Plague Inc.(伝染病株式会社)のネタバレ解説・考察まとめ

Plague Inc.(伝染症株式会社)とは、イギリスのNdemic Creations社によって開発された基本無料のリアルタイム・戦略シミュレーションゲームである。致死的な伝染病を創り出し、これへ抵抗する全人類をいかに短期間で感染・絶滅させられるかを競う。
対応機種はAndroid・iOS。また、追加機能を実装した有料版が「Plague Inc: Evolved」としてSteamにて配信されている。

『Plague Inc.』の概要

Plague Inc.は、イギリスのNdemic Creations社によって開発、2012に配信された基本無料制のリアルタイム・戦略シミュレーションゲームである。対応機種はAndroid・iOS。また、Android・iOS版の課金要素を最初から解放したうえで、さらなる追加機能を実装した有料版が「Plague Inc: Evolved」としてSteamにて配信されている。

本作最大の特徴は、そのゲーム性にあるだろう。伝染病による人類の絶滅が目的、という衝撃的な内容であるため、通常であればそこから人類世界の肯定・否定、平和の追求あるいはそれへの警鐘などにテーマが派生し、盛り込まれるものだが、このゲームにはそのような繊細で情緒的、あるいは理知からはじまる理想、といった描写がまったくといっていいほど存在しない。

人格などを設定された登場人物や、それらが織りなす物語もほとんど存在しないため、プレイヤーは(自身が人類であるにも関わらず)さながら無感情にパズルを組み立てるかのごとく病原体をコントロールし、人類最後の一人が文字通り死に絶えるまで、伝染病を広めていく事になるのだ。

このゲームはWHO(世界保険機関)所属の専門家から監修を受けた作品であり、ゲーム内で描かれる病原体の挙動は、遊技性を損なわない程度に現実に沿った描写をされている(架空の病原体を除く)。
また、そのために発表当初より現実の世界で伝染病が発生するたびに注目を集め、ことに中華人民共和国の武漢にて新型コロナウィルス(COVID-19)が発生した際には、関連性の問い合わせがNdemic Creations社に殺到した(同社は「リアリティと教育性を追求したが、あくまでゲームである」とした声明を発表している)。

『Plague Inc.』 のあらすじ・ストーリー

明確な物語は存在しない。Plague Inc.(伝染症株式会社)というタイトルではあるが、ゲーム内でそのような組織は描写されていない(ゲームをはじめると「自分のつくった病原体が最初の一人に感染した」とされるだけ)。
先述の通り、ゲーム内容はパズルゲームさながらの実行と反映を繰り返すのみで、進行に従って明確な設定や物語が現れる、などという事もほとんどない。

人類を絶滅させんとする病原体は存在しても、それがなぜどうして出現するのか、それらが人類絶滅以降の世界になにか目的を持っているのか、などの設定は語られない、という事だ。要するに、非常にシンプルなのである。コンピュータゲーム黎明期によくあった、ひたすらプログラムを遊ぶためのゲームに近い要素を持っている。

対して、ゲーム中に起こるランダムイベントは豊富に存在する。
病原体が発見される、特効薬開発が開始されるといった基本的な進行要素をはじめ、オリンピック開催による感染拡大、航空機船舶の浄化技術進歩によって感染拡大が防止される、天変地異や戦争が起きた国家で人口が急減する、といった進行に影響を与えるイベントがある。

一方、単なるフレーバーテキストも多く用意されており、イタリアで配管工がカメを退治した、という往年のゲームファンなら笑ってしまうニュースが流れる(スーパーマリオ。カメの一族と永年のライバル関係であり、よく土管に潜る。またイタリア訛りの英語を喋る)など、プレイヤーを飽きさせまいとする工夫が見られる。
ただし、いずれもマップ上部にある検索バーのようなウインドウに文字が表示されるだけの簡素な仕様であり、派手なグラフィックや効果音の演出があるわけではない。

『Plague Inc.』 のゲームシステム

このゲームの目的は、自分が命名した新たな伝染病で人類を絶滅させる事だ。そのため病原体を全人類に感染させた後、死に至らしめなければならない、という事になっている。
現実の世界と決定的に違う事は「人間の感染者がいなければ伝染は起きない」という事だろう。
なので、ゲーム中では健常者が1人でも残っている状態で感染者が全員死亡すると、なぜか病原体も一緒に完全消滅してゲームオーバーになってしまうのだ(現実においては一旦収まったかに見えた伝染病が再発する事もあるように、病原体は様々な形で継続する)。

