大神(ゲーム)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『大神』とは2006年にCAPCOMより発売されたPlayStation 2用アドベンチャーゲーム。
古代日本や昔話をモチーフにした世界観であり、水墨画を思わせるグラフィックが特徴。伝説の大神であるアマテラスが、イッスンら仲間たちと共に妖怪たちと戦い、荒廃した世界を蘇らせていく。第10回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門大賞受賞、2007年度日本ゲーム大賞優秀賞受賞など、高い評価を受けている。

『大神』の概要

『大神』とは2006年にCAPCOMより発売されたPlayStation 2用アドベンチャーゲーム。2009年にはWiiに移植されている。
HDリマスターされた「絶景版」が2012年11月1日にPlayStation 3発売されたほか、 2017年12月13日にPC版(Steam版)、同年12月21日にPlayStation 4版、Xbox One版が発売。最新版であるNintendo Switch版は2018年8月9日に発売されている。また、続編にあたるニンテンドーDS用ソフト『大神伝~小さき太陽~』が2010年9月30日に発売されている。平成18年度(第10回)文化庁メディア芸術祭のエンターテインメント部門大賞受賞。2007年度日本ゲーム大賞優秀賞受賞。アメリカのゲーム情報ウェブサイトであるIGN主宰のThe Best of 2006でOverall Game of the Year(最優秀賞)を獲得するなど、国内外で高い評価を受けている。
しかし、高い評価を受けながらも発売当初は出荷本数が伸び悩んだ。2009年3月時点で全世界60万本しか売れなかったことから、2010年に「最も商業的に成功しなかったGOTY受賞作品(Least commercially successful winner of a Game of the Year award)」としてギネス世界記録に認定されている。その後、2018年には「動物キャラクターが主人公の最も評価の高いゲーム(Most critically acclaimed video game starring an animal character)」として二度目のギネス世界記録に認定された。
本作において最も特徴的なのが「筆しらべ」というシステム。画面上に墨で図形を描くことによって、敵に攻撃を加えたり、仕掛けを解くことができるというもの。
この「筆しらべ」が温かみのある和風のグラフィックと合わさり、まるで絵物語の中に入り込んだような没入感を味わえるのが本作最大の魅力と言える。
タイトルの『大神』は、主人公のモチーフが「天照大神」であることと、姿かたちが「狼」であることの二通りの意味が込められている。
この作品の舞台となるのは、古代日本をモチーフにした自然あふれる世界・ナカツクニ。
物語は100年前のヤマタノオロチ退治伝説から始まる。英雄イザナギと不思議な白狼、白野威(しらぬい)によって封印されたヤマタノオロチ。だが100年後、何者かの手によって封印が解かれ、ヤマタノオロチが復活してしまう。世界が闇に覆われようとする中、ご神木の精霊・木精サクヤ姫は大神・アマテラスを現世に復活させるのだった。

『大神』のあらすじ・ストーリー

プロローグ

ヤマタノオロチと戦うイザナミ(中央)のシルエット

桜の咲き誇る美しい村、神木村には昔から悲しい風習があった。それは怪物・ヤマタノオロチを鎮めるため、毎年祭りの夜に若い娘を生贄として捧げるというもの。
そして毎年神木祭の満月の夜が近づく頃、神木村に現れる1匹の白い狼がいた。その名は白野威といい、ヤマタノオロチの使いとして生贄を品定めしているなどと、村人から忌み嫌われていた。
そして100年目の神木祭。生贄を選ぶ白羽の矢が突き刺さったのは村一番の美女・イザナミの家だった。
イザナミに恋心を寄せていた剣士・イザナギは生贄を阻止しようと、イザナミの代わりにヤマタノオロチの潜む十六夜の祠(いざよいのほこら)へ赴く。
懸命にオロチに立ち向かうイザナギだが、鋼のようなオロチの体には傷一つ付けることができない。絶体絶命に追い込まれたイザナギを救ったのは、あの白野威だった。
白野威の力を借りたイザナギは、手にした宝剣・月呼によって何とかオロチを討ち果たす。しかし白野威はオロチとの戦いで傷つき息を引き取ったのだった。
それから100年後。何者かによって宝剣「月呼(つくよみ)」が引き抜かれ、ヤマタノオロチが復活してしまう。世界の危機を感じ取ったご神木の精霊・木精(もくせい)サクヤは神木村の白野威像からアマテラスを復活させ、ナカツクニの命運をゆだねるのだった。

