谷垣源次郎（ゴールデンカムイ）とは【徹底解説・考察まとめ】

アイヌの人たちは占いを深刻にとらえ、夢においては「予言」とまで信じていた。孫娘の身を案じるフチの表情に不安が張り付いていた。その後、フチはアシㇼパに二度と会えなくなるという不吉な夢を見てしまう。心配で体調も崩してしまうフチ。「信じてしまったことが問題だ」と思った谷垣は「アシㇼパを無事にフチの許へ帰す それが俺の使命だ」と感じる。命を救ってくれたアシㇼパとフチに恩を返すことこそが、自分の役目であるのだとの思いに至ったのだ。恐らくこの時谷垣は少なからずフチに自分の母親の思いを垣間見たのではないだろうか。
心に闇を抱え、命を当たり前のように奪い奪われ、また命令には絶対服従を誓わされる戦争に身を置いてきた谷垣が、故郷を捨ててからずっと探してきた「自分の生まれてきた役目」を見つけたのだ。

旅立ちの日、オソマは片方だけのテクンペ（手甲）を谷垣に渡した。アイヌの女性が好きな男性に送るものだという。フチに手伝ってもらってまだ幼いオソマが谷垣のために一生懸命に作ったものだ。谷垣はそれを受け取り「必ず戻るからもう片方作っておいてくれ」とオソマに言った。フチは谷垣の「憑神」に旅の無事を願ってくれた。
「必ず無事にアシㇼパを連れて帰る」と約束し、傷の癒えた谷垣はアシㇼパたちを追う旅に出る。

役目を果たす旅へ

道連れ

アシㇼパたちは網走へ向かうと言っていた。それを追う谷垣の旅に、インカㇻマッがついて行くと言う。「なんであんたが一緒に行くんだ？」と問う谷垣に彼女は「ワタシ顔に傷のある男性に弱いんです」と答えにならないような答えを返す。この時、谷垣はインカㇻマッが鶴見中尉と内通していることなど夢にも思わない。インカㇻマッは鶴見中尉の指示で谷垣に接触してきたのだった。

アシㇼパたちの情報がないか聞き込みをしながら、茨戸まで来た谷垣とインカㇻマッの前にチカパシが現れる。谷垣たちが村を離れた時から後をこっそりとついて来ていたのだ。気付いていたがいずれ諦めるだろうと谷垣は思っていたのだ。「みんな心配しているだろうからコタンに帰れ」と言う谷垣にチカパシは「家族はみんな死んだ。待っている人もいない。俺も連れて行って」と頼んだ。インカㇻマッは、チカパシを連れて旅をすることは「吉」だと占いで出ている、家族のフリをして旅をすれば怪しまれずに済むと言った。嬉しそうに、「家族の設定」を考えるチカパシは言った。「インカㇻマッは俺のお姉ちゃん！オッパイを触っても全然怒らない！」「谷垣ニㇱパは隣に住んでる金玉がでっかいひと！」
「チカパシ、それは他人だ」と谷垣は答えた。

インカㇻマッは旅銭を稼ぐのに、道端で占いを披露していた。その傍らで谷垣は「おたくは何を売ってる行商人なの？」と薬売りに声を掛けられた。「俺は何も売ってない」と答える谷垣に「いいねえ 俺もあんなめんこい子のヒモになりてぇよ」と言われてしまう。ヒモではない、と訂正する前にチカパシが豆菓子が買いたいと言ってインカㇻマッに「お金ちょうだい？」と元気よく金銭をせびりにいくのであった。

トカチ

話しかけられた薬売りに聞いてみると「アイヌの小さい女の子を連れた三人の男」を夕張で見たと言う。熊胆を売りつけてきたガラの悪い三人で、軍帽の男は多分極悪人だと。アシㇼパたちに違いない。地図を確認しながら、「軍都」と呼ばれる第七師団の巣のような街である旭川は迂回していくだろうと考えていた谷垣は「十勝へ向かって行ったのかも知れない」と、次に向かうであろう土地に目星をつけていた。トカチとトカㇷ゚（おっぱい）を聞き間違えたチカパシは、トカㇷ゚と連呼しながら嬉しそうにインカㇻマッの胸を見ながら元気に歩き、「インカㇻマッをチラチラ見るんじゃないチカパシ！」と谷垣にたしなめられていた。

