夏油傑（呪術廻戦）とは【徹底解説・考察まとめ】

非術師の家に生まれる。どういった経緯で呪術の世界を知ったのかは不明だが、中学校を卒業した後の進路に呪術高専東京校を選ぶ。降伏した呪霊を隷属させる呪霊操術の遣い手であり、当時の担任である夜蛾正道の下で、真面目な優等生として頭角を表す。二年生になった頃には、プロにも困難な仕事を任されるほどの実力者となっていた。
五条悟ともこの時に知り合ったと思われ、当時から不真面目な面を覗かせていた彼と時にケンカをすることはあれど、互いの人柄と実力に絶対の信頼を置く親友同士となる。実力的にも双璧を成し、「二人で最強」を自負する名コンビとして活躍。様々な任務へと共に趣き、その言葉がただのうぬぼれではないことを証明する。ただし若さゆえか少々“やり過ぎる”傾向もあり、その都度五条ともども夜蛾から怒鳴られていた。

星漿体・天内理子の護衛

二年生になった時、五条と共に夜蛾から“星漿体の護衛と抹消”という任務を受ける。封じた呪霊や危険な呪具を多く管理する呪術高専の守りの要となっているのが、天元という呪術師の張っている強力な結界である。その天元は「不死の術式」を持つとされ、肉体が限界を迎えるたびに新たな肉体に自身の魂を移し替えることで自我を保っていた。その「新たな肉体」こそが星漿体であり、当代では天内理子という中学生の少女がそれに該当していた。
肉体の更新に失敗すると、天元は魂のみの存在となり暴走する可能性すらあるという。天元を暴走させることで呪術界の混乱を狙う呪詛師集団「Q」、天元を神聖視するあまり新たな肉体と同化して“不純物が混ざる”ことを厭う宗教団体「盤星教」といった組織が天内を狙うことが予想されていた。天元との同化まで彼女を守り、天元の下まで護送し、天元と同化する（＝肉体が天元のものとなり、天内理子自身の人格と魂は消滅する）までを見届ける。それが夜蛾から与えられた任務だった。

五条と二人で密かに相談し、「天内理子が同化を拒んだら、誰が相手だろうと自分たちで守る」ことを決めて任務に取り掛かる。自分は特別な存在なのだと高い自尊心を誇示する一方で歳相応の少女らしい面も見せる天内に手を焼きつつ、Qが送り込んだ戦闘部隊と交戦。五条と二人でこれをなんなく撃破する。
しかしその後次々と新手の呪詛師が現れ、矢継ぎ早に天内を狙ってくる。盤星教によって彼女の命に懸賞金がかけられたことを知り、五条ともどもその護衛に奮戦。天内の身内を救うために沖縄までも趣き、任務の垣根を超えて彼女らと一時の交流を果たす。

護衛を任された期間が終わり、天元のお膝元たる薨星宮本殿まで天内を護送。そこで盤星教に雇われた伏黒甚爾の襲撃を受けるも、殿を買って出た五条を残し、天内と共に本殿奥へと向かう。後は天元の下に送り出すだけとなったところで、「本当に天元と同化してもいいのか」と天内の本音を聞き出す。もっと身内や友達と一緒にいたいと言って泣き出す天内に、自分と五条が必ず守ると言い切って手を差し伸べる。そこに五条を下した甚爾が現れ、目の前で天内を撃ち殺されてしまう。
親友・五条をも「殺した」と言い放つ甚爾に静かな怒りと共に襲い掛かるも、用意周到かつ戦闘経験豊富な彼に上を行かれて敗北。「呪霊操術で蓄えた呪霊が暴走するかもしれないから」という理由でトドメは刺されなかったものの、長生きしたければ呪術も使えない自分に負けたことを忘れるなと嘲笑される。
学友でもある家入硝子の治療を受けて回復し、盤星教のアジトに向かうも、そこで自力で死の淵から帰還した五条と再会。甚爾に奪われた天内の遺体を抱え、天元との同化の阻止という目的を果たして笑顔満面の盤星教の信者たちから割れんばかりの拍手を浴びる五条から「コイツら殺すか」と怒りと憎悪に満ちた言葉を投げかけられる。「呪術師は呪術を使えない人々のためにその力を使うべきだ」との持論を述べて、この時はそれを諫めた。