ヤマタノオロチとの戦い

神木村~神州平原

復活した断神から「一閃」の筆しらべを得る

復活したアマテラスはさすらいの絵師・イッスンとともに神木村のご神木・コノハナ様内部へと入る。そこでアマテラスから分かれた13の筆神のうちの一柱、「画竜」を司る蘇神(よみがみ)と出会う。他の筆神が世界各地に散らばっていることを知ったアマテラスは、筆しらべの力を取り戻す旅に出る。
イッスンは、アマテラスの筆しらべの技を盗むため、旅に同行することを決意する。
更に内部へ進み、天の川を渡ってイザナギ窟にたどり着いたアマテラスたちは、そこで断神(たちがみ)と出会い「一閃」の筆しらべを取り戻す。
神木村に戻ってみると、空はいまだ闇に包まれ、住民たちは石にされてしまっていた。アマテラスに唯一残されていた「光明」の筆しらべの力で空に太陽を取り戻すと、ようやく村は普段の姿を取り戻した。
サクヤの話では、神木村以外の場所もオロチの邪気による被害を受けているとのこと。しかし村の入り口は大岩によってふさがれている。
岩をなんとかするためアマテラスが連れてきたのは、英雄イザナギの子孫であり、村一番の剣士と自称するスサノオだった。しかしこのスサノオ、酒がないとやる気が出ないだとか精神集中と称して居眠りするとか、とにかく役に立たない。
仕方なくアマテラスがスサノオの太刀筋に合わせて「一閃」を振るうと、岩は真っ二つに断ち切られた。さすが村一番の大剣士と褒められ、調子を良くしたスサノオは、ナカツクニ中の妖怪を退治すると豪語し村を飛び出すのだった。

神州平原に出ると、そこは妖気によって汚染された不毛の大地と化していた。
この地を蘇らせるためには、神木村のご神木・コノハナ様と根を同じくする「塞の芽(さいのめ)」を咲かせる必要がある。
手がかりを求めて、アマテラスたちは花咲谷へ向かう。
そこで花神(はながみ)から筆しらべ「桜花」を会得。「桜花」の力で花咲谷と神州平原の自然を取り戻すことに成功する。
「塞の芽」を蘇らせたことによりサクヤ自身もかつての力を取り戻し、神木村に再び桜が咲き誇った。

アガタの森~高宮平

アマテラスたちの前に現れるウシワカ

アマテラスたちは神州平原を抜け、アガタの森を進む。
そこで現れたのが、陰陽師ウシワカ。アマテラスと手合わせしたウシワカは、その力が以前と比べ衰えていることを見抜く。そしてヤマタノオロチのことを調べていると語り、「スリル満点丸太でゴー!」という意味深な予言の言葉を残して去っていった。
森を進むアマテラスは、次に少年コカリと出会う。彼の飼い犬の梅太郎がツタ巻遺跡の奥に取り残されていると聞き、遺跡へと向かうことに。
ツタ巻遺跡に巣くう女郎蜘蛛を倒し、無事梅太郎を助け出したアマテラス。
聞けば、コカリと梅太郎は、高宮平へ渡るための橋を架けようとしていたという。
そこへ、新奥義の特訓をしていたスサノオが上流から流れてきた。スサノオと共に丸太で急流を下るトラブルもあったが、なんとか橋を架けることに成功。
アマテラスたちは橋を渡り、高宮平へと足を踏み入れる。

高宮平もまたタタリ場に侵食され、かつての美しさを失っていた。
そこへ再びウシワカが現れる。ウシワカは、ヤマタノオロチが潜む十六夜の祠へ入るために、「結晶のヘビイチゴ」を探していると語る。その在処が大風車かもしれないと呟き、どこかへと姿を消していった。
ウシワカの言葉を頼りに、巨大な風車のそびえたつクサナギ村を訪れたアマテラスたち。そこで風神宮の宮司・フセ姫から風神宮が大妖怪赤カブトの手に落ちたことを知る。
そのせいで風神宮のある神路岳(かみじだけ)から吹く神風が止み、村は邪悪な妖気に満ち溢れていた。
赤カブトを倒すためには、風神宮の結界を破らなければならない。そのためにナカツクニ中に散らばる里見八犬士を集めてくるよう、フセ姫から依頼を受ける。
各地を巡り八犬士を集めるアマテラス。
その途中、笹部郷ではスズメ組親分の娘・チュンジャクを妖怪の手から救い出した。
神木村やアガタの森でも八犬士から力の込められた宝玉を受け取り、ついに結界を破る用意が整った。里見八宝玉を身にまとい、風神宮に乗り込むアマテラスたち。
後から追ってきたスサノオの加勢もあり、赤カブトを打ち倒す。しかし「水晶のヘビイチゴ」はウシワカに横取りされてしまうのだった。

十六夜の祠

オロチと対決するスサノオ(右)

その頃、神木村ではちょうど祭の夜を迎えていた。
アマテラスたちが神木村に戻ると、スサノオが神に供える「八塩折之酒(やしおりのさけ)」を飲みほして家に閉じこもってしまったという。酔っぱらったスサノオは、自分こそがヤマタノオロチを解き放った張本人だと告白。
村人たちが騒然とする中、100年前の神話の通りに生贄を選ぶ白羽の矢がクシナダの家に突き刺さった。
スサノオがきっと助けに来てくれると信じ、たった一人で十六夜の祠へ向かうクシナダ。
自分の作った雷撃酒でヤマタノオロチを倒してみせると息巻くクシナダを背中に乗せて、アマテラスは祠へ走る。
十六夜の祠へ着くと、そこにはすでにウシワカの姿があった。
結界を解いたのはウシワカだが、祠に入れたのはアマテラスとクシナダだけ。奥に引きずり込まれたクシナダを探して、アマテラスは最深部を目指す。