夕張に入り「ヒモは良くない 自分たちの食い扶持は稼がなくては」と狩猟のため森を訪れた谷垣とチカパシ。ヒグマがフキを食べた跡を見つけるがその跡は古く、近くにいるわけではなさそうだ。
アイヌには熊除けのおまじないがあり、男も女も「局部」を出して見せるとヒグマは逃げて行くのだという。「ヒグマが来たらちんちん出してくれる？」と谷垣にチカパシは尋ねるが「俺はヒグマが襲ってきたらこれで撃つ」と言って二瓶の形見の村田銃を見せる。
「ちんちん出しながらヒグマ撃つの？かっけえ」と目を輝かせるチカパシに「いや…ちんちんは出さない」と答える谷垣であった。

替え玉の千里眼

「御船千鶴子」とは。

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その頃街ではインカㇻマッは一人の男に声をかけられていた。スーツを身につけ、大人しい雰囲気の男だ。「すみません！このへんで…」と尋ねる男の言葉を遮り、「当てましょう 当たったら鑑定料をいただきます」とインカㇻマッは答えた。
「あなたは 血縁でも恋人でも友人でもない関係の女性をさがしている あなたは その人を利用してお金を儲けようとしている だから女性は逃げた」
突然のインカㇻマッの宣託に男の表情は邪悪に豹変し、持っていた拳銃を突きつけながら言った。「逃げる千鶴子に会ったんだな？だから知ってるんだ」

男の探している女性とは「千里眼」で熊本の炭鉱脈を探し当てたこともあるという有名な超能力者で、大学教授ですらその能力を認めた「三船千鶴子」であった。男がこの地に来たのは、千鶴子の噂を聞いたのであろう夕張の炭鉱会社が、新しい炭鉱脈を見つけることを依頼したからだ。とは言うものの、どうも男はその能力を信用している訳でもなさそうだ。炭鉱脈が見つかれば棚ボタで、見つからなくてもそれなりのアゴアシ代とちょっとした謝礼を取り立てる。そんな騙すことを前提としたやり方に嫌気がさし、千鶴子は逃げた。これから炭鉱会社の「お偉いさん」に会う約束なのに、「金づる」の千鶴子に逃げられた男はインカㇻマッに千鶴子の代わりをやれと脅してきた。

「熊本で炭鉱を当てたっていうのも棚ボタだったんですか？ 青原さん」とインカㇻマッは男の名前を呼んで尋ねた。「千里眼なんてあるわけねえだろ？」と青原は答えるが、名乗ってもない自分の名前を当てられ気味の悪さを覚え顔色を失う。「やっぱり千鶴子に会ったんだろ？」と疑う青原にインカㇻマッは「さっきご自分で言いましたよ 「青原」って」と涼しい顔で答えるのであった。

探しているもの

炭鉱会社の3人の面々と会った青原とインカㇻマッ。3人の中でも佐伯という人物は「千里眼」に懐疑的で、手始めに封印の施された封筒の中身に何が書かれているのかをまずは当てて欲しいと申し出てきた。ここでは集中できない、と断る青原に佐伯は「監視されていては透視出来ないそうですね？」とさらに疑念をぶつける。炭鉱脈の透視を依頼してきたのはそちらなのに疑うのならば帰る、と去ろうとする青原を佐伯以外の会社の人間は引き止めた。
「場の雰囲気が悪ければ千鶴子の透視能力も落ちる」と文句を述べる青原をしり目に、インカㇻマッは「イフミヌ（千里感。自分の体を山と一体化させ、体の感覚で当てるのだという）」を用いて「探しているもの」の探索を始める。「余計なことはするな」と小声で脅す青原の言葉には耳を貸さず、インカㇻマッはその場の面々を引き連れて、探しているものの場所へと案内を始めるのであった。

一方、森へ狩猟に出かけていた谷垣とチカパシは結局獲物を見つけることができず、空腹のためインカㇻマッに食事をご馳走になるべく街へ戻って来ていた。
「あのオッパイ、インカㇻマッじゃない？」とチカパシは替え玉にするため青原に和装に着替えさせられていたインカㇻマッを目ざとく見つけ、谷垣に報告した。「いつもながら怪しい女だ」と男たちを引き連れて歩くインカㇻマッを見て、谷垣はいぶかしむ。そして人相の悪い二人組の男がさらにその後をつけていることにも気づいた。

