。
アリスが自分を選んでくれた事を喜んだビバルディは、アリスを抱きしめ喜ぶ。そんなビバルディの事もアリスは抱きしめ返す。こうしてアリスは、ビバルディの支えになる為、ハートの国での暮らしを続けていくのだった。

遊園地

ボリス BESTEND

元の世界に帰ろうとするアリスを引き止めるボリス(画面右、猫耳の青年)。

共有ルートを見終えた後に発生する滞在先を選ぶイベントで「遊園地」を選ぶ事で、発生可能となるルート。滞在先決定後に発生するフリータイムに、幾度となくボリスのもとに足を運び、特定の回数の時に特定の時間帯でボリスと会う事ができれば物語が進行する。
遊園地に滞在する事を決めたアリス。客人として過ごしつつも、遊園地の従業員としての手伝いもするようになり、オーナーであるゴーランドを筆頭に遊園地の従業員達とも仲良くなっていく。もちろんその中には、遊園地の居候であるチェシャ猫のボリスも入っている。いつからかボリスはアリスの部屋に訪れるようになっており、そこでアリスに自身の趣味である銃の話を語って聞かせるようになっていた。ガンオタであるボリスは、銃の素晴らしさをアリスに説くが、当然アリスにはそれの何がいいかわからない。そんなアリスにボリスは「銃はいい」といって、本物を触らせようとしたりしてくる。アリスはそれを嫌がるが、そんなアリスの反応が逆にボリスにとっては楽しいようで、度々アリスに無理やり銃を持たせ撃ち方を教えたりとし始める。
そんなある時、ボリスはアリスの心臓が自分達とは違う事に気づく。実はハートの国の住人の心臓は皆時計でできており、たとえ死んだとしても時計の修復さえできれば、また新たな生命として誕生する事が出来る「替えのきく存在」であった。だがハートの国の住人ではない余所者のアリスの心臓は替えがきかない。心音も違う、限りのある存在である彼女の心臓に、ボリスは心惹かれていくようになる。心臓の音を聞きたいというボリスの願いを仕方なく聞き入れるアリス。だがそのボリスの願いはエスカレートしていき、ついにはアリスの服を脱がせようとまでしてくるようになる。そんなボリスの要求に驚きながらも、自分を求めるボリスの行動にアリスは次第に彼の事を男性として意識し出す。そしてそれはボリスの方もそうであったようで、次第にボリスはアリス自身に惹かれていくようになる。だが、アリスはボリスの行動を「警戒心をといた猫にありがちなそれ」と認識し、それが恋愛方面のものである事を頑なに信じない。それはアリス自身が過去の出来事から恋に臆病になっている事が原因だった。さらに元来の根暗な性格が顔を出し、自己を否定し始めるアリス。そんな彼女に気づいたボリスは、アリスの心を開かせようとしてか、彼女に自分の好意をあけすけなく伝えてくるようになる。そんなボリスに、アリスも少しずつだが自分の気持ちに素直になっていく。
そうしたある日、ついにアリスはボリスに「好き」と自分の気持ちを口にする。それを聞いたボリスは大喜びし、2人は晴れて恋人関係になる。しかし恋人となって以降、アリスはボリスのいう「替えのきく存在」という価値観に対して不満を持つようになる。ハートの国ではそれが当たり前の価値観だというボリスは、自分の事も「替えのきく存在」と考えているらしく、自らの事を顧みない銃撃戦を他領地の者と行う時がある。そんなボリスにアリスは「命は1つしかない」と怒る。ボリスはアリスの言う命の大切さは理解できないものの、自分が死ぬ事でアリスが悲しむ事を知り、彼女を残さない為にも死ぬような事はしないと決める。
それからしばらくしたある日、ついに小瓶の中身が溜まり、アリスが元の世界に帰れる日がやってくる。ボリスの事を思いながらも「帰らないといけない」という気持ちから現実世界に帰ろうとするアリス。だがそこへ、彼女を引き止めにボリスが現れる。頑なに「帰らないといけないのだ」というアリスに、ボリスは銃を握らせ「帰るなら自分を撃ってからにしろ」と言う。そしてアリスがそれを拒絶すると、「なら自分がアリスを殺す」と告げる。だがアリスの事を愛していた彼は、アリスの事を殺せない。それを見たアリスは、ボリスが自分にとっていかに大事な存在であったかを改めて自覚する。するとその時、アリスが持っていた小瓶が割れる。驚くアリスだが、その途端、先刻まであった「帰らないといけない」という気持ちが一切なくなる。そうしてアリスは、ハートの国に残り、ボリスと一緒に暮らしていく事に決める。だがこの出来事以降、ボリスのアリスへの独占欲や執着心が強くなってしまう。そんなボリスにアリスは呆れつつも、それらを向けてくる相手が自分にとって大事な人なのだからいいか、と彼から向けられる好意を受け入れるのだった。