そのため、最初の感染者は自動的に発生するシステムになっている。伝染病を発生させる国家を選ぶと「○○病が初めて人間に感染した」という風にアナウンスが流れ、ゲームが開始されるのだ。

なお、ゲームはラウンド性となっており「伝染病の発生から人類を絶滅させクリアするか、病原体の根絶でゲームオーバー」までが連続するもので、ラウンドが終わると進行状況はリセットされる(スコアや実績、新たな要素の解放状況はリセットされない)。
また、ラウンド中の進行状況は一つのみしか保存できず、病原体を代えたりして新たにラウンドを始める場合には、進行状況を破棄するしかない。

追加コンテンツ

Cureモード

本来のゲーム目的とは真逆に、世界を震撼させる伝染病を撲滅させる事を目的とする。
ゲームシステムそのものはほとんど変わらないが、操作する各項目の名称が変化が顕著。
具体的には「DNAポイント→資金」「進化→検疫」「(固有)能力→事業」といった具合になる。つまりプレイヤーは通常モードでは病原体をコントロールしていたが、Cureモードではそれに代わって全国へ対策指示を出して特効薬創出までこぎ着ける、という設定に変わっている(ただし、そのような特殊機関や役職が創設されたという描写はされない)。

ゲームの流れも真逆だ。通常モードではいかに人類に存在を発覚されずに感染を広げるかが焦点となるが、Cureモードでは潜伏する病原体を「事業」によってあぶり出し、正体を現した病原体を「検疫」で抑え込み、特効薬創出までの時間を稼ぐのだ。
各操作には資金が必要になる。勝利条件も通常モードとは逆転し、特効薬の完成という事になっている。

また、BGMも通常モードでは病原体が世界を覆う様をおどろおどろしく演出していたが、こちらでは死の病へ抵抗する人類の悲壮感を表したものへと変わり、プレイを盛り上げる。
なお、難易度は通常モードに比べて高くなる傾向にある。

シナリオモード

有料コンテンツ。
シナリオモードとあるが、人物等が登場して物語が繰り広げられるのではなく、ゲームの進行状況が通常とは異なる状態で開始されるモードだ(たとえば航空機・船舶の移動が完全にせき止められた状態で開始するため、まずそこから突破していく必要がある等)。
シミュレーションゲームによくある、与えられた「お題」をクリアするモードだと解釈すれば解りやすい。

10種類以上のシナリオが存在する。
ごく一部は無料でプレイができるが、基本的には課金要素であり「シナリオパック」を購入しなければ遊ぶ事はできない。
また、このシナリオを作成できるアプリが別売りされており、購入する事で自分だけのシナリオを作成できる。作成したシナリオはゲーム内の「カスタムコミュニティ」にアップロードし、他のユーザーへ披露・共有する事も可能。

ゲームの進め方

プレイヤーがまず最初にやる事は、人類を絶滅させるための伝染病の「病原体」を選ぶ事である。Android・iOS版では、最初に選べるものは制限されているが、ゲームを進行させるか、課金する事によって、選択肢は増えていく。
病原体を選んだ後は、先にも書いたように最初の感染者を発生させる国家の選択となる。だが、なにも考えずに「じゃあ日本で」などと安易に決めると、つまずく。なぜなら国家にはステータスが割り振られており、日本ならば「裕福な国」で「伝染病に対して強い抵抗力を持つ」うえに「四方が海に囲まれているため、陸路で感染を広げられない」という具合だ。

さらに見ていくと、気候は寒冷なのか温暖なのか、都市部が多いのか、農村部が多いのか、空港と港湾の有無、などが細かく設定されている。これらが病原体の性質と影響し合い、感染拡大を安易にしたり難しくしたりするのである。
たとえばグリーンランドは寒冷な国で、空港がなく(もちろん現実にはいくつも存在する。あくまでこのゲームの設定である)港湾しかないため、病原体が低温や湿度の高い環境に弱いままだったり、あるいはグリーンランドが港を封鎖したりすると、感染が困難になるので手を打たねばならない、という風に攻略していく。

このため最初は「貧しい国」で「伝染病への抵抗力が弱い」うえ「陸路で多くの他国と接している」国家を選ぶとやりやすいだろう。

病原体と、感染を開始する国家を選べばゲーム開始となる。ここから先、プレイヤーに可能な選択は3つだ。
病原体が持つ各ステータス、つまり感染力を増減させる能力や、致死率を左右する症状などを「進化」させるか「そのまま」にするか「退化」させるのかである。

時間はゲームを起動している限りは放置していても進み、やがて病原体の存在が人類に察知される。すると特効薬(ゲーム内ではCureと表示される)の開発が開始され、この開発進行度が100パーセントに達すると病原体は撲滅された事になり、ゲームオーバーとなってしまう(正確には、みるみる感染者数が減っていき最後には病気が根絶された、となる)。

そのため、プレイヤーは実質制限時間のある中で病原体を全人類に感染させなければならない。だが、闇雲に伝染させようとするとあっというまに存在を察知されてしまうため、まずは存在がバレないようにする必要があるのだ。そこで基本となるのが無害なまま感染力だけを強めて伝染を広め、後は流れで全人類に伝染完了できるな、というタイミングで致死率を猛烈に進化させる戦略である。

その実現のために必要な病原体の各能力の進化には「DNAポイント」が必要なのだが、獲得機会は限られる。また能力の進化が段階制度となっており、高レベルの能力だけを獲得するという真似はできない。
そのため進化は慎重に選択する必要があり、たとえば暑い国でのみ活動できる病原体ならば、最初に気候変動に耐えられる能力を獲得できるように進化させ、しかる後により高い伝染力を獲得させ、そして猛毒な性質や、特効薬開発を遅らせる複雑性を得るなど、選んだ病原体や状況に必要な順番で獲得していく必要がある。

だが、それだけでは済まない。プレイヤーの操作する病原体は、それぞれがコントロールを阻害する性質を持っており、こちらの戦略成立を妨害してくるのだ。例えばウィルスであれば、その猛烈な変異性のために勝手に進化してしまう。まだ致死率を高められては困るのに致死的なウィルスになってしまい、その退化のために無駄にDNAポイントを消費させられてしまう、などの現象だ。
それらの発生は完全にランダムであり、プレイヤーの意思ではどうにもならない。このように、けっして思い通りにならない病原体というシステムがゲームに高い緊張感、そしてマンネリを防ぐ偶発性を生み出している。

ただし、逆説的にはいわゆる「運ゲー」の要素を多分にはらんでいるとも言え、実力さえあればクリアできるとは限らない。

ランダムイベントについて

先述の通り、ゲーム中ではランダムイベントが発生する事がある。
例えば「航空機・船舶の浄化技術が進歩した」などとアナウンスが流れ、病原体が海を隔てた国家へ流出しにくくなる等だ。こうなると浄化技術があっても病原体を生き残るように進化させなければならず、難易度が上がる。
また、それとは逆にオリンピックやフェスティバルのような、人が大規模に密集するイベントが起きて開催国で感染爆発するなど、プレイヤーが有利になる展開も用意されている。

これらの大半はランダムイベントの名の通り確立で発生するもののため、これもまたゲームの難易度を運によって左右させる。そのため、あまりにも都合の悪いランダムイベントが続出する場合には、一旦、やり直すのもひとつの戦略になりうる(伝染病発生から終了までの1ラウンドにかかる時間は、長くとも1時間程度で決着が付く事が多く、途中放棄のペナルティも全く設定されていないため、やり直すデメリットは小さい)。

『Plague Inc.』 の登場人物・キャラクター

先述の通り、物語などは設定されていないゲームのため、これといった登場人物は存在しない。そもそも病原体以外の、特定のキャラクターを構築するデータが、オブジェクトとしても数値としても存在していない。
ゲーム中のニュースという形で、画面上部に小さい文字が各国の研究者や政府関係者がこれこれの決定をした、というような情報や、感染者が急速に拡大している、などがそっけなく表示される程度。あえて、もっともキャラクター性がある存在を挙げるとすれば、自分が名付けられる病原体の数々となる。これについては、選択画面にもシルエットで病原体の拡大図が表示されており、明示的である。

『Plague Inc.』 のアイテム

ゲーム内にて使用できるアイテムは存在していない。たとえばDNAポイントを一気に獲得できる消費アイテムなどは一切なく、プレイヤーは自分の実力だけでゲームをプレイする必要がある。強いて言うならば病原体へ任意に取り付け可能で、有利な性質を引き出す「遺伝コード」という強化オプションがそれに当たる。
ただし、新たな伝染病の解放フラグ等を課金要素として組み込み有料の「○○パック」という体で販売しているので、これらを有料アイテムとして取り扱うか否かは、ユーザーの判断に任せられる。

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