熊除けのおまじない

インカㇻマッが男たちを引き連れて案内した場所には一人の女性が佇んでいた。インカㇻマッが「三船千鶴子さん？」と声をかけると、千鶴子は青原に目をとめ「お義兄さん…どうしてここだと？」と言い、自分の逃げた場所がバレたことに驚いた。インカㇻマッが見つけ出したのは鉱脈ではなく、三船千鶴子であった。
千里眼を疑っていた佐伯が「詐欺の片棒を担ぐのが嫌で逃げ出した義妹さんの替え玉を立てたのでしょう」と看破し、炭鉱会社の面々は引き揚げて行った。その場に、インカㇻマッたちの後をつけていた二人の男たちが合流した。青原の仲間であったようだ。儲け話を潰された青原は怒り心頭で、去ろうとしていたインカㇻマッに銃で狙いをつけ「金づるになるかもしれん」と仲間に捕縛を命令し連れ去ろうとした。

その時、街中で目撃したインカㇻマッを心配し、後をついてきて見守っていた谷垣とチカパシが助けに入った。谷垣は「その女は俺の家族だ」と言い、青原たちの前に立ちはだかった。谷垣の突きつける古い型の村田銃が連射できないことを見てとった青原は「次の弾を込めるのに何秒だ？一発で仕留める自身はあるのか？」と自身の持っている連射ができる拳銃をチラつかせながら不敵に尋ねた。その言葉を聞くがいなや谷垣は青原の銃を持つ手に発砲、すぐさま隣にいた男を銃で殴り倒した。青原の手にあった銃は弾け飛んだが、最後に残った男がその銃を拾いに走った。すぐさま次の銃弾を村田銃に込める谷垣。最後の男が青原の銃を手にし発砲しようとしたその時、チカパシが下半身を丸出しにして男の近くに立ったのだ。

チカパシに驚き、一瞬動作が遅れた男の肩を谷垣は正確に撃ち抜き、場にいた3人の男を全員を倒すことができた。

家族だから

無事にインカㇻマッを救出することができた谷垣とチカパシ。「助けにきてくれたんですね」というインカㇻマッに「礼ならチカパシに言うんだな」と谷垣は言った。見捨てるつもりもなかっただろうが、インカㇻマッに対して「何を考えているのかわからない女だ」と不信を感じていた谷垣にチカパシは「俺たちは家族のフリするんでしょ？インカㇻマッは一緒に旅をする家族だから、怖いけど戦って助けないと！」と言っていたのだ。チカパシの幼いが勇気ある優しい思いに、谷垣はインカㇻマッの救出に動き、そしてまたインカㇻマッの心にも感謝の思いと温かい感情が芽生えたのだ。

早くここを立ち去り、おごるから美味しいものでも食べに行こうとインカㇻマッは谷垣とチカパシに声をかけて歩き出した時、三船千鶴子が「あなたたちは東へ向かうのですね？」と声をかけてきた。
事情を知らない谷垣は声をかけてきた彼女が何者なのか、そしてなぜ自分たちの向かう方角がわかったのか知らない。また千鶴子も彼らの事情など全く知らないはずなのだ。千鶴子はインカㇻマッに「行ってはいけません あなたは殺されてしまいます あなたが追っている男によって…」と言った。そう、彼女もまた「本物」の予言者であった。

死装束

釧路に到着した谷垣一行は、郵便局に立ち寄っていた。返信がこの郵便局留めできているはずだという。夕張を立つときにフチの様子を聞くためにアシㇼパの叔父のマカナックㇽに電報を送っておいたのだ。そして返信にはこうあった。「フチ ライクルシユク ツクル」
ライクルシユクとは死装束のことで、死期を意識したアイヌの老人が家族に隠れて自分で作るものだという。フチの様子を想い、心の痛む谷垣はインカㇻマッに「どうしてあんなことを言ったんだ…」と聞くが「私は占いで出たことを伝えたまでです アシㇼパさんのまわりに裏切り者がいます」と宣託には間違いないことをきっぱりと繰り返すのだった。不安と焦りに黙り込む谷垣にチカパシが「フチ死んで欲しくない フチは俺にもごはん食わせてくれた」と言った。そう、チカパシはただこの旅について来ているだけではない。谷垣と志を同じく、フチの身を案じアシㇼパを無事に見つけ出すことを彼なりにも使命としているのだ。チカパシの言葉に谷垣は改めて一刻も早くアシㇼパの無事を確認せねばと、心を奮い立たせるのだった。