ゴーランド BESTEND

アリスと笑い合いながら話をするゴーランド(画像左の男性)。

共有ルートを見終えた後に発生する滞在先を選ぶイベントで「遊園地」を選ぶ事で、発生可能となるルート。滞在先決定後に発生するフリータイムに、幾度となくゴーランドのもとに足を運び、特定の回数の時に特定の時間帯でゴーランドと会う事ができれば物語が進行する。
遊園地に滞在を決めたアリスは、遊園地の従業員達や居候のボリスと仲良くなっていく。なかでもオーナーであるゴーランドとは、彼の部屋へ招かれる程に親しくなっていく。人情家なゴーランドは、狂った住人達が多いハートの国においては珍しい常識人だ。それが親しみと安心感を呼んだのか、本来ならばひねくれ者で他人には素直になりきれない筈のアリスも、その心の内を簡単に開いていき、彼との距離を縮めていく。
そんなアリスの様子にゴーランドの方も心惹かれ、次第にその気持ちは余所から来た珍しい「余所者」に対する好意から、1人の女性へ向けた好意に変化する。しかしアリスとの年齢差や他の奴らと比べた時にアリスの心を射止める魅力がない事から、上手くアプローチできずに毎度失敗してしまう。さらにアリスが「ゴーランドといると安心する」というような事を言った為、ゴーランドは彼女に自分が男として見られていないと思い焦る。そうして焦りの末にアリスにキスをしてしまう。しかしそれが逆にアリス自身にゴーランドを強く意識させるきっかけとなり、以降少しずつアリスはそういった意味でゴーランドの事を見るようになる。
結果、気がついた時にはアリスはゴーランドに恋をしていた。だが過去のトラウマから恋に臆病になっていたアリスは、恋をする事でおかしくなってしまうかもしれないと怯えるようになる。それでもゴーランドと共に過ごしていく内に、そんな心も解けていき、ゴーランドを好きな事を受け入れるようになる。
そうした日々の中、ついにアリスの持っている小瓶の中身がたまり、現実に帰るか否かの選択の時やってくる。アリスは悩んだ末、それでもやはり帰らなくちゃいけない、と考える。ゴーランドを思うと本当は帰りたくない、アリス。だが現実世界に残してきてしまった姉や家族の事を考えると、ゴーランドの優しさに頼るのは悪い事のように感じてしまい、「自分は幸せになってはいけないのだ」という脅迫概念のもと、元の世界へ帰ろうとする。だがそこへゴーランドがやってきてアリスを引き止めてきた為、アリスは彼と共にハートの国に残る事を決める。
自分の思いに素直になる事ができたアリスは、この出来事がきっかけとなったのかゴーランドと居る時は恋に浮かれ、自分でもわかる程に馬鹿な思考をするようになる。だがそれは、アリス自身が恋に対して前向きになり、そんな自分を受け入れられるようになった証でもあった。そんな自分の変化を認めながら、アリスはゴーランド、そして遊園地の住人達と共に愉快なハートの国での日々を送り続けていくのだった。

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