親友・五条との決別

甚爾との死闘を経て、呪術師としてさらなる領域に駆け上がった五条は、「一人で最強」の存在となっていた。五条と共に三年に進級し、それぞれ特級呪術師の称号を得て、単独で動いた方が効率的との判断から一人で任務に赴くことが増えていく。しかしもっとも信頼していた五条と距離が生まれた結果、相談する相手もいなくなってしまい、盤星教のアジトで見た「自分たちが守るはずだった少女の遺骸を囲み、笑顔を浮かべる盤星教の信者（＝非術者）たち」という光景が忘れられず、日を追うごとに非術者への憎悪が増していき密かに「猿」と呼び捨てるようになっていく。
自身を尊敬してくれていた後輩の灰原雄が任務中に死亡したことを気に、「なぜ呪霊を生み出す非術師を守るために、呪術師（≒自分の大切な人）が死ななければならないのか」との想いを一層強くする。この時自身と同じ特級呪術師である九十九由基と出会い、半ば冗談のつもりで言った「非術師を皆殺しにすれば呪霊はいなくなるのではないか」という意見を肯定され、さらに悩みを深める。彼女から「なんらかの方法で天元は安定している」と伝えられ、自分たちが失敗した任務への意味について苦悩する中、任務で赴いた先の村で非術師に虐待される幼い呪術師の姉妹（美々子と菜々子）と出会う。ここに至って非術師を守ることの意味を完全に見失い、美々子と菜々子以外の村の人々を抹殺し、そのまま失踪した。

非術師を皆殺しにすることを決意し、手始めに「特別扱いはできない」として自分の両親を殺害。さらに“運試し”と称して家入の前に単身姿を現す。彼女からの連絡で駆けつけた五条と、友として最後の言葉を交わす。
“術師を守るために非術師を全滅させる”という自身の新たな目標に対し、できるわけがないと吐き捨てる五条に、しかし「君にならできるだろ」と言葉を返す。掲げた理想が地に足のついていないものであることを認めた上で、自分が五条と同等の力を得れば絵空事ではなくなると言い切り、「殺したければ殺せ」と言い残してその場を去る。何か策を用意していたのか、完全に無防備だったのかは定かではないが、少なくとも五条は去り行く夏油を呼び止めることもその背に向かって攻撃することもできず、夏油もまた単身で現れた五条になんら攻撃的な行動を起こさなかった。

呪詛師・夏油傑

盤星教の流れを汲む宗教団体に接触し、秘密裏に乗っ取る。資金と自身の戦力となる呪霊集めにこれを利用しつつ、「非術師を皆殺しにして、この世を術師だけの世界にする」という自身の目的を果たすため、仲間となる呪詛師を見つけていった。成長した美々子と菜々子、調整役のラルゥ、五条にも食い下がるほどの実力を持つミゲルなどの人材を得て、十年かけて“夏油一派”と呼ばれる組織を作っていく。その高い実力と、敵であれ術師の被害をできる限り少なくしようという“術師第一”の姿勢で、「彼は本気で“術師だけの世界”を作ろうとしている」と仲間からは尊敬を集めていた。
大量殺人を犯した恐るべき呪詛師として、呪術界ではお尋ね者となるも、のらりくらりと追跡をかわし、順調に準備を進めていく。それでも「呪術界全体と正面からぶつかれば勝率は二割」と見立てており、戦況を覆すための手立てを求めて奔走する。
明確に敵味方となった五条に対しては友情を捨て切れず、美々子と菜々子の前でも「親友だったがケンカしたままそれっきり」とどこか親しみと憧憬を込めて語っていた。