合流

事件

刺青の囚人の情報を追って、釧路湿原で野営をしていたアシㇼパ一行。同行している白石と※尾形（※尾形は茨戸で土方歳三一派に入り、杉元たちは夕張で土方歳三一派と協力関係を結んでいる。ちなみに三船千鶴子がたたずんでいた場所は焼け落ちた江渡貝邸の前だった。）を残し、杉元とアシㇼパは食糧になる獲物を狩るため森の中にいたが、そこで死んでいるオス鹿を見つける。メッタ刺しにして殺され、なんの処置もせずに放置されている状態を見てアシㇼパは気味の悪いものを感じ、お祈りだけして去ろうと杉元を促した。そして湿原で美味しくはないが丹頂鶴を捕まえることができ、食事をしていた一行をチカパシが見つける。だがそこに谷垣はいなかった。
インカㇻマッが言うには谷垣は昨日から地元のアイヌの人たちに追われているのだという。このあたりでは最近、家畜や野生の鹿を惨殺して粗末に扱う人間がいるらしい。どうやら地元のアイヌたちは「カムイを穢す人間」が谷垣であると誤解し、制裁を加えるべく追っているのだ。チカパシとインカㇻマッを危険に巻き込まないよう、谷垣は単独で逃げているとのことだった。

谷垣一行は今から4日前、森の中で地元のアイヌの男たちと出会った。男の一人が「その村田銃 二瓶鉄造のものではないか？」と谷垣に聞いてきた。「どうしてそれを？」と尋ねる谷垣に男は、二瓶とは10年以上前にヒグマを一緒に狩ったことがあるのだと教えてくれた。そして、その時持っていた彼の村田銃の銃床には小さな7本の傷が付いていたのだと。まさに谷垣の持つ二瓶の形見にはそれが付いていた。二瓶は死に、自分が銃を引き取ったのだと谷垣はアイヌの男に説明した。
アイヌの男たちと別れたあと、また一人の男に出会った。谷垣一行は知る由もないが、この男こそが杉元たちの追っている刺青の囚人「姉畑支遁（アネハタシトン）」であった。姉畑は大自然とそこに生きる生物を心から愛しているのだと言い、色々な動植物のことをシカパシに教えてやるのだった。チカパシも色々なことを教えてくれる姉畑に心を開き、よくなついた。出会ったその日、一緒に野宿をしたが翌朝には姉畑の姿はなく、谷垣の持っていた二瓶の村田銃と銃弾も消えていたのだという。姉畑が持ち去ったのだ。

犯人

さきほど森の中で死んでいたオス鹿を思い出し気になった杉元は、確認しようとアシㇼパとともに再び森に向かった。すると、殺されたオス鹿を手厚く送っている最中のアイヌの男がいた。彼は森の中で、谷垣が二瓶の銃を持っていることについて尋ね、そして現在谷垣を追っているアイヌの男たちの中の一人だった。
「犯人は捕まったのか？」と問いかける杉元に「時間の問題だろう。我々は犯人を知っている。」と男は答えた。アシㇼパが「その男が鹿を惨殺するのを見たのか？」と尋ねると「二日前に銃声を聞き、その場所に行ってみるとメスの鹿が死んでいた。その傍らには間違いなく谷垣の持っていた二瓶の銃があり、それを見止めた瞬間、後ろから何者かに殴られ気を失った。」と男は言った。男が意識を取り戻し、死んでいるメス鹿を調べてみると、今送っているオス鹿と同様に「穢されて」殺されていたのだ。殴られる前に確かに見た二瓶の銃もその現場から消えていた。
「谷垣はそんなことをする男じゃない」とアイヌの男に話す杉元。
「人間が鹿と※ウコチャヌㇷ゚コロしても子供なんか出来ないのに…」人間が動物と交わり、挙句の果て殺してしまうという行為の理解に苦しむアシㇼパ。「無理やりウコチャヌㇷ゚コロして カムイを穢すやつは絶対許さない 必ず私たちで捕まえてやる！！」真犯人を捕まえ、谷垣の疑いを晴らすために勇むアシㇼパと「ウコチャヌㇷ゚コロ」のごろの良さになんだか何度も呟いてしまう杉元だった。

（※ウコチャヌプコロを単語に分解すると、ウ＝お互いに コ＝～に対して チャヌプ＝知る、分かる コロ＝持つと、なるので、お互いに知り合う、というのが言葉上の意味で、この場合には性行＝交尾を指す言葉であろう。）

その頃、谷垣は彼を追う銃を持ったアイヌの男たちに追い詰められていた。怒りにまかせ谷垣を殺そうとする男たちをギリギリのところを一発の銃声が止めた。「久しぶりだな 谷垣一等卒」そう言って姿を現したのは尾形だった。

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