ヤマタノオロチと対峙するアマテラス。しかしオロチの全身は結界に守られて攻撃が効かない。
そこにスサノオが現れる。ヤマタノオロチから血の盟約を結ぶよう誘惑されていたスサノオだが、その誘惑を振り切り、自らの意思でヤマタノオロチを倒すと宣言する。
その瞬間、地面にこぼれていた雷撃酒が黄金に輝き始めた。
黄金の酒「八塩折之酒」の力を借り、オロチを追い詰めるアマテラス。
スサノオが愛剣「闘片撲(とうへんぼく)」を月光にかざすと、刀身が金色に輝き始めた。その剣でヤマタノオロチの首を次々に斬り捨てていく。
そして最後は、アマテラスの力を借りることなく、スサノオ自身の力でオロチを真っ二つに断ち切ったのだった。

キュウビとの対決

両島原~西安京

病の霧を吐き出す宝帝

アマテラスとスサノオの活躍によってヤマタノオロチは倒されたが、その怨霊が4つに分かれて四方に飛び去ってしまった。両島原(りょうしまばら)の先、西安京の都でも未だ妖怪の気配は絶えず、多くの人々が苦しんでいる。
アマテラスはナカツクニの平和を取り戻すため、そしてまだ失われたままの筆しらべの力を取り戻すため、再び旅立つのだった。

関所を抜け、西安京に到着すると、そこは濃い霧に包まれ病が蔓延していた。
都が危機的な状況なのにも関わらず、西安京の女王ヒミコは神殿に閉じこもって姿を現さない。そのため、西安京の実権は摂政である尼僧・ツヅラオが握っていた。
そのツヅラオから、妖魔の軍勢を退けるために力を貸してほしいと頼まれる。
ツヅラオの求めに応じて、両島原沖合の難破船へ神器「キツネ管」を探しに向かうことに。
しかし難破船にキツネ管はなかった。代わりに打ち出の小槌を手に入れ脱出すると、アマテラスたちは付近の海を荒らす水龍に襲われる。
命からがら西安京へ戻ると、打ち出の小槌が1軒の屋敷を指し示す。そこは都の権力者・宝帝の屋敷であり、謎の霧の発生源となっていた。
打ち出の小槌の力で小さくなったアマテラスは、宝帝の屋敷に潜入する。
病の霧を発生させていたのは、宝帝の体内に巣くう妖怪エキビョウだった。アマテラスは宝帝の体内にはいり、エキビョウの本体である妖刀「金釘」を退治する。しかしヤマタノオロチの時と同様に、金釘の怨霊は海の向こうへと飛んで行ってしまった。

笹部郷~龍宮

ロケットを見送るアマテラス(左)と竹取翁(右)

エキビョウを倒し、西安京に平穏が戻る。
しかし宝帝の屋敷に囚われていた少女、カグヤは解放されたにもかかわらず浮かない表情をしていた。カグヤはやらなくてはいけないことを思い出したと言い、笹部郷へ急ぐ。
カグヤに導かれるまま笹部郷の地中を掘ると、巨大な鉄のタケノコ型ロケットが現れた。カグヤは育ての親である竹取の翁との別れを済ませると、そのロケットに乗り出生の地へと飛び立った。

カグヤからもらった「火避けの石簡」を身に着け、女王ヒミコの神殿へ入ると、ヒミコはアマテラスたちを待ち受けていた。
ヒミコの話では、西安京で起きている事件の元凶は妖怪たちの牙城・鬼ヶ島にあるという。ヒミコは鬼ヶ島の出現する海域を探るため、「千里水晶」という宝物を用い祈祷を続けていた。
そして鬼ヶ島へと渡るために、猛り狂う水龍を鎮めてほしいとアマテラスに懇願する。
その願いを聞き届けたアマテラスは、水龍を制御する方法を知るため龍神族の国・龍宮へと向かう。

龍宮の使者・シャチ丸の背に乗り、海底にある龍神族の国にたどり着いたアマテラスたち。
龍神族の長・オトヒメの話によれば、荒れ狂う水龍を操るためには、その体内にある「龍玉」を手に入れる必要があるとのこと。
アマテラスは水龍の体内へ飛び込んだ。そこで「龍玉」とともに妖器「キツネ管」を手に入れる。
水龍の体内を脱出した後、アマテラスたちの前に風格ある初老の男が現れた。彼こそが水龍となっていた龍王ワダツミ。
ワダツミは、妖魔王から「キツネ管」を奪ったものの、その妖力のせいで自我を失っていたと語る。そして、自分の心の臓である「龍玉」を妻オトヒメに渡してほしいと最期に言い残し、海の底へ沈んでいった。
龍宮に戻ったアマテラスを待ち受けていたのは、尼僧ツヅラオ。ツヅラオはアマテラスから「キツネ管」を受け取ると、意気揚々と都へ戻っていった。
ワダツミの遺言に従い、オトヒメに「龍玉」を渡そうとしたその瞬間。「龍玉」に映ったのは、ツヅラオが強大な妖怪に襲われる場面だった。

鬼ヶ島

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