百鬼夜行

『呪術廻戦』の本編が始まる一年前、五条が見出した少年乙骨憂太に目を付ける。乙骨は無限に等しい呪力を秘めた特級呪霊祈本里香に取り憑かれており、これを御する術を学ぶために呪術高専東京校に転入していた。乙骨を殺し、祈本里香を取り込んで我が物とすれば、五条に匹敵する力を手に入れられると考え、そのための策謀を練る。
呪霊を放って意図的に事件を起こし、乙骨をそれに巻き込むことで彼の力量を測る。横槍さえなければ十分倒せると踏んで、五条たち呪術師たちに宣戦布告。新宿と京都に無数の呪霊を放つ「百鬼夜行」事件を起こす。仲間を双方の地に配し、呪術師たちと交戦させるも、その真の目的は“正面からでは勝てない五条を呪術高専東京校から引き離し、夏油と乙骨が直接対決できる状況を作り出す”ことにあった。

首尾よくこの状況を作り出し、意気揚々と呪術高専東京校に乗り込む。乙骨のクラスメイトである禪院真希や応援のために送り込まれた狗巻棘、パンダを一蹴するも、これが乙骨の怒りと爆発的成長を生む呼び水となってしまう。五条の下で育んだ才能を開花させ、祈本里香を受け入れたことでその無限に等しい呪力を自在に振るい出した乙骨に手を焼き、ついには互角の勝負に持ち込まれる。
最終的に極ノ番「うずまき」と祈本里香の全呪力との撃ち合いに敗れ、右腕を失う重傷を負いながら撤退。力尽き、路地裏で動けなくなっていたところ、百鬼夜行を鎮めた五条と出会う。

彼の口から「夏油の仲間たちには全員逃げられた」と聞いて安堵するも、手持ちの呪霊は尽きている上に深手を負っていてとても抵抗できる状態ではなく、また五条がここで自分を見逃すはずもないと静かに己の死を悟る。かつて親友だった頃のように、五条と最後の語らいに臨み、その際彼から告げられた言葉に呆れて「最期くらい呪いの言葉を吐けよ」と苦笑していた。
そのままトドメを刺されるも、親友をせめて人間らしく弔いたいとの思いから、五条は夏油の遺体を呪術的に解剖することを拒み独自に葬る。しかしこれが仇となり、五条の排除を目論む何者かによって遺体は密かに盗み出される。

偽夏油の傀儡として

遺体はその後脳だけを取り除かれ、そこに「脳に口がついた何者か」が納められることで完全な傀儡として利用される。夏油の体を操る者の目的は不明ながら、そのためには五条を排除する必要があるらしく、特級呪霊の一味と結託。そのブレーンとして暗躍する。
渋谷事変において、五条封印の決め手として参戦。それまで完全に姿を見せなかったこともあり、殺したはずの親友が現れたことに五条は動転。千載一遇の好機を見事に物にして五条の封印に成功する。
しかし五条は「俺の魂が偽物だと言っている」と言い切り、目の前の男が夏油その人ではないことを看破。これ見よがしに脳を見せつけるも、封印が完了する直前に五条から「そろそろ起きろ、いつまでいい様にされてんだ」と言われた刹那、突如自分で自分の首を絞めるという行動を起こす。これは夏油の遺体を奪った存在にとっても完全に予想外の出来事だったらしく、「肉体は魂であり、魂とは肉体だ」と興味深そうに語っていた。

夏油本人が傀儡として利用される中、彼の一派だった呪詛師たちは夏油の遺体の奪還を目指す美々子と菜々子、彼の思想の実現のために遺体の回収を放棄せんとする別のグループで分裂。渋谷事変の中でそれぞれの目的のために行動する。

親友との再会

その後五条は“呪いの王”とも称される史上最強の呪霊両面宿儺（りょうめんすくな）と戦い、双方が死力を尽くした末に戦死。走馬灯か死後の世界の入り口か、空港のような場所で彼を出迎える。
宿儺との戦いの感想を聞き、「思う存分戦えて満足か」と尋ねる。これに五条が「応援してくれる仲間の中にお前がいれば完全に満足だった」と答えると、なんともいえない顔で苦笑した。

夏油傑の関連人物・キャラクター

五条悟（ごじょう